Aqoursと失われた記憶   作:ねぎぼうし

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【第十八話】Aqoursと動き始めた"蒼い輝き"

神様はどうにも僕を嫌っているらしい。

曇天で不安ではいたが、予想的中。見事に大雨だ。

だがまぁそれだけならいい。

 

「台風並みの豪雨は聞いてねぇし……」

 

曜さんの体感天気予報が羨ましい。

見るテレビもなく、知るメディアは携帯のみ。

その携帯でさえ、Aqoursとの連絡線を断つためここ数日見てない。

おかげでコンビニは閉まってるは、車は……元から通りかからないか。

まぁとにかく雨宿り不能と行動不能のセットに襲われている。

そんな僕がいまどこにいるのかというと、

 

「結局、ここかぁ……」

 

そう、室内であり誰にも迷惑がかからない場所、浦の星女学院である。

だが今は平日の昼間、玄関で雨宿りしているが教師に見つかったらもれなく鞠莉さんのもとへ直行だろう。

というわけでいつまでもここにいるわけにはいかない。

さてさて?どこへいこう?

教室は論外、窓があって人目につかない場所……。

 

「……体育館?」

 

おお!それだ!我ながらナイスアイディア!

いざとなれば倉庫に隠れられるしなにより一学年一クラスだからそうそう授業で人は来ないだろう。

よし、さっさといこう!

そう思い体育館へ向かって歩いていくが、

…………………暇。

………………ガッツだ!BAKU BAKU Wave♪

 

「変わったんなら結果出してみて♪」

 

そうだWave!変わったんだ♪

───いやなに口ずさんでんのさ僕ぅ!?

あっぶねぇ!完全に無意識だった!

ってそういやこの曲で予選だったな……。

結局どうなっt…

 

「はぁっ…はぁっ……!今のステップ!もう一回しよ!」

 

………………は?

 

「ですが千歌さん!さすがに休憩を」

「関係ない!やろう!ダイヤちゃんお願い!」

 

…………待って、シンキングタイムを下さい。

なんで体育館から聞きなれた声がするんですかね?

えっ、授業中でしょ?

落ち着いて聞き耳を立てる。

 

「千歌ちゃん、無理矢理開けてもらってるんだから倒れたら先生があとあと……」

 

曜さんの声。

うん?無理矢理?話が見えてこない。

いるのはAqours二年生と三年生、そして一ね……

 

「あれ?花丸がいない?どこだ?」

「ここずら♪」

「え?あっ……」

「盗み聞きはよくないずら」

 

後ろにいた~!

ヤバい、不登校してたから顔合わせるの気まずい。

 

「なにしに来たずら?」

「…………雨宿り。なんでいるの?授業は?」

「今日は大雨で学校はお休みずら。そこを無理を言って、Aqoursが使わせてもらってるずら」

「使わせて……じゃあやっぱ予選突破か」

「………………………………ずら」

 

なにいまの溜め?

 

「でも…………浦の星は……」

 

え?浦の星『は』?

 

「なくなっちゃう……ずら」

 

…………………………………………今なんと?

え?浦女がなくなる?

なんで?予選突破したんだろ?

まって何で!?

全く理解できない。

 

「せ、説明を……」

「マルが言えるのはここまでずら。今からは蒼輝くんに決めてほしいずら」

 

また、"蒼輝"と呼ばれた。

違うんだ。僕は雷斗だ。

そう自分に言い聞かせ、離れていく花丸を追おうとするが

 

 

────蒼輝くんに決めてほしいずら

 

「ッ!!」

 

つまり、答えは花丸ではなく、蒼輝として考えろと。

つまり、どうするのかは自分で決めろと。

花丸は暗黙にそう言ったのだ。

だが"雷斗"ではなく"蒼輝"に決めてほしいだと?

