紅蓮の皇   作:Skullheart

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最近ウルトラマンにハマりました。
それで、オーブのEDのShine your ORBって曲があるんですが……

このために作られたんじゃないかってぐらいSAO一期に合うんですよね。他にもジードのED、キボウノカケラの歌詞が重なってたりと……

SAOは実質ウルトラマンだった……?


変わり者たち《Ⅱ》

───国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

 

そんなフレーズで始まった小説を、一昔前に読んだ気がする。その頃はあまりに幼くて、内容などは殆ど思い出せないのだが、何故かこの一文だけは妙に覚えていた。

 

ではどうしてそんなフレーズを思い出したかというと、至極単純。エレベーターを降りた(キリト)が目にしているこの状況が、その場面に酷似しているからだ。と言っても、あちらに広がっていたのが白銀煌めく幻想的な風景だったのに対し、こちらは敵意渦巻く終末的風景なのだが。

 

ここに降りる前、エントランスでは特有の重厚感はあったものの、まだそれなりに活気があった。皆が皆、一人のプレイヤーとして交流していた。しかしここではどうだ。殺す事に最適化された道具を携えた、抜き身のナイフの様な殺気。或いは、映る物全てを轢き潰す鈍重な威圧感。さっきまで親しげに話していた者達が、ここではただ殺し合うだけの敵同士。彼自身、PvP系のイベントに参加した事が無い訳ではないのだが、この空間はそれまでのものとは一線を画すプレッシャーを纏っていた。

 

これが本場のVRFPS、その最高峰───そんな風にキリトが圧倒されているその隣で、シノンは『はぁ』と小さく溜め息を吐く。

 

「ほら、行くわよ。控え室はあっちだから」

 

「………」

 

周囲を全く気にせずずかずかと歩く彼女に、呆気に取られるキリト。そんな彼に対し、シノンはうんざりした様に眉をひそめる。

 

「…………何?」

 

「いや、やけに冷静だなと思って……。慣れてるのか? こういうの」

 

すると彼女は、呆れ返った様に再び溜め息を吐いた。

 

「慣れるも何も……試合前からメインアーム見せびらかして何のメリットがあるの? どうぞ対策して下さいって言ってる様なモノよ、あれ」

 

「あ、成る程……」

 

言われてみれば確かに、周囲を威嚇しているのは大層な銃器を担ぐプレイヤーばかりだ。いや寧ろ、よくよく見ればどれもこれも己の武器を自慢する素振りばかりで、それがあればこそプレッシャーを放てているとすら言ってもいい。

 

冷静に捉えれば、相手に手の内を晒すとても利の無い行為。彼女からすれば、まるで虎の威を借る狐とでも評するべき様相を呈している。それを理解した途端、先程まで感じていた威圧感は嘘の様に消え失せた。

 

 

 

 

そうこうしている内に、シノンの足は並び立つ二枚の扉の前で止まる。試合開始まで十五分、思っていたよりも余裕があった。

 

「ここが控え室よ。………言うまでも無いけど、隣の方使ってよね」

 

「アッハイ……勿論です」

 

やらかした事が事ではあるのだが、いまいち信用されていない事実に嘆息するキリト。自らの業を省みながら、彼は左側にある扉をトボトボと潜った。

 

 

 

 

「なぁ」

 

控え室で装備をチェックしていると、一足先に着替え終えたコペルが声を掛けてきた。

 

「なんでキリトはGGOをやろうと思ったんだ?」

 

そう問われて、キリトは言葉に詰まった。友達とはいえ、調査の事を安易に話す訳にはいかない。疑っている訳ではないが、彼がその『死銃』と繋がっている、或いは本人である可能性は決して零ではないのだ。

 

「いや、ちょっと…………やってみたくなって」

 

「嘘だね」

 

即、キッパリと断じられる。

 

「そんな普通な理由なら、アスナ達を連れて来ない筈がないだろ。それにログインしていきなりBoB参加、突拍子に見えて手順は着実に踏む君のスタンスからは考えられない」

 

「あ、はは……」

 

ぐうの音も出ない指摘、やはり自分の事をよく知る人間には、言い訳が苦しくなる。さて、どう誤魔化したものか───そう思案する前に、コペルは再び口を開く。

 

「……秘密にしておきたいんだろ? だったらそれでいいよ」

 

「…………いいのか?」

 

返ってきた予想外の台詞に、キリトは目を丸くした。そんな彼に対し、コペルはやれやれと肩を竦める。

 

「隠し事してまでGGOにコンバートする理由は───まぁ大体想像がつくけどね。『隠しておきたい理由(ワケ)がある』……それが分かっただけでも充分さ」

 

「───悪い」

 

「いいさ。お互い様だよ」

 

そう言うと、コペルはキリトの方に拳を差し出して来る。その仕草は以前の彼には見受けられなかったものであり、寧ろそれをよくやっていたのは───。

 

「…………変わったな、お前」

 

「……そうだと良いんだけど」

 

そんな感想と共に拳を合わせるキリトに対し、コペルはどこか自虐的に嗤う。

 

「じゃ、俺は先に───」

 

「なぁ、コペル」

 

外に出ようとする彼を、今度はキリトが呼び止める。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

「────っっ!」

 

その時コペルが見せた横顔は、余裕が感じられていた今までのそれとはかけ離れた、苛立ちを孕んだ苦い表情。

 

「……俺は俺だよ。知ってるだろ?」

 

しかしそれも一瞬の事、先程のは気のせいだとでも言う様に、振り向くコペルは今まで通りに笑ってみせた。

 

「……だと良いんだけどな」

 

退出する彼の背中を、キリトは悲しげな眼で見送る。本人は気丈に振る舞っているつもりなのだろう。しかしキリトには、その背中がとても脆く崩れ去りそうに見えた。

 

