小林ベース   作:アイツ

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大学にも慣れたし、ssでも書こうかと思ったら就活が始まりました。


ギターの清水とギターの清水

ギターの清水

 

福岡はうざいし、レポートは終わらない。となりの笹川は余裕そうに俺が図書館でかき集めてきた資料を眺めてやがる。暇なら練習しろよ。本番明日だろ! よし、ものぐさな笹川には、俺が一発かましてやらないといけない。

 

「笹川! お前本番明日だろ! 練習してこいよ!」

 

「新歓の本番は明日の14時だけど、レポートの締め切りは明日の12時までだから」

 

「うるせぇよ! なめんな! 殺すぞ!ってか変わんねえだろ!」

 

「いや、俺が手伝わないとお前終わらないよ? いちごちゃんにネチネチ言われるからな」

 

 

笹川と俺が所属してるゼミの教授は東いちごという名前で、レポートの量が多いし、学生の間違えを嬉しそうにニコニコしながらネチネチ指摘してくるクソババアだ。しかもババァのくせに若作りしやがってるし、名前も「いちご」とかいう舐め具合。笹川はあいつのことを若くしてなんたら〜とかいって崇拝してるみたいだけど、俺からしたらあんなのはただの若作りしたうんこである。今回のレポートも突然一週間前に言い渡されたといううんこっぷり。

 

それにしても笹川がしつこい。お前なんか「手伝うから」とか言っておいて、さっきから俺のレポートの揚げ足とってるだけじゃねぇーか!

早く練習行けよ! あんな機会二度とないぞ!

 

 

「くそいちごォ! あのババァは俺が食ってやるから先に行け!」

 

「いちごちゃんにネチネチ言われてる所を井上に見られちゃうんだよ?」

 

「なんなん? お前まじなんなん!? ふざけんなよ! ああ!? なめてんのか! お願いしますよ! 俺はあなた様のハーゲンダッツを買ってきますのでしばらくお待ち下さいクソが!」

 

「俺ハーゲンダッツじゃなくてアレがいい。店員さん頭の上のとこにある高そうなクッキー缶」

 

「いや、お前クッキーってお前ハーゲンダッツの方が絶対美味しいじゃん! あんなの高いだけだって! ただのクッキーだよー! ね? 今回はハーゲンダッツで我慢しよ? ね? ほら、おっぱい見せてあげるから」

 

「は?」

 

「いや、ささかわちゃん怖いって。ね? あ、じゃあパンツあげるから。ね?」

 

 

 

…………

ギター清水

…………

 

寝坊した。急がないと遅刻する。だけど、俺は急がない。

ほとんどの人は子供の頃、親や先生に「時間は守りましょうね」と言われていると思う。俺はあの時、5〜6年しか生きていなかったから、正直に信じてしまっていたが、あれから14年、この世に生を受けて合計19年という長い時間をかけて、学んだのだ。あれは嘘だ。この世には、守らなくても良い時間が3つある。デートの集合時間と、バイトの終業時間と、サークルの集合時間だ。高校時代の彼女はいつもデートの集合時間に遅れて来たし、バイトはいつもシフト通りあがらせてくれないし、サークルは集合時間が過ぎてから人か集まりだす。うん、深い。深いなぁ。

 

そんなことを考えていると、後ろから背中を叩かれた。

 

「清水! おはよう!」

 

姫川だった。

 

「おはよう。遅刻じゃん」

 

「私は普段仕事手伝ってるし、遅刻しても許されるんですよー。仕事してない清水と違って」

 

「はぁ?逆だろ。俺は普段から仕事してなくて期待されてないから、ああまたかって感じで許されるんですよー」

 

「仕事しないクズがよく吠えるなぁー。清水いつも手伝わないで笹川とかにちょっかいかけてるから、ちょっと副部長に嫌われてるよ?」

 

「ウソついちゃってまぁ。副部長は俺のこと可愛いやんちゃな後輩だと思ってますー! それにあんな可愛くて性格いい人の気持ちなんて姫川にはわかりませんー」

 

「だって清水照れて副部長にあんまり話しかけないじゃん。私の方がいっぱい話してるし気持ちわかってますー」

 

「え? マジなの? ウソじゃん……」

 

「どんまーい。かわいそうにねぇ」

 

「殺すぞ」

 

「語彙力少ないねぇ。これだからバカは」

 

「うるせぇ死ね! ってかなんでお前今日遅刻してんだよ」

 

「今の話をするために清水を待ってた」

 

「つまんな」

 

「いや、本気」

 

「え…」

 

「お前、今日トリだろ?」

 

「え? なに? 目が怖い。」

 

「福岡くんのトリ奪いやがって」

 

「え? え? 姫川ちゃん? こえ……声が完全に男子だよ?」

 

「副部長が笑顔でお前のステージ見てても、お前を見てる訳じゃないからな。奥にいる一ノ瀬さんみてんだからな?」

 

「あ、はい」

 

「どんまい。バカ。」

 

「……」

 

それだけ言って、姫川は近くのコンビニに入っていった。俺かわいそう。

 

これも全部笹川のせいだ。あいつ、俺がハーゲンダッツ奢ってやったのに宿題半分しかやってくれなかった。そのせいで昨日徹夜でレポートやるハメになり、遅刻して、姫川にあんな話をされた。

これじゃあやる気が出ない。

俺は決めた。笹川は殺す。サイゼに行ってあいつがトイレに言ってる間に、飲み物の中にツバ垂らしてやる。

 

そんなことを考えていると、後ろから足音が聞こえたので、振り返る。

ショートカットの黒髪が、踏み出す足に合わせて、リズミカルに跳ねている。笹川のことは、許してやることにした。




清水と同じく、井上も遅刻魔で仕事手伝いませんが、人懐こいので副部長から好かれています。
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