そんなの……

 

「なるようになれ、だ……」

 

そうだ。なるようになればいい。

それなら千歌のように、考える前に、

 

「ああああああああああああああああああああああっ!!」

 

動きだすのもいい。

大声を出して大雨に僕は飛び込んだ。

なぜそうしたかは分からない。

ただ、体が動いた。

何も考えられなくて叫んだのかもしれない。

途中でいきたい場所があることに気づいた。

とにかくそこへ向かって走り出した。

なぜそこへ行きたいのかは分からないままで。

 

 

走った。Aqoursが報われないのがくやしくて。

 

 

 

走った。自分が何をしたいのか分からなくて。

 

 

 

後ろから呼び止める声がした。

 

 

それでも走った。追ってきて欲しくなくて。

 

 

豪雨で何度も転びそうになった。

 

 

だけど走った。どうしても、あの場所に行きたくて────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……!」

 

ついた先は

 

 

──────最初の砂浜だった。

 

もちろん海は大荒れ。

髪も服もびしょ濡れで荒い呼吸まま海を海を見つめる。

 

「なにやってんだ僕…………」

 

考えずに来たからAqoursのことも気になるままだ。

よく分からんが浦女は統廃合。

結局、

 

「無駄な努力だったか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────そんなことないよ!」

 

後ろからの声に振り向く。

そこには……

 

「無駄じゃない!まだ、無駄じゃない!」

「ち、千歌!?それに皆も!?」

 

この豪雨のなか僕をついてきたのか!?

 

「はぁ、はぁ、蒼輝くん、速すぎ……」

 

こんな息切れしてまで…………!?

 

「ラブライブで優勝して、浦の星の名前を消えない歴史に残す!そう決めたんだ!だからまだ、無駄じゃない!」

「…………出来ると思うのか?」

「出来る!」

「いいや出来ないッ!!体育館のアレはなんだッ!!千歌が変に意地を張ってもう一回と言い出し他のメンバーの体力を、心配を、『関係ない』と切り捨てたッ!そんなやつがリーダーで優勝なんか出来ないねッ!」

「ッ!ぐぅ……ッ!!」

 

千歌が悔しそうに歯ぎしりをする。

さらに僕は畳み掛ける。

 

「その結果が統廃合じゃないのか!?いいか、はっきり言ってやるッ!お前らは異常なんだよ!」

 

僕の叱咤するような追撃は続く。

 

「勝手に拾っておいて恩人気取りか!?じゃあ聞くぞ!?僕はなんだ!?」

「蒼輝くんは蒼輝く…」

「じゃあ『津螺技 雷斗』って誰だよ!」

「誰って蒼輝くんじゃ……」

「つまり蒼輝イコール雷斗でいんだな!?だったら聞くぞ!?何故殺人犯と一緒にいられる!?」

「そ、それは……」

「統廃合を阻止して!ラブライブに優勝して!そんなことが本気で出来るとおもってたのか!?」

 

もうただの八つ当たりだった。それを分かっていながら問い続けた。

 

「綺麗事言ってりゃμ'sみたいに伝説になれると思ったか!?答えろよ()()()()ッ!!」

「………………………………!!」

 

普通星人?普通なら僕なんかを助けたりはしない。

だからそんな異常者を皮肉を込めて僕は()()()()と呼んだ。

 

「わからねぇよ!お前らはなんだ!?」

 

最後の問いかけを行う。

自分を問い続けた僕の、他人を問う質問。

叫んだ瞬間、目から零れた物は、雨と共に流された。

それは止まらず、堪えられなくて。

いつまでも続くかと思われた沈黙は、意外なヤツの一言で破られた。

 

「コイツらが何かなんて、俺にもわからん」

 

レオの言葉にAqours9人が視線を集める。

 

「分からないんだよ。俺には」

「だったらなぜ一緒にいられるんだよ!」

 

泣きながら掠れる声で叫ぶ。

その渾身の問いをレオは鼻で笑い、

 

「じゃあお前はコイツらが分からないから一緒にいないのか?」

「そうだよ!お前は違うのか!」

「お前なぁ……よく聞けよ?千歌ー!」

 

レオは近くにいるにも関わらず、遠くの者を呼ぶように千歌を呼ぶ。

千歌はすこし動揺するが聞き手の姿勢にはいる。

 

「なぁ千歌、なんで俺らの面倒みる?」

 

この……質問……って……。

 

『─────なぁ千歌、なんで僕らの面倒みるんだ?』

 

確か……。

 

「『……?困ってるから以外の理由なんてないけど?』」

 

あの時と千歌がダブって見えた。

 

