紅蓮の皇   作:Skullheart

37 / 52
早く戦闘シーン書きたい……!


All for ONE

ダンジョン前に降り立つと、先程まで姿が見えなかったリュウが二人を待っていた。

 

「よっ。案外早かったな」

 

気さくな態度で話しかける彼に近付いていくリーファ。彼女はリュウ達に会ったら、真っ先に謝ろうと決めていた。意を決した表情で、リーファは彼の前に立つ。

 

「……さっきは本当に、すみま───」

「おっと」

「え?」

 

しかし、下げようとした彼女の頭は、リュウの掌によって阻まれた。虚を突かれたリーファは、思わず拍子抜けした声を出してしまう。

 

「お前が俺に謝る必要なんかねぇよ」

 

そう話すリュウに、リーファは目をぱちくりさせた。

 

「でも、勝手な行動したり、あたし達の事情で手間取らせちゃったり……」

 

「お前らがそう思ってくれてんならそれで充分だ。そういうのは元から承知の上だし、解決したならこっちとしても万々歳だしな」

 

ニカッ、とリュウは明るい笑顔を向ける。

 

若者(おまえら)の面倒見るのは大人(オレ)の仕事だ。迷惑上等、幾らでも付き合ってやるさ」

 

「リュウさん……」

 

「だから気にすんな。これからもどんどん頼ってこい」

 

リュウは額に当てた掌で、わしゃわしゃとリーファの頭を撫でた。

何もかもが大きかった。その背中も、 掌も、心の器も。キリトやレコンとはまた違う頼もしさ。これが大人。いつか自分達も、こんな存在になれるのだろうか。

 

「……ありがとう、ございます」

 

「礼なら、お前らが大人になった時にたっぷり返して貰うさ」

 

そう言って、リュウはリーファの頭から手を放す。終始笑顔で接してくれた彼の姿には、これまでの人生経験から培ってきたであろう心の余裕が感じられた。

 

「……それじゃ、お兄ちゃん呼んできます。まだ現実(あっち)の方にいる筈だから───」

 

「その必要はねぇよ」

 

リーファが一旦ログアウトしようとするのを、リュウは呼び止める。彼女はキョトンとした表情で彼の顔を見た。

 

「もう呼びに行ってる」

 

リュウのその台詞と同時に、彼の視線の先でポリゴンが形成され始めた。それは軈て人の形を作り出していき、そして全身黒い装備で覆われた剣士へと変貌する。

突然置いてきた筈のキリトが現れた事に驚くリーファだったが、何にせよ彼が来たのなら彼女がする事は一つだった。

 

「リ──…直葉」

 

「キr──…お兄ちゃん」

 

二人は向かい合い、目を見つめ合う。

 

そして。

 

『………ごめ』ゴン☆『っだぁー!?』

 

互いに勢い良く下げた頭は、派手な音を立てて衝突した。

 

「バカかお前ら」

 

リュウは呆れてため息を漏らす。額を押さえる二人は、思わず互いに顔を見合わせた。

 

「……プッ」

「……くくっ」

 

『あっはっはっはっはっ!!』

 

糸が切れた様に、彼らは笑った。ただただ笑った。これまでの事を全て吹き飛ばす様に。こうして笑っていれば、あの変にしんみりした空気が全てバカらしく思えてきた。

 

一通りバカ笑いを終え、気分を落ち着かせるキリト達。すると今度は、やはり二人同時に右手を差し出した。

 

「……お兄ちゃんなら、そうすると思った」

 

「……俺もだ」

 

最早彼らに謝罪の言葉は必要なかった。差し出された互いの手を取り、堅い握手を交わす。

 

「改めて宜しく、リーファ」

 

「……うん!」

 

「この似た者兄妹め」

 

あまりに微笑ましいその光景に、リュウも冷やかしを入れる。

その台詞に二人が照れ笑いをしていると。

 

「ホントですよ。不器用な所まで似てるんですから」

 

どこからともなく聞こえた声に、リーファは驚いた。声色と言い話し方と言いそれは間違いなくユイのものだったのだが、姿がどこにも見えないのだ。そんな不可思議な現象に困惑するリーファだったが、

 

「ここですよ、リーファさん」

 

その時キリトの服の胸ポケットが開いた。そこから覗くのは、キリトに似た黒い姿から一転白いワンピースに身を包んだ、とても可愛らしいミニサイズとなったユイの姿。

 

