※注意※
この話ではある人物のキャラ崩壊が酷いです。
一度サチが病んだり中二病化したり今更だとお思いかもしれませんが、今回のそれは比じゃないくらい酷いです。なのでこの先、『覚悟』した人のみお通り下さい。
───キリトはヒースクリフ、茅場晶彦と戦い、そして死んだ。死んだ筈だ。剣を胸に突き立てられ、死んだ筈なのだ。
しかし、何故か今彼には意識がある。この感覚だとまだダイブは続いている様だが、いやまずそれよりも。
「ゼーッ、ハーッ。これで50勝50敗、やりますねアスナさん」
「フーッ、フゥ。こっちだって負けてられないのよサっちゃん。さぁ、次!次!」
「お前らいつまでやんの?てかいつからやってんの?」
この訳分からない
「な ぁ に こ れ ぇ」
_ _ _ _ _ _ _
「───それで、死んじまって暇だからとにかくデュエルしまくってたと。しかも武器ないから殴り合いで」
「まぁ、生きてるのか死んでるのかよく分からないけどね……」
「でもあそこが吹っ飛んだのには驚いたよー。もうすっごい音したし」
アスナが指差す方向には、七十六層以降がキレイになくなったアインクラッドがあった。どうした事か下層から崩壊を始めており、今は十層辺りが崩れ落ちている。
今彼らは空の上、恐らく透明な床の上に立っている。現在は既に日が沈み、星が滲み出して来る頃合いだ。月明かりに照らされる浮遊城を、リュウ、キリト、アスナ、サチの四人はどこか寂しそうな表情で見下ろしていた。
「全くだ。お陰で私の《紅玉宮》も粉々じゃないか。最も、その半分は自分のせいだがね」
後ろから声がした。それはあまり聞き馴染みのない声だったが、その話し方は先程まで嫌という程耳にしてきた。
「茅場……」
この世界の創造主、茅場晶彦。彼は今はヒースクリフとしてではなく、白衣にネクタイといった洒落っ気の無い、本来の姿で現れている。彼は崩れ行く浮遊城を、四人とは違い無感情に、まるでそれが諸行無常の当たり前の理であるかのように見つめていた。
「───あれは、どういう?」
「比喩的表現、とでも言うべきかな」
崩れゆくアインクラッドを示すリュウの質問に対し、茅場は淡々と答える。
「現在、アーガス本社地下五階にあるSAOメインシステムのデータ削除を行なっている。それに伴い、あそこにいた生存者のログアウトは全て完了した。この空間は、私が君達と話す為に作った特別な空間だ」
「だろうな」
「……最早説明は不要か」
「サービス精神旺盛なあんたが、自分を倒した奴に対しておめでとうの一言も言わずに帰す筈がない。恐らく全員に麻痺を入れた時、死ねばここに来る設定も一緒にやっといたんだろう?あんたが死んでからそんな事する時間なんてないしな」
何の造作もなく状況を看破するリュウに、皆改めて舌を巻く。お前は一体何者だ、どうしてこの状況でそこまで冷静に頭を回せるんだ、とそんな事を言いたげな顔だった。
そして途端に、まさかとキリトが顔をしかめた。
「……リュウ、まさかアスナ達が死んだ時───」
「勿論、本当に死んだとは思ってなかったね。現に、俺はあの時『死んだ』とは一言も言ってない。確証はなかったから内心ヒヤヒヤしたけどな」
今明かされる衝撃の真実。絶望したキリトに対する最高のカンフル剤があったにも関わらず、意図的に使用を控えていた。性質の悪いドッキリを想起させるリュウの言動に、他の三人は一斉にドン引いた。
「……なんではっきり言わなかった?」
「本当に死んでた時どうすんだよ」
「あぁ……」
希望を与えておいてそれが幻想だったとなれば、それこそSAN値直葬待った無しだ。キリトが納得の相槌を打つ一方で、アスナとサチはリュウに冷めた目を向けていたが。
そんな視線を何とかスルーしつつ、リュウは茅場を見据え、キリト達三人に尋ねた。
「さて、この流れだとアイツにこんな事をした理由を問い質す所なんだろうが……こればかりは流石に理解出来そうにないし、パスするか?」
「えっ」
「確かに……思わず聞きそうになったけど、三千人以上殺す理由なんてどうせまともじゃないだろうし……」
「ちょ」
「理由聞いた所でどうするかって言っても……」
「待っ」
「まぁ、メリットないよね」
「(´・ω・`)」
四人から滅多刺しにされ、理由を語る気満々だった茅場はすっかりしょぼくれてしまう。しかしそれでもまだ足りないと、四人は更なる追い打ちをかける。
「あんな仏頂面が、素だとえらいユーモアだなおい」
「て事はヒースクリフのあれは全部演技……。何だろう、スゲーけど何故か引いてしまう自分がいる……」
