Fate/ fallen brade   作:阿後回

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予告通り、十二月中に出せました。

今回で『過去編』終了です。


第八夜 黒く塗りつぶした真実と選択の終わり

『足止めおつかれ』

 

画面の中で、俺がそう言った・・・本当に懐かしい。あの選択がなければ、きっと俺はここに立っていなかったから。

 

誰にも言いたくはないから隠したのに・・・思い出してしまうのはなぜだろうか?

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

『久しぶり、シロウ』

 

 

白く染まった大地。草も花もなく、空も海も、太陽でさえないのに、この空間は白く塗りつぶされている・・・唯一、色がついているのは彼女だけだ。

 

「・・・え?」

 

 

俺は驚いた。そう笑った彼女・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『ふふ、やっぱり驚いた』

 

先程のにこやかな笑いとは違った、悪戯が成功したことを喜ぶ子供のような笑い・・・それを見たとき、『師匠』だと感じてしまう。

 

・・・だけど、

 

「あんたは死んだはずだ。あのとき、あの場所で、妹を・・・ブランを庇って、()()()()()()()()。なのにどうして俺の前に現れた?・・・本当は何者だ?」

 

・・・そう、確かに『色欲の試練』で死んだ。俺自身死んだ人間と会う方法は知っているが、ルーチェモンがそれを否定した。目の前にいる人物はノワールではないはずだ。

 

『・・・それもそうね、でも『私』は『シスタモン・ノワール』で『あなたの師匠』で間違いないと思うわよ』

 

予想通りの反応・・・というふうに彼女は笑う。そんなところも似ていて、その言葉を信じそうになるが、『七大魔王』に殺されたデジモンはデジタマに戻ることなく消滅することを俺は知っている。

 

そもそも、俺の最後の記憶はオグドモンと戦ったところで終わっている。ここが死の世界でない限り、

 

『・・・()()()()()()()()()()()()()()()()?』 

 

 

「・・・ーーーツ!?」

 

 

彼女は俺の考えたことを先読みした。

 

『嫌になるわね。そんなふうに考えられているなんて・・・こんなことをしなくても、あんたの考えていることぐらい簡単にわかるわよ』

 

ニヒルに笑う口元・・・それが俺をさらに混乱させる。

 

ノワールに似ている・・・いや、本人だと思うほど行動が同じに見える。

 

『・・・そんなに信じられないかしら?

ううん、当然ね・・・私自身が思っている以上に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

俺は唖然とした。

彼女の一連の行動がノワールと同じすぎるからだ。

 

「本当に何者だッ!?・・・七大魔王のデジモンに殺された者は転生することもできず、存在ごと消えて無くなるはずだっ!!!」

 

七大魔王の一体で、かつては天使であったルーチェモンに話を聞いたんだ・・・それを証拠も無しに嘘と決めつけることなんてできない。

 

その言葉を聞いた彼女は、どこか納得した様子で手に拳を置いた。

 

『・・・そうね、そうだったわっ・・・そんなこと確かにあったもの!!!』

 

快活に笑う彼女・・・しかし、俺は苛立っていた。ノワールの死(俺の絶望)は『そんなこと』で片付けられるものではない。

 

「・・・テメェッ・・・ーーッ!?」

 

俺が怒りに任せて殴りかかろうとしたとき、目の前に奴の顔が急に現れる。そんな俺を見て、心の底から嬉しそうにしながら、俺の唇に指を静かに当てる。

 

『ふふふ、何怒ってんの』

 

そんなふうに嬉しそうに笑った彼女。そんなに俺を怒らせたいのかこの存在は・・・?

 

『・・・まあ、あんたの考えてることぐらいなんとなくわかるから、なんとも言えないんだけどさ』

 

いくら夢の中の存在だとしても、ここまで苛立たせるのはどういうことなんだ?

 

『・・・ああ、なんだろう。ちょっと嬉しいって思ってしまうのは何だかなあ・・・?』

 

・・・何かがおかしい。

喉に吐き出しそうなほどたまった違和感が、俺の中で黒く渦を巻いている。

 

 

『たぶん、今のあんたに何を言っても、本人だって信用されないと思うから・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

・・・真実?

