紅蓮の皇   作:Skullheart

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巧磨「茅場晶彦が引き起こしたSAO事件から二ヵ月────
ALOは火妖精族(サラマンダー)水妖精族(ウンディーネ)風妖精族(シルフ)土妖精族(ノーム)闇妖精族(インプ)影妖精族(スプリガン)鍛冶妖精族(レプラコーン)猫妖精族(ケットシー)音楽妖精族(プーカ)の九つの種族に分かれ、混沌を極めていた!」

和人「あってるけど違う」


Re:Crimson

────この感覚は久しぶりだ。ナーヴギアに意識が吸われていくような感じ。あの世界が再び俺を呼んでいる。そんな気がする。

幾つもの神経系接続テストを終え、アカウント情報登録ステージに降り立つ。

 

ID・パスワードはSAOでも使用した長年愛用の物を流用、キャラクターネームはの二分程の逡巡の末《Kirito》と入力し、男性を選択する。

 

次に種族の選択だが、あまり執着はないので適当に、黒の初期装備であるスプリガンを選択してOK。最終確認に進む。既に習性にもなった個体情報のチェックを終え、俺は確認ボタンをタッチ。

 

すると全身が光の渦に包まれ、床の感覚がなくなる。視界の晴れたそこは完全な空中であり、刹那の浮遊感ののち落下感覚に襲われた。現在のゲーム内時間は夜らしく、眼下にはポツポツと明かりが灯った大きな街があった。恐らく、スプリガンという種族のホームタウンだろう。

 

先ずは何から始めるべきか……

そう考えていると。

 

「ん?」

 

最初は少しのノイズのようなものだった。読み込みがまだ不完全なのかとそれほど気にしなかったのだが、それは次第に拡大。遂には視界全体を覆い、身体を得体の知れない感覚が襲う。

 

「ど、どうなってるんだぁ~!?」

 

再び開けた視界が捉えたのは、木々生い茂る森の真上だった。

 

「うえぇぇぇぇぇえあああ!!?」

 

俺の身体はその上に叩きつけられ、枝がポリゴンになるライトエフェクトを見ながら地面に落下した。

 

「いててて…。どこだ?ここ」

 

見渡す限り木、木、草。ここが初期スポーン地点であるスプリガンのホームタウンではない事は明らかであった。

 

「ユイ~、いるか~?」

 

俺は、一緒にログインした筈のユイを呼んだ。しかし返事は返って来ない。彼女も同じ様な目に遭っているのか、それとも無事に街にスポーン出来たのか…。考えても仕方ないので、取り敢えずこのゲームの動作を確認する事にした。

 

先ずいつもの様に右手でメニューを───

……じゃなかった。入る前にユイに読まされた説明書には左手でメニューを開くと書いてあったのを俺は思い出す。

 

左手を縦に振ると問題なくメニューが開き、装備やアイテム、オプションと二年間慣れ親しんだ物と殆ど変わらない表示が現れる。そしてその一番下に、二年もの間全く見る事がなかった《Log Out》ボタンがあった。

 

恐る恐るそれをタッチすると、フィールドでは即時ログアウトは出来ませんが云々という表示が現れる。それを見て俺は安堵した。やはり形だけの物ではないだろう。

 

ログアウトが安全である事を確認し、メニューを閉じようとして手が止まる。

メニューを開くと大概視界の端に自分のパラメータが表示され、ALOもその例に漏れないのだが、そのパラメータがとにかくヤバい。

 

HPとMPは四〇〇、八〇といった初期値然とした数値なのだが、ヤバいのはスキルだ。

先ず《片手直剣》《武器防御》の熟練度が一〇〇〇、マスター表示すら出ている。他には《体術》や《投擲》といったものが九〇〇台、その他《釣り》六四三と何故か一つだけ生活系スキル、しかも高熟練度と明らかに初心者のソレではない。

 

「オイオイ、この構成、この数値って……」

 

俺には見覚えがあった。このパラメータは、SAOでの《キリト》の最終スキルパラメータとほとんど一致するのだ。一致しない部分というのも、【二刀流】をはじめ《隠蔽(ハイディング)》などのいくつか欠損しているであろうものとスプリガンの初期スキルと思われる《幻属性魔法》がHP同様初期値らしい数値で登録されているのみである。