「まさかの豆腐メンタル」
「……団長って、案外面白い……」
「もういい……もういいだろ!?」
茅場が心からの悲痛な叫びを上げる。これは自分達の年単位の苦労に対する、彼らからのささやかな仕返し。最初こそ生きる事に必死だったキリト達三人だが、SAOで過ごす中で心にゆとりを持つ様になった。それがちょっとやそっとの事では動じない逞しさを生み、この日まで生き残れるだけの強さを生んだのだ。
「で? その理由とやらは語らないのかい?ゲームマスターさん」
そして元からメンタルお化けなリュウはと言えば、ゆとりどころか愉悦の精神でラスボスを弄っていた。
「この流れで言わせるとは本当に鬼畜だね君は……」
「そんなに凹むって事は語るに足るだけの弁明があるんだろ? ほれほれ、時間は有限なんだ。さぁ、
うわぁ……とドン引く三人を尻目に、リュウは茅場を見下してこれでもかと煽っていく。それを仕切り直す───と言っても既にネタに塗れているのはバレバレなのでほぼ無意味なのだが───様に、コホンと一つ咳払いをする。
「何故……ね。フルダイブ環境システムの開発を知った時───いや、その遥か以前から私はあの城を、世界を創る事だけを欲して生きてきた。いつからだったかな、私がこの空想に取り憑かれたのは。それは年を経る毎に段々と大きく、具体的になっていった。現実から飛び立ち、あの城へと飛び立ちたい───それだけが私の欲求だった。私はね、今でも信じているのだよ。どこか別の世界には、本当にあの城が存在するのだと……」
その時、リュウの隣にいたサチがボソッと呟いた。
「いい話っぽく聞こえるけど、何の答えにもなってないよね」
それを聞いた三人はピキッと凍り付いた。フルダイブなので実際はない筈なのだが、リアルで血管から血の気が引く感覚がした。
彼女は茅場には聞こえないように話を続ける。
「それだけの理由で一万人閉じ込めてその内三千人死なせる事ないよね。勝手に一人で行ってくればいい話だよね」ヒソヒソ
「もうやめて!団長のライフはもうゼロよ!」ヒソヒソ
「サチ、確かに常に冷静に脳味噌を回せとは言ったが、流石に空気は───読んだ上でか」ヒソヒソ
「ぶっちゃけみんなそう思うでしょ?」ヒソヒソ
「……ノーコメントとだけ言っておこう」ヒソヒソ
幸いこのやり取りに茅場は気付く素振りはなく、彼は改めて四人に向き直った。
「改めて、ゲームクリアおめでとう。キリト君、リュウ君、アスナ君、サチ君」
「じゃ、約束を果たして貰おうか」
「約束───ああ、
リュウの一言で思い出した茅場は、これまたゆっくりと語り出した。
「……ボスの第二形態は、私が設計した物ではない。何者かが後から付与した物だ」
「───何?」
それを聞いた四人は揃って目が鋭くなった。当然である。それはつまり、この事件の裏で茅場以外の誰かが糸を引いているという事だからだ。
「……そいつに心当たりは?」
キリトが尋ねる。茅場は一瞬思案すると、茶化す様に答えた。
「一人いる…というより、私のロックを解除して且つこんな真似をする人物など、私の知っている中では一人しかいない」
「それは、誰だ?」
キリトはゴクリ、と息を呑み、尋ねた。
「それは────」
皆、一言も聞き逃すまいと次の言葉を集中して待つ。
が。
「───聞く方が野暮、という物ではないのか?」
四人は盛大にズッコケた。
「だ、団長…」
「安心したまえ、探すのにはそれ程苦労はしないだろう。何せ変態とマッドサイエンティストを足して二で割ったような奴だったからね」
「あなたがそれ言います?」
「……サチ君、マッドなのは認めるが、私がそこまで変態に見えるか?」
「少なくとも、自分のギルドに†血盟騎士団†とか名付ける位には」
「やめてくれないか(´・ω・`)」
再びしょぼくれそうになる茅場だったが流石は元最強、何とか持ちこたえ、話を続けた。
「まぁつまり、元は私が創ったボスとはいえ、私以外の人物にこの世界を好きにさせるのが気に食わなかっただけさ。それ以上でもそれ以下でもない」
そう言い切った茅場は、改めて四人を見据えて告げる。
「ではさらばだ、
茅場の言葉と同時に、キリト達の体が光り始める。この世界から消え去る時が来たのだ
その途端、アスナがキリトの腕に抱きついた。
「ちょっ、アスナ……」
「いいじゃないの、最期の時くらい」
嬉しそうに微笑むアスナと、恥ずかしそうに照れているキリト。その様子を、サチは少し羨ましげに眺めていた。
「…………」
「────お前も、行ってきていいんだぞ」
「……でも、私は────」
