紅蓮の皇   作:Skullheart

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日常的ストーリー回です


Duel

七十四層ボス戦から二日後、事はアインクラッド中に広まっていた。ご立派に尾ひれまで付いて。

 

「軍の精鋭を壊滅させた悪魔」「それを圧倒する『爆焔』と五人の新鋭」「『爆焔』の武神と『迅雷』の女神」「ちくわ大明神」「『黒の剣士』の【二刀流】五十連撃」誰だ今の

 

因みに『迅雷』とはサチの事だ。雷が戦場を縦横無尽に走り抜ける様からそんな二つ名が付いたらしい。

あと参加したのに噂にもならない風林火山ェ…

 

そして今、俺達は七十五層の、開放されたばかりの主街区《コリニア》に来ている。

何故か。キリトのヤツが、『聖騎士』ヒースクリフと決闘するというのだ。話(本人談)によると、アスナの休暇が賭けられているらしい。字面だけ見たらブラック企業の労働争議だ。

 

だがデスゲーム攻略組トップギルド副団長となると話が違うのだろう。KoBはブラック(確信)。さらにキリトが負けた場合、キリトがKoBに加入しなければならないらしい。ますますブラ(ry

 

とにかくその試合を観戦するために来たのだが。

 

「火吹きコーン十コル!十コルだよ!」

 

「黒エール冷えてるよ~!」

 

なぁにこれぇ。

どうしてこうなった。いや、本当に。

 

「完全に見世物じゃん」

 

「それにKoB、特にヒースクリフには信奉者が多い。若干のアウェー感は否めないな」

 

ダッカーとテツオが感想を漏らす…じゃなくて。

 

「いやいやいやいや、何冷静に分析してんだよ!向こうから吹っ掛けた決闘(ケンカ)だぞ?それで金巻き上げようってんだから質が悪い。俺は今、KoBの資金源の闇を見てる気がする…」

 

ツッコミ所の多さに少しばかり呆れていると、よく知る人影がこちらに近付いてきた。

 

「おーい、リューウ!」

 

「お、リズか。お前も観戦か?」

 

「そーよ!……けど、こんなんになってるって知らなかったのよね……」

 

リズベットはアスナに誘われたらしい。なのでやはり少々戸惑い気味のようだ。

 

「良かったら一緒に観よ?武器の相談もしたいし」

 

「お、いーね!丁度新しい素材が入ったんだ!後で店においでよ!」

 

初めて連れて行ってからとても仲が良いサチとリズ。会話がよく弾んでいる。

 

「おーい、はぐれんじゃねーぞー…お」

 

人混みの中に、見たことのある人影を見つける。

 

「よう、シリカ。久しぶりだな」

 

使い魔ピナを肩に乗せた小さな獣使い(ビーストテイマー)シリカは、ナンパに囲まれて固まっている。

 

「り、リュウさ~ん…」

 

「おいおい、何だよお前?俺のシリカちゃんに手ぇ出すんじゃねぇよ」

 

「いやお前のじゃねぇ。俺のだ」

 

「何勝手に横取りしてんだよ。俺のに決まってんだろ」

 

ナンパがなにやら喚いている。別に誰のでもないだろうに。

 

「何と言われても……知り合い?」

 

「問題外だな。出直してきな」

 

「そうでもない。少なくとも出会って数分…いや数秒のお前らより関係はあるぞ」

 

「何だとぉ…?なめてんじゃねぇぞ?」

 

そう言って、男は背中から両手剣を取り出す。

 

「バッ…止めろ!!」

 

後ろにいた男の制止も遅く、男はリュウに襲いかかる。

 

ドッ

 

鈍い音と共に、男は倒れた。

 

「んなっ!?」

 

「だから言ったんだ… そいつ、『爆焔』のリュウだ!」

 

「な…」

 

「お前らもかかってくる?」

 

「え、遠慮します…」

 

さっきの勢いはどこへやら。若干遠慮気味に、男たちはそそくさと退散していった。

 

「何を…したんですか?」

 

「別に?ただ当身で沈黙させただけだけど」

 

原理はいたって単純。《圏内》ではダメージはないが、ペインアブソーバー、つまり感覚器は作動する。それを利用し、痛覚軽減率を計算に入れ脳に『当身で気絶させられた』と錯覚させたのだ。

 

「…やっぱリュウさんコワイ…」

 

シリカが何か言ったみたいだが、キコエナイキコエナーイ

 

「そんなことより、お前も一緒に観るか?一人じゃ不安だろ」

 

「良いんですか?是非!」

 

「なぁーにやってんの、リュウ?」

 

「おぉリズ。紹介するぜ。四十七層で知り合ったシリカだ」

 

「初めまして、シリカです」

 

「へぇ~、ビーストテイマーか。初めて見るな~。あ、あたしリズベット。気軽にリズって呼んで!」

 

「こんなだがマスタースミスだ。腕は確かだがその分お代は足元見てくる。クーリングオフならいつでも相談に乗るぞ」

 

「人を詐欺師みたく言うな!」

 

「よろしくお願いします、リズさん」

 

「よろしく、シリカ。良かったら今度ウチにおいでよ!サービスするからさ」

 

「本当ですか!? やった!」

 

ちらと時計を見る。

 

「おっと、もう開始十五分前だ。そろそろ入場するぞー」

 

「やっば、もう!?」

 

「ほら、早く早くー」

 

俺達は、最前列の特等席に陣取った。

 

「にしても突然決まった割にはずいぶん集まったわねー」

 

リズが感心している。

 

確かに、観客数は千人ぐらいだろうか。現実と違って一瞬で移動できる分、気軽に観戦に来られるのだろう。

 

