紅蓮の皇   作:Skullheart

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クリムゾンスマッシュ多用してますがちゃんと大型メイスも持ってます(使うとは言ってない)


Fly and Run away

「ふぅん!!」

 

紅い閃光を纏った蹴りが、トカゲに似たモンスターの額に吸い込まれる。必殺の一撃を受けたそれは、儚くその身をポリゴンに散らしていく。

ダァン!とそのまま勢い良く着地したリュウ。その隙を狙って二体のモンスターが突っ込んで来る。しかし彼は余裕の表情を崩さず、姿勢を低くし身を屈めた。

 

すると、タタン、と彼の背中を踏み台にしてキリトとユイが飛び出してきた。虚を突かれたそれらは一体は大剣に貫かれ、もう一体は急所を的確に突かれポリゴンへと還る。そして同時に、後衛でデバフをかけていた最後の一体への道が開く。

 

無防備になり逃走を図るモンスターだったが、リュウの後ろから一直線に駆け抜けてきたリーファが容赦なく斬り伏せる。為す術なく真っ二つにされたそれは、やはりその身をポリゴンへと変えていく。

 

こうしてこの日五度目の戦闘が終わった。既に《スイルベーン》は遥か遠く、振り返っても木が生い茂るばかりである。そんな中リーファは、キリト達との連携に舌を巻いていた。

 

(攻撃のタイミングが完璧…息ピッタリだなんてレベルじゃないわ。次に誰が何をするのかを全部理解してなきゃここまで噛み合う事なんて出来ない。それに三人とも常にあたしを含めた全員が動きやすい位置にいる、というかもう誘導されてる感じに近かった。一体どういう経験すればこんな芸当が出来るようになるのよ!?)

 

実際はそれよりヤバい連携を取る五人組がいるのだが、当然彼女は知る由もない。

 

「さぁーてと、まだいけるか?」

 

体を伸ばしながらのリュウの問いに、リーファはハッと我に返った。

 

「うーん、そうね……。体力的にも時間的にも大丈夫だけど、そろそろ翅の休憩を挟まないとまずいし、ここらでローテアウトは入れておきたいわ」

 

「あいよ。でもここじゃあキリ悪いし、あそこの山の洞窟前でいくか?」

 

「《ルグルー回廊》ね。二人とも、大丈夫?」

 

リーファは後ろのキリトとユイに尋ねる。彼女よりも動きの激しい二人を気遣っての事だったのだが、

 

「よゆーよゆー」

 

「まだまだいけます!」

 

自分よりも涼しい顔で答えられるものだから、少々自信を無くしてしまうリーファであった。

 

 

その後、何事もなく《ルグルー回廊》の手前に到着した四人は、予定通り一時ログアウトする事になった。本来休む必要がないユイも、データを整理するためログアウトが要る。

近くにあった丁度良い切り株に腰を降ろし、リーファとキリトはメニューを開いた。

 

「ん?リュウは出ないのか?」

 

メニューを開く素振りが無いリュウに、キリトが問う。

 

「ああ。ここは俺が見とくから、三人は休んできな」

 

「そう?じゃあ、お言葉に甘えて。二十分くらいで帰って来るわ」

 

そう言ってリーファはログアウトボタンをタップし、ALOを後にする。キリトも引っ掛かる所はあったが、気のせいにしてリーファに続きログアウトした。

 

「……さて」

 

三人の身体から意識が抜け落ちた事を確認したリュウは、静かかつ素早い動作でメニューを開く。

 

彼の指の先には───《Message Chat》の文字があった。

 

_ _ _ _ _ _ _ _

 

 

「お待たせー!ゴメーン、ちょっと遅くなっちゃった!」

 

ログアウトから三十分過ぎ、リーファ達が帰ってきた。

 

「おう、二人して遅刻とは良い度胸じゃねぇか」

 

「パパ、リーファさん。遅刻はダメですよ」

 

「うぅ、すまん」

 

