Fate/ fallen brade   作:阿後回

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三連休内にギリギリで収められました。



第四夜 衛宮士郎とは

・・・愚か者、そう士郎さんはみんなの前で言った。

 

「そうだな、始まりはだいたい『()()()()()()()()()()』ところから、衛宮士郎のくだらない物語が始まる」

 

並行世界の自分への侮蔑の言葉を言いながら、士郎さんは少し遠い目をして話し続ける。

 

さっきの言葉に少し違和感を覚えた。

 

「衛宮士郎は十年前の冬木の大火災で、唯一()()()()()()()()()()()()()

 

お兄ちゃんから、災害の被害にあったときに切嗣さんに救われたことは知っていたけど、並行世界でも火災じゃなかったはず・・・そこが気になったのだろうか?

 

「衛宮士郎は憧れたんだ・・・『泣きながら嬉しそうに自身の手を握る()の姿に』」

 

「・・・・・待って、お兄ちゃんひとつ聞きたいんだけど?」

 

クロがが士郎さんの話を止めた。

・・・切嗣さんとアイリさんはなぜか暗い顔をしていた。なにかを察しているのだろうか?

 

「どうかしたのか・・・って、聞くのはおかしいよな。だけど、クロエ・・・悪いが話を続けさせてもらう」

 

真剣な表情でクロの質問を断った士郎さん。その表情に押され、クロは黙ってしまった・・・わたしは、士郎さんがクロのほうを見たとき、一瞬だけ切嗣さんとアイリさんのほうに目を向けた。そのときの目が少し鋭かったの見た気がする。

 

そして、士郎さんは話を続ける。

 

 

 

 

「そして、衛宮切嗣は衛宮士郎を引き取り、『数ヶ月後死んだ』」

 

 

 

わたしと切嗣さんとアイリさん・・・そして、カミシロの人たち以外全員が驚いていた。やっぱり切嗣さんはわたしの世界と同じようにしんでいたんだ・・・でも、『どうして切嗣さんたちは驚かなかったのか』という疑問が出てきた。

 

誰もが驚くなか、士郎さんはこの場にいるカミシロの人たち以外全員をさらに驚かせる事実を言った。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

その言葉にまず反応したのは凛さんだった。

 

「ちょっと待って、衛宮くん・・・!!!」

 

「最初に反応するのはお前だと思っていたよ・・・遠坂、それで聞きたいことはだいたい予想はできるが、一応なんの質問か教えてくれないか?」

 

先ほどの真剣な表情とは違い、いつもの優しい笑顔を見せる士郎さん。その言葉には、真っ先に反応したのが凛さんだとわかっていたみたいだった。

 

「その口ぶり、まさかとは思うけど、まるで私が最初に言うことがわかっていたみたい・・・まあ、それは後で聞くとして・・・・・」

 

凛さんの言葉が詰まった。

数秒・・・凛さんの緊張がわたしたちにも伝わり、その緊張が長く感じられた。

 

「・・・つよ」

 

凛さんの声が少しただけだった。

緊張して声が出なかったのだろう。しかし、士郎さんは凛さん型話すのを待っている。

 

・・・・・そして、

 

 

「いったい、いくつ並行世界の自分を知っているのよ!!!」

 

 

凛さんは緊張感です大きな声で聞いてしまう。

 

 

 

()()()()()()()()

 

 

 

そう士郎さんが単調に答えた。

緊張で包まれた空気であったが、その一言で凍りついたと言ってもいい。

 

だけど、わたしはその言葉をどこか冷静に聞くことができた。

 

「『最低』、『最多』ってどういうことですか?」

 

話を聞いても、質問をしても、まだのどにつっかえているような感覚がある。ほんとうにわたしが聞きたいことではない気がした。

 

「俺は()()()()()()()()()()()として、並行世界の俺自身の記憶を閲覧・・・()()()()。その中にあったのは、並行世界の俺自身の『過去』・『現在』・『未来』の三つ、そして『現在』の分岐した記憶が二つ、『未来』の分岐した記憶・『過去』の分岐した記憶が一つずつ・・・『計七回』の俺自身の記憶だった。

最低四つと言ったのは、『過去』、『現在』、『未来』の記憶がひとつの世界の可能性を考えた末に、『最低』・『最多』という言葉をつけた」

 

・・・だから、士郎さんはそう言ったのか・・・ん、()()()()()()()

 

『過去』・『現在』・『未来』の三つ・・・()()()()()()()()()()()・・・()()()()()()()()()()()()()()()

 

