「うわあああああああああ!!」
私は自分が米艦隊に砲撃されたけど全弾、避けきって安心したところに最後の1発がヘリの格納庫に直撃、貫通したものの遅延信管だったために水中で爆発して私の
桐野一尉、麻生先任、戦艦大和に乗り込まなかった皆……。
自分の身体を自由に動かせなかった当時、水没していく中で皆が酸欠で苦しみながら死んでいくのを見ているしかなかった私。
あんな思いはもうイヤなのに……………。
もう見たくないのに…………。
また見てしまった………。
時計も見ると、まだ午前2時。皆は眠りについているだろう。紀伊姉さんだって眠っているはずだ。
「角松二佐、ごめんなさい…」
私はそう呟きながら、眠れない夜を過ごすのだった。
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紀伊side
「え?みらいが元気ない?」
俺が半ドンの休みを使って、ランニングをしている時にあしがらがやって来た。
そして、ランニングが終わって息を整えている最中にあしがらが水を持ってきてくれて、それを飲み干したところで彼女がそう言ってきたのだ。
「えぇ、今朝はいつもよりも遅くに暗い雰囲気で朝食を食べに来たし、今日は休みで天気が良いのに外に一歩も出て来ないのよ」
「…怪しいな。いや、体調が悪いのか?」
「それはないわね。昼食時も皆と同じものを食べていたわ」
「………」
となると、考えられるのは1つだけだな。
彼女の乗組員は、ミッドウェー海戦で死ぬはずだった人間を救ってしまったため、俺の知っている歴史とは違う歴史の流れに巻き込まれていく。
そして、アメリカとの講和に向けた最終局面において、全ての努力が台無しになるような轟沈の仕方をしてしまった。
彼女の乗組員が必死の努力をしたおかげで、日本という国は救われたが彼女の乗組員は1人を残して全員が亡くなっている。
恐らく、最終局面の時かその類いの夢を見たのだろう。
あれは、読んでいた俺にとってもつらい出来事だった。
そのことを知っている俺は、あしがらにみらいのお見舞いをしてくると言って部屋に戻った。
そして、私服に着替えるとみらいの部屋に向かった。
コンコン
「みらい?紀伊だけど入っても大丈夫かー?」
「………」
「入るよー」
みらいの部屋の前で、ため息を吐いてからノックをして声を掛けたが返事がなかったのでもう一度、声を掛けてから部屋に入った。
すると、部屋はやや散らかっていた。
俺達が目覚めてから2週間以上が経ち、私物も徐々に増え始めている中で、几帳面な彼女にとっては珍しい行動だった。
そして、肝心のみらいはと言うとベットで布団の中で丸くなっていた。
誰とも話したくはないのだろう。
拒絶の意思を感じ取ったが、俺はそれを無視して彼女のベットに軽く腰掛けた。
少し時間をおいてから、俺は彼女の頭を撫で始めた。
何も言わずに優しく、だけどしっかりと撫で続けた。
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みらいside
紀伊姉さんが勝手に入ってきた。
今まで、そんな事なんて一度もしなかったのに今日は違った。
多分、今日のことはあしがらに聞いたんだと思う。今日、紀伊姉さんとは一度もすれ違わなかったから。
あぁ、ずっと引き籠もっていたから怒られるんだろうなぁ、と思っていたら何も言わずにベッドに座ってきた。
私が不思議そうに、次のアクションを待っているといきなり私の頭を撫で始めた。
私は壁に向かって寝ていたので、頭の斜め左だったけど優しく撫でられ続けた。
紀伊姉さんは私に何も言わず、しばらくなで続けていたけど急に撫でるのをやめた。
「あっ……………」
「………ダメだ、何か元気づける方法を考えていたけど良いのが思いつかねぇや」
そう言って、紀伊姉さんは立ち上がろうとした。
待って―――行かないで―――1人にしないで―――。
とても切なくなって、気が付いたら紀伊姉さんの手を握っていた。
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紀伊side
困った。何が困ったって?
みらいが寂しげな表情で、俺の手を握ってきたんだ。
それは別に良い。別に良いんだが、なんでそんな雨の中、捨てられた子犬のような表情をしているんだ。
おかげで、部屋を出る機会がなくなった。
そのため、彼女のベットに座り直して彼女の手を握り直した。
そしてみらいは、ぽつり、ぽつりと自分の過去について語り始めた。
低気圧に巻き込まれて、太平洋戦争に突入してしまったこと。
同じ日本人同士で戦ったこと。
戦いのさなかに乗員達が亡くなっていったこと。
皆を守れなかったこと。
話を聞かされた時には、そのことを全て知っているから俺もつらくなって彼女の手をずっと握っていた。
彼女が語り終えた時、願い事を1つされた。
「姉さん、ギュッて抱きしめてほしいのです」
「抱きしめる?」
「はい、姉さんの温もりを私に分けてほしい。そうすれば、私も頑張れるから」
「わかった。はい、ギュウ~~~」
「んっ」
姉妹艦ではないが、同じシステムを持つものとして原形となった大和よりも、あしがらやみらいのほうが親近感が湧く。
俺はそう思って、みらいを強く抱いてみらいも嬉しそうに俺のことを抱くという、なんとも百合百合しい展開になった。
「今日はありがとうなのです」
「まぁ、落ち着いたようだから俺も安心して寝れるよ」
「そこまでひどかったのですか?」
「ひどいってもんじゃねぇが、部屋に入った時の雰囲気のままだと俺まで気が滅入っちまうよ」
「むぅ、私だってたまには落ち込む時だってあるんです」
俺がからかうと、みらいはむくれた顔になったので笑いながら頭を撫でてこう言った。
「いーんじゃねぇの?俺にとっちゃ、そう言うみらいもかわいいと感じるんだし」
「か、かわ…!」
「んじゃ、俺は帰るよ。やることもないしね」
「あっ、うん」
俺が部屋を出る意思を示すと、かわいいという単語に反応して赤面していたみらいは扉の所までついてきて感謝を伝えてきた。
「今日は本当にありがとう…なのです」
「あぁ、またな」
そう言って、互いに笑顔になってから分かれた。
やっちゃった…またシリアス回だ…もうダメだ…腹を切ろう…
切腹!「鉄塊(てっかい)」…うぅ、逝けなかったよ、おっかちゃん…
と言うことで、次回まで待ってくれると嬉しいなー