ハロウィンな島にて小さめな背丈を持つ冒険家達がお菓子集めに西へ東へ奔走?!果たしてお菓子は手に入るのか…?

ハロウィンな感じです、割りと色んなキャラを出してみました。

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白猫 -ハロウィンコレクターズ-

時は10/31…いつもの飛行島スタートではなく今回はサーウィン島と呼ばれる島の中央にある冒険家ギルドからであった。

 

「ほら、あんまり動かないの。」

 

「くすぐったいよー!」

 

そしてギルドの一施設には背丈の小さめの冒険家が十二人程おり、その中でミゼリコルデがネコミミと尻尾を付けたエシリアやツユハに猫のひげのフェイスペイントを描いていた。

 

「他のみんなは我慢してたわよ?そっちはどうかしら?」

 

「こちらは完了なのでアール!」

 

「全員分用意出来たですよー。」

 

一方向こう側にはリスリーとコッペリアが針を片手に服装を作っており、近くにはコヨミが出来上がった三角帽を被っていたのだった。

 

「良い感じね、こらっ動かないの?」

 

「んっー!」

 

そうして顔を引き締めているエシリアの化粧を終えるとミゼリコルデは立ち上がった辺りを見渡した。

 

見渡せば様々な仮装を施された小さな冒険家達がおり、そして衣装が似通ったもので三人が四組まとまっていたのだった。

 

「それじゃそろそろいいかしら…。」

 

ミゼリコルデはそう言いながらみんなの前に立つとそれぞれの組にジャク・オ・ランタンの顔が描かれたバケツを渡したのだった。

 

「改めて説明しようかしら?今この島はハロウィン真っ最中なの。」

 

そう言うと冒険家らの何名かはコクりと頷いた。

 

「それでみんなにはそのバケツいっぱいにお菓子とかを集めてもらいたいわ、島の住民でも他の冒険家さんからでもいいからね。」

 

優しく囁く様に皆にへと言い聞かせてにこりとミゼリコルデは微笑んだのだった。

 

「もちろん一番いっぱいに集めてきた子にはご褒美をあげるわね、それじゃ行ってらっしゃい?」

 

ミゼリコルデはくすりとしてからキィィと夕暮れの外へと繋がる扉を開き、小さい冒険家四組はそれぞれの速さで飛び出していったのだった。

 

「行ってらっしゃい…。」

 

そして皆が見えなくなるまでミゼリコルデは手を振り続けていた、すると辺りはすっかりと暗くなり島中にほんのりとした灯りが次々と点り始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしっ!見えてきたみたいだ!」

 

「そうですね!」

 

飛び出した四組のうちの一つはリリーとヨシュアとミレイユのチームであった。

 

それぞれスーツを着込みマントを羽織った吸血鬼の格好なので、その三人は市街地にへとくり出していた。

 

「本当に皆仮装してるんだなー…。」

 

「ほんとだねお兄ちゃん。」

 

辺りには島の住民と飛行島にて見馴れた仲間やお菓子に群がりぴょこぴょこと跳ねる星たぬきの群れなどの光景が広まっていた。

 

「んー…?」

 

「どうしたんですか?そんなに見つめて…。」

 

「いえ…つかぬことをうかがいますが…お二人は双子で兄妹ですよね…?」

 

「そうですけど…それがどうしたんですか?」

 

「それにしては…肌の色が違いますよね…?」

 

リリーにそう言われて二人は向き合いヨシュアの赤い目には張りのありそうな褐色なミレイユの肌が、ミレイユの赤い目には綺麗な白いヨシュアの肌がそれぞれ映ったのだった。

 

「………。」

 

「………。」

 

そうして黙りこくりお互いに見つめあうとミレイユの方は少し気まずげな顔をしていたのだった。

 

「…お兄ちゃん………。」

 

「ミレイユなにも言うな!…リリーさん!何て事…あれ?いない?」

 

少し凄んだ顔のヨシュアはリリーの方にへと向こうとしたがそこには居なく近くにあった屋台の中にいたのだった。

 

「ちょっとリリーさん!あっ!クウさんにヤナギさん!?」

 

「おっ!また客…と思ったらヨシュアか!」

 

二人が暖簾を潜るとリリーが椅子に座ってはむはむとカステラを頬張っており、横長のおでん鍋の先には半竜の女の子で空手家のクウとその師であるヤナギさんが腕を組み道着姿で隣にいたのであった。