わたしの違和感は増え続ける。わたしはなにか重要なことを聞き逃した気がした。

 

「・・・シェロ、その七つの記憶とはいったいどんな記憶でしたの?」

 

それでもわたしたちの会話は止まらない。

その中でも、わたしの嫌な予感は拭えなかい。

 

 

「ルヴィアさんも知りたいようだし、それじゃあ、『過去』から話そうか・・・いいよね、美遊」

 

そう聞かれたわたしは、つい首を縦に振ってしまった。

わたしの違和感よりも、お兄ちゃんとは違う士郎さん(お兄ちゃん)の『過去』のほうが気になってしまった。

 

 

士郎さんはゆっくりと話し始める。

 

 

「最初の記憶は火の海だったよ」

 

 

士郎さんは自嘲気味にそう言った。

 

凛さんとルヴィアさんが驚いている。

切嗣さんとかがアイリさんはどこか暗い顔をして、イリヤやクロはそのことがわからないのか首をひねっている。

 

「・・・そう、『十年前の大火災』だ」

 

わたしにはわからなかった。わたしは冬木市に災害があったことは知っているけど、それが火災ではないことくらい知っていた。

 

・・・・・原因の一端はわたしだから。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「・・・・・取り戻した?」

 

士郎さんの言葉にはどこか、卑屈な気持ちがあったような気がする。衛宮家のメイドさんの一人、リズさんがその言葉に反応した。

 

セラさんも同様にそのことを驚いている。

 

「いちおう、このことは親父たちには言ってたからな・・・・・()()()()()()()()()()()()()()()

 

「・・・じゃあ、あのときの言葉は・・・!?」

 

『あのとき』

 

セラさんがそう言った瞬間、士郎さんはニヤリと口角を上げた。

 

「嘘ではないけど、あれのおかげで随分と長い時間俺の『約束』を守れた・・・()()()()()()()()()()()()

 

わたしの耳に『約束』という言葉が残った。

士郎さんはなんらかの『約束』をしていたから、今まで喋らなかったのかという疑問が頭の中に増えた。

 

セラさんの表情が固まる。

士郎さんはらしくない表情で話を続けた。

 

「そして、衛宮切嗣が死ぬ夜に並行世界の俺は『正義の味方』を受け継ぎ、『呪われた』・・・その後の衛宮士郎は『正義の味方』になることに対して固執した」

 

『正義の味方』・・・その言葉で、とある一人の男の姿を思い出した。

 

『大を救うために小を切り捨てる』

 

人類を救うために、わたしの中の『聖杯』を使おうとしたあの男のように、並行世界のお兄ちゃんはなったのだろうか?

 

 

「それは『現在』の記憶でもそうだ・・・と、ここまで疑問が生じたよな、クロエ?」

 

 

初めて、士郎さんが誰かに対して質問を要求した。

 

「ええっ・・・!? パパやお兄ちゃんは出てるのに、()()()()()()()()()()()()()()

 

突然、一つの疑問が解消された。

士郎さんの言葉には、ここにいるはずの二人の人物が登場していなかったことだ。

 

「そうだ・・・俺の知っている世界ではこの世界以外、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「『聖杯戦争』・・・たしか、アイリさんが言ってた魔術儀式の・・・・・?」

 

士郎さんは嗤った。

 

「それはまさか・・・?」

 

切嗣さんの動揺した声が聞こえた。

 

「その通りだよ親父・・・俺の知っている記憶だと()()()()()()()()()()()()以外で、『第四次聖杯戦争』、『第五次聖杯戦争』が行われている・・・いや、『現在』の記憶ではマスターとして俺は『第五次聖杯戦争』に勝利を収めている」

 

「ちょっと待ってお兄ちゃん、『聖杯戦争』って、ただの魔術師の儀式なんじゃないの!?」

 

『聖杯戦争』を知らないイリヤもわたしも、話についていけない。

 

()()()・・・じゃない、正真正銘、言葉通り『ある程度の範囲で、どんな願いでもひとつだけ叶えてくれるおもちゃを巡る冬木市の中で行われる戦争』だよ」

 

士郎さんは『聖杯戦争』の・・・『現在』の記憶説明を始めた。

 

あらゆる時代の七人のマスターと呼ばれる魔術師が、七体の英霊達を召喚し、冬木市内でたった一人を決めるまで戦い続ける・・・その戦いで、アーサー王を召喚し、並行世界のイリヤとの戦い、言峰綺礼に突きつけられた真実・・・そして、ギルガメッシュとの最終決戦を乗り越えて、聖杯を破壊したこと。

 

「それでも『正義の味方』を目指したんだがな・・・『未来』の結果は残酷だよ」

 

「・・・それって、どういうこと?」

 

クロが士郎さんの言葉に反応する。

『残酷』・・・とはいったい?