 

「ここは……SAOなのか────?」

 

少しの間呆然となったが、

 

「……いやいや、ナイナイナイ」

 

瞬時に思考を切り替える。

 

「このゲームの制作会社は『レクト・プログレス』、『レクト』の子会社だ。SAOサーバを管理している須郷の部署もレクトだから、このALOがSAOのシステムを基にした……それこそコピーして作った物だとしても何ら不思議はない。あれはいろいろブラックボックスが多かったって聞いてるし、そこに俺のセーブデータが残っていて、IDとパスワードからそれが引きずり出されたならこのチート染みたステータスにも説明が付く。ここに飛ばされたのだって、SAOの最終位置情報がこの場所と一致したなら────」

 

ぶつぶつと独り言を呟きながら、状況を整理していく。どうやらリュウの色々と考える癖が移ってしまったようだ。だがお陰で大体の予測がついた。

 

「……真っ黒にしか見えない。」

 

どう足掻いても須郷が黒幕。畜生レクト絶対に許さねぇ!

 

…と、冗談はさておき、ここに留まっても何も始まらないので移動する事にした。このゲームの醍醐味である飛行については、衝動的にすぐさまダイブしようとした俺に、ユイが説明書を読むようしつこく促したためある程度把握している。

 

「ええと……確か左手を握る様な形に持って──」

 

すると、旧世代ゲームのヌンチャク型コントローラのようなスティック付きグリップが現れる。操作方法をじっくり思い出しながらスティックを倒すと、背中の翅がピンと張って身体が宙に浮き始める。

 

「おおっ!? ホントに飛んだ!」

 

自分が身一つで空を飛んでいる事に感動し、俺は驚きの声を上げた。次第に楽しくなり、滑空や急上昇・急下降など色々な事を試しながら、飛行の感覚を身体に覚えさせていく。前にこれに似たタイプの飛行系シューティングゲームをやり込んだ経験があるため、馴染むのにさほど苦労はしなかった。ただ、コントローラ式だと片手が塞がるのがネックなのだが。

 

「まぁ随意飛行はコツが要るらしいし……取り敢えず、先ずは人探しからかなぁ」

 

そう呟き、俺は周りを見渡すべく上昇して森の上へと抜け出す。折角飛行出来るのだから、森の中よりその上を飛ぶプレイヤーの方が多いのではないかと思ったからだ。そして案の定、近くを飛んでいる人影を視界に捉える。

 

「お、助かった。……ん?」

 

その影は四つ程あったのだが、それは三人が一人を追いかけている様にしか見えないのだ。

 

「う~ん……あんまりこういう所で邪魔みたいなのはしたくないんだけどなぁ……」

 

しかし、他にプレイヤーに見当たらない。俺は仕方なく、その一人と三人が降下した場所へと向かうためコントローラを動かした。

 

_ _ _ _ _ _ _

 

 

「──らな。────がす」

 

「──そうぜ!───じゃん」

 

少し離れた位置で着陸し、俺はこっそりと近付いていく。

少々距離があるため会話の全てを聞き取る事は難しいが、声色から判断するに追いかけられていた一人がいよいよ追い詰められている状況らしい。

 

「───人からかかって来なさい」

 

気合いの入った高い声。追い詰められていたのは女性だったらしい。勇敢にも最後まで抵抗する気の様だ。

 

俺は近くの木陰に身を隠し、事が収まるのを待つ。

……が。

 

「誰だ、そこにいるのは」

 

明らかに俺の方を向いていた。周りには誰もいない。

 

(────あっ)

 

失念していた。いつもの様に隠れたと思っていたが、そういえば《隠蔽》スキルは欠損していたのを忘れていた。

 

「あ~……。お取り込み中、だよな?」

 

観念してその場から出ていく。そこにいた四人は皆こちらに注目し、出方を伺っている。

 

「……スプリガンか。粗方、双方が弱った所の漁夫の利を狙ったのだろうが、残念だったな」

 

「いや、そういう訳じゃ───」

 

何とか弁明しようとするが、取り巻きと思しきサラマンダーがこちらをギロリと睨んだ。

 