「最後くらい、素直になってもいいんじゃないか?お前はもう充分耐えた。お前が引け目を感じる事なんて一つもないんだよ。───行って来い。行って存分に、甘えて来い」
「リュウ……。───ありがとう」
そう言って、サチはキリトの方へ走っていった。そこには嘗て自身の無力を嘆いていた弱気な背中はなく、ただひたすら憧れた背中を追い求め、そして辿り着いた一人の少女の姿があった。
「キリトーーーーー!!」
「うわっ!? サチまで!? 全く、仕方ないなぁ……」
やれやれといった表情を浮かべつつも、キリトも満更でもなさそうだった。
幾つか話をした後、三人は肩を並べ、涙を浮かべて笑い合っていた。嬉しそうに、楽しそうに、幸せそうに、哀しそうに。
涙交じりの笑い声はいつまでも続いた。身体が消えるその時まで、抱き合い、肩を組み、目を真っ赤にして笑い続けていた──────
To becontinued…
「───で?俺だけ消えないって事は、俺にまだ何か用だって事か?」
満点に輝く星空の下。月明かりが美しい仮想世界の空の下。リュウの言葉通り、彼の体は消滅するどころか消滅のサインである発光さえ緩やかに収まっていった。
「相変わらず察しが良いね。その通りだよ、リュウ君。いや……劉崎ワールド・クリエイションCEO、
その名前が口に出された瞬間、リュウの表情が一変した。
「へぇ…?気付いてたのか、
「大地君は元気かい?
彼らの口調はまるで友人同士のそれであり、数刻程前まで殺し合いをしていたとはとても思えない。
「髪型も髪の色も、果ては瞳の色まで変えられては僕でも気付かないじゃないか」
「顔と体格まで変えてたお前が言う台詞か?……てか、それじゃお前いつ気付いたんだよ」
リュウ───巧磨の疑問に、茅場はおどける様に答えた。
「『やれることは全力でやれ。あらゆる可能性を探し出せ。それでも無理だと言うのなら、後は野となれ山となれ』……これ、君の会社の社訓だろう?」
「何で知ってんだよww ウチの社訓知ってる奴なんか外部じゃたかが知れてるぞ?」
「僕の情報網を嘗めないで貰いたいね。というか、君は会社の心配はしていないのかい?」
「大丈夫だ。磯野達は俺がいなくても上手くやれるよ」
巧磨の返答に、茅場は何故か吹き出した。確かに、二年放っといて大丈夫と断言出来るなど楽観視にも程があるのだが……
「随分な信頼だね。変わってないなぁ。覚えてるかい?高校全国模試で僕が順位を落とした時も、巧磨は必ずまた上がってくると信じてくれていた」
「懐かしい話だな、おい。ま、当然だろ?お前はそういう奴だしな」
過去を懐かしむ二人は、自然とどこか遠い表情になる。
暫しの沈黙。既に月は天頂に達しようとしている。このまま静かな時が流れるのかと思われたが、茅場の一言が突如それを破った。
「……二年の夏、君は突然高校を辞めた」
「………」
巧磨は依然黙ったままだ。それでも構わず、茅場は話を続けた。
「若かった僕が手に入れられた情報は、小さな町工場を経営する君の父親が亡くなったというだけだった。僕は寂しかったよ。今までの人生の中で、全てにおいて僕と肩を並べられたのは巧磨だけだった。親友と呼べる人間は、君一人だったんだ。そんな君が、ある日忽然と消えてしまった。僕が君を最後に見たのは、六月十七日の大雨の日だ。昨日のように思い出せるよ。あの時の君の背中は、何故か不安や躊躇が微塵も無いように見えた」
「……」
「僕はすぐにでも君を追いかけたかった。だけどそれは叶わなかった。既に僕の身体と頭脳は僕だけの物ではなくなっていたからだ。今から考えれば、君を失った反動だったんだろう。その頃から僕は一層仮想世界の製作にのめり込んでいった。そのまま六年が過ぎ───僕は新聞の一角を見て、度肝を抜かれたよ。『町工場から急発展!次世代を担うマシン・メーカー、劉崎ワールドクリエイション その敏腕若社長 劉崎巧磨』……君は僕が輝かしい道を歩いている間に、茨の道を少しずつ切り拓いていた。その経歴も、僕よりはるかに壮絶な物だった。僕が平凡なゲーム一つ創り出す間に、巧磨は数十、数百と革命的な開発をしていた」
「……あん時は地獄だったなぁ」
漸く巧磨が口を開く。その口調はどこか悲痛で、しかしかけがえのないものを感じさせた。