 

「知り合いなの?」

 

「あぁ、一応半竜らしいから色々と聞きたかったけど何も得られなくて。けど一緒に少しだけ鍛練したことがあって…。」

 

「そんなことあったか?」

 

「しらん!」

 

「だそうだ!とりあえず来たからには座ってくれ!」

 

「はい、失礼しますね!」

 

「それじゃ少しだけ。」

 

そうして二人はリリーの隣にへと座り、クウはこんにゃくと竹輪ぶと昆布を刺した串を二人の前の皿にへと置いたのだった。

 

「そういえば何でお前たちはそんな格好してるんだ?」

 

「はふはふ…今はハロウィンでして…そういえばしないとな、ミレイユ。」

 

「そうだね、お兄ちゃん。」

 

ミレイユはこんにゃくに多量にかけていたカラシのチューブを置くと二人は立ち上がった。

 

「おかわりです!」

 

「……。」

 

そんな一方でリリーはカステラの御代わりをヤナギさんに頼み、ヤナギさんは黙ってリリーにへカステラを補充したのだった。

 

「「トリックオアトリート!」」

 

「……えっ、何言ってるんだ…?新しい武術とかか…?ヤナギさん?」

 

「ちがうっ!!」

 

「だそうだぞ!それでどんな意味なんだ!?」

 

「……えっと、お菓子くれないと悪戯しますよーって意味で…とりあえずお菓子下さいです。」

 

「お兄ちゃん……。」

 

諦め顔なヨシュアはバケツをクウにへと差し出してクウはそれを受け取った。

 

「これに入れればいいのか?分かったぞ!ヤナギさーん!」

 

「…んむ!」

 

そしてヤナギさんにへと渡されると鈴カステラを一袋開け放ってドカドカと入れてミレイユにへと渡したのだった。

 

「あっ…ありがとうございます…。」

 

「………。」

 

するとヤナギは静かに二人のおでんの側にへとリリーにへと補充したカステラと同じカステラが乗った皿を置いたのだった。

 

「食え…。」

 

「「ありがとうございます!」」

 

二人は座り直し付属の小さなフォークにへと手を伸ばそうとしたがシャカシャカと削る音がおでん鍋の先から聞こえたのだった。

 

「待ってくれ!カステラを食べるならこれを浸けると美味しいって聞いたぞ!」

 

そうしてズドンと二人の間に置かれたのは大根おろしであった、しかしその大根おろしは少し茶色く出汁の匂いがしたのであった。

 

「えっと…これをですか?」

 

「そうだぞ!美味しいらしいってヤナギさんが言って…。」

 

「しらんっ!!」

 

「知らないそうだが多分美味しいぞ!これが私のトリックオアトリートだ!」

 

「ええっ…。」

 

自信満々なクウにヨシュアとミレイユは間の大根おろし(茶)をまじまじと見ていたのだった。

 

「どうしたんだ?食べないのか?」

 

「あっ…いや…なんと言うか…。」

 

「…!」

 

するとヨシュアは大根おろし(茶)の器を引き寄せて箸でカステラを摘まんでいたのだった。

 

「お兄ちゃん?!」

 

「ミレイユここは任せて…こいつは僕が…!」

 

そしてちゃぷちゃぷとカステラに大根おろし(茶)を浸けて胃を決して口にへと運んだのだった。

 

「…どうだ!?」

 

「…………。」

 

「…お兄ちゃん……?」

 

ごっきゅんとして箸を置きヨシュアはただ黙っていた…そして二人の女の子はそれを気にかけ、もう一人はまた御代わりをしていた。

 

「…返事をして!お兄ちゃんー!?」

 

「…………、大丈夫だミレイユ…。」

 

「それでどうだ!?」

 

詰め寄るクウにヨシュアはハンカチで口元を拭って喋りだした。

 

「……ええっと……、……なんか微妙でした…。」

 

「………そうか!不味くないんだな!良かったぞ!もっと食うか!?」

 

「それじゃ程々に…。」

 

そうしてリリーが満足するまで暫く三人は屋台にへと座っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わーいっ!きらきらしてるねー!」

 

「ケロケロー!」

 

「お菓子もいっぱっーい!!」

 

一方で市街地のとある地点にてはエシリアとマールとツユハの奔放満点なチームが駆け回っていたのであった。

 