 

 

『そ、真実・・・とっても残酷で、とっても無意味な、とっても『愛』がない真実よ』

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

ねえ、シロウ?

 

なんでオグドモンなんて居ると思う?

 

罪を消す為?・・・そんな抽象的な話じゃないの。

 

 

答えは案外簡単なものよ。

 

 

 

 

・・・()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

それが目的。

 

 

 

なんで、そんなことをするのか?・・・だって?

 

 

うーん、これは今のデジタルワールドができる前の話なんだけど、

 

 

・・・ずっと、ずーっと昔には、私たちデジモンは生まれてなくてね。それよりもずっと前から暮らしていた存在がいたの。

 

 

・・・そう、デジノームみたいな存在がたくさん住んでいたの。

 

 

でもね、今のデジモンみたいにはやく進化するわけじゃないけど、一部の存在たちは進化を遂げていった。

 

 

そのことに危機感を覚えていた存在が『旧世界の神・ホメオスタシス』。

 

 

彼はそのことに危機感を覚えて、『進化』がもしも危険だった時のために対策をしはじめた。

 

 

まず、最初にイグドラシルという神を創り出した。

そして、イグドラシルの役目として『進化していくものへの統治と粛清』を任せたの。『進化していくもの』・・・これは、現在のデジモンへの古い呼称だったものよ。

 

 

次に創り出したのが、『デリーパー』と『オグドモン』、そして『Xプログラム』。どれもデジモンを殺すために創造されたものであり、対デジモン兵器として封印されたのよ。そしてその場所を隔離するために創られたのが『ダークエリア』と『ファイアーウォール』。そしてその番人として、当時最も力を持っていた『グランドドラクモン』に任せることにした。

 

 

・・・しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

進化するにつれ、デジモンたちはさらに進化する(つよくなる)術を探し始めた。最初はゆっくりと数十年かけての進化であったものが、道具を使うことでその時間を短くすることができることがわかり、道具を使うものの権利についていざこざがはじまった。

 

そのなかで、グループをつくり、それが集まり国となり、国同士の戦いとなって、戦争へと変わっていった。

 

 

そのなかで登場したのが『ルーチェモン』。ルーチェモンは六人の仲間と共に、戦争をもう行わないように世界を統治していった。

 

 

最初は順調だったわ・・・みんなが幸せになるようにルーチェモンも仲間たちも一生懸命になって国策に取り組んだ。

 

 

 

 

本当に残念よね・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

滅んだ理由は簡単よ。

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

デジモンの進化が頻繁に起こったことにより、対デジモン兵器として作られた存在である『デリーパー』が暴走。デジモンの世界はほとんどが壊滅・・・ルーチェモンの仲間は全員死に絶えたわ。

 

 

・・・・・グランドドラクモンは?

 

 

なんとか生き残ってはいたけど、戦後に後継者に力を渡して死亡。その後継者が新しくグランドドラクモンへと進化したわ。

 

 

ルーチェモンは仲間の死骸を背負って、イグドラシルの元へと向かったわ・・・もうこんなことが二度と起きないようにすることはできないのかってね。

 

 

・・・もはや、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

イグドラシルはそのことを憂い、世界の真実をルーチェモンへと教えたわ・・・ただの統治するだけの機械だったイグドラシルさえも哀れんでね。

 

哀れよね・・・世界が平和になるように行動していたルーチェモンが滅びへと向かう方へと、デジモンたちを誘導したのだもの。

 

それでもルーチェモンは諦めなかった。

 

 

 

 

そして、その答えが『対デジモン兵器の完全封印』。

 

 

ルーチェモンと六体の死骸を使うことにより、これから作られる()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

・・・結果として、ルーチェモンは『傲慢』へと堕ち、多くの戦争を引き起こしたわ。

 

戦争の理由は、仲間や民を殺した兵器を創り出した『神』への復讐。ルーチェモン自身、たとえ、この身が狂おうとも決してホメオスタシスを許すことはなかったわ。

 

