A-150戦艦で深海棲艦に殴り込み!   作:八雲ネム

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第8話 横須賀に向けて出発!

それでは!横須賀に連れて行くメンバーを発表する!」

 

 俺の初陣から1ヶ月ほどが経ち、この鎮守府にも艦娘が多くなってきた。

 

 軽空母だと飛鷹型と瑞鳳型、鳳翔が加わったから小回りが利くだろう。

 

 重巡だと妙高型と利根型が揃ったし、高尾型まで全員が加わったから艦隊旗艦に柔軟性が出てくる。

 

 軽巡だと、天龍型と阿賀野型が揃った。阿賀野型ってゲームではまだ、出てなかったような…と思いながらも歓迎した。その上、矢矧に至っては大和との再会で勘当のあまり失神したのは良い思い出た。

 

 駆逐艦だと睦月型や吹雪型、朝潮型や陽炎型などの6割以上が加わっている。

 

 今まで何やってたんだよ、て提督に突っ込んだら、

 

『細々とやっていこうかと思っていた』

 

 とのことだったので、軽くデコピンをして反省させた。痛がっていたけど。

 

 そして今日、他の鎮守府に行ける滅多にない演習なので集まっているメンバーの内、主に駆逐艦がそわそわしている。

 

「まずは加賀と夕立!」

 

 提督がそう言うと、彼女達の周りで歓声が上がった。

 

 最古参で正規空母となると、蒼龍達よりも加賀の方が軍配が上がる。

 

 夕立の方も、実際にはソロモンの悪夢と言われるほど活躍したが、この世界でもワンコみたいに走り回って深海棲艦を撃沈しまくったらしい。

 

 おかげで、駆逐艦の中でも突出した練度を持っている。

 

「次に大和とみらい!」

 

 大和の砲撃力と、それを補佐できるみらいを選んだか。

 

 火力なら陸奥よりも上だし、2人にはそれぞれの防御を持っている。

 

 シブヤンでの武蔵なんて、魚雷を20本以上、爆弾を17発以上も食らってしばらくは浮いていたからな。かなりのタフネスっぷりだ。

 

 みらいの方も、弾薬が尽きない限りは能動的の迎撃ができる。

 

「最後に紀伊と雪風!」

 

「あーっ!雪風に負けたー!」

 

「幸運の女神のキスを感じます!」

 

 そうかそうか、俺と雪風か………ファ!?

 

 驚いている俺とは別に、島風と雪風の反応が正反対だった。

 

「提督、聞いても良いか?」

 

「何だね、紀伊君」

 

 誇らしげな雪風と、怒っている島風を尻目に俺は編成について聞いてみた。

 

「これってやっぱり、練度が関係しているのか?」

 

「そうだ。横須賀鎮守府は日本の首都を守るためにその防衛力が高いのは知っているな?」

 

「つまり、艦娘にもそれだけの練度が求められる、と」

 

「そういうことだ。……って雪風と島風はうるさい!」

 

 提督の一喝で、編成が知らされた直後から口喧嘩していた雪風達は黙った。

 

「よーし、横須賀遠征組は用意しておいたこれを持って屋上に来てくれ。他の皆は解散だ」

 

 提督がそう言って、俺達にパラシュートと白いバルーンを渡して建物に入っていった。

 

 解散を言い渡された艦娘達は、それぞれの思いを仲の良いメンバーと語り合いながらそれぞれの場所に散らばっていった。

 

 そして、遠征組と数人の艦娘が残って話し合った。

 

「パラシュートとバルーン、と言えば良いことが思いつかねぇ」

 

「そうなんですか?」

 

「だってパラシュートだぜ?」

 

「パラシュートって何ですか?」

 

「空から飛び降りる時に安全に着地できるようにする道具ですよ、雪風さん」

 

「じゃあ、どうやって空から飛び降りるんです?」

 

「行けばわかるさ…」

 

 俺はため息を吐きながら、艤装をつけさせて屋上へと皆を連れて行った。

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

「遅いぞー、6人とも」

 

「ったく、艦娘を空輸させるなんて頭おかしいんじゃねーの?」

 

「いいや?そうでもないさ」

 

 俺と提督のやり取りを聞いた大和達は、頭の上にはてなマークを浮かべながら聞いてきた。

 

