紅蓮の皇   作:Skullheart

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何?タイトルから大体予想がつくだと?
それはね、知らない方が面白いと思っちゃうからだよ
逆に考えるんだ、分かっちゃってもいいやと考えるんだ


《Arthur》

「有言実行完了。これで一発目だヒースクリフ」

 

『………!!』

 

二対一とはいえ、初めて『聖騎士』がクリーンヒットを喰らった瞬間である。あの無敵神話が崩れ去ろうとしているのだ。

いける。このまま行けば現実に帰れる。

目の前の光景はそう考えるに値するものだった。

 

そんなギャラリーを他所に、キリトとリュウは吹き飛んだヒースクリフの様子を伺っていた。

無視出来ないダメージが入っただろう。しかし一撃だけで沈んだとは思えない。かといって無闇に突っ込めば、どんな奥の手を食らうか分からない。なので彼らは慎重に出方を伺う事にしたのだ。

 

「いやはや、お見事。ここまで追い詰められたのは初めてだ」

 

壁に背を預けていたヒースクリフは、まるで何事も無かった様にムクリと起き上がった。そして彼は至って平気な風に、ゆったりとした足取りで二人に近づいていく。

 

「なかなかに素晴らしい連携だったよ。そういえばササマル君だったかな?君達にはチームワークのプロフェッショナルがいたのだったな」

 

ヒースクリフの言葉に、リュウ達は肩を竦める。

 

「あいつを引き合いに出すなよ、あれはもう次元が違う」

 

「あのレベルになると味方の『操作』までやり出すからな。マジで訳分からん」

 

彼らの連携の高さはササマルの師事によるものが大きい。二週間の休暇中、彼の厳しい指導によって元々ソロである二人もやり取りなしで相手の動きを読み取り合わせる事が出来るようになった。

 

因みにササマル、彼とパーティを組めば全員が彼の思い通りに動いてしまうという、所謂味方の『操作』が出来る。最も、自分達が『操作』されている事には誰も気付かないのだが。

 

「そうか。ふむ、誰でも簡単に倒せると思われては困るな。君達との戦いをもう少し楽しんでいたかったが仕方ない。こちらも全力で受けて立つとしよう」

 

ヒースクリフの雰囲気がガラリと変わる。表れ出た冷ややかな殺気にリュウ達も思わず身構える。

 

「来るか……奴の《スキルバースト》!」

 

リュウの言葉に応えるように、ヒースクリフはフッと口角を上げた。

 

「お膳立てはここまでだ。【神聖剣】、《スキルバースト》!!」

 

彼が唱えた台詞と同時に、激しいエネルギーの奔流が発生する。その威力は目を開けるのも困難な程で、彼へのリュウ達の接近を許さない。

 

「────ッ!?」

 

その中心にいるヒースクリフは、剣と盾を重ねて突き立て不動の構えを以て詠唱を始めた。

 

「円卓に集いし騎士達よ!王に捧げしその魂を一つに束ね、いざ鉄壁の盾とならん!

見るがいい、最強の騎士王の力!」

 

エネルギーはやがて収束し、一つの大きな人型を形作っていく。

 

「《解放(リベレーション)》!顕現せよ、《アーサー》!!」

 

強烈な光を放ち現れたソレは、まさに神々しいという一言に尽きた。流石は伝説の騎士王「アーサー」の名を冠するだけの迫力がある。屈強そうな体躯、大きな盾、洗練された真っ直ぐな剣。もしこれが味方だったなら、どれだけ頼もしかった事か。

 

しかして現実は立ちはだかる強大な壁。これを攻略しなければ彼らの未来はない。

 

「……よし、行くぞキリト!!」

 

「ああ!」

 

二人は全く怖じ気づくことなく構えを取り、詠唱を開始する。

 

「【二刀流】!」

 

「【紅蓮】!」

 

『《スキルバースト》!!』

 

「二つの(つるぎ)に宿りし魂よ、秘めたる想いを解き放ち、俺に更なる力を!

装着(ビルドアップ)》!! 《救世の聖鎧(セイヴァー・ストライザー)》!!」

 

「紅く燃え滾る焔よ!散りゆく命に捧ぐ、怒りの雄叫びを上げよ!