ホメオスタシスを命と引き換えに完全に力を奪い取ったわ。

 

・・・その結果、魔王デジモンやそれに与する者のダークエリアへの封印。

 

 

でもね・・・このおかげで、新たな進化やデジモンたちの意識が変わったりもしたり、いろんな良いことが起こったのよ。

 

まず一つ目は、デジモンたちがルーチェモンという一体の王に仕えるのではなく、いろいろな思想や派閥を持ったことね。

 

このおかげで、いろいろな環境で進化することができるようになったわ。なかでも、神と呼ばれるデジモン・・・シロウの知っているユピテルモンやウェヌスモン、記録に出てきたチンロンモンやスーチェーモンみたいなデジモンが現れたことね。

 

神デジモンたちは知能が高かった。

 

そのことをイグドラシルが考え、各地域の統治の権限を委任したの。この統治にかかる負担や経験により、デジモンたちの新たな進化への道が開かれたの。

 

二つ目は、自力の進化ね。

昔は道具を使った進化が主流だったけれど、戦争の中でデジモンたちが必死になって戦ったことにより、自力で進化できるように変わっていったわ。

 

 

三つ目は、ホメオスタシスによる脅威の可能性が低くなったことかしら。

ルーチェモンの対抗策は、デジタルワールドを変えたわ。ホメオスタシスの考える旧世界の存在よりも、今生きているデジモンたちがまともに生きていける環境を作り上げたの。それまでは、オグドモンやデリーパーによる脅威はガラ空きで、いつ目覚めるかわからない化け物をホメオスタシスは放置していたんだもの・・・イグドラシルに裏切られて当然だわ。

 

 

・・・そして、何より変わったのは、

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

イグドラシルは哀れみ以外の感情が浮き彫りとなり、これ以上のホメオスタシスがしてきたものを壊していくことを誓った。

 

まず行なったのはホメオスタシスがまた力を取り戻さないように、ルーチェモンが破壊したデータ(もの)を必死に集め尽くして、徹底的に世界の管理権限を奪い尽くした。このことで、神と呼ばれる地位を絶対とした。

 

その次に行ったのが、封印の絶対化。

デジタルワールドがこれから生み出す並行世界のシステムをすべて利用し、封印しているデジモンの魂・・・通称管理者の強化・・・その後、倒された場合並行世界へとバックアップとして、デジモンの力をそのまま並行世界の管理者へと移動させる。

 

これにより、封印の力を維持させることに成功・・・その後、()()()()()()()()()()()

 

 

・・・封印の強化について?

 

わからないって?

 

・・・・・たぶん、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

何、泣いてんのよ。

あんたがそんな顔でどうすんの・・・私はそんな顔されたって生き返るわけでもないのよ。

 

・・・ちょっと、酷いとは思うけど、それでも必要なことだったのよ。

 

イグドラシルは対デジモン兵器への警戒から、デジモンたちのこれ以上の進化への危険性を鑑みて、いろいろな行動を起こし始めたわ。

 

最初に、デジモンたちがこれ以上増えないように、卵に転生するシステムを創り出した。これは、封印されたオグドモンのこれ以上の強化を防ぐためね。

 

 

・・・なぜかって?

 

オグドモンの能力の最たるものは『悪感情を持つ存在の攻撃の無効化』・・・それがいったいどんな感情であろうとも、オグドモンに対する敵意が有れば攻撃を無効化してしまうの。ホメオスタシスはデジモンのことを余程脅威と思ったのか、決して倒されないように感情が明確な存在に対して、絶対に倒せない化け物を創り出したわ。

 

・・・知ってるわよね。どんなに究極体が束になろうと、傷一つつけられなかったものを見たんだもの。

 

 

・・・そんな存在どう戦えばいいのかって?

 

 

イグドラシルはね、それができなかったから封印したのよ。

 

 

ねえ、唐突だけどなんで『人間』をデジタルワールドに召喚してまで、人間に頼っていたかわかる?

