Fate/ fallen brade   作:阿後回

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慎二編、最終回です。


第六話 『告白』

夕方、一人の少年がコンサート会場前のベンチに座っていた。

 

「・・・もうそろそろのはずだが・・・」

 

私は時計を見ている少年の背後から少しずつ、近づいていく。

 

 

「・・・桜か?」

 

背後、数メートルの間がある私に気がついた先輩。

 

「えへへ・・・バレちゃいましたか?」

 

「ここにいるってことは、見に行ったんだな・・・ライブ」

 

照れ顔の私を無視して、先輩はそう言った。

 

「ええ・・・行きましたよ、兄さんがステージの上でギターを弾いてました。私はよくわからないジャンルでしたので、少し戸惑いましたが、逆に兄さんらしいな・・・と思いましたね」

 

先輩は『兄さんらしい?』と疑問に思ったようです。

 

「昔の兄さんは間桐の・・・うちの家業を継ぐために努力をしていました。それが、中学生の頃あたりから夜遊びに変わったんです。

そのときは驚きましたし、心配もしました

ですが、先程兄さんがステージの上でギターを弾いているときに、兄さん自身が本当にやりたいことが見つかったんだなって、そんなふうに思えたんです」

 

夕陽に染まる空。

先輩はゆっくりと、私の方を向きました。

 

「先輩は・・・私と初めて会った時のことを覚えていますか?」

 

「・・・弓道の大会が初めてじゃなかったか?」

 

その言葉に首を傾げながら言う先輩。

 

「・・・違いますよ」

 

やはり覚えていないのかと思ってしまう。

しかし、覚えてないのも当然と半分で思っていたので、それほど悲しくはなかった。

 

『それより前に会っていたのか?』と先輩は言いました。

 

「少し・・・昔のことです。

兄さんが初めて家出をした時、私は兄さんが心配で、兄さんの友人に電話を掛け続けました。しかし兄さんもあの性格ですから、とりついでもらってもまともに相手はしてもらえませんでした」

 

必死に探していたあの夜。

兄さんの友人やクラスメイトにかけても、一向に居場所がわからなかったときでした。

 

「そんなとき・・・たった一人、兄さんを『探してくやる』と言った()()()()()()()()()()()()のです」

 

「・・・あっ!?」

 

先輩はそこまで聞いて、ようやく思い出してきたようです。

その日だけ、家族に断りを入れてまで、夜遅くまで必死に探してくれた兄さんのクラスメイト。

 

「結局、朝方になってから兄さんは帰ってきました。

兄さんが帰ってきたあとに電話をいれると、そのクラスメイトさんは私からの電話を勘違いして、兄さんがまだ見つかってないと思って、心配して探しに行こうとしていたんです」

 

朝方に迷惑だろうと思ってかけた電話であったが、兄さんのために必死になって探してくれたクラスメイトさん。私は拙い説明でクラスメイトさんに誤解させてしまった。

なんとか誤解は解けたけど、それでも電話越しに許してくれたその人はとても優しい人だと思いました。

 

「それが・・・()()()()()()()()()()()()

 

「ほかの人は邪険にして、まともにとりあってくれなかった兄さんを真剣に心配してくれて、必死になって探してくれる人でした・・・その人は突然、兄さんに連れられ私たちの家に来ることになりました」

 

あのときは驚きました。

電話越しでしか聞かなかった声のあの人が部屋越しにいるとわかったんです。

 

「実は・・・初めて会ったのはそのときです。

すぐにわかりました。だって、私は声も口調もなぜかしっかりと覚えていたんです」

 

少し口が硬くなります。

緊張で心臓が張り裂けそうです。

 

だけど、私は言わなきゃいけない。

先輩をしっかりと見据えて・・・・・

 

 

「そのときです初めてわかりました。

その人が・・・()()()()()()()()()()()()・・・・・」

 

思わず目をつぶってしまいました。

・・・・・けれど、真剣にはっきりと伝えます。

 

「先輩・・・『()()()()』、どうか私と付き合ってください!!!」少し時間が経ちます。手は汗が滲み、私の心臓は張り裂けそうです。そして、先輩は少し()()()()にして・・・・・

 

 

「ごめん、()()()()()()()()()

 

 

ふと、力が抜けました。

『どうしてですか?』・・・と私は口に出していました。

 

()()()()()()()()()()

まだ、そいつが忘れられない・・・悪いが、まだじゃないと思う。正確には『一生忘れられない』・・・が正しい」

 

ポロポロと涙が溢れる。

ずっと好きだった先輩に好きな人がいたなんて知らなかったからだ。

 

 

「先輩、()()()()()()()。その人はどんな人何ですか?」

 

 

依頼最後の質問。

せめて、その人に近づけば先輩は私に振り向いてくれるのでしょうか?