「嘘ついたって無駄だぜ!スプリガンの奴等はみんな薄汚いんだ。この前だって俺達が狩ったモンスターのドロップアイテム根こそぎ掻っ攫って行きやがって…。どうせてめえもそうなんだろう、今度はそうはいかねぇぞ!!」

 

「あ、ちょっ!?」

 

そのサラマンダーは問答無用で襲いかかってきた。

こちらとしては事を荒立てたくはなかったのだが、こうなってしまっては仕方がない。やれやれと呆れながら、俺はこちらに向け思い切り突き出された、サラマンダーのランスを左手で軽くいなす。

 

『……は?』

 

周りから気の抜けた声が聞こえる。しかしそんな事は気にも留めず、俺は背負っていた初期装備の細い剣に手を掛ける。そしてそのまま、勢い余って通り過ぎてしまい背中ががら空きになったサラマンダー目がけ、渾身の居合い袈裟斬り。血気盛んなサラマンダープレイヤーは小さな炎になり、見事に沈黙した。

 

「だから、少しは話を───」

 

「こ、こんにゃろ!」

 

「な、馬鹿!よせ!!」

 

リーダーらしき人物の制止も聞かず、もう一人の取り巻きがこちらに襲いかかる。俺はその槍を振りかぶるより速く踏み込み、水平に凪ぐ。振り抜かれた剣は、そのもう一人の取り巻きを胴から真っ二つに切り裂いていた。

 

「こいつ…化け物か……?」

 

そして彼も、先程と同じくその姿を炎へと変える。

邪魔者が消えた所で、比較的頭が回りそうな目の前の二人に事情を話すために俺は剣を納めた。その時。

 

────!?

 

バサッという音と共に、俺の背後から新たなサラマンダーが現れる。

 

伏兵。SAO時代での頼れる便利スキル《索敵》もここでは削られていた事を忘れ、またしても油断してしまった。男の手には短剣が、こちらの首を刈り取らんと握られている。

 

剣を抜くのは間に合わない。俺は咄嗟に徒手で応戦しようとするが、反応の遅れは大きく、短剣が俺の首にヒットする方が僅かに早い。

 

ここで死ぬ訳にはいかない。初回ログインでこんなどこかも分からない場所に飛ばされたのだ。死に戻りでどこから始めさせられるのか見当もつかない。

しかし、この状況を打開出来る方法は俺にはない。

万事休す。そう思った時────────

 

「!?────ウッ、ぐ……ぎぎ………」

 

男の動きがピタリと止まった。短剣を俺の首にあてがったまま、まるで時間だけが静止した様に。俺はすぐさま飛び退き、その伏兵サラマンダーから距離を取る。

よく見ると、彼の背中にいつの間にか、楔のような円錐形の深紅の光が刺さっていた。

 

拘束魔法(バインド)付き光魔法、それを射出した?そんな事って────」

 

「二重詠唱だと?いや、それどころかもっと複雑でなければ、あんな────」

 

俺にはそれがどういうものなのかさっぱり解らなかったが、金髪エルフの子やサラマンダー部隊のリーダー格の反応を見るに何やら凄いものらしい。そして状況が途轍もない速さで流転する中、混乱する俺の双眸が捉えたのは────────まるで流星が目の前を通過した、そう錯覚する程に美しい飛び蹴りだった。

 

光を纏った右足は円錐の中心を通り、伏兵サラマンダーの身体を貫く。その威力は凄まじく、九割残っていたHPを全て削り、彼を三つ目の炎に変えてしまった。

 

「二ヶ月間ログインしてねぇからって、弛んでんじゃねえか?────"キリト"」

 

必殺の飛び蹴りを見せつけた男、どういう事か彼もサラマンダーなのだが、こちらにニヤリと笑いかける。

────あれ?今こいつ俺の事『キリト』って……

 

「お前……リュウ、か?」

 

まさかと思い、俺はそいつに恐る恐る尋ねた。奴は、勿論肯定と言わんばかりの満面の笑みで返して来る。

 

「……え?え?───えっ?」

 

「( ゚д゚)ポカーン」

 

一方その頃、敵対していた筈の二人は共に考える事を止めていたという。




ALO七不思議の一つ、多重詠唱をした時、何故か詠唱が終わると何処からか「Exceed Charge」と音声が聞こえる特定の組み合わせがある
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