「空輸ってどういう事ですか?」

 

「この辺りに人を運べる飛行機の滑走路はありませんが?」

 

「紀伊さんは何か知ってるっぽい?」

 

「知っているなら雪風にも教えて下さいよ~」

 

「紀伊さん、何で少し緊張しているんですか?」

 

 とまぁ、俺以外の遠征組は次々に疑問を投げかけてきたが、俺も提督も何も喋らない。

 

 そして、大型の輸送機が低空飛行をしながらこっちに向かってくるのがわかる。

 

「提督、輸送機が来てる」

 

「よし、大和と加賀!集合してくれ!」

 

 提督がそう言うと、大和と加賀にバルーンを装着して待機しているように言った。

 

「提督?何が始まるんです?」

 

「スカイフックだ!」

 

「スカイフック?ってきゃああああああああ!」

 

 おぅふ、日頃の態度や口調からは聞けない加賀のかわいい悲鳴が聞こえた。

 

 そして、大和の方も――――。

 

「か、加賀さん!?ってきゃああああああああ!」

 

 うん、スカイフックってのは輸送機なんかで郵便回収用に考えられたものを、人命救助は輸送に使おうという奴だ。別名、フルトン回収。

 

 大和と加賀は、それによって大空に飛んでいった。俺達もすぐに飛ぶことになるがね。

 

「よーし、残りの4人も準備して集合!」

 

 雪風と夕立は大はしゃぎしながら準備をする一方、俺達もいそいそと準備を整える。

 

「紀伊さん…まさか、あんなやり方があるなんて」

 

「今の時代はヘリで空輸できるからねぇ。負担が掛かるあんなやり方は廃れていったと思ったんだが」

 

 準備が終わった俺達は、スカイフックを成功させるために所定の位置に一列で並んだ。こうした方が、輸送機もやりやすい。

 

 そして、大和と加賀を回収した輸送機は旋回してもう一度、鎮守府上空を通過した。

 

 

「わーーー!すごいっぽい!」

 

「空を飛んでいます!」

 

「海鳥もこんな感じなんですかね!?紀伊さん!」

 

「わからん!わからんがすげぇやこれ!」

 

 

 その日の朝に出た俺達は、昼前には横須賀に着く予定だがその前に一悶着があった。

 

 

「提督?叩いて殴ってじゃんけんというものをご存じですか?」

 

 先に回収された大和が、額に青筋を浮かび上がらせながらそう言ってきた。

 

(大和がキレるとか、よっぽどだな)

 

 俺はどうなるかを予想していたし、そんな俺を見ていたみらいもただ事じゃないなと考えていたようだし、駆逐艦ズははしゃいでいたからともかく、大和達は何の情報も知らされずに飛ばされたんだからそうなるな。

 

「大和、それって叩いて被って「叩いて殴って…ですか。私も参加します」…加賀さん!?」

 

「何か、問題でも?」

 

 よく見たら、加賀の表情も「頭にきました」って表情をしてやがる。

 

 そりゃ、あんなかわいい悲鳴を上げるところを見られたらそうなるわな。

 

「問題しかないぞ!?そもそも、艤装をつけている君らに殴られたら「ガチャ)これでいいですか?」……つかぬ事を聞くが、艤装を外した状態での握力は?」

 

「柔らかい林檎なら握りつぶせます」

 

「大和の方は?」

 

「硬い林檎でも握りつぶせますよ?」

 

「夕立…助けてくれ」

 

 ちなみに、林檎を握りつぶすには最低でも80kgぐらいの握力が必要であり、加賀の場合は大体70kgぐらいで大和は90kgぐらいだろうか。

 

 元々の馬力が加賀で12万7400馬力、大和で15万3553馬力だからかなりの握力だな。

 

 俺?俺の場合は、大和よりも上の握力になるね。馬力も大和よりも上だから。

 

 林檎を握りつぶす、という会話を聞いた夕立はというと、

 

「提督さんの自業自得っぽい…」

 

 と、ちょっと引き気味だ。

 

 夕立の場合、駆逐艦で4万2000馬力だから握力は20~30kgぐらいだな。

 

「ぐぬぬ…じゃあ、雪風は?」

 

「司令官なら大丈夫です!」

 

「励まされた!?」

 