「……ええええええええええ!?」

 

思わずひっくり返りそうな勢いで、リーファは文字通り仰天した。

 

_ _ _ _ _ _ _

 

 

「……まさかユイちゃんがAIだったなんて……」

 

「すみません、騙してたみたいで」

 

「いや、大丈夫。ちょっとビックリしただけだから……」

 

そうは言いつつも、彼女の周りをひらひら飛ぶユイに戸惑いを隠せていなかった。やはりすぐには慣れないらしい。

 

「レコンの連絡が来たからな、ユイにはさっきキリト(こいつ)を呼びに行って貰ってたんだ」

 

「電源入れてない筈のPCから声がしたのはビビったよ……」

 

目を泳がせるキリトに、リーファは少し同情した。操作もしていないのに勝手にPCが起動するなど、少し前ならホラー映画の見すぎとまで言われそうな展開である。そんな彼らに不服なのか、ユイは頬をぷくーっと膨らませて拗ねてしまった。

 

「まぁ、一番驚いたのは『ALOの裏側の可能性』なんだけど……」

 

リーファはリュウ達から、彼らの本当の目的を聞いた。自分達が遊んでいる裏で、人体実験という恐ろしい事が行なわれているかもしれない。それを知ったリーファ達は、その事実に限りなく近い可能性に驚くと共に激しい憤りを感じた。

 

「あたしはALOをやってみて、凄く楽しかった。色んな人がいて、色んな面白さがあった。ゲームは人を笑顔にするためにあるんだ。それを自分の目的のために利用しているんだとしたら、あたしは絶対に許せない」

 

「リーファ……」

 

キリトは彼女の台詞に驚き、そして感動した。

 

「……それをアイツに聞かしてやりてぇなぁ……」

 

対してリュウは、何故か天を仰いで目頭を押さえていた。リーファは戸惑い、事情を知っていそうなキリトに視線を送る。しかしキリトの方は肩を竦めるばかりで、リーファは更に戸惑うばかりであった。

 

「ああ悪い、こっちの話だ。で、お前ら装備の方は大丈夫なのか?」

 

話がややこしくならない内に、リュウは話題を変える。あまり深く詮索しない方が良いと悟った二人は、素直にその質問に答えた。

 

「あ、うん。スイルベーンで用意したポーションとかも、結局ほとんど使わず仕舞いだったし。武器防具もそんなに消耗してないから、慣れ親しんだヤツで行くよ」

 

「俺もこのままでいいや。ってか買い換える金がないんだがな……それでさ、リュウ」

 

「うん?」

 

キリトはリュウに不安そうな視線を向ける。

 

「ユイはその状態で来るのか?」

 

「ああ。直接カーディナルにアクセス出来るこっちの方が、突破した後に都合が良いだろうからな」

 

「いや、その突破するのが大変なんだぞ?なのに攻略人数減らして大丈夫なのか?」

 

どうやら彼は、手数不足による物量差を気にしている様だ。確かにこちらは少数精鋭、一人いるかいないかで大きく変わってくる。幾ら便利だといっても、先ずはあの防衛線を突破しなければ無意味なのだ。

 

「ああ、それか」

 

だがリュウは、まるでそれが些末事であるかの様に軽く答えた。

 

「そっちは心配いらない。ちょうどそろそろ───」

 

その時、彼らの方へ飛行するいくつかの人影が現れた。キリト達はそちらの方を見やり、リュウは戻ったか、と悪そうな笑みを浮かべる。

 

「───助っ人の登場だ」

 

リュウ達の前に降り立った影に、キリトは思わず絶句した。そんな彼に、その内の一人が話しかける。

 

「……二ヵ月ぶりだね、キリト」

 

ALOというゲームに移行した事で、容姿は皆少し変化していた。しかしアバターから醸し出される雰囲気は、キリトの本能にそれが確かに()()であるという事を告げていた。

リュウが「助っ人」として呼んだ者達。それは。

 

「サチ!? それに、みんなも……!?」

 

サチやケイタ達元《月夜の黒猫団》メンバー、それにディアベルやゴドフリーといった、かつてキリト達と共にSAOで戦った仲間達だったのだ。あまりの衝撃に、キリトの思考は一瞬停止した。

 

「どうしてここに───」

 

