篝火システムが大衆に知れ渡った時代がある。
ロスリック
薪で休むと、いつの間にかエスト瓶の量が回復していたり、武器の耐久度が直ったりするが敵もまた生き返る。
また、ある篝火からある篝火へ転移する事が出来たり、武器防具・アイテムを収納することも可能だとか。
ならば、ロスリックの時代に住む人間全員が篝火システムを使えば楽になるのでは? と考えた人もいるだろう。
確かに、周知の事実となった篝火を。使えるのは生きている者。あるいは「灰」、あるいは「生き延びた人」。
生き延びた人は大抵何かしらの力を持っていた。
ある者は信仰を。ある者はその聖女の監視を。
ある者は魔術を。ある者は「灰」を待つために。
何も時別な力を持っていない者は全員死に、亡者と化して今でも動き続けている。
便利過ぎる篝火、それは一体何なのだろうか。
そのアイテムを持っていなかった世界線、その武器を持っていた世界線。それらが交わるような、一種の交信の触媒か。
俺はある日突然、何の前触れも無くこの世界の今でも分からない場所で寝ていた。
...寝ていた、というよりも意識を失っていたというのが正しい表現か。
詳細は省くが、俺はファランの不死隊と呼ばれる組織に招待された。
不死?俺が?
冗談じゃない!俺は一般人だ!死ねば終わりなんだ!
最初は抵抗した。言葉で。態度で。行動で。しかし、いずれも受け入れて貰えず、隊長と呼ばれていた奴の横にいた杖を持った女に、突然、青い槍のようなもので心臓を撃たれた。
痛みは感じず、ただ身体が冷たくなってきたような感覚と睡魔に襲われて、ただ緩やかに地面が目の前に迫ってきて、目が閉じていく。
俺は、奴らを呪った。
人殺しが! お前らが不死だとしても俺は不死である訳が無い!
お前らの思い込みが俺を殺した!!!
悔しかった。
ただ、何故か諦めがついた。
見知らぬ土地に飛ばされ、即死せずに死に方こそ最悪なものの、痛み無く死ねた。
幸運など無いこの身にただ一つ訪れた唯一の幸運か。
世界を、目の前の奴らを、そして自分を呪いながら。
ゆっくりと死が後ろから歩いてきているような音を聞きながら。
俺は死ぬ瞬間に、何故だろうか。脳裏に一つの記号?マーク?ルーン?俺には分からないが。
逆さ吊の模様がはっきりと見えた。
死ぬ間際だから、これでも思ってろって事か?
まぁ、どうせ死ぬんだ。何を考えても一緒だろう。
そして、俺は不死になった。
その後の事ははっきりとは覚えていない。
ただ、激情に任せて隊長と呼ばれていた奴を殴り、横にいた女にしこたま青い槍で貫かれて死んだ事ぐらいか。
あれから俺は不死隊の一員となり、大剣と慣れない左手の短剣を操りながら『深淵』と呼ばれる異形を狩り続けた。
ムードメーカーとしてふざけた事を言いつつ、周囲の士気を上げつつ俺は違和感を感じていた。
何かが違う!
どうやら俺には奇跡や魔術と呼ばれるものが使えない事が判明した。
奇跡を使うには信仰、魔術を使うには理力が必要だと。
俺はどちらにも才能が無かったらしい。
理力・信仰ともに0だとか。
隊長は珍しいと言った。だが、俺には腕があった。
筋力は上がらないだろう。技量を上げよう。
そう考えてからはずっと技量が上がるように訓練しつつ、深淵を狩った。
最初の頃は憎んでいた隊長達とも今では仲が良い。
一緒に酒を飲む程だ。
俺は天井が見えない違和感と、技量を上げつつ隊長達と馬鹿をやりながら魔術師にソウルの槍で貫かれて、アンバサと呼ばれる聖職者に癒やされて、深淵を狩る。
ずっと、そんな日常が続くと考えていた。
ある日突然、深淵に呑まれるまでは。
これは、そんな俺達の夢だった話だ。