リュウと時間通り戻っていたユイは機嫌を損ねていた。遅刻されたのもそうだが、待っている間平和だった分退屈で仕方がなかったのだ。

が、しかしそこは大人とAI、怒りをぐっと抑えて理由を問いただす。

 

「あたし、お兄ちゃんがいるんだけどね?一緒に晩ごはん食べてたらついつい話し込んじゃって……気付いたらこんな時間で」

 

「俺は妹だな。ちょっと話すだけでも良い息抜きになったよ。それで遅れたのは、まぁ……すまん」

 

「あ、やっぱり?キミ、なんでか知らないけどお兄ちゃんっぽい感じしてたのよねー」

 

「そっちこそ、どことなーく妹みがしてたぜ。なんでだろな?」

 

「うーん、もしかして───」

 

「……二人とも、本当に反省してるんですか?」

 

『……ハイ』

 

明らか二人より幼いユイに説教されている状況に、怒りを忘れ笑みがこぼれそうになるリュウであった。

 

「じゃあそろそろ行くぞ。キリト、灯魔法」

 

「へっ?」

 

突然指名されたキリトは豆鉄砲を食らった顔になる。その反応に三人は大きくため息をついた。

 

「お前……だからマニュアルはしっかり見ろって」

 

「仕方ないですね……。はい、予め調べておいた一番簡単な灯魔法のスペルです」

 

「おおっ、サンキューユイ!」

 

目を輝かせるキリトだったが、その頭にリュウの拳骨がゴン、と突き刺さる。

 

「子どもに甘えるな」

 

「へい、反省してます……てか、お前炎魔法で灯り作れないのかよ?」

 

「出来ない事もないが……時間制限が厳しいし、そんな明るくないからなんか鬼火みたいだと」

 

「あ、そう」

 

そんな事を喋りながら、四人は洞窟へと足を踏み入れていく。

 

 

洞窟の道中はオーク型のモンスターが多く出現したが、体躯の割に強さは大した事もなく、加えてスピードが並外れた四人によって事も無げに倒されていった。

そして、地底湖にある鉱山都市《ルグルー》の、そこに架かる橋までもう少しといった所で。

 

「ん、索敵魔法に反応アリです。数は十二、プレイヤーです」

 

ずっと索敵を担当していたユイが報告を上げた。

 

「戦う事になれば十二はちょっと多いわね……。ここは隠れてやり過ごしましょ」

 

リーファが全員を覆うようにカモフラージュの魔法をかける。シルフはこういった魔法に秀でているため、目視ではそこは壁と見紛う完璧な光のカーテンがそこに出来上がった。

 

これで大丈夫だろう────そう考えるリーファを裏切って、物事の発端は急速に告げられる。

それは、リュウとリーファの二人にメッセージが届いた事から始まった。差出人はレコンであり、タイトルに文字はない。

そしてその内容に、リーファは首を傾げた。

 

【Siguilt】

 

たったこれだけである。

 

「何これ…?『Sigurd(シグルド)』のタイプミスかしら…?でも、なんであいつの名前が?」

 

リーファはちんぷんかんぷんといった様子だったが、対してリュウはニヤリと口角を上げていた。

 

「……頃合いか」

 

その言葉と同時に、リュウが指をパチリと鳴らす。

 

「ちょっ…!? 何すんのよ!こっちの居場所が───」

 

思わず声を荒げそうになるリーファだったが、直後に起こった物を見て彼女は自分の考えが甘かった事を痛感した。

 

指を鳴らした瞬間、彼らの来た通路で小さい()()が爆発したのだ。リーファはポリゴンに還る最中のそれに、赤い蝙蝠のような羽があるのを見た。

 

「あれは…サラマンダーのトレーサー───?」

 

「走るぞ」

 

そう告げるリュウに背を押され、彼らは走り出す。

 

「ちょ、ちょっと!どういう事か説明してくれる!?」

 

「始まりはいつの間にか俺達に付いていたトレーサーだ。俺はスイルベーンを出て暫くしてから、そいつが俺達をマークしている事に気が付いた」

 

「じゃあ、なんであたし達に────」

 

「不可解な事が多すぎた」

 