 提督が雪風に話を振ると、彼女の危機回避能力で逆に励まされた。

 

 雪風も駆逐艦だから、5万2000馬力で握力は夕立よりもちょっと上ぐらいだな。

 

「うぅ…じゃあ、みらいは!?」

 

「提督は頑張ればなんとかなるのです(ふんす」

 

 みらいは護衛艦と名乗っているが、第二次世界大戦時の重巡並みの排水量で出力が12万psとなり、馬力に直すと12万馬力弱。

 

 だから、加賀よりも少し握力が低い程度だ。

 

 と言うか、この流れからすると俺にも回ってくるじゃん。

 

(仕方ねぇから助け船を出すか…)

 

「ふんす、じゃねぇええ!じゃあ、紀伊は!?」

 

「後でジュースを奢ってくれたら良いよ」

 

「交渉成立!助けて!」

 

「仕方ないな…大和、放してやってくれ」

 

 俺がそう言って、大和の手をつかむと…

 

「ジュース1本とは言わずに甘いものを好きなだけ奢りますよ?」

 

「!?」

 

「それだったら、ついでに昼食分も奢ります」

 

 と、大和と加賀のお誘いが来た。

 

 ジュース1本と昼食+甘いもの、どっちが重いかというと…

 

「お願いします!大和様!加賀様!」

 

「裏切り者ぉ!」

 

 俺はすぐに手を放して、直角のお辞儀をした。

 

 提督が何か、騒いでいるが腹が減っては戦えないというのが俺のモットーだ。

 

 それに、ご飯とお菓子だぜ?それを奢ってくれるって言うのはなかなかにでかい。

 

「さぁ、楽しい楽しいお遊びの時間ですよ」

 

「気分が高揚します」

 

「待て待て!全力でやると俺、死んじゃうから!」

 

「それに関しては安心して下さい」

 

「通常の半分の力でやりますので」

 

「誰か助けて!」

 

「ふふっ…じゃあ、行きますよ。叩いて殴ってじゃんけんポン!」

 

 

 じゃんけんの結果、提督がチョキで大和と加賀がグーだった。

 

 

「うおおおお!ヘルメットぉぉぉお!」

 

 そう叫びながら、提督は急いでヘルメットを被ったが大和達は動こうとしない。

 

(何で動かな…あっ、大和達はキレているから力の加減ができないんだな)

 

「…加賀さん、殴るのは私で良いですか?」

「では、私は叩くとします」

 

 そう言いながら、大和は指を鳴らし始めた。

 

 普段、淑女として振る舞っている女性を怒らせるとどうなるか、提督には思い知ってもらおう。

 

「え?ヘルメットを被ったから俺の勝ち…」

 

「提督よ」

 

「な、なんだい?紀伊」

 

「彼女達はとても怒っている」

 

「そ、そうだな…」

 

「叩いて被っては被った後に叩いてはいけないというルールはない」

 

「そ、そうだけど…」

 

「good luck」

 

「では、行きます」

 

 俺が笑顔でそう言うと、提督の頭をヘルメット越しに平手打ちをすると、「メキョ」という音と共にそのヘルメットが手のひらサイズにヘコんだ。

 

「じゃあ、次は私ですね」

 

「待て待て!このまま行くと、ヘルメットが粉砕…」

 

「問答無用!!(ベコン」

 

「おぉ…ヘルメットが大きくヘコんだぞ」

 

「ぐあああ、頭がぁああ」

 

 大和の脳天への一撃で、提督が被っていたヘルメットがクレーターのようにヘコんで提督が苦しみ始めた。

 

 あんな威力をもらってよく生きてるなー、と思って大和達を見ると…

 

「すっきりしました」

 

「私もです」

 

 …ずいぶんとすっきりとした顔をしてらっしゃる。

 

 

 彼女達のかわいい悲鳴は、大事にとっておこうと思った瞬間だった。




横鎮に向けて、艦娘を空輸しました!

海路だと時間が掛かる上、深海棲艦にやられる可能性が少なからずあるため、初期段階で没になりました。

陸路でも、トラックなどを発注して移動を開始しても横鎮に到着するのが10時間後とかで艦娘達に負担が大きく、悪目立ちしてしまう。

鉄道輸送でも兵器の輸送には役所がうるさいため、フルトン回収で行くことになりました。

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