 

 


 

 

 

「お?」

 

キリトが外に出ると、シノンは別のひょろ長い男性プレイヤーと親しげに話していた。周囲を見渡せば分かるが、彼だけは他のプレイヤーと違って防具類を装備していない。このフロア自体はエントリー無しでも入れるため、大方彼女を応援に来た友人といった所だろうか。

 

「友達、か?」

 

どうやらコペルも、同じ結論に至った様だ。その剰りにストレートな質問に対し、シノンは表情を崩す事なく対応する。

 

「別に友達って程じゃ……こういう場で言うものじゃないけど、リアルでも付き合いのある知り合いってだけで」

 

そういうのを友達と呼ぶのでは、というツッコミを喉の奥に押し込みつつ、キリトはその友人と思しきひょろ長の男を観察する。

 

第一印象としては、人当たりの良さそうな柔和な顔立ち。勿論、フルダイブ型VRである以上見た目の情報に何ら意味が無い事は理解しているものの、所謂『気』やオーラといった雰囲気的な部分は現実と共通している事も多い。覚えておくに越した事はないのだ。

 

「えーと……はじめまして、《キリト》です。右も左も分からない中、そちらのシノンさんには本当にお世話になって───」

 

「うわ気持ち悪っ!……うっわ気持ち悪ぅ……」

 

「…………何も二回も言わなくても」

 

畏まった言い方をしただけでドン引きされ、割と心を抉られるキリト。男であると明かしただけなのに、対応が辛辣過ぎやしないだろうか。

───いや、言葉を聞いてくれるだけまだマシではあるか。なお、話しかけられた側の当人は頭に『?』を浮かべていた。

 

「ああ、ゴメン《シュピーゲル》。コイツ、男だから」

 

「…………!?」

 

シノンのその一言で、《シュピーゲル》と呼ばれた優男の表情が驚愕の色に変わる。それも一瞬の間があった辺り、その威力は相当なものだったのだろう。これはこれで面白いな、などと呑気な事を考えながら、キリトは改めて自己紹介を続ける。

 

「あー、うん。シノンの言う通り、自分は男です。道に迷って、困ってた所を助けて貰って」

 

「へぇ」

 

珍しいね、といった目でシュピーゲルはシノンを見る。その意を汲み取った彼女は、呆れた顔で言葉を返した。

 

「あのねぇ……最初から男って分かってたら、私が相手してたと思う?」

 

「ああ、なるほど」

 

シュピーゲルは得心した様に頷く。それだけの言葉で通じ合える辺り、二人の関係の親しさが伺えた。

 

ならば今ここにいる自分達はお邪魔虫なのだろう。そう思って、キリトはコペルの肩を引いた。

 

「それじゃあ俺達はこの辺で。ほら、行くぞ」

 

「あ、ああ…………」

 

いつになく、歯切れの悪い返答をするコペル。それに構わず、キリトは彼を引き摺っていく。

 

「あ、ちょっと───もう行くの?」

 

「ああ。ここまで色々教えてくれて、ありがとう。楽しかったよ」

 

「そう、なら───」

 

すると、シノンは振り向いたキリトの顔へ、指で象った拳銃を向けた。

 

「決勝で待ってるわ。その整った顔面、ブチ抜いてあげるから」

 

それは、明確な宣戦布告。ここから先は敵同士、その意思表示を兼ねた挑発。対してキリトは、不敵な笑みを浮かべながら。

 

「負けないさ、誰にもな」

 

自信満々な台詞と共に、サムズアップを返した。

 

 

 


 

 

 

「なぁ、コペル」

 

シノン達から充分離れた場所で、何も言わずに引っ張られていたコペルに、キリトが声を掛ける。

 

「…………ん?」

 

「さっき、あんまり話に入って来なかったけどさ、どうかしたのか?」

 

「……あー」

 

先程から、どうも彼の様子がおかしい。今だって、キリトが話しかけるまでどこか上の空であったし、その視線はずっと、シノン達がいた方へと向けられたままだったのだ。

 

「もしかしてさ……お前、シノンに…………」

 

この先の台詞を口にするのが憚られる様に、キリトはコペルに恐る恐る問いかける。

 

「…………男がいたのがショックだったとか?」

 

「はぁ!!!??」

 

耳を疑う程の馬鹿馬鹿しさに、ずっと視線が釘付けだったコペルも思わず振り返った。驚き、怒り、呆れ。そのどれもが入り交じった素頓狂な声を上げた彼は、その後口をパクパクさせながら、どういう反応(ツッコミ)を返せばよいのか思案している様に見えた。

 

「まぁそう気負うなよ」

 

すると、さっきはふざけた台詞を投げたとは思えない程の、諭す様な声色でキリトはコペルに語り掛ける。

 

「今は試合前なんだ、難しい顔してると、勝てる場面も勝てなくなるぞ?」

 

その言葉を体現するかの如く、キリトの表情は余裕に満ちていた。流石は場慣れしているというべきか、こういう勝負所では非常に心が据わっている。そして彼を見ていると、きっと大丈夫だという安心感が湧いてくるのだ。

 

「……本当に、お前には敵わないな」

 

「? そうでもないだろ、GGOはお前の方が先輩なんだから」

 

「そういうトコだよ」

 

そんな冗談を交わしつつ、彼らは共にそれぞれの待機位置へと向かっていく。

 

しかしキリトは、一つだけ見落としをしていた。それは彼が、シノン達と別れる直前の事。

 

僅かにコペルの表情に滲み出ていた、戦慄の色を。その視線が、注がれていた先を。

 

 

To be continued…




投稿ペースの割には話が進まない……
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