「あっ!ルカだー!やっほやっほー!」

 

「おっ!マールさんじゃないですかー!どうもですよー!」

 

マールの目に留まったのは男気天使と呼ばれてる天使のルカであり白くふんわりとした服装ではなくキチッとして刺々しい黒い衣装を身に纏っていた。

 

「フンッ…騒がしいのがわらわらと…。」

 

そんな隣にはうんざりそうな顔をした悪魔のレインがポケットに手を突っ込んで立っていた、そして格好は白いコートの前は閉められて所々ベルトて固定され青黒い翼は白く塗られていたのだった。

 

「あっ、レインもいたんだ!」

 

「いちゃ悪いか…てかこのクソ天使を引き取れやラッキー天使。」

 

「えー、いやだー!」

 

「エシリアもやだー♪」

 

「ケロケロー♪いやだー♪」

 

「何言ってんだらぁーい♪」

 

「………。」

 

マールの言葉に続くかのように他の三人も言葉を連ねてレインは静かに手で顔を隠して溜め息を吐いた。

 

「そういえばそうとマールさんそのバケツを持っていると言うことは…そういう感じですか?」

 

「あっ!そうだね!みんなやろうよ!」

 

「「おっー!」」

 

そうして三人はレインの前へと立った。

 

「「「せっーの…!」」」

 

「とりーとおあとりーとー!」

 

「ラッキーオアトリート!」

 

「トリックオアトリート!!」

 

「………、チィ…ほらよ。」

 

そしてそれぞれ元気良く声を張り上げてレインの方にバケツを突き出した、レインは持っていた鞄から丁寧な包装の袋を取り出すとそっとツユハのバケツにのみにそれを入れたのだった。

 

「ええっー!なんでー!?」

 

「ずるいよー!」

 

「だったらコイツの様にちゃんと言え…」

 

「レインー流石にそれはちっちゃすぎねーか?」

 

「うっせーよ、それよりオメェは良いのかよ?」

 

「おっと、そうでした!でもトリトリはもう良いですよ!私はレインみたくちっちゃくないからなー。」

 

「一言余計だ!コノヤロォ!」

 

レインの声を無視してルカは笑顔で自身の鞄から弁当箱を取り出した。

 

「それじゃ私からのトリートですよー、どうぞどうぞー。」

 

そしてそれをそれぞれのバケツにへとゴトっと入れたのだった。

 

「えっーと…ルカ、もしかして中身は…。」

 

「はいっ!丹精込めて握ったおにぎりです!それにたっくさん握ったらぁーいしましたからねー…まだまだありますよー。」

 

「あはは…やっぱりかー…。」

 

そう言ってルカは笑顔で鞄の中を公開した、そこには弁当箱がぎっしりと詰まっていたのだった。

 

そしてマールは苦笑いをしていた。

 

「お菓子じゃないのー?」

 

「いやーなんと言うか混ぜ混ぜしたら飛び散りますし、焼いたら焼いたで黒焦げでしたからー…やっぱ握り飯が手に慣れてますからねー!」

 

「そうなんだー。」

 

「つーかな…焼く行程に直火するのがいるかよ…どんど焼きやきりたんぽじゃあるまいに…。」

 

レインは溜め息を吐きながらも鞄に手を突っ込んだ。

 

「あんなん貰わされてあれだからな…取っておけ。」

 

そうして二つの袋を取り出してマールとエシリアのバケツにへと放り込んだのだった。

 

「わっーい!ありがとー!」

 

「ありがとね、レイン。」

 

「ハンッ…おにぎりだとお菓子じゃねぇから仕方なくだ、そこんところ間違えんな。」

 

「はーいっ!」

 

マールがそう返事をするとツユハがとたとたとやって来たのだった。

 

「ケロケロ!くれるの!?」

 

「オメェはもうやっただろうが!?」

 

「んなこといわずにー…レインー。」

 

「うっせぇ!!」

 

そうして交渉は続いた…、暫くしてレインが折れてルカとツユハにもお菓子の袋を渡された。

 

そしてルカのはその場で開けられてマール達が中の手作りクッキーを食べたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方市街地内の公園の様なところにはポンにヒナとチヨがいた、三人はポンが着てる星たぬきのローブを着ていてどれもオレンジと黒なハロウィンカラーなのであった。

 

「結構いっぱい集まったね?」

 