 

「簡単だ・・・『未来』の記憶では()()()()()()()()()

 

「・・・嘘よッ!!!」

 

あっけらかんにそう言った士郎さんの言葉に、凛さんは即座に否定した。話の内容から並行世界の凛さんが手伝っていて、最後が処刑という終わりがわたしにもわからなかった。

 

「本当だよ・・・現に、クロエが証明してるさ」

 

「・・・わたし!?」

 

士郎さんは一言、『投影』・・・と呟くと、クロが使う二対の夫婦剣が現れた。

 

「ーーッ!?」

 

「クロエの中にあるカードの英霊は『エミヤ』・・・並行世界で処刑され、世界と契約した守護者だ」

 

 

士郎さんはその英霊の過去を話し始めた。

衛宮切嗣に憧れ、聖杯戦争を勝利し、英雄を目指した男は、少なくない犠牲を出したが、その数千倍の人々を救った。

その結果が、()()()()()()()()()()()()()

 

それでもなお『正義の味方』目指して、世界と契約し、擦り切れた男の末路・・・それが、自身の『過去』の衛宮士郎を殺すことを目的とした英霊『エミヤ』。

 

 

 

わたしは吐き気をもよおした。

その生き方を教えられ、()()()()()()()()()()()()()()()()と思わずにいられなかった。

 

イリヤもクロも・・・・・士郎さんが連れてきた人たち以外、全員の顔が蒼白になっていた。

 

 

「・・・どうした?()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

軽い口調で、驚くべきことを言った士郎さん。

 

そして話は『過去』へと戻る。

 

 

わたしの世界の話。

お兄ちゃんがわたしをとるか、『正義の味方(うけついだもの)』を目指すかで悩み苦しんだ日々。

 

次は、アンリマユに乗っ取られた話。

繰り返される四日間と、殺され続ける日々を淡々と語った。

 

可能性の『未来』の話。

救いたかった人々を殺してしまい、『正義の味方(えいゆう)』ではなく、記憶も擦り切れた『傭兵(きかい)』へと成り下がった。

 

可能性の『現在』の話。

英霊エミヤが、再び『正義の味方』を目指した話。

だが、そこにはイリヤの無残な殺され方まで、伝えられた。

 

 

「・・・・・と、ここまでが、俺の知っている範囲の並行世界の記憶だ」

 

 

士郎さんは記憶をどう思っていたのだろうか・・・という疑問しか残らなかった。

 

 

 

「・・・随分、勿体ぶった喋り方をする。まさか、『あのこと』を喋らないつもりなのじゃろうか?」

 

今まで喋らなかった、ルヴィアさんの師匠が話した瞬間・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

しかし、それもすぐにやみ、士郎さんは本当に悲しそうな表情をしていた。

 

「話しますよ、これはまだ『前提』の話ですから」

 

「・・・どういうこと、お兄ちゃんはその記憶を見て変わったんじゃないの?」

 

イリヤは『前提』という言葉に質問した。

わたしはどこかで聞いていなかったところがあったんじゃないかと、焦り始めた。

 

「まあ、いろいろと話していたから、忘れたのかもしれないけど・・・最初に『()()()()()()()()()()()』という話をしていた」

 

凛さんとルヴィアさんは大きな声をあげて、思い出したとでも言わんばかりに手を叩いた。

 

しかし、士郎さんの言うことが正しければ・・・・

 

「士郎が受けた『試練』とはいったいなんなのか教えてくれないか?」

 

『試練』・・・それが、士郎さんが変わった要因。

ここからが、士郎さんの根幹に関わるような話のような気がした。

 

 

「まあ、とりあえずは順序立てて説明していくさ」

 

 

 

 

 

「俺は『異世界』に行ったんだ」

 

 

 




結局、士郎の過去だけで話が終了してしまいました。

『次回』はデジタルワールドの説明と、士郎の序盤の旅路を簡単に説明・・・というところまで行きたいですね。

誤字・脱字、感想等あればよろしくお願いします。

番外編に関するアンケート

  • 1.間桐雁夜に召喚されるZERO編
  • 2.岸波白野に召喚されるEXTRA編
  • 3.FGO二部を暴走して終わらせる編
  • 4.始まらないヘブンズフィール編

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