「元々いたからだ」

 

「……へぁ?」

 

まるで予想外だったテツオの台詞に、キリトは言葉を失った。

 

ALO(こっち)にはリュウに誘われて一緒に来た」

 

「………はあぁぁあ!?」

 

驚きのあまり、大声を上げリュウを見るキリト。対するリュウは満面の笑みで彼を見つめていた。

 

「ちょっ、おま、なん……俺だけ仲間外れかよ!?」

 

「だってお前すぐ突っ走るだろ、特にアスナ絡んだ時は。だから情報が出揃うまでなるべくお前は呼ばないつもりだったんだよ」

 

「ぐぬぬ……」

 

ダッカーの言葉に、キリトは歯噛みした。自分でそれを証明してしまっているだけに、言い返す事が出来ない。

 

「ま、お前が早めに来てくれたお陰でこっちに慣れさせる手間が減ったし、事前に突っ込んでってくれたから色々対策も練れた。結果オーライ結果オーライ」

 

そう言ってキリトの肩に手を置くケイタ。何故だろうか、フォローされている筈なのに微妙に釈然としなかった。そんな彼に、さらに追い討ちを掛けるかの様に。

 

「ちなみにリズベットとシリカ、クラインとかも後から来るぞ?」

 

「マジか」

 

キリトは思わず頭を抱えた。現実とダイブ中どちらでも戦力になるリュウ以外は出来れば巻き込みたくなかったのに、どうしてこうなってしまったのだろうか。

 

「そりゃあ仲間だからな」

 

心の中で呟いたその問に答えたのはリュウだった。

 

「あいつはお前の嫁ってだけじゃねぇ。俺達にとっても大切な『仲間』だ。そのために俺達はここに来た」

 

「リュウ……」

 

振り返れば、リュウをはじめサチ達が皆キリトに向け拳を突き出していた。そこから放たれる彼らの想いが、暖かさが、キリトの心を優しく包み込んでいく。

 

「そういう事だ、あんま一人で無茶すんな」

 

「キリトがそういう無茶をするなら、私達は幾らでも付き合うよ」

 

彼らは笑う。他人を気遣うあまり、無意識の内に全て背負い込もうとした、勇ましき大馬鹿者を。

彼らは笑う。その大馬鹿者に、どこまでもついていくと決めた自分達を。

 

「みんな……ありがとう」

 

涙混じりの感謝と共に、キリトはリュウと拳を交わす。これ以上の言葉は、二人には必要なかった。何物にも代え難い絆が、確かにそこにあった。

 

「二人もありがとうな。関係無いのに巻き込んで……」

 

キリトは、少々置いてけぼりを食らっていた様子のリーファとレコンにも声を掛けた。二人、特にリーファは、何を今更という表情で答える。

 

「ここまで来たんだもの。ここで放り出していく訳にはいかないし、何よりお兄ちゃんをほっとける訳ないじゃない」

 

「ま、リーファが行くんなら僕が逃げる訳にもいかないよね」

 

そして二人も揃って拳を突き出す。改めて自分は最高の仲間に恵まれたと、キリトは今まで信じようともしなかった神に、生まれて初めて感謝した。

 

 

 

程なくして、一陣の風が吹いた。その風は、この偽りに満ちた外装を引っぺがす反撃の狼煙。世界樹の入口に集った戦士達の眼は、静かにかつ荒々しい炎を宿している。その内の一人、全身を黒に統一した、肩に白ワンピースの妖精を乗せている少年が静かに呟く。

 

「───悪夢はもう終わらせよう。『オペレーション・ナイトエンド』、作戦開始」

 

彼の言葉に応えるように、巨大な門が轟音を立ててその口を開け放つ。しかし彼らは、それが開ききるのを待たず一人、また一人とそこに飛び込んでいく。彼らには迷いなど微塵も無かった。いや、ある筈も無かった。何故なら彼らは、これよりも過酷な状況を幾度も乗り越えてきたからだ。

 

あの日から始まった長き夢が、今漸く終わりを告げる。

 

To be continued…




SAO組はバラバラに散って、各地で情報収集及び来るべき時に向けての戦力強化をしていました。リュウは合間を縫って彼らと連絡を取っていたり。

厨二病な作戦名はケイタから。そしてそれに乗るキリト達男連中。なお女性陣は引いてる模様。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。