Fate/ fallen brade   作:阿後回

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第一話 『強欲』の少女

「はあぁ〜」

 

現在、穂群原学園の昼休み。

俺は生徒会室でいつも通り、生徒会長の『柳洞一成』と昼食をとっていた。

 

「どうした?溜息などついて。

またバイト先にでも泊まったとでも言うつもりか?」

 

ギクッと音が鳴りそうな顔になったんだと思う。

その顔を見て一成は大きな溜息をつき、箸を止めた。

 

「いいか、俺は何度も言っていることだが、お前はもう少し高校生だということを自覚しろ。

高校生は十時以降働いてはいけないと労働基準法にも書いてある・・・」

 

最近、一成の説教に耳が痛くなる。

この説教だって何度も繰り返したことだった。それだけ、俺が隠していることが多いのだと自覚させられる。

 

「そんなことは、わかっているさ・・・・・それでもさ・・・やらなきゃいけないことが多すぎるんだ。時間がないことはないが、目的を達成するには出来る限り全力でやっていきたいだろ」

 

「ほう、そこまでしてやらなければならないこととは、いったいなんなのだと俺は思うのだが?

・・・・・どうせまた教えてくれないのだろう?」

 

一成な一瞬、訝しげな顔になりその後すぐに諦めにも似たその言葉を言った。

 

「ごめん一成、俺は・・・・・」

 

「いや、俺も悪かった。だが、もし頼れることができたのなら言ってくれ。俺は友人だからな。少しでも衛宮の力になりたいとは思っている」

 

どう見ても苦笑にしか見えない。

まあ、俺がそれをさせている原因なのだと思うと、その行為自体は正義の味方(バカども)とは違うのだが、やはり自分も似てきているのかと不安になってくる。

 

『キャは派ハッ!!!不安にナルくらイ奈ラ喋ればイイダロ?』

 

(少し黙ってろ!!!)

 

俺の内心を知っているくせに『アイツ』は『語る』。

 

心の中で。

 

「そういえば夜に円蔵山・・・特に鍾乳洞の付近で、衛宮を見かけたと仏弟子の一人に言われた。それが何か関係しているのか?」

 

「えっと、まあそんな感じだ。

一応依頼内容については守秘義務があるから話せないが、この街でちょっとした人探し(・・・・・・・・・・)をしているのさ」

 

柳洞寺の関係者の方々のうちの誰かには、いずれ知られると予想していたので、『嘘』に『事実』を少しだけ混ぜて嘘だとわかりづらくする。

 

「人を探しているのならば人手が必要であろう。何故、衛宮は人を頼らない?」

 

結構痛いところを突いてくるな・・・

 

「さっき守秘義務があるって言っただろう。

今回の依頼人は、あまりこのことを公にすることはしたくないんだ。それでちょうど俺が雇われている『暮海探偵事務所』に知り合いがいたから、依頼人は内密に依頼したんだ」

 

まあ、あの『爺さん』の知り合いは俺なんだけど。

 

「それも守秘義務ではないのか?」

 

「ある程度なら特に問題はないさ」

 

そうある程度なら問題はない。

見つからなけれ(・・・・・・・)ばそれでいいんだ(・・・・・・・・)

 

「ある程度ならか・・・すまないこれは詮索しすぎたな」

 

一成がすぐに謝る。そんなに変な顔をしていたのだろうか?

 

「いや、いいさ。・・・・・それよりも最近また弓道部の部活勧誘が酷くてな。そっちでなんとかしてくれないか?」

 

「ほう・・・それは問題はだな。

それくらいの頼みならば、すぐに手伝ってやろう」

 

無理矢理話題をそらしても真面目に頼らせてくれる一成。

先ほどのことがあるから、少し自分が卑怯だとは思うがとても良い友人を持てたのだと思う。

 

それからは昼休みの予鈴まで、昼食をとりながらゆっくりと会話を楽しんでいた。

 

 

 

「『先輩』!