「親父が倒れたって聞いた時、いてもたってもいられずにすっ飛んでったよ。けどベッドで横たわる親父は、いっつも仕事の事でうなされてたんだ。あそこは親父の人生そのものだったんだよ。けどその時の工場はひでぇもんだった。社長が倒れたなら次の社長は誰になるんだだとか、もしかしたら倒産するんじゃないかとか、もう最悪の一言に尽きたさ。この工場は親父の生きがいだった。その工場が潰れるなら、その責任を従業員のみんなにだけ背負わせる訳にはいかない。だから俺は、高校も速攻で辞めて親父の工場を継いだ。お袋は何も言わなかったけど、本心じゃ高校をしっかり卒業して大学に入って欲しかったろうな。けど俺は、この道を選んだ事に一切の後悔もしてない」
「全く肝が据わっているな。聞けば、就任時に従業員を十人ほど減らしたそうじゃないか。減給も容赦なく行なったと」
「リストラした訳じゃないんだよなぁ……。あの時の俺は経営は
「大学どころか高校さえ出ていないのでは、さぞ大変だったんじゃないか?」
「そうそう、どうせ社会のしの字も知らない子どもだって何度嘗められた事か……。だからウチは頼まれた物を作る事から、自分たちで需要ある物を創っていく方にシフトしていったのさ」
「そして今では知らない者はいない若きトップクリエイター……。僕とはまるで別々の道を選んだ君が、こうして僕の創ったゲームに挑んだのも、所謂運命とかいうヤツか……」
「なら俺達が生還して、お前が自分の意識をコンピュータに
「……何もかもお見通しかい」
「昔っからゲームは報酬がミソだとか熱弁してたお前がそこんとこ抜かる訳ねーわな。それに、晶彦が大人しく警察に捕まるタマとは思えないし、ならもう肉体捨てるしか逃げ場ないだろ」
「……止めようとは思わないのか?」
「うん、まぁ……晶彦らしいかなって」
巧磨は苦笑した。彼は茅場が"死ぬ"とは一ミリも考えていない。何故なら彼は知っているからだ。茅場晶彦という男は、確実に成功すると断言できるものしか使わないと。それがたとえ前代未聞、世界初の所業であろうと、失敗する可能性を限りなく0に近づけようとする。それが彼の知る、茅場晶彦という人間だからだ。
「───それで?俺への用事ってのは?」
「………」
今度は茅場が黙り始める。その表情は、まるで何かを堪えているようだった。
「───白衣左ポケット」
「───!?」
「その様子じゃ、治ってないみたいだな?頼み事とかが性に合わないお前は、いっつもこういう時左のポケットの中で指の腹を擦る癖がある」
「全く……よく見てるな、巧磨は」
茅場は肩を竦め、漸く観念したように口を開いた。
「僕がSAOに閉じ込めたせいで、多くの人間の人生が狂わされた事だろう。命を落とした者、命を奪った者、恋人を失った者、家族を失った者。この事件で変わってしまった彼らの運命を、君達で作り直してやってほしい」
「……要は丸投げかよ。そーいうとこだぞ、晶彦。てか元凶のお前が頼む内容じゃねーだろ。もっぺんぶん殴るぞど阿呆」
「分かっているさ。だけど僕はこれからやる事が山積みなんでね。君と僕の仲だ、頼むよ」
「言われなくてもこっちゃ元よりそのつもりだ馬鹿」
巧磨の返事に茅場は一瞬虚を突かれたが、彼はすぐにニヤリと悪っぽい笑みを浮かべる。
「流石巧磨だ。優しさと強さを兼ね備えたイケメン、売れてからはさぞモテたろうね」
「残念ながら女に恵まれた事はない」
「またまた……実は現実ではカワイイ彼女が───」
「そんなものはない」
「と見せ───」
「そ ん な も の は な い」
「……そうか(´・ω・`)」
即答と断言と大事なこと(ryによって闇を察し、高校以来の親友いじりを諦めた茅場。寧ろ自分が
「で、お前が俺に頼みたい事ってのはそれだけか?」
当の巧磨はまるで気にしていない風に聞き返す。それに対し、茅場は改めて姿勢を正し、巧磨に向き直った。
「このソードアート・オンライン、そして仮想世界は僕の最高傑作であり、集大成だ。もしそれを私利私欲のために利用したり、冒涜するような事があれば、僕は絶対に許さない。だから、そういう時は僕の代わりにそいつを叩きのめしてほしい」
「……特大ブーメランおもっくそ刺さってますよー」
「それを言ってはいけない」
そのまま茅場はメニューを出現させ、操作する。その瞬間、リュウの身体が再び光り始めた。
「では今度こそ、お別れの時間だ。本当に楽しかったよ、
「ああ、こっちも楽しかったぜ───ヒースクリフ」
そう言うと、巧磨は茅場に向けてスッと拳を突き出した。茅場はフッと肩を竦め、巧磨と拳を突き合わせる。
『また会おう、
こうして、
──────眩しい。
意識が戻って初めて抱いた感想は、二年間開きっぱなしだった瞳孔の日光への反応だった。
白い視界を慣らすため、ゆっくりと瞼を開いていく。
───あいつらは、無事に目を覚ましただろうか?