「うん、チヨねーねとポンねーねのおかげだね?」

 

「わたしはいつも通りに折っただけだって、それに二人が手伝ってくれたからね。」

 

彼女達が一息ついている屋根付きベンチには渡されたバケツ沢山にお菓子が詰まっていたのだった。

 

「私なんかよりチヨさんの折り紙がすごいですよ!みんなこんなに可愛く動いてますし。」

 

そしてヒナの膝上には折り紙の小さいひよこがピョンピョンと跳ねていてその隣の小さい折り紙の星たぬきと遊んでいた。

 

また辺りの人の回りも折り紙で出来た蝙蝠やウィスプやかぼちゃ等々のハロウィンに所縁のある物が飛んだ跳ねたりして賑やかであった。

 

「みんなが心を込めて折ったからだよ、んん?あれって?」

 

するとガラガラと白竜のラピュセルがリアカーを引っ張っておりその隣には白いドラゴンの様な着ぐるみとエドっぴーの着ぐるみが歩いていた。

 

「…少し一休みにしましょうか?」

 

「はい、そうですね。ラピュセル一旦休憩しましょ?」

 

「グルル…。」

 

そうして話し合って二つと一匹はポン達の近くの屋根付きベンチに座った、吐息が二つ吹かれると着ぐるみらは隣のベンチに顔を向けたのだった。

 

「あら、もしかしてポン様ですか?」

 

「その声…ソフィさん?」

 

「はいっ!ソフィです!」

 

ぷはっとエドっぴーの頭が外れるとそこには氷の国の王女のソフィがおり、長い髪をタオルで纏めていたのであった。

 

「随分と面白い格好だね、私たちもあまり人の事は言えないけどさ。」

 

「そんなことはありませんよ、皆様とっても可愛いですよ?」

 

そう微笑むのは隣のドラゴンの様な着ぐるみであるが、首の部分には竜の国の姫のエクセリアであった。

 

「それに皆様お菓子いっぱい集めたんですね…。」

 

「ヒナちゃんが笛を吹いて興味を引かせてポンちゃんが案内してあたしが折り紙教室をしてたらいつの間にかね。」

 

「すごいですね…!でもこれだと私達の分のお菓子をお渡し出来ませんね…。」

 

「…それなら少し待っててね…。」

 

するとチヨは少し大きめの折り紙を取り出して折り始めた。

 

そしてあっという間に紙製の容器が三つも出来たのだった。

 

「はい、これでどう?」

 

「素早いですね!あっ、でもちゃんと言ってからですよ?」

 

「分かってるよ、トリックオアトリート。」

 

「トリックオアトリート…ピヨ。」

 

「トリックオアトリートです!本当はトリックオア星たぬきがいいですけど!」

 

三人はチヨ特製の容器を差し出しながら姫と王女にへと言ったのであった。

 

「ふふっ…分かりました、それじゃ竜の国名物のドラゴンクッキーですよー。」

 

「それでは私は、よいしょっと…こちらを差し上げますね!」

 

エクセリアはそれぞれにドラゴンの形のクッキーを入れて、ソフィはリアカーの方から氷の国の銘菓を一つずつ入れたのであった。

 

「ありがとね。」

 

「美味しそう…。」

 

「星たぬきのたまご!ありがとうございます!」

 

「いえいえ、それでは私達はそろそろ行きますね。」

 

「はいっ!ラピュセル行ける?」

 

「グルゥ!」

 

ソフィは三人にへと手を振ってから外してたエドっぴーヘッドを被った。

 

「待って、ちょっとそのままにしててね。」

 

「えっ?分かりました…。」

 

だが行こうとした二人をチヨが止めるとじっーとエドっぴーを観察し始めた。

 

「成る程ね…。」

 

そう呟くとチヨは折り紙を取り出し折り始めた。

 

何度もエドっぴーを見直して丁寧に丁寧にと折り込んでいた、そして数分してチヨの手元にはエドっぴーが折られていたのだった。

 

「はい、出来上がり。どうぞソフィさん。」

 

「わっー…すごいです!後で折り方を教えてもらってもよろしいでしょうか?!」

 

「いいよ、これが終わったら飛行島でいくらでも折ってあげるよ…ついでにあなたも折ってあげようか?」

 

「はいっ!よろしくお願いします!」

 

「……、まぁ後でね?」

 

