「演習…ですか?」
響たちと一緒に寝た日からさらに数日後、俺の初陣から1週間ほどが経ったある日、提督から横須賀鎮守府で演習を行うことを言われた。
彼曰く、近いうちに大本営の方から艦娘の増強とともにトラック泊地へと転勤命令が下るそうで、この演習には大本営のお偉い方が視察に来るらしい。
「理由を聞いてもよろしいでしょうか?」
「それが君らのことを脅威に感じた大本営が遠くに追いやってとっとと轟沈させようとしているらしい」
「轟沈って…あんまりじゃないですか?」
俺が呆れ返っているところに、提督は苦虫を噛み潰したような顔でこう言ってきた。
「私自身、大本営に何度も考え直すように電報を送ったが聞く耳を持たなかった」
「加賀たちにはなんて言います?」
「これに関しては私から言おう。幸い、転勤に必要な期間を1年ほど、確保したからね」
「尽力に感謝します」
「なに、構わんよ。これも私の仕事だからね」
なんという、露骨な嫌がらせ。人類は、共通の敵が現れた今でも国内だけでも一枚岩ではないらしい。
大本営は、俺やあしがら達が現れてから警戒心を抱き、イオナの一件で俺たちを遠くへ追いやろうとしていた。
それだけ、俺たちの能力が高い訳だがその中でもイオナの能力はなかなかのものだった。
イージスシステムの
それがもし、自分たちに牙をむけたら戦える相手ではない。
だったら、遠くに追いやってしまおうというのが大本営が考えた結果だった。
本当なら、俺自身が大本営に乗り込んで建物を崩壊させるところだがそうなると俺だけではなく、提督や加賀たちに責任が発生してしまうため、そうすることはできない。
「ところで提督」
「なんだ?」
そのため、俺は思考を切り替えて提督に演習について聞いてみた。
「演習相手って誰ですか?
「あぁ、実は私の姉なんだ」
「は?」
「私の姉なんだ」
「…おい、提督?全部言わねぇと眉間に鉛玉をぶち込むぞ?」
「わー、言うから!言うから127ミリ単装砲を出さないで!」
俺は一瞬、頭が真っ白になってから手持ちの単装砲を取り出して提督を脅迫すると、次のようなことが返ってきた。
今回の演習には、提督と提督の姉さんが持っている艦娘達を戦わせることになった。
その際、提督が連れていける艦娘は6人までであり、その選定に困っているとのことだった。
「全く、変なところではしょるから誤解が生まれるんだろ?」
「うぅ、紀伊だったらこういう冗談が通じると思ったのにぃ」
「冗談でもシャレにならんから他の奴らにはやめておけよ?」
「わかってるよ」
まぁ、そんなやり取りをした後、俺は執務室から出ていって近々、演習に行けることを他のメンバーに伝えに行った。
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提督side
「ふぅ、行ったか…もう出てきていいぞ?」
私がそういうと、島風に雪風、夕立がそれぞれの隠れていた場所から出てきた。
この3人は、初対面で紀伊の怖さを身に持って知ってしまったので、こうやって事あるごとに彼女を呼び寄せて彼女の素を知ってもらっている。
「それで今回、彼女をどう思った?」
「ケッコー、普通っぽい?」
「あんまり怖くなかったですし」
「あれが普通なの?」
どうやら、紀伊の普段の姿を見ていて拍子抜けしたようだった。
「そうだね、あれが彼女の普通の姿さ。少し、怒りっぽいところはあるけど怒らせなければどこにでもいる普通の女の子さ」
私が満足そうに頷くと、島風達は顔を見合わせてこう言ってきた。
「今すぐ、話しかけてくるっぽい!」
「雪風も負けてられません!」
「おっそーい!早く早く!」
彼女達はそう言いながら、急ぎ足でドタバタと執務室から出て行った。
「紀伊自身もあの子達と話したがっていたようだし、これで一歩前進かな?」
私はそう独りごちつつ、執務室から見える窓から初夏の海を見た。
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紀伊side
「2人ともおっそーい!」
「雪風も負けてません!」
「夕立が1番っぽい!」
「おぉう!?」
いきなり、後ろから3人の声がしたかと思うと、3つの衝撃が俺の背中を襲った。
そのため、少し前のめりになりながら後ろを振り向くと、島風と雪風、それに夕立の姿があった。
「どうしたんだい?3人揃って」
「今までのこと、謝るっぽい!」
「雪風は勘違いしてました!」
「今度は艦隊、一緒に組もうよ!」
「・・・すまんが意味がわからん」
俺が戸惑っていると、三者三様に言ってきたので事情を聞いてみた。
すると、執務室の隠れられるところに隠れて俺と提督のやり取りを聞いていたらしい。
そのことから、俺のことを怖いお姉さんだという認識をしていたが、さっきのやり取りでその認識が変わったらしい。
長くは続かないだろうな、とは思っていたがここまで早くわかってしまうとは予想外だ。
「それでつかぬ事を聞くが・・・」
「何~?」
「提督は俺のことをどう言っていた?」
「怒りっぽい」
「ガサツ」
「女性なのに女性らしくない」
「おいこら、糞提督ーーー!」
翌日、頭にたんこぶをつけた提督が紀伊に対して怖がっていたのは、まだ誰も知らない。
シリアスにならないように考えながら書きました。
次回、紀伊とみらい達とのやり取りがメインになります