「こんなゾクゾクする未知に出会ってほっておく?あり得ないだろ」

 

『な?面白いだろ?ゾクゾクするだろ?』

 

「記憶喪失なんか一旦おいておけよ。今、最っ高の輝きが見れそうなんだぜ?」

 

『肩を並べて走ったら、とんでもないものが見れそうだろ?』

『記憶喪失なんて、一旦おいといてさ』

 

「もう一回さ、」『どう?』

 

「『一緒に来ないか?』」

 

レオは……あの時の僕を……。

未知は楽しいと言ったあの時の僕を……。

 

「……統廃合阻止して!ラブライブに優勝して!そんなことが本気で出来るとおもってたのか!?…………私ね、本気で思ってた。でも、出来なかった。でも違う輝きがちょっとだけだけど、見えてきた。だから……」

 

そこで千歌は口ごもる。口では言ってるがやはり統廃合が悔しいのだろう。

今にも泣きそうなのを堪え、豪雨でかきけされそうなか細い声で呟いた。

 

「だから、まだ、足掻き続けてみたい……」

 

と。

それに呼応するように

 

「まだ!足掻きたりないの!」

「だから!スクールアイドルじゃなくなるその瞬間まで!」

「学校がなくなっても!」

「浦の星のスクールアイドルだった、って!」

「Aqoursだった、って胸を張って言えるような!」

「そんなスクールアイドルになれるよう、足掻きたい!」

「たとえ浦女がなくなっても!」

「ハッピーでシャイニーな思い出だったって言いたいから!」

 

梨子さん、曜さん……。それに善子に花丸、ルビィ。果南さんとダイヤさんと鞠莉さんまで……。

 

「蒼輝くんは蒼輝くんだから……、殺人犯だとしても……私達にとっては『なんでもできて、私達を小バカにするけど実は優しい』蒼輝くんだから……っ!だからっ!!」

 

「戻ってきてっ………!!」

 

千歌の声を聞いた僕は全てを理解した。

なぜうみさんに言い返せなかったか。

なぜこの場所へ来たがっていたのか。

さっきより涙は多く流れた。

千歌達は僕を蒼輝だと言った。

だったら黒澤の末代を恨んでどうなるんだよッ!!

自分に向かう怒りは涙に変わり、頬を流れた。

 

()()くんっ……Aqoursに……戻ってきてくれますか……?」

 

千歌の問いに顔が上げられなかった。

涙でぐしゃぐしゃになった顔を見られたくなかったから。

でも伝えなければならない。

この気持ちを伝えなければ後悔するから。

 

「あぁっ……!()()()()っ!Aqoursに戻ってやるよ!」

 

震える声で泣きながら伝えた。

もう否定なんてしない。

僕は誰だ!?

教えてやんよ!僕はっ!

 

「ほっとくと無茶するなら止めてやる!この、黒澤蒼輝がっ!!」

 

Aqoursの9人が堪えきれないように泣きだした。

 

「なに泣いてんだよ……いつも通りになっだけだろ?」

「うんっ!いつも通りにっ!」

 

千歌は泣きながら答えた。

その表情は幸せそうにわらっていた。

 

「帰ろう。風邪ひくしな。んで明日練習だ!」

「うん!コーチっ!」

「そこは蒼輝でいいよ……」

 

なんて軽口を言いながら砂浜を去る皆を追う。

僕も追い付こうとAqoursに向かって駆け出し……

 

「ん?」

 

砂浜に白い羽が落ちていた。

それが無性に気になった僕は羽を拾い、天に掲げた。

 

「羽ばたこう。……今度は皆で!」

 

いろんな思いを込めたその言葉は誰にも届かず、ただただ、景色に溶け込んでいった。

 

 

 

 

─────空には大きな虹がかかっていた。

 

 

 

 

 

 




斜めにかまえるです。
番外編含めこの話が20作目。
1話の駄文から少しは面白く書けるようになれましたでしょうか?
最終回も30話を予定しているので刻一刻と迫っています。
蒼輝くんの物語を書けるのもあと少しと思うと感慨深く……。
ここまで読んでくださってる方に多大な感謝を。
それでは次回、一週間後をお待ちください。
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