そうしてエクセリアとソフィは軽い足取りでポン達の元から離れたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トリックオアトリート!」

 

「お菓子くれないと悪戯しちゃうぞーがおー!」

 

「キャンキャン!」

 

「いっぱいほしーな!」

 

そんな一方でとんがり帽子が目につく魔法少女な格好をして回っているのはコヨミとタローにエクルとモコであった、しかしモコの格好は元のそのままなのであった。

 

「いっぱい集まったねー!」

 

「どれも美味しそう…じゅるり…。」

 

「あっー、駄目だよー!コヨミも食べたいけど…我慢なの!」

 

「キャウン!」

 

エクルが思わずお菓子の山にへと手を出そうとしたときコヨミはとっさにそれを止めたのだった。

 

「でも少しだけー…。」

 

「うぅぅ…それじゃちょっとだけね…。」

 

「キャン?!キャンキャウーン?」

 

しかしその止めた手でお菓子に手を入れてタローは驚いたように鳴いたのだった。

 

「これが最後だから…んー甘いねー!」

 

「美味しいのー。」

 

「おーいしー!」

 

「クゥーン…。」

 

このやり取りが何回も行われてタローは呆れたような鳴き声をしてそれを見ていた、そして山だったお菓子は半分ぐらい減っていた。

 

「うー…またやっちゃった…。」

 

「でもまた集めようね!」

 

「そうだよ、沢山集めよー!」

 

「「「おっー!」」」

 

「……。」

 

タローはこの光景も何回見たのであろうか…。

 

そうして頭を下げるタローだがピクッとこちらに近づく音を感じたのであった、音の方を見上げると魔王が現れたのであった。

 

「キャンキャン!」

 

「あっ!オスクロルねーねだ!」

 

「皆様こんにちは、お菓子集めですか?」

 

にっこりと手を振ってやって来るオスクロルの普段と変わらぬ魔王スタイルの格好であった。

 

「そうだよ!でもちょっと摘まみ食いしちゃってこれぐらいしかないけど…。」

 

「あらそれは大変…でしたら少ないですけどこちらを…。」

 

そうしてぼとぼととコヨミ達のバケツにへお菓子を入れ、嵩が先程の山ではないが高く積み上がったのだった。

 

「わーい!ありがとうオスクロルねーね!」

 

「いいんですよ、それよりまた摘まみ食いしちゃ駄目ですよ?」

 

「「はーい!」」

 

「でもこんなにいっぱい…そうだ!」

 

元気よく返事する二人に対してモコはポンと閃くとオスクロルの後ろにへと回った。

 

「んっー…んんっーー…!」

 

そしてモコは背伸びして両手を挙げてぱたぱたとしていた。

 

「…?どうしたんですか?」

 

「届かないよー…オスクロルおねーさん高いよー。」

 

「えっと、何をなされるのでしょうか…?」

 

「お菓子のお返しがしたいの!だから……あそこに座って!」

 

「あら…なんでしょうか?よいしょっと…。」

 

モコの言う通りにオスクロルは公園とかにあるような円柱の座れるものに腰を預けた、そしてモコはまた後ろに回ると手をわきわきと動かしたのであった。

 

「よーし行くよー!」

 

「あらっ…?…あぁん…」

 

モコの手はオスクロルの肩を揉みはじめ、オスクロルは小さく声を出したのだった。

 

「モミモミ…モミモミ…どう?気持ちいい?」

 

「はい…とっても良いですね……あふぅ…。」

 

オスクロルは気持ち良さそうな顔をして按摩を受けておりモコは肩のみでなく背中や首筋などもマッサージしていた。

 

「おねーさん随分とこってるねー…んしょっと…ぐりぐりー。」

 

「そうですねー……昨晩も徹夜で頑張って…その前も私一人で…うぅ…。」

 

「わわっ…オスクロルねーね泣かないで…。」

 

「クゥーン…。」

 

「元気だしてー…。」

 

そして何かを吐露してほろりとするオスクロルにコヨミとエクルはオスクロルの頭を撫でたのであった。

 

「ありがとうございます…ありがとうございます……。」

 

そうして彼女たちは泣き止むまでその場でマッサージとなでなでを続けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女らが飛び出してほんのり暗かった空も星々と月が明々と輝いていた。

 

しかしここの場にいる三人にはそんなことよりトリックオアトリートしまくるために走り回っていたのであった。

 

