本当はやりたくなかったんだけどねー、書かないと訳がわかめなので書かせてもらいました、ハイ
「大丈夫か~!って、紀伊が!紀伊がぁ!」
「落ち着け、提督。傷は浅いから」
「頭から血が出てるじゃねぇか!」
「もう止まっているんだぜ」
「手もボロボロになりやがって!」
「弾薬節約のために砲弾を素手で殴ってたらこうなっちゃった」
「あーもう!折角のきれいな肌なんだからもっと大事にしてくれよ!」
「すまんすまん」
「報告が終わったらすぐに入渠しろ!」
「そうします」
と言うやり取りを、俺と提督の間でやった後に俺は戦果を報告した。
「遠征中の艦隊を襲った敵深海棲艦の艦隊は大和達の支援もあって全滅。この戦いでの損害は主力艦隊の旗艦紀伊が中破したのみで、それ以外の損害は出ておりません」
「うむ、俺が聞きたいのはそこじゃないんだ」
「と、言いますと?」
「何故、主力艦隊が離れてから撤退しなかった?」
「撤退を開始すると背中に攻撃が集中するので、大和達と合流するために慎重に誘導するしかなかったのです」
「だからってもう少し方法はあっただろ!」
「あの状況ではああするのが最善の策でした。幸いにも潜水艦とは遭遇しませんでした」
「だからってあんな戦い方をしていればいつかは轟沈するぞ!」
「手の届く仲間を守ってこそ、神の盾を持つ戦艦にできる生き方であります。その生き方に恥じないように行動したまでです」
俺がそう言うと、怒っていた提督はしばらく考え込んだ後にこう言った。
「とっとと入渠してこい、話はそれからだ」
「では、そうさせていただきます」
その言葉を聞いた大和達は、ホッと息をついて雑談をし始めた。
(そう言えばあしがらやみらいがいないな。あの2人なら待っているかと思ったのだが)
俺がそう思って、戦いの傷を癒やすために風呂場に併設された入渠風呂に向かうと、そこに2人が待っていた。
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「紀伊姉ざぁぁぁぁん!」
「その傷、大丈夫なの?」
「傷自体は塞がっているけど、入渠しないと中破したままだからね。入らせてもらうよ」
俺の姿を見た2人は案の定、あしがらが抱きつきながら号泣し始めてみらいは戸惑っていた。
それも当然で、艤装を外した俺の身体には無数の傷ができている上に手がボロボロ、頭から血が出ていた後が生々しく残っているからだ。
それだけ、過酷な戦闘だったと言うことを見せつけられて動揺しない方がおかしな話だ。
そんな訳で、号泣しているあしがらをなだめつつ、長時間の入渠に入るのだった。
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「球磨に木曾、傷の方は大丈夫か?」
「俺らは何とか大丈夫だが、チビ達は大分参っているよ」
「あの戦いでトラウマになっていなければいいクマー」
「確かにあの数は半端じゃなかったな」
改めてあの戦闘を思い返してみると、我ながらハードな戦いをしたものだと気が付いた。
戦艦群の砲撃、巡洋艦や駆逐艦からの魚雷、一歩間違えればレーダーなどにダメージを受けてしまい、大和達が精密射撃するなんて不可能だった。
「まぁ、何はともあれ・・・君らは良くやったと思うよ。響達を沈めなかったしね」
「いいや・・・それじゃあ、ダメなんだ」
俺が入渠用の湯船に入りながら、そういうと木曾が静かな声でそう言った。
そして、彼女は静かに話し始める。
「俺は強くなりたい。チビ達を守れるほど強くなりたいんだ。そりゃ、紀伊やあしがら達には敵わないけど今回みたいに情けねぇ格好は晒したくねぇ」
「確かにクマ。球磨も今回ばかりは響達に助けられてばかりだったクマ。だから、もっと頼れるお姉さんになりたいクマ」
「・・・」
木曾の独白に、相づちを打つように球磨も賛同する。
(そうか、こいつらは俺が考えているよりも真剣に考え続けているんだ。仲間達を守るにはどうすれば良いかを。平和な世界で呑気に暮らしていた俺よりも)
前世で艦これを知っているとは言え、それはあくまでゲームの世界であって俺にとって身近な世界ではなかった。
しかし、彼女達にとって深海棲艦とは身近な存在であるのと同時に、何かをしなければ仲間の中の誰かが死んでしまう存在。
例え、戦いが嫌いであっても戦わなければ、自分の姉妹や仲間達がいなくなってしまう世界。
俺は、そんな世界に飛ばされてしまったのかと改めて感じた。
なら、俺が言えるのはただ1つ。
「強くなることは良いと思うが、あまり肩に力を入れすぎるなよ?視野が狭くなるから」
「・・・おぅ、ありがとな」
「ありがとクマー」
2人がそう言うと、入渠時間が終わるまで何も喋らなかった。
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「軽く中破した程度で5時間とか、イージス戦艦は修理にも時間が掛かりますねぇ・・・レベルは10程度だと思うだけど」
入渠時間が終わった俺は、軽くのぼせながら自室でグータラしていた。