 

ロイヤルナイツという私兵や天使型デジモンだっていたはずなのに。

 

なんで弱い『人間』なんかに頼ったのかしら?

 

 

・・・わからないわよね。

生きていた頃の私の唯一の疑問だったわ。

 

 

なぜ、デジモンは強さを求めるのか?

 

なんで、デジモンは戦い合うのか?

 

どうして、シロウが巻き込まれなければいけなかったのか?

 

 

 

・・・・・答えは簡単なものだったわ。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

感情を持ったことで、かつての戦争の直接の原因となった対デジモン兵器を蘇らせないように、これ以上のデジモンが繁栄するのをイグドラシルは否定した。

 

だから、ある程度世界に影響を与えるほどの力と危険な思想を持つデジモンをのさばらせて、危機が訪れたら人間を頼る・・・そうすることで、デジモンの数の全体数を減らし、新たなデジモンが生まれたとしても、オグドモンがそう簡単に復活できないようにしたの。

 

人工で造られたデジモンに関して言えば、不安要素であったがために、人間に対してものすごく警戒をしていたわ。

 

大門大の世界や龍野ツルギの世界で、イグドラシルが動いたのも、警戒故の行動だったのよ。

 

・・・・・耳を塞がないで、シロウ。あんたは現実を知らなきゃいけない。決して目を逸らさないで、あんたが傷ついているのは私が一番わかっているから。

 

 

・・・そう、それでいいのよ。

歴史はあんたの感傷なんて関係なく、わたしたちに悲しみだけを伝えていくんだから。

 

その後はしばらくはある種の平和が続いた。

デジモンたちが争い合い、小競り合いのなか進化を促し、強い者が世界を手に収めようとしたら人間が倒して、卵へと還る。

 

唯一のイグドラシルの誤算は・・・

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

人間たちの前に立ちはだかるのは、ただ力をつけて粋がっている雑魚ども以外にもいたの。

 

七大魔王たちはさまざまな理由で、人間の前に立ちはだかったわ・・・記録を見たでしょう?

 

かつての英雄たちも含め、多くの並行世界で七大魔王デジモンたちは殺されていったわ・・・もちろん、対抗策は発動していた。

 

・・・それでも、()()()()()()()()()()

 

どんどんデジタルワールドのデジモンたちは進化していったわ・・・そのせいで、どうなるかも知らずに・・・・・

 

七大魔王のによる封印は緩み始め、デリーパーの封印が解かれたことにより、災害が巻き起こる世界が現れ始めた。なんとか、松田タカトの存在によってデリーパーは消滅・・・並行世界も含めた、デジタルワールドは救われたわ・・・一見ね。

 

松田タカトの存在する世界のデジモンたち外急激な進化したことよって、封印に更なる負荷がかかり始めたわ。許容量(ストレージ)は限界寸前。封印はとうとうパンパンまで膨れ上がってしまった。

 

 

そのときにイグドラシルは決意をしたの。

 

・・・大々的なデジモンの間引き、

 

 

『プロジェクトアーク』を。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

デジモンを間引きしていたのも、デジモンが生き残るために行っていたことだったから、イグドラシルは決して愛していなかったわけではなかったわ。苦渋の決断だったはずよ。

 

それでもイグドラシルは決行したの。並行世界全体のために、一つの世界を犠牲にする覚悟をしたのよ。

 

それでも、結果はお察しの通り・・・デジモンたちは、神さえ乗り越えて、死に打ち勝ち、勝利した。結局のところ、人間とデジモンの手によってその計画は破綻してしまった。私たちだって生き残りたかったんだから、たった一柱の神によって明日の生死を決められたくはないから、納得はできるのだけれどね。

 

 

 

だからイグドラシルは、最終手段に出たのよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オグドモンを遠く離れた人間世界へと行かせることを・・・・・

 

 

 

・・・つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

ようやくわかったみたいね。

あんたは自分の世界を滅ぼして、並行世界も含めたデジタルワールド全体がオグドモンから生き残るための生き餌としてここに連れてこられたのよ。

 

 

 

