紅蓮の皇   作:Skullheart

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今回は短めとなります。
ボス戦四分割したら切る所ここしかなかったんだ…
非力な私を許してくれ…



The reunion

アインクラッド七十四層、迷宮区。

 

キリトはアスナ、そしてクライン率いるギルド《風林火山》と共に、ボス部屋へ続く回廊を韋駄天の如く駆け抜けていた。

 

攻略組全体での本格的なボス攻略は、まだ先の筈だった。恐らく、立ちはだかるボスは脅威的な強さを持っている可能性が高い。この少数のメンバーだけで挑めば、ほぼ確実に返り討ちに遭うだろう。この中で最もレベルの高いアスナとキリトが、ボス部屋までのマッピングを終えたついでに中を覗き、その迫力に驚いて思わず逃げて来た程だ。

なのに何故、彼らはそこへと全速力で向かっているのか。それを語るには、数分前に遡る。

 

安全エリアにて一休みしていたキリトとアスナ、そして偶然居合わせたクライン達は、軍服を来た一人の男に声をかけられた。

 

その男、コーバッツは軍の中佐だと名乗り、ゲームクリアのためマップデータを寄越せと要求してきたのだ。

手間と時間と危険が伴うマッピングの苦労を無下にするこの横暴にはクラインとアスナも怒りを露にした。しかしキリトはそれを制して潔くマップデータを渡したのだが、コーバッツが疲弊した部下をそのまま引き連れて先へと進んでいった事が心配になり、念のため追いかけることにしたのだ。

 

そして途中、その方角から間違いなく人間と判断出来る悲鳴が聞こえた。彼らはいてもたってもいられず、急ぎボス部屋へと急行しているという訳である。

 

「キリト君!あれ!」

 

アスナの指差す先には、彼らが先程訪れたボス部屋。そして今、その扉は開いている。それはつまり、あのままボスに挑んでいったという事だ。

 

「クソっ…!」

 

コーバッツが引き連れていた部下の数は、一般的な一個中隊にも満たない。そんな数で、ましてやいつも斥候部隊が体を張って提供するボスの前情報も無く挑んで、そのまま勝利出来る程フロアボスは甘くない。

 

敏捷力に重きを置いたビルドのキリトとアスナは、クライン達を引き離し先にボス部屋へと辿り着いた。開かれた扉の内側から、部屋の中の様子が窺える。

 

そこは、まさに地獄絵図だった。

 

圧倒的パワーのボス、《The Gleameyes》に蹂躙され、陣形を組む余裕もなく、ただ逃げ惑うばかりのプレイヤー達。

 

彼らの阿鼻叫喚が入口まで聞こえてくる。そして何より、既に先程の人数から二人減っていた。キリトは辛うじて生きている人間に向け、声一杯に呼び掛けた。

 

「早く!早く脱出するんだ!!」

 

「無理だ!クリスタルが使えない!!」

 

「な…」

 

その言葉にキリトは絶句した。結晶無効空間、まさかこんな所で再び相見えるとは。

 

「何と馬鹿な事をほざいている!我ら解放軍に撤退の文字はない!全員、突撃ーッ!!」

 

「馬ッ…!」

 

鹿野郎、と最後まで言い切らぬ内に、HPがイエローゾーン以下であるにも関わらず、全員がボスに向かっていった。

 

それは完全な悪手。一斉に飛び掛かっても、満足に剣技を振るうことが出来ず混乱するだけである。普通は防御主体の態勢で、一人ずつスイッチしながら確実にダメージを与えていくべきなのだ。

 

大きな青い悪魔は大きな雄叫びを上げ、青白い息を撒き散らした。あれ自体にダメージ判定があるらしく、突撃した全員の勢いが止まる。

 

その隙に、巨大な斬馬刀が正面にいたコーバッツに向け振り下ろされる。キリトは間に合わないと分かっていながらも、コーバッツに向かって大声で叫んだ。

 

「逃げろ─────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、キリト達が目にしたのは、大きくノックバックするボスの姿だった。

 

軍のメンバーにそんな事が出来る余裕はなかった。

キリトとアスナ、今しがた遅れて到着したクライン達にも攻撃した素振りはない。仮にしていたとしても、外にいる彼らでは中にいるボスまで攻撃が届くはずがない。

 

残るは更なる援軍という可能性だが、ボス部屋に最も近い彼らが武器を投げても届かない距離を、さらにその後ろから攻撃出来る人間など、いるはずが───

 

いや、いた。一人だけ。

 

どんな道理も無理でこじ開け、不可能を可能にするという言葉ををまさしく体現する男が───

 

「何ボサッとしてる。さっさと撤退補助してやれ」

 

百万の声援より心強い一声。強さに裏打ちされた安心感。いかなる地獄さえも荒らしてきた男、リュウ。

 

「……聞いてたより二人足りんな。間に合わなかったか」

 

「……もう少し早く着いていれば」

 

「落ち込んだって仕方ないよ。それよりまだ生きてる人を助けないと」

 

その後ろにいた者達の顔を見た瞬間、キリトは言葉を失った。姿を見せたのは、彼が二度と会う事は無いと思っていた人物。

 

「久しぶりだね、キリト」

 

そこには、今も変わらない優しい笑顔があった。

装備などは一新され、貫禄さえ感じさせる佇まいだが、あの時と同じ優しい彼女が、そこにいた。

 

「サチ…」

 

キリトはにわかに信じられなかった。この最前線、七十四層まで彼女が辿り着いたという事が。

 

「おいおいキリト、ここに来たのはサチだけじゃあないぜ?」

 

「そうそう。俺たちの事、忘れたとは言わせないよ?」

 

「相変わらずだな、お前は」

 

「やっと君に追い付いた… 待たせたね、キリト」

 

ダッカー、ササマル、テツオ、そしてケイタ。

 

皆それぞれが、キリトに並び立つまでに逞しくなっていた。あの莫大なレベル差、ステータス差を埋めて最前線(ここ)まで辿り着いたのだ。

 

「みんな……」

 

不意に彼の目から涙が零れた。

 

「感動の再会のとこだけど、みんな急ぐよ!風林火山の皆さんは生存者の救出・保護!終了次第戦線に加わって下さい!キリトとアスナさんは攻撃に専念して、敵の攻撃はこちらで引き付けます!」

 

すっかり肝の据わった声で、ケイタが指示を飛ばす

リュウは跳ね返って来た白いメイスを拾い上げ、もう一度気合を入れ直した。

 

「さぁ行こうか」

 

まさかもう一度、この名を聞く事になろうとは。キリトの全身に鳥肌が走った。

 

「月夜の黒猫団!!」

 

To be continued…




生存ルートは再登場が醍醐味(確信)
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