そんな事を考えながら、二年ぶりの現実の感覚を確かめる。何故か体は火照っており、両鼻にはガーゼが詰まっていた。服も所々ぐっしょりと濡れているし、何より頭がガンガン痛む……。
と、その時。
「───お帰りなさいませ、巧磨殿」
「ただいま、磯野」
漸く取り戻した視覚の中、親父の代からの付き合いである、現場上がりでありながら事務仕事も難なくこなす我が社の超人COO、磯野源三が迎えてくれた。
「────これは?」
鼻に詰められたガーゼと、ベッドのシーツにまで染み込んでいる患者服の汗を指差して尋ねた。
「は、昨日十六時前後、巧磨殿の心拍数及び血圧、そして体温が急上昇しまして。体中から汗が吹き出し、おまけに両の穴から鼻血が止まらない始末。一時騒然となっておりました」
「ああ、成程……」
その時間なら、ちょうど《アレス・エンペラー》を使ったタイミングだろう。脳への過負荷が原因でまさかそんな事が起きていたとは。道理で頭が痛い訳だ。
「
「大地君は一時間程前にお目覚めになられました。あちらは体力の衰弱こそあれど、バイタルに大した不調はありません。今は検査を終え、ちょうど食事をなさっている頃合いかと」
「あぁそうか、思い出したら腹減ってきたな……。後でメシ食いに行くか」
久々のリアルフードだ。想像しただけで心が躍る。
が、その前に。俺はベッドを起こし、磯野と向かい合う。
「磯野」
「はっ」
お互いに口調を仕事モードに切り替える。
「業績は?」
「昨季は純利益およそ一三〇〇億の黒字。こちらに詳しい資料が」
「株価は?」
「午前十時の時点で八二九ドル。今現在も上昇を続けております」
「特許はいくつ通った?七つ、いや八つか?」
「十一種全ての取得に成功しました」
「パーフェクトだ、磯野」
「感謝の極み」
俺達はそれぞれ笑みを返し、読み終えた資料をデスクに置いた。その奥に置いてある時計を見る。
午前十時二十五分。
検査はすぐに終わるだろうし、午後は丸々空く事になる。
「……さて、何から取り掛かられますか?」
磯野が尋ねてくる。勿論、劉崎
「決まってるだろ。先ずは他のSAO被害者及びその家族へのアフターケアだ。
「畏まりました」
「それと幹部全員に通達。劉崎巧磨は只今を以て劉崎W・CのCEOに復帰。十五時からここで緊急会議だ。来られる奴は全員来させろ」
「仰せのままに」
命令を受け取ると、そのまま磯野は病室を出た。代わりに、彼が呼んだであろう医師達が入ってきた。これから検査が始まる。
(───これから忙しくなるぞぉ)
この二年で発展した技術の理解、事件の余波の調査、仲間との再会……
すべき事は山ほどある。その全てに心が躍る。
「さて、と」
手始めに検査を終わらせるべく、俺はゆっくりとベッドから身体を出した。
Stage:Sword Art Online All Completed.
To be continued to ALfheim Online…
【悲報】茅場、まさかのネタキャラに堕ちる。
だって原作の問答でさえ答になってなかったもんね、是非もナイヨネ!
ほら、こうすればあの不愛想な茅場も可愛く見えてくる……見えてこない?
そして相変わらずサチはどS。つられてみんなどSになった。これも全部茅場晶彦って奴の仕業なんだ。
さらに茅場と主人公、まさかの知り合い。というか元ライバル。
茅場に主人公の正体が見破られるところまでは固まっていたのですが、高校時代からの知り合いとしたのはつい最近。なので過去投稿と違和感を感じるかも……