・・・泣きたい気持ちはわかるわ。嘘だって言いたい気持ちも、この世界のために一生懸命頑張ってきたのも見てきた。

 

 

 

・・・だけど、これが真実。

この計画は、他世界の管理者すらも騙すことを決意した、イグドラシルによる最後の、最悪な、最終手段よ。

 

 

貴方がいくら泣いたとしても、貴方がこの世界に来てしまったこと自体が、『貴方の選択の間違いよ』。

 

 

 

・・・ねえ、シロウ一つ命令(おねがい)があるの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『かえりなさい』

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・悲劇だ。

 

今まであの人たちみたいな英雄になれるなんて、ずっと甘いことを考えていた。

 

自分の愚かさに耳を塞ごうとしても、『彼女』は震えたその手で俺の腕を掴み続ける。

 

俺は俺はと考えるたびに、ただ何もできない無力さだけが残っていった。

 

そんなふうに考え始めたら、耳を塞ごうとしていた腕の力が抜けていたことにようやく気がついた。

 

『彼女』は俺をそんな俺を抱きしめて、ただあの頃ように一言だけ命令した。

 

 

 

・・・・・かえりなさい。

 

 

その言葉を言った時、俺はすんなりと『帰るか』と考えてしまった。もう、英雄になんて憧れを抱いていないし、正義の味方になりたいわけでもない。ただ、非常にあの人たちに会いたくなった。

 

 

 

 

そんな時だった。彼女の体が震えていたことに、その時ようやく気がつくことができた。

 

 

小さな腕で俺を震えながらも抱きしめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい」

 

 

 

こんな選択をする俺を『許してください』

 

 

 

「・・・その命令だけは、聞くことはできない」

 

 

震えた声で俺はそう言った。

 

どうぞ、憎んでください。

 

呪ってください。

 

恨んでください。

 

 

 

貴女が与えてくれた救い(メイレイ)を、選択(むげ)にしかできない俺を許さないでください。

 

 

 

『・・・そっか』

 

 

彼女は抱きしめている両手を、そっと俺の顔へと当てる。

 

 

 

「『ーーーーーーーーッ』」

 

 

・・・たった数秒の口づけ。

 

ただ、しょっぱさだけが口の中に広がっていく。

 

 

『・・・ごめんね』

 

 

唇、両手・・・彼女は泣いた顔で自らを少しずつ遠ざけていき、口を開けてそう言った。

 

 

 

 

 

 

『こんなことしかできない私を許してとは言えない』

 

 

 

 

 

『・・・ただ、私は』

 

 

 

 

 

 

『貴方のことを愛しています』

 

 

 

 

 

 

彼女は消えたなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

デジモンたちは地に付した。

俺はオグドモンを無理矢理天空へと連れて行く。

 

 

『グラドゥス』

 

 

「ーーーーッ!!!・・・ファイヤーウォールが一撃でヒビが入るとは思わなかったよ!!!」

 

 

オグドモンのシステム界(足場)はもう崩壊寸前、俺自身の足場を(デジメモリ)先ほどの技の振動がまるで地震のように揺らしている。

 

オグドモンを無理矢理天空へと連れて行った方法は、システム界を足場にしてファイヤーウォールでオグドモンを包み込んで簡易的に封印、その後デジメモリに乗ってそのままロケットのようなスピードで空を飛んだだけである。

 

 

「チェンジ」

 

 

デジヴァイスの形を変形させる。

 

イグドラシルの力が詰まった聖なるデヴァイスだ。これを使うことによってオグドモンの動きが()()()()()()()

 

 

「デジソウル」

 

 

ファイヤーウォールをデジソウルで覆い、さらに壁を作る。

 

 

オグドモンはさらに力を加えて暴れだす。

 

 

ファイヤーウォールもデジソウルの壁も崩壊寸前まで追い詰められる。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

デジモンたち《パートナー》にも嘘をついて。

 

 

多くのデジモンを見殺しにして。

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

やるしかない。

 

 

やるしかないんだ!!!