高速修理材ですぐに出してもらえれば良かったんだけどあしがら曰く、「しばらくはそこで頭を冷やしておれ!」と提督が言っていたらしいので、頭を冷やすどころかのぼせてしまった。
その一方で、資材の方でも修理にかなりの量を使ったらしく、自室に戻る時に妙高さんとすれ違ったのだがその笑顔が怖かった。
しばらくは出撃できないなぁと思っていると、
コンコン
部屋の扉を叩く音がした。
そのため、ふらつきながらも扉まで歩いていってドアを開けると、そこには加賀がいた。
「どうしました?」
「提督にいじめられたと聞いてやって来たのだけど、大丈夫かしら?」
「イジメって・・・まぁ、とっとと撤退しなかった自業自得なので気にしてないですよ?」
「そう、ならいいのだけれど」
と、話はそこで終わったが加賀さんはなかなか帰らないので理由を聞いてみる。
「俺の部屋に来た理由は他にもあります?」
「そうね、まずは部屋に入れてくれるかしら?」
「おぉっと、そいつはすまねぇ」
当たり前のことを言われて、俺はドアを大きく開けて加賀を部屋に招き入れる。
「意外にこざっぱりしているのね」
「起きてから数日しか経ってないからねぇ」
俺が気楽そうに言うと、加賀は持っていた手持ち袋から液体の入った水筒とコップを2つ、それにちょっとしたお菓子を取り出し始めた。
俺は加賀の意図を読み取って、壁に立てかけてあった折りたたみ式の机を出して部屋の中央においた。
そして、ちょっとしてから折りたたみ式の机はお茶会の机みたいになった。
「私が何故、唐突に貴女の部屋に来たか、わかりますか?」
「全然、わからん」
「少しは考えて下さい」
加賀の質問に即答した俺を、諫めるかのようにそう言ってきたので正直に言った。
「大方、あしがら達のことだろ?」
「そうね、あの子達は貴女を置いて戦闘海域から脱出しようとしたことに躊躇したわよ」
「だろうね、同じイージスシステムを搭載した軍艦としては当たり前だと思う」
「・・・貴女は」
俺が冷静に加賀の質問に答えていくと、加賀の表情からは怒りの感情がにじみ出てくる。
「貴女は自分の価値をわかっているんですか?」
「よくはわかってないな。何故、計画倒れした戦艦が今となって誕生したのか。そのことがずっと、心の中で引っかかっている」
「・・・そう」
俺は冷静に、そしてただ単純に思っていることを加賀にぶつけると彼女から、怒りの感情が消えて俺の左隣にまで来て座った。
「紀伊、貴女は私達にとって心のよりどころになり得る存在だわ」
「何故?」
「貴女が計画当時の姿のままで、現代の装備を持っているからよ」
「??」
俺が混乱していると、加賀は静かに語り始めた。
「レーダーが発達して、ミサイルが飛ぶこのご時世でどうして第二次世界大戦の装備のままで私達が戦っているのか、気にしたことはあるかしら?」
「あー、そういやそうだな。ミサイルなんかで狙い撃てば効率的なのにな」
俺がそう言うと、加賀は己の右手を俺の左手に重ねてこう言ってきた。
「反撃の象徴なの、私達は」
「象徴?どういう意味だ?」
俺が理由を聞くと、加賀は静かに理由を言ってくれた。
彼女曰く、深海棲艦が出た当初は奴らに対する攻撃の仕方が確立しておらず、世界各国で多大な損害が出ていた。
そんな中、試作中だった1人の少女――――後の艦娘になる最初の女の子が砲撃や魚雷を使った戦い方で、深海棲艦を数隻、沈めて見せた。
その結果、世界各国はその女の子を反撃の象徴として祭り上げ、軍事大国は艦娘達を戦地に送り込むために研究を急がせた。
しかし、艦娘の量産に成功しているのは日本だけであり、他の軍事大国は何とか数隻の艦娘を製作できたが、戦地に送り込めるだけの数が揃わないそうだ。
そのため、加賀を含めた艦娘達は今でもその象徴として、深海棲艦と対等に戦える存在らしい。
「と言っても、通常兵器でも倒せるのだけれどそれにはコストが掛かりすぎるの」
「確かに、空母やら軍艦やらに乗せる人が多いと撃沈された時に人的損害が大きいからな」
確か、正規空母だと数千人が乗り込むし、ミサイル艇などの小型艦ですら数人は乗り込まないと動かすことすらできない。
そして、その船に載せた兵器で深海棲艦が確実に倒せる保証はない。
その上、海中に潜ってしまえば音すら聞こえにくくなるし、聞こえたとしても確実に攻撃できる訳でもない。
そのため、深海棲艦が浮上してきた場所が空母の真横でした、となってしまえば目も当てられない結果になる。
そうならないように、艦娘の量産が急がれるものの今の所は彼女達頼みになる。
そうなれば、彼女達は忙しくなって心身がすり減ってしまう。
「だから――――――」
加賀はそこで言葉を区切り、こう言いきった。
「私達にとって、今の貴女は私達の時代と
頭から血が流れていて、手はボロボロ、服もちょっとボロボロになっていて所々、破けているって言うのはなかなかにシュールだと思うんですよ。
よく戦っていたなぁ、と。
てか、シリアス回は当分、やりたくないでござるよ。雰囲気が重いし。
という訳で、次回も待っていただけると嬉しいなー