解放(リベレーション)》!! 現れろ!《アレス》!!」

 

キリトが救世主の鎧を纏い、リュウが紅の魔神を出現させる。

そして相対する間も無く、リュウが素早くヒースクリフに突っ込んだ。

 

「劫火のぉッ! 鉄ッ拳!!」

 

今度は《アーサー》の顔面目掛けて拳を振り抜くリュウ。常人には見えぬ一撃。しかし彼の拳に手応えはなかった。

《アレス》の拳は頬スレスレ、紙一重で避けられていた。それに構わず次々と打ち込んでいくも、悉くギリギリで躱されるか防がれてしまう。相当な技術と度胸が必要な芸当であるにも拘らず、ヒースクリフはさも余裕綽々といった風である。

 

「そう易々と当たらぬよ」

 

「それはどうかな?」

 

だがそれも、リュウは予測済みだった。するとキリトが《アレス》の陰から、大量のソードビットを従え現れる。

 

完全な奇襲。本質的にはさっきまでと同じだが、《アレス》の超速的連続攻撃と、キリトのソードビットによる《アーサー》と本体(ヒースクリフ)への同時飽和攻撃。予測出来ていてもこの全てに対応しきるのは至難の業。

 

「おおおっ!」

 

エリュシデータがヒースクリフの首筋に迫る。次の瞬間、甲高いポリゴン破砕音がカシャン、と鳴り響いた───

 

 

 

 

 

 

 

しかしヒースクリフは健在だった。

 

「なっ……!」

 

キリトは恐る恐る振り抜いた右手を見てみる。そして同時に、言葉を失った。

 

()()()()()()()()()()()()

 

それだけではない。攻撃した全てのソードビットの反応が消えた。

バカな、あの数を一瞬で?だが奴がオーバーアシストを使った感覚はなかった。じゃあどうやって?

 

「キリト!!」

 

「!」

 

リュウの声で我に返ったキリトはすぐさま距離を取るため飛び退いた。ヒースクリフの剣をギリギリ躱し、いつでも反応出来る距離まで後退。折れたエリュシデータは投げ捨て、ダークリパルサーを右手に持ち替える。エリュシデータが消失したため、《救世の聖鎧(セイヴァー・ストライザー)》が白一色へと変わる。

 

「キリト君。君は今、どうやって自分の全ての攻撃を防いだかと考えただろう」

 

「……!」

 

ヒースクリフの言葉に息を呑むキリト。やはりまだ奥の手があるのかと警戒を一層深める。しかし。

 

「何の事はない。飛んできた蝿を払ったようなものだ。小細工など全くしていない」

 

「……何だと?」

 

()()()()()()()()()()()。それはキリトにとって衝撃的な事実だった。

 

「私のナーヴギアは特別製でね、脳と脊髄の間の信号伝達スピードが通常より30%遅くなる仕組みになっている。所謂リミッターというやつだ。そしてそれは、私が《スキルバースト》を発動すると同時に解除される」

 

「それじゃ、まさか────」

 

「そう、これが私の本来の反応速度なのだよ」

 

その瞬間、《アーサー》の剣が《アレス》の左腕を抉り取った。

 

「……!? チィ!」

 

リュウはすぐさま反撃に転じるものの、《アーサー》の超次元的なスピードは攻撃どころか触れる事さえ許しはしなかった。

 

「くっそ…!てめぇホントに人間か!?」

 

「人間だよ。君達と何ら変わらない、ね!」

 

《アーサー》の盾が突き出して来る。それを受け流し、カウンターで素早くジャブを繰り出したが、

 

「止まって見えるよ」

 

その腕を掴まれ、腹部に蹴りが入る。そしてノックバックでよろけた所を。

 

「終わりだ」

 

右下腹部から左肩への逆袈裟斬り。身体を両断された《アレス》は儚くもポリゴンと共に消滅していく。

 

「うぉぉぉぉ!」

 

その間にヒースクリフの背後に回り込んだキリト。一見無防備な背中へ突きを放つ。しかし、

 

「!!」

 

逆手に持ち直されたヒースクリフの剣が難なく受け流してしまった。空間認識力、反応速度、剣捌き。どこを切り取っても死角が無いヒースクリフという化け物に、背中越しでありながらキリトは戦慄した。

 

「君達は【二刀流】が【神聖剣】へのジョーカーと考えていたのだろう。果たしてそれは正解だ。だがしかし───」

 

ヒースクリフはキリトに振り向き、

 

「相手が私でなければ、の話だ」

 

《アーサー》の十字盾でダークリパルサーを叩き潰した。

剣を失った事により《救世の聖鎧(セイヴァー・ストライザー)》が砕け散る。

 

「さらばだ、キリト君」

 

止めとして振り下ろされる、《アーサー》の無慈悲な剣。避けるために身体が反応できるタイミングはとっくに過ぎている。剣も盾もないこの状況、まさしく絶体絶命だった。

 

(俺はここで……死ぬのか────)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だめええぇぇぇぇぇっっっ!!』

 

その瞬間、飛び出して来る二つの影。リュウではない。間に合う筈がないからだ。

その影は二人でキリトを突き飛ばし、剣が振り下ろされる場所へと倒れこんだ。刹那、キリトの目に彼を突き飛ばした二人が映る。

 

「アスナ……サチ………!」

 

激しい音と共に、彼女達は《アーサー》の剣に呑み込まれた。

 

To be continued…




おもいっきりヒースクリフを魔改造してやった。後悔はしていない
その皺寄せで登場して間もないのに噛ませと化すアレスくん。不憫。
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