 

 

 

 

『体は剣で出来ていた』

 

 

・・・そう体は剣で出来ていた。

決して折れることのない剣を収めるための鞘を、体に何年も埋め込まれていたんだ。その体はすでに剣へと変わっていたんだ。

 

 

 

『器は崩れ、世界は朽ちた』

 

 

折れないにも限度はある。

世界ごと腐り堕ちれば、どんな剣であろうが盾であろうが、朽ちてなくなるのは当然のことだ。

 

 

『行き着く先に希望なく』

 

 

正義なんて語るんじゃなかった。

俺は何一つさえ守ることなんてできなかった。

 

 

『すべからく無意味へと還る』

 

 

夢なんて語るもんじゃない。

現実は救いなんて存在しない。

 

 

『傍観者は一人常闇の城に終焉を齎す』

 

 

ごめん、何一つ約束を守れなかった俺でごめん。

 

 

『差し伸べる手を退けて』

 

 

 

それでも、

 

 

 

 

世界を救うために(unlimited blade works)

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

 

詠唱を終わらせたお兄さん。

 

 

星一つない闇夜の空に、唯一灯る青い(ヒカリ)

 

 

七つの城がお兄さんとオグドモン(バケモノ)を囲んでいる。

 

 

お兄ちゃんとは違うシロウさん(お兄さん)

 

 

お兄ちゃんの背中は大きかったのに対して、あの背中は寂しさで叫んでいるようだった。

 

 

『なあ、『オグドモン』・・・この世界をどう思う』

 

 

その問いに答えず、オグドモン(バケモノ)は叫び声だけあげた。そして、炎の壁と光の壁を壊したは七本目の足を掲げて獣の雄叫びをあげる。

 

 

『・・・俺にはこれが地獄に見えるよ』

 

 

シロウさんへと振りかぶった足が、炎の鎖で拘束される。

 

 

『ーーー答えはそれか?』

 

 

オグドモンの八つ目の目を睨みつけるお兄さん。

 

 

・・・そこにあったのは涙だけであった。

 

 

『さあ、バケモノ・・・テメェには豪華にも俺が一緒に心中してやるよ(俺の人生くれてやるよ)

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

・・・それはあの時、()()()()()()()()()

 

 

『教えてやる、この『固有結界』は無限の剣を模倣し、創り出す。神の祭具だろうが悪魔の片手剣だろうが、竜殺しの大剣だろうがな。ここまで言えばわかるだろ・・・()()()()()()()()()()()()()()()()ッ!!!』

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

その剣全てが突き刺さった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。本物は突き刺さらなかったのに、偽物が突き刺さったことに疑問を抱いた。目の前の映像の中で、偽物が突き刺さっていることにオグドモン(バケモノ)も動揺しているのかもがき苦しんでいる。

 

 

『動揺しているようだな。テメェが効かないと思っていた武器が直接突き刺さっているんだ・・・疑問に思わないわけがない』

 

オグドモンはもがき苦しんでいる。

 

『テメェは自身に対して向けられる『悪意ある攻撃を無効化する』』

 

 

ーーーー『オーラーティオ・グランディオロクア』ーーーーッ!!!

 

 

『・・・でもな』

 

お兄さんへと焦点を当て、最後の力をを振り絞るように空間を破壊し始める。世界を・・・空間さえも破壊しようとする攻撃でもお兄さんは(ケン)を落とし続ける。

 

 

『・・・俺の中にあるのは』

 

 

 

 

『自分が今まで行ってきたことへの後悔だけだ』

 

 

 

そうして、世界はヒカリに包まれた。

 

 

 




・・・今回で過去編終了です。
ほとんど説明回のようなものでしたが、後書きでもっと説明するんで詳しく知りたい人は『活動報告』にて、お願いします。

また、『活動報告』を明日の夜までにだすんで、アンケートはそれを出したら終了させます。

番外編に関するアンケート

  • 1.間桐雁夜に召喚されるZERO編
  • 2.岸波白野に召喚されるEXTRA編
  • 3.FGO二部を暴走して終わらせる編
  • 4.始まらないヘブンズフィール編

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