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その言葉で不可能だと悟りました。

 

だって、私の根底にあるものは・・・・・

 

「あと、桜が思っているような『誰か』のは変わりになるなんてことは、絶対に許さないやつだから、たぶん俺も桜がそんなことをしてアイツのように振舞ったら許せなくなると思う」

 

 

ああ・・・先輩は、少しの未練も許してくれないんですね。

それでも、せめて最後は笑顔で・・・・・

 

 

「・・・わかりました。それでも、先輩が好きだってことは変わりありません。だから、気が変わったら声をかけてください。私待ってますから・・・・・」

 

 

 

日が沈んだ。

先程まで居た少女(いもうと)は消え、少年(ゆうじん)がそこに立っていた。

 

「慎二・・・覗き見なんて無粋だな」

 

「げっ・・・気づいてたのかよ。

というより、よくも俺の妹を振ってくれたな、衛宮」

 

タクミさんに教わった気配を隠蔽する技術が一瞬にして、バレたんだけど・・・・・

 

「ハア・・・妹泣いてる時点で出てこないのは、流石に酷いとは思ったが、そのまま最後まで傍観してるとは思わなかったんだ」

 

「ハア・・・なんで桜にそんなことまでしないといけない。それに、妹とはいえ他人の恋愛事情なら首を突っ込むのはお門違いだろ」

 

衛宮は『まあ、その通りだが』と言った。

 

「・・・というよりも、お前はライブに俺が来なかったことを文句言ってくるのかと思っていたんだが、やっぱり妹思いだなお前」

 

「ハアッ?!そんなことないだろ、それにそういやなんでチケット渡してないのに、あの席に桜が座ってんだよ!?あそこお前にくれてやった席じゃねえか」

 

少し焦ってしまう・・・衛宮のくせに痛いとこ付いてきやがるぜ。

 

「探偵のバイトの依頼で、桜にくれてやったんだよ。

お前の帰りがさらに遅くなったから心配して事務所まできたんだよ彼女・・・お前が、心配で・・・・・」

 

どこか含みのある言い方だが、まあいいだろう。

 

「てか・・・なんでバンドやってることがわかった?

ジミィさんに紹介されて、知る人ぞ知る有名なハッカーチーム『デモンズ』が、ガッチガチに隠蔽してたんだよあれ、お前のところどうやって知ったんだよ」

 

「知り合いに頼んで調べてもらったんだよ」

 

「そんな簡単に調べれるほど、ハッキングは楽じゃねぇよッ!!!」

 

衛宮は軽く言ったが、たぶん衛宮の知り合いにも『デモンズ』の仲間か、ジミィさんから聞いた『レジェンド』クラスのハッカーが後ろについているはずだ、それ以外にありえねぇ。

 

しかし、心のどこかで諦めがついていた。

こいつは、絶対に話したくねぇことは話さないことぐらい知っているからだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なあ、衛宮・・・お前()()()()()()()()?」

 

表情はあまり変わらないが、衛宮が目少しを見開いた。

図星のようだな。

 

「俺さ・・・桜のやつが言ってたように間桐家のまじ・・・家業を継ぐつもりだったんだよ」

 

桜が言ってたように俺はあの魔術を継ぐつもりだった。

 

「冬木の大災害で爺さんと親父が死んでから、叔父の間桐雁夜が当主を継いでたんだが、俺が中学生にあがる前に死んじまって、叔父の荷物を整理してる時だったな・・・俺は有る日記を見つけたんだよ」

 

「間桐の家業継ぐためにはある・・・社会的に言えば全く必要のないものだったが、それでも家業を継ぐには必要な才能があったんだが、俺にはその才能がなかった。

桜はとある名家からの養子でな・・・俺にはない才能が桜にはあったらしく、当主は桜に継がせるということが、爺さん(ジジイ)の日記には書かれてたんだ」

 