今日こそ、弓道部に来てもらいますからね!!!」

 

放課後、教室を出ようとするが、苦手な後輩『間桐桜』である。

去年、友人の『間桐慎二』に弓道部の助っ人として頼まれた際に『直接』知り合った。その時、弓道部で『そこそこ』活躍した俺はその後、結果として勧誘が酷くなった。

一成のおかげで勧誘は収まってきたが、今年から入学してきた彼女によって再び勧誘され始めた。

 

まあ、それ以前よりずっと前から(・・・・・・)彼女のことは苦手であったが・・・・・

 

「すまないが、妹が小学校から迎えに来てくれるんだ。そのことに関しては、また今度な・・・・・」

 

いつも一緒に帰っているわけではない。

探偵事務所に泊まる日の次の日は、イリヤが迎えにくることになっている。俺が探偵事務所に泊まることに対してのイリヤ達の譲歩のひとつだ。

 

「先輩はいつもそうです!!!

なにかにつけて私の勧誘を断って、バイトや妹さんの相手ばかりして・・・バイト休みの日くらい、私のお誘いにものってくれたっていいじゃないですか!!!」

 

おい、どこで手に入れたその情報・・・

 

『メん倒クサイなこの女・・・』

 

(おいっ!?そんなこと言うな!!!)

 

この後輩は無駄に感のーーーーー

 

「なにか言いましたか。せ・ん・ぱ・い?」

 

『(ヒイッ!!!)』

 

背後からの寒気は、間桐から発生しており俺に対して理不尽な怒りが向けられる。

あの洋館で慎二と一緒に不気味な日記帳を見たときと感覚が似ている。

 

「いっ、いえ・・・なにも言っておりません!」

 

その時のことを思い出しそうになり、つい背筋がピンとなる。

 

「む・・・なにか怪しいですが、まあいいでしょう。それでは、先輩。私の勧誘・・・ついてきますよね・・・・・」

 

満面の笑みを浮かべて、彼女は言う。

もうこれでは、自分は断れない状況にまで追い詰められたと言ってもいい。

こんな恐ろしい状況でも、俺には救いの手が差し伸べられる。

 

「間桐後輩、すまないがここは帰ってくれないか。

衛宮にも衛宮なりの事情がある。また今度、出直してきてくれないか」

 

『NICE!!!NICEダ、ホモ眼鏡』

 

言っている言葉には悪意があるが、『奴』の言う通り丁度いいタイミングで登場した一成。

 

「来ましたねっ!!

いつもいつも先輩と私の邪魔をして・・・先輩も今日という今日は逃がしませんからね!!!」

 

「貴様の意見など聞いておらん。衛宮、妹が校門で待っているぞ!さっさと行ってやれ」

 

間桐が俺を追おうとするも、一成がすぐに道を遮る。

昼休みの時間は無駄ではなかったようだ。

 

「ありがとな、一成。それにさようなら間桐っ」

 

すぐさま踵を返し、全力で自転車置き場までダッシュする。

 

「あ、ちょっと待ってください先輩ーー」

 

「ここから先には行かせんぞ!!!」

 

背後から大声で言い争っているが、一成が作り上げたこのチャンスを無駄にしないため、決して振り返ることはなかった。

 

 

 

「ぜぇ・・・はぁ・・・ぜぇ・・・はぁ・・・」

 

「大丈夫、お兄ちゃん?」

 

今、俺を心配してくれている少女は、義理の妹の『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』。

現在小学五年生だ。

「大丈夫・・・少し息・・・を整えるから待って・・・くれ・・・」

 

今俺はイリヤと一緒に下校中である。

だが、先ほど全力疾走したことにより今は汗だくになっていた。

 

「すぅ・・・はぁ・・・もう大丈夫だ。

イリヤ、俺は自転車だけど、疲れちゃったからな、歩いて行くけど・・・イリヤはどうする?」

 

「私もお兄ちゃんと一緒に帰る!」

 

イリヤはニコッて笑ってそう言った。

だが、俺はそのときあることを思い出した。

 

「そういえば、イリヤ。

今日、なにか宅配便が届くって言ってなかったっけ・・・」

 

「あっ、あーーーそうだった。

ごめん、お兄ちゃん・・・先帰るねっ!!!」

 

そう言って走って帰って行った。

 

一体なにを買っていたのやら。

ふと、空を見上げて夕日が街を照らしている。

 

