紅蓮の皇   作:Skullheart

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七十四層攻略終了です。
追記:サブタイトル変更しました


After the battle

「っはあぁぁぁぁぁ…」

 

リュウが大きなため息をつく。

 

彼だけではない。倒したと確認した途端、張り詰めていた緊張感が解け、全員がどっと疲労感に襲われる。

 

「…やっぱりお前も持ってたか、ユニークスキル」

 

「……」

 

返事はない。しかし、否定のしようもない。

 

「キリト君!」

 

そんな彼に、今にも泣きそうな顔でアスナが駆け寄ってきた。

 

「もう!無茶して!」

 

「ン、むぐぅ!!」

 

強烈なホールド。

世の男から見ればうらやまけしからん状況だが、当の本人は凄く苦しそうである。

 

「おいキリの字!何だよアレは!? お前もユニークスキルか!?」

 

一方で、クラインからは怒涛の質問攻めを喰らっている。

ようやく解放されたキリトが、重い口を開く。

 

「…ああ、ユニークスキルだ」

 

「おめぇいつの間に…」

 

「さあ、心当たりがない。朝起きたらいきなりスキルスロットに入ってたんだよ」

 

「…!」

 

その言葉を聞いたリュウはある事に気付く。

 

「何の通知も無く、か?」

 

「…?ああ」

 

(…妙だ。俺もサチもユニークスキルは戦闘中に特定条件をクリアして手に入れた。それを何の前触れもなく突然習得しただと?…臭うな)

 

「ユニークスキルって言やぁ、お前らのアレも何なんだよ?ユニークスキルって最終的にあんなのになんの?」

 

「《スキルバースト》の事か?まぁ大体そんな感じだ。スキル熟練度が一万に達したら習得できる」

 

「い、一万!? 千でも大変なのに、その十倍かよ…」

 

「俺もサチも達成したのは数日前だ」

 

「…でもあんなチート能力、何で最初っから使わねぇんだ?」

 

「勿論、制約があるんです。一日一回、三分間までしか展開出来ません」

 

サチが答える。

 

「ほぉ…成程」

 

「だからここぞって時とか、最後のゴリ押しにしか使わない。それに動きも大きくなるから、素早かったり小さかったりするヤツには使えない。案外不便な技なのさ」

 

「そうか。万能って訳じゃないんだな」

 

クラインは納得した様子だった。

 

「それで…リュウさん達はどうしてここに?」

 

ふとアスナが訊ねてきた。

 

「ん?」

 

「明らかに助っ人目的で来ましたよね?でないと『二人いない』なんて言葉、出ないでしょ」

 

「はは、流石だな… この件は内密(オフレコ)で頼むぜ?」

 

「…了解です」

 

そしてリュウは、外にいる軍人や風林火山のメンバーに聞かれない声で話し始めた。

 

「《軍》だよ。アイツらからの依頼さ」

 

「え」

 

軍は下の層にて治安維持を行っている。言うなれば警察組織である彼らは、一般プレイヤーとの個人的・組織的癒着を防ぐため、仕事の依頼は一切行わないようにしている筈なのだ。

 

「内容はこうだ。『今朝我が軍のコーバッツ中佐以下十名が報告もなく出動し、連絡が取れない。全層の警備兵に捜査網を敷かせているが、一向に見つかる気配がないので念のため前線の迷宮区を秘密裏に探してくれないか』ってね。そしたらボス部屋らしきものの扉が開いてたからな。攻略会議まだだし、もしやと思ったのさ。

…まぁ、いい報告は出来そうにないが」

 

少々顔が暗くなる。

 

「ちょっと待って。『報告なく出動し』たのを知っていて、『秘密裏に』頼む人よね?それってかなりの重役じゃあ…?リュウさん、あなたとパイプがある人って…?」

 

「重役どころかトップだよ。あれ?お前ら知らね?」

 

「む…」

 

彼女は日常実務で忙しい身だ。攻略に直接関係ない軍のトップなど、気にする余裕は無かったのだろう。

 

「ディアベルだよ」

 

「……あ」

 

そう、あのディアベルだ。

 

彼は第一層攻略後、《はじまりの街》を拠点に初心者のサポート、野盗等の取り締まり、仲間を介してキバオウ達反βテスターに睨みを効かせるなど、考えれば今の軍の基となる活動を行っていた。

 

攻略が進み、βテスター云々が関係なくなって後、キバオウ達のギルド《アインクラッド解放隊》が二十五層で大損害を被る。

彼らがディアベルのところへ身を寄せてから前線で彼の事を聞く事はなくなり、皆の記憶からは薄れてしまっていた。

 

しかし、単に第一層からの縁だから、ではないだろう。

そうでなければ、幾ら知り合いだとしても他のギルドの手など借りず、《軍》内部から戦力を投入するだろうからだ。

 

「お前ら、何で前線で犯罪者(オレンジ)を見かけないと思う?」

 

「え?」

 

唐突な質問に、アスナがは言葉を詰まらせる。

盗賊や殺人犯等の下種は、命惜しさに最前線に上がってこないものとずっと思っていた。

 

「実際はな、トラップに引っ掛ったり未熟なまま上がって来たりで壊滅したギルドが身を堕とした盗賊とか、隠蔽(ハイディング)でトッププレイヤー不意打ちして一儲け企む連中とかが蔓延ってんのさ。レベルが心許ない軍の連中のため、そいつらに対応してるのが俺達って訳」

 

その事実にアスナは絶句した。自分たちが安全に狩りをしていられるのは、その裏で活動していた彼らのお陰だったのだ。

 

「まあこっちも、PvPの経験積めたことでだいぶ強くなった感じがあるからな。そういうWin-Winの関係を築いてんのさ」

 

すると、アスナは急に改まった様子になった。

 

「───ありがとうございます。このお礼はいつかKoB副団長として正式に…」

 

「いいっていいって。お礼して貰うために話した訳じゃねーし。それにお前にはリズベット武具店紹介してもらっただけで充分だっての」

 

「…それでも、本当にありがとうございます」

 

彼女は深々と頭を下げた。

 

「副団長がホイホイ頭下げんな。俺は"仕事"をしたまでだ」

 

「…!」

 

「はぁーい、転移門アクティベートしに行きますよー」

 

ケイタの一言に、全員がハッとなる。今まで自分達がボス部屋にいた事をすっかり忘れていたのだ。

 

「俺はいいや…。もうヘトヘトだし」

 

「私もそうするわ」

 

キリトとアスナが疲れた声で辞退した。

 

「おう、気を付けて帰れよ。お疲れさん」

 

そんな二人をクラインが労う。

 

風林火山と月夜の黒猫団で階段を上り、七十五層の転移門をアクティベート。少々予定外が増えたが、これで無事に任務完了である。

 

「そんじゃ俺らも帰るか」

 

「そうだな。次からこいつらも攻略組に加わるからな、宜しく頼むぜ、クライン?」

 

「へっ、俺達についてk「まぁ既にお前より強いがな」んだとぉ!?」

 

「冗談だよ、事実だけど」

 

「~~~~ッ!」

 

「よしお前ら帰るぞー」

 

「あっお前逃げんな!」

 

「クラインさん、これから宜しくお願いしますね」

 

「お、お、ぉ…ぉぅ…

 

サチの挨拶に狼狽するクライン。

 

リュウは思った。

男は、いやオッサンはやはり女子にチョロいと。

 

こうして、激動の一日、そして七十四層の攻略が終了した。

 

To be continued...

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