「当たり前だよ。攻略組最強の矛と最強の盾がぶつかるんだよ?誰だって一目見たいと思うよ」

 

サチが興奮気味に返す。今まで男ども(オレら)に囲まれてきたせいだろう、かなり上機嫌だ。

 

「おいおい、ウチの『爆焔』を差し置いて最強かよ?」

 

ダッカーが冷やかす。

 

「いんや、そうでもないさ。俺は一発こそデカいが、攻撃速度はアイツより劣る。俺が一回攻撃する間に、奴は十発は打てる。ヒースクリフの方はやってみねーと分からんが、まぁ一筋縄ではいかんだろうな」

 

「でも負けるとは言わないんだな」

 

やはりケイタは鋭い。

 

最初(ハナ)から負けるイメージはするもんじゃない」

 

「やっぱあんたすごいよ…」

 

ササマルが感心したように呟く。

 

「で、どっちが勝つと思いますか?」

 

シリカが訊ねる。

 

「ん、そうだな…キリトの攻撃は確かに強力だが、全部防がれて硬直を狙われれば終わりだ。かと言って硬直しない通常攻撃し続けようとも、ソードスキル以下のスピードのそれで倒せる程ヒースクリフは甘くないだろ」

 

それを聞いた周りが少し残念そうな顔をする。理屈では分かっていても、やはりキリトを信じたいらしい。

 

「やっぱりキリトでも、アインクラッド最強の『聖騎士』には負けるか」

 

「それはどうかな?」

 

テツオの言葉に否定の意を示す。

 

「あいつは肝心な所で決めるヤツだからな。それはお前らの信じる通りだ」

 

「おー、おめぇらも来てたか」

 

今日は知人によく会う。今度はクラインか。

 

「…ドンマイ」

 

「会っていきなりそりゃねーだろぉ!?」

 

噂の事は結構気にしているらしい。

 

「…で、リュウの旦那よぉ、お前いつの間に「言っとくが『コレ』じゃねーぞ」まだ何も言ってねぇ!!」

 

『コレ』を小指を立てて暗に示す。

幸い、リズやシリカには通じていない。ジェネレーションギャップ万歳。

 

「若い男女を何でもくっつけたがるのはオッサンの悪い癖だぞー」

 

「『アレ』を小指で表現するお前も相当オッサンな精神年齢だと思うがな」

 

「…今度はお前か、エギル」

 

「お前とリズベットが見えたんでな」

 

リズにエギルを紹介したのはキリトだ。商人と職人で意気投合し、業務提携するに至る。うわーがめつい。

 

「お店はどうしたんですか?」

 

ササマルが質問する。

 

「大丈夫だ、コペルに任せてある」

 

我が弟の血涙が目に浮かぶようだ。

 

「全く…それで収入は大丈夫なのかよ…」

 

「お陰様で右肩上がりさ。最近は店が綺麗になったって、ウチを贔屓にしてくれる人も増えたしな…おっと、そろそろ始まるぞ」

 

エギルの言葉で、全員が注目する。

 

「さぁーて、世紀の一戦の始まりd『ピロン♪』…なんだよ」

 

急に来たメッセージに少々興が覚める。

 

が、しかし、その内容を見て、俺は表情を一変させた。

 

「悪い。ちょっと行ってくる」

 

「どうしたの?何の依頼?」

 

サチもこちらの雰囲気を察したようだ。

 

「《ラフ・コフ》の残党狩りだ」

 

口にした瞬間、空気が一変した。

 

笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》―――アインクラッド最悪と言われた最強の殺人ギルドは、二月ほど前攻略組を中心とした討伐隊により壊滅した。

 

しかし、運良く逃げ延びた者や未だ崇拝する者も後を絶たず、たびたび一般プレイヤーの脅威となっている。

その都度《軍》や俺達攻略組が駆り出され、牢獄にぶち込んでいるのだ。

 

「どうする?俺達も出るか?」

 

テツオが提言する。

 

「いや、あんまり大所帯で行くと気付かれるからな。俺一人で突っ込んでチャチャっと終わらせてくる」

 

『了解』

 

「お前ら後で結果教えてくれよ?本当は俺だって見たいんだからよ」

 

「感想文を三百字以内でまとめておいてやるよ」

 

「エギルてめぇ煽ってんのか」

 

「いってらっしゃ~い」

 

「頑張ってください!」

 

「おう、んじゃ行ってくるわ」

 

そう言って俺は会場を後にした。

 

 


 

 

その日の夜、俺は十一層《タフト》のギルドハウスに帰還した。結局試合には間に合わなかったため、結果をケイタたちから聞くことになった。

 

結果は、キリトの敗北だった。

 

今の彼の最強技をすべて防がれ、その上でクリーンヒットを喰らったらしい。まさに完敗だったそうだ。

しかし、彼らは口を揃えて言う。『あれはおかしい』と。

 

具体的な事は解らないが、決着の瞬間、何処か違和感を感じたのだと。

そしてただ一人、サチだけはこの違和感の正体に気付いていた。

 

「いくら何でも防御が早すぎる」

 

贔屓でもなんでもなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

高速移動で培った彼女の動体視力がそう判断したのだ。間違いはないだろう。

 

となると……ますます面倒なことになりそうだ。

 

To be continued...




書いてて思いました。
な、何も起きてねぇ…!! ほぼ全員集合させたのに…
そのせいでサブタイトルが詐欺になりました。申し訳ありません…

追記:手刀が危ないってググって知りました。いやまぁ普通に考えて当たり前なんですけどね? 一応作品の中なのでってことで、許してください<(_ _)>

追記 改めて見ると雑だなぁ……少しずつ修正していきます
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