この世界は本当に幸せな世界だ。

 

今ならそう思える。

俺の家族は、きっと『幸せ』になれなかったはずだから。

 

 

 

『平オンを享受スるのハ良医ガ伏せろ』

 

「はっ?」

 

『歪むゾ』

 

ギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチギチ

 

『奴』の言葉とともに、世界が無理矢理引き裂かれるような音が鳴り、柳洞寺付近から空間自体が軋み始める。

周囲の人間達はそれにまるで気づいていない(・・・・・・・・・・)ように歩いている。

周囲の人間・・・・・いや、この状況を把握できるのはこの世界で数名もいないだろう(・・・・・・・・・・・・・・)

 

「ま・・・まさかっ!!!」

 

『キャハハハ、ソ野通りサ!!!』

 

俺はこの現象に心あたりがあった。

 

『黒化英霊』

 

『クラスカード』

 

そして・・・・・

 

強欲の剣(ツミノキオク)

 

「あの願いが叶ったとでも言うのか・・・・・?」

 

決して叶うとも思えない願い。

 

理想を捨てた男の願い。

 

とても暖かく優しい願い。

 

 

『叶ったカラ、一人増えタンだろ(・・・・・・・・)

 

「はは・・・ははは・・・・・」

 

『世界』に『(ひと)』が増える。

 

音が鳴り終わると、すぐさま俺は自転車を漕ぎ始めた。

 

『イマから以下無くて良いのか?』

 

(まずは体制を立て直す。それに今行ったら、今までやってきたことが台無しになる)

 

『奴』の考えを否定して、家へと戻る。決行は夜。

 

 

 

現在夜九寺過ぎ、イリヤは風呂へ入った頃合いだろう。

俺は夜の街を駆けていく。

それは『衛宮士郎(エミヤ)の赤い外套』ではなく、『憤怒(トモ)が扱う赤いローブ』を着ていた。

鍾乳洞には痕跡は残っていたが、誰も存在していなかった。

 

『ケケケ、急がナイ都誰かに拾和れチマうゼ』

 

(だから急いでるんだよ!!!)

 

かつて『衛宮士郎』が行ったように、昔自身が『投影』させた力を使い、放課後とは比べ物にならないスピードで駆けていく。

 

ふと、公園に光が灯った。

 

(あそこか!!!)

 

全力疾走をしたおかげで『一瞬』でついた。

そう『一瞬』遅かったのだ。

 

 

 

「住む場所をください」

 

 

 

「食べ物をください」

 

 

 

「服をください」

 

 

 

「戸籍をください」

 

 

 

「・・・・・・わたしに居場所をください」

 

たった『一瞬』で全てが決まってしまった。

 

失敗した。

すぐさま確保していればこんなことにはならなかったのだ。

 

『木ゃ葉ハハ、とっても面白イことに成っタなシロウ』

 

(黙ってろ!!!『オグドモン』!!!)

 

 

 

 

同時刻・・・・・

 

もう一本のステッキは違う『少女』と出会い契約を結んだ。その一件に気づいたのは家に帰ってすぐである。

 

 

 

 

かつて『オグドモン(やつ)』が誰かに語った。

 

 

 

かつて俺の『体は剣で出来ていた』。

 

しかし、『英霊エミヤ(おれのちから)』では『七罪(とも)』を救うことはできなかった。

 

だから、『理想(ゆめ)』を捨て、『(セカイ)』を変えた。

 

結果として、『傍観者(いまのオレ)』には『オグドモン(やつ)』がいる。

 

 

 

 




この小説の設定では、士郎君がデジタルワールドに行ったのは十三歳の時で、探偵事務所の面々とカレイドスコープは知っているが家族や友人にはとある『事情』により黙っています。
デジタルワールドに行っていた時期に平行世界の『衛宮士郎』を知っている為、『投影』等の魔術も使えるようになっています。

誤字脱字等あればよろしくお願いします。

番外編に関するアンケート

  • 1.間桐雁夜に召喚されるZERO編
  • 2.岸波白野に召喚されるEXTRA編
  • 3.FGO二部を暴走して終わらせる編
  • 4.始まらないヘブンズフィール編
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