あの時はものすごく腹が立ったのを覚えている。

たかが才能の違いだけで、今まで俺が努力してきたことが無駄になったことがとっても腹立たしかった。

 

しかし、長男であった俺には、当主を継ぐ権利はあった・・・だが、資格はなかったのだとようやく気付いたんだ。

 

「そのあとは走り出したよ。

行くあてもなくただ街をぶらついて、苦しいとか悲しいとかそれ以前に、『これから何をしていけばいいんだろう』という無力さだけが、ここにあったんだ」

 

俺は心臓のあたりに指をさした。

衛宮は真剣に聞いてはくれているが、どこかまだ信じられないようなもの見る目で俺を見ていた。

 

「そんなとき俺は『ジミィKen』に出会った」

 

「駅の近くで一人でギター持って歌ってたんだよ、あの人。誰も聞いてないのに必死で歌ってさ・・・まるで、()()()()()()()()()()()なんて考えていた俺が馬鹿みたいだったよ・・・」

 

「そのあとは、サクラさん・・・えっと、今日俺をジミィさんのファンにしてくれた人でな、その人と話してる途中で、ジミィさんにギターを弾かせてもらったんだよ」

 

「そうしたら・・・()()()()()()()()()()()()

俺が見ていた世界がどれほどちっぽけなものだったか、教えられたのさ・・・」

 

今思い出しても鳥肌が立つ。

あの興奮はたった一度きりだったが、俺にとっては一番嬉しかったことだったのが今でも思い出せるんだ。

 

「俺はジミィさんと出会って変わったからな・・・お前がなんで『()()()()』のかはわかんねぇが、一つだけ言っておく・・・お前が見てる『世界』より、もっと楽しいことがこの世界にはたくさんあるんだよ・・・・・じゃあな衛宮」

 

 

俺はそう言って、衛宮の前から去って行った。

 

 

 

 

『火はハハは派刃波ハはハ、ヤーイバレてやンノ』

 

「うるさい」

 

桜に告白されたり、慎二になんかバレてたり、なんか今日は不幸が続いている。

 

『西ても、アノ程度でヨカッただろ』

 

「告白に関して言えば、そう思える」

 

昔戦ったユノモンとかいうヤンデレデジモンに苦戦した覚えがある。あの時は、ルーチェモンがトドメを刺したんだっけ?

 

どちらにしても、もう恋だの愛だのにはこりごりだ。

 

「それに慎二にバレてたのも厄介だったよなぁ」

 

『てメェハ、トアル目的ガあって『生きる』ジャ無くて、『生きる』コトが目的だもんな』

 

オグドモンの言った通りだ。

本当に俺は・・・()()()()()()()()()()()()

 

 

「・・・・・なんか、まだ嫌な予感がする」

 

時間は午後八時前だというのに玄関からとてつもなく嫌な予感がした。

玄関に置いてあるアイリさんの車。

また、ボロボロになっているが、荒い運転でもしたのだろうとドアを開けると・・・・・

 

 

「おっかえりーー、おにいーちゃーん!!!」

 

突然、白黒の塊がぶつかってきた。

勢いよくぶつかってきたそれにより、玄関の地面に倒れゴンっと頭を打ち付けてしまう。

 

「あっ!?クロだけズルイ!!!」

 

「残念でした〜、早い者勝ちよイリヤ!!!」

 

「ちょっとシロウ!?奥様、シロウがどうやら頭打ち付けてしまっています!!!」

 

「あらあら」

 

薄れゆく意識の中・・・・・

 

 

(『不幸だ(ダ)』)

 

 

どこかの主人公よろしく、俺とオグドモンの意識が重なった。

 

 




クロエ編まるまるカットした慎二編でした。
クロエ編の理由はたぶんまたあとがきを書くと思うので、そちらも読んでくれるとありがたいです。

誤字・脱字、感想等あればよろしくおねがいします。

番外編に関するアンケート

  • 1.間桐雁夜に召喚されるZERO編
  • 2.岸波白野に召喚されるEXTRA編
  • 3.FGO二部を暴走して終わらせる編
  • 4.始まらないヘブンズフィール編
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