「いっぱいだね!」

 

そしてそれぞれのバケツにはそこそこたんまりお菓子が詰まっていたのだった。

 

「これなら私達でゆーしょだね!」

 

「ケロケロ…でも他のチームがどれぐらい集まってるか分からないから不安だね…。」

 

「んー…もっと集めて…あっ!あの髪の毛は…ガレアだー!」

 

ふとマールが走り出すとそこにはガレアが確かにおり何処か物々しく敵側にいそうな鎧を着込んでいた。

 

「ん?マールか。」

 

「んん?何だ、急に騒がしくなったな?」

 

そしてそんなガレアの隣には白い鎧と褐色の肌が特徴的な男が立ち、まるで○○王とも呼ばれそうな勇ましく重みのある声を発していた。

 

「その人誰ー?知り合い?」

 

「俺か?俺は爆塵の魔王カルロス・エルグランドだ!よろしくっ!」

 

「よろしくー!マールだよー!」

 

「エシリアだよー!」

 

「ツユハー!」

 

マールに続くようにその後ろからエシリアは右にツユハは左にへと飛び出したのだった。

 

「更に騒がしくなったな…にしても周りも君達みたいな格好…もしや…。」

 

「今この島ではハロウィン真っ盛りだからな、ほらお菓子だ。」

 

「わっーい!ありがとガレアー!」

 

「ありがとっー!」

 

「じっー…。」

 

「なっ…なんだその目は?!」

 

ガレアが三人にお菓子を配るなか手持ち無沙汰そうに暇するカルロスにツユハはじっーと見つめていた。

 

「じっー。」

 

「じとっー。」

 

「増えるなっ!?何だその目はっ!?」

 

「言わないとダメー?それじゃ…とりっおあとりーと♪」

 

エシリアは甘ったるそうに言い。

 

「トリックオアトリート!!」

 

ツユハは満点の笑みで言い。

 

「ラッキーオア…じゃなくて!トリックオアトリート!」

 

「……。」

 

マールは言い直して言ったものの、それを受けてるカルロスは口を開けて放心していた。

 

「…?」 「??」 「…???」

 

三人はそんな顔に揃って首を傾げており、そしてガレアはそっとカルロスの側に寄った。

 

「(まさかだが…お菓子とか持ってないのか?)」

 

「(お菓子っ!?何でだ?!)」

 

そして互いに小声で話し始めたのだった。

 

「(そう言う風習だ、お菓子を渡さないと悪戯されるぞ?)」

 

「(それは困るが、お菓子など持ってないぞ?)」

 

「(……だったら少し時間を稼いでろ、俺が持ってきてやる。)」

 

「(…?!良いのか!)」

 

「(あぁ、構わん。それじゃ頼むぞ…。)」

 

 ガレアはひっそりとそう言い残してバイクで駆け出したのだった。

 

「あっ…ガレアー。」

 

「ねぇねぇーお菓子まだー?」

 

「ケロケロー悪戯しちゃうよー?」

 

「……待てっ!お菓子はくれてやる、だがなただでやるわけにはいかんし…そうだ!俺様のシゴキに耐え抜いたらくれてやらんでもないぞ!」

 

「シゴキー?」

 

「そうだ!しかもただのシゴキではない!地獄のシゴキだ!これを耐えねば甘い菓子にありつけれると思うなっ!」

 

「えっー…耐えなきゃ駄目なのー?だったら悪戯しちゃおー。」

 

「えっ?」

 

エシリアはそう言って手をわきつかせていた。

 

「いや待てっ!!!シゴキに耐えれば美味しいお菓子だぞ!凄く甘いぞ!(きっと)」

 

「んー…だったらやるー!」

 

「ケロケロー!面白そー!」

 

「そこの天使!お前はどうだ!?」

 

「お菓子…でもシゴキは……私やるよっ!」

 

「良く言った!それではこれより地獄のシゴキ『妄念に極楽コース』を始める!」

 

そう自信満々に言うカルロスの手にはルーンを持っており、顔には冷や汗みたいなのが流れたように見えた。

 

「それではまずはイメトレだ!俺が言う相手をイメージして勝ってみせろ!」

 

「「「おっー!」」」

 

「まずは巨体蟷螂だ!これを思い浮かべて素手で倒してみせろ!」

 

そう言われルーンの光を浴びた三人は目をつむった。

 

 

 

 

 

「ぶぇっくしょーい!」

 

「わー、ダーさん汚いのーどうしたの?」

 

「……誰か俺様の噂してやがるな…イラつくぜ…!」

 

「それはないのー、それよりダーさんトリックオアトリートー!」

 

「さっきやっただろうが!?」

 

そして遠方では大きくマスクで遮ったような声が響いたりしていた。

 

 

 

 

 

そんな一方カルロスは自信満々な顔だった。

 

「フッ…このイメトレ半端なイメージでは突破は…。」

 

「倒したー!」

 

「はやっ!?」

 

声を出したのはツユハなのだった。

 

「一体どうやって…倒せるまで目は開かない筈だぞ…?」

 

「んっとー…雨でちゃっぷんと流したの!」

 

「あっ…雨で?だがそうであっても倒せたのは事実…」

 

「やっつけたっー!」

 

「こっちもかよ!?」

 

今度の声はエシリアであった。

 

「エシリアちゃんどうだったー?」

 

「えーっとね…すーぱーえしりあきっくでずどどんと一発でやっつけたよー!」

 

「………。」

 

カルロスは愕然として二人の会話を口を開けて見ていた、そしてパチリとマールも目開いたのだった。

 

「ようやく倒せたよー。」

 

「…えっと…どうやって倒したりした?」

 

「えっとね…最初はガレアが助けに来てくれたけど最初に戻されてー、次はエシリアちゃんが壁を突き破ってー…。」

 

「………。」

 

話の途中だがカルロスは白目を向いて立ち尽くしていたのだった。

 

それは自分の用意したシゴキを難なく突破されたことなのか彼女らの突飛なアイディアにやられたか、それとも両方か…。

 

「…な感じなんだー!あれ?どうしたのー?」

 

「……ハッ!?つっ…次だ!今度はそう上手くは行かんぞ!」

 

「次はなにー?!」

 

「ケロケロー!」

 

そうしてカルロスのシゴキは暫く続いた…そしてガレアが帰った頃には真っ白に燃え尽きたカルロスが発見されたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな一方、とある一組は市街地から外れた森林地帯にやって来ていた。

 

「鬱蒼としてきたね…。」

 

「本当…リリーさんは良く進めますね。」

 

道なき道を進むのはリリー達のチームであり、バケツの菓子はそこそこな量なのだった。

 

「こんなところ平気なもんですって、探偵は足も大事なので!」

 

「…それよりまだ着かないんですか?」

 

「道を真っ直ぐと言ってたから大丈夫ですよ!」

 

「………お兄ちゃん…。」

 

「ミレイユ…分かってる…。」

 

意気揚々と先をリリーは真っ直ぐと進んでいた、しかし本当は別れ道があったり谷や崖で迂回したりと先程までいた市街地からきっともう真っ直ぐとはなっていないのだった。

 

「ー♪」

 

しかしリリーはそんなこと面知らずにひたすら突き進んでいた。

 

「とりあえず帰れるといいね…。」

 

「もしもの時はみんなに迷惑かけるかもしれないけど救助してもらおうか…」

 

そして後ろの二人はそれをトボトボと追いかけていた。

 

「…?」

 

「んん?」

 

そんな状況が暫し続いたが二人は急に足を止めたのだった。

 

「どうしたんですか?急に足を止めて…」

 

「静かに…何か聞こえませんか…?」

 

「むぐ…んー…?」

 

そう言われリリーは自分の口を塞いだ、しかし耳をすますリリーには木の葉が掠れ合う音や風の音ぐらいで首を傾げたのだった。

 

「変なのも何もですが…何か聞こえるんですか?」

 

「はい…何か良く聞いた事もあるような声な気もして…」

 

「…!ミレイユあっちから聞こえるぞ!行ってみよう!」

 

「あっ!?待ってよお兄ちゃん!!」

 

「むむっ…声ですか!もしや事件ですかね!それならば私も行かねばなりません!!」

 

そうして急ぎ先行するヨシュアをミレイユとリリーはしっかりと追っかけていた。

 

 

「痛たたっ…ようやく抜けれた…。」

 

「お兄ちゃん大丈夫!?今治すね!」

 

「わぁー…綺麗ですねー。」

 

雑木林に何度も枝を打ち付けられつつも三人は開けた所にへと着いた。

 

先頭のヨシュアはミレイユの治癒を受けており、リリーはその目先の大きな湖と花畑を見ていた。

 

「本当だ…こんなところがあるんだな…。」

 

「カティア様に後で教えて…あれって…?」

 

ミレイユが指差すのは花畑のある一面でありそこには紫や黄色や赤いマンドラゴラが何本も生えておりギエーギエーと月に向かって鳴いていたのだった。

 

「あれは一体…何なんだ。」

 

「分かんないですが、触らぬマンドラゴラに呪いなしですよ!そういえば聞こえていた声ってあれでしょうか?」

 

「いや違いますけど…あれ?」

 

「お兄ちゃん?……ええっ?!」

 

「…??今度はどうしたんですか?」

 

リリーは興味深く口を開けっぱなしの二人の視線の先を虫眼鏡で見た、その先にはマンドラゴラの花畑である。

 

「かっ…。」

 

「かっ?」

 

「「カティアさまぁ!?」」

 

「カティア様…?って!行くんですか?!待ってくださいー!!」

 

叫び二人は駆け出してリリーはそれを追って湖の側に着いた、そしてリリーの近くではマンドラゴラが鳴き合っていた。

 

「ギエー!」 「ギエェェピー!!」 「ギエェェァァ!!」 「ギッギェー!」

 

「ううっ…近くだとおぞましいですね、でもこんなに近くで聞いてるのに頭が回りませんね……。」

 

「ここのマンドラゴラというかこの島のモンスター達は基本無害らしいわよー、おっほー!!」

 

そんな声が響くと周囲のマンドラゴラが共鳴するように鳴き始めたのだった。

 

「なっ…?何ですかこの奇声は!?新種のモンスターですか!?」

 

「失礼ね!ちゃんと人間…いや天才よぉ!」

 

「…………、ええっ……?」

 

リリーが目を見開く先にはヨシュアとミレイユを挟んで地面より顔が出ているカティアなのであった。

 

「あの…ヨシュアさんこれは一体…?」

 

「何でも実験…というか調査らしいです。」

 

ヨシュアは苦笑いを浮かべながら周りのマンドラゴラを見た。

 

「調査…!ということは調べてるんですね!」

 

リリーは自信満々にビシリと指差して宣言したのだった。

 

「そうよぉ、どうしてこのマンドラゴラの声が混乱させないかが気になるから同じ視点で見てみたらソッコーに分かったのよぉー!」

 

「でも分かったならこのままでいる必要性は…?」

 

「そうですよね…でも何か楽しいから暫くはって感じらしいです、あはは…。」

 

そしてミレイユは頬を掻いてそう言い。

 

「おっほー!」

 

「ギェェェ!!」

 

カティアはまたマンドラゴラとまた共鳴するように鳴き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな声が響いていたがその声が届かないサーウィン島の神社の境内にてコヨミ達はお祭りの中にいた。

 

「はむはむ…綿あめ美味しいね!」

 

「キャン!」

 

「お菓子も一杯だよー。」

 

「お祭り楽しいのー。」

 

彼女らは綿あめとお菓子入れのバケツを手に様々な露店を回ってトリオアトリをしつつ楽しんでいた。

 

「クゥーン…?」

 

「タロー?…あっ!そろそろなんだね!」

 

そんなところでタローはコヨミを呼び首に吊るしてるカボチャの形の懐中時計を開かせた。

 

時計の短い針は7時と8時の間であり、8時の所には赤い丸があったのだった。

 

「そろそろ時間?」

 

「そうだね!そろそろ戻らないとご褒美貰えなくなっちゃうよ!」

 

「それじゃ帰るのー!」

 

そうして沢山の人並みを流れて神社から出ようとしていた、しかしその人並みに憚れて出れずにいた。

 

「中々出れないよー。」

 

「だったらまとめてふんわりとー…。」

 

「駄目だよー、それじゃみんなが迷惑かけちゃうよ!」

 

「だったらどうするのー?」

 

「うーん…。」

 

「おっ、そこにいるのはコヨミじゃんか?」

 

コヨミとタローはピクンと耳を動かしてその声がした方にへと振り向いた、そこには何時もの巫女服な姿のコリンが笑っていたのであった。

 

「あっ!コリンねーね!」

 

「キャウン!」

 

コヨミとタローはコリンの方にへと小走りで向かって飛び込んでコリンはコヨミを受け止めたのだった。