彼の回答に、彼女たちは揃って頭に『?』を浮かべる。

 

「考えてみろ、()()()()()()()()()()()()()()?アレは本来偵察のために使うもんだ。こんなたった四人の混合種族パーティの観察に使われるもんじゃない。たまたま通りかかった所を出くわしたのなら、そのまま襲えばいい話だ。トレーサーなんて使える高レベルなメイジもいる様だしな」

 

「でも、あたし達の顔と実力が割れていたら」

 

「だとしても普通は無視するか昨日みたいな不意打ちに転じるだろ。だが最も襲いやすいローテアウトの時に攻撃は来なかった」

 

「? えっと、それじゃあ────?」

 

「お前達に伝えなかったのは、無闇に警戒されない方が都合が良かったから。今まで放っておいた理由は、言わずもがな泳がせておくため。ユイ、さっき奴らは何人いると言った?」

 

「十二人です」

 

「俺達がいくら強かったとしても、たった四人に十二人は些か戦力オーバーだ。ここから考えられる理由は一つ」

 

それを聞いたリーファは、苦虫を噛み潰した表情になった。

 

「……なんとしてもあたし達を先に進めたくない、って事ね」

 

「そゆ事」

 

「おい、リュウ」

 

「ん?どうしたキリト」

 

「さっき『いつの間にかトレーサーが付いてた』って言ったよな?それってもしかして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って事か?」

 

「だろうな。その方が辻褄が合う」

 

「ちょっと待って、それじゃまさかトレーサーを付けられた場所って……」

 

リーファの顔が一気に引き攣っていく。

 

「俺達が出発する前、《スイルベーン》の中での可能性が高い」

 

リーファはごくりと息を呑んだ。敵対しているサラマンダーを領内に手引きしている内通者がいるという事実。それも、それが出来るという事はかなり中枢に近い人物だという事に。

 

「恐らくスイルベーンでトレーサーを付けたメイジが他の十一人を呼んだんだろう。ローテアウトの時に来なかったのは、合流に少し手間取って距離が開いたからとかじゃないか?」

 

「内通者なんて……一体誰が……」

 

「さっきレコンが教えてくれただろ?」

 

彼女は、先程レコンから送られてきた謎のメッセージを思い出した。

 

「あのスペルミスしたシグルドの?単にタイミングが重なっただけじゃ───?」

 

「スペルミスじゃねーよ」

 

リュウははっきりと断言した。

 

「単純にシグルドの名前を打ちたいだけならわざわざアルファベット表記にせずかな文字で打つ筈だ。つまりこのスペルには何らかの意味がある」

 

「意味?こんな少ない文字数の中に?」

 

「ああ。この『Siguilt』って言葉、何かの断片が見えて来ないか?」

 

「ん~…んん~?」

 

そう言われ、リーファは電子スクリーンに向け目を凝らす。

 

「シグ…シギル………ギ」

 

そう呟いて、彼女はハッとなった。

 

「ギルト……『guilt(有罪)』」

 

「正解。このタイミングでバレたんだから、多分そりゃ内通者の件に関しての事だろ……おっ」

 

彼らの視線の先には、光に包まれた狭い通路の出口があった。地底湖の橋を渡り街の安全圏まで行けば襲われる心配はない。四人の走るテンポが自然と速くなっていく中、キリトがリュウにある疑問をぶつけた

 

「じゃ、そのシグルドって奴が引き入れたサラマンダーは、どうして俺達を襲うんだ?そうまでしてあいつらが止めたい理由、俺には心当たりが無いんだが」

 

「さぁ?そいつを知りたいなら───」

 

その時、彼らの頭上を黄土色の光弾が通り過ぎていく。その正体を察知したリーファはそれを打ち消そうと風の刃を繰り出そうとするが…一歩及ばず地面に着弾し、道を塞ぐ巨大な岩の壁を創り上げた。

 

「───あいつらに直接聞いてこい」

 

彼らが振り向いた先ではサラマンダーが十二人、編隊を組んで待ち構えていた。

 

To be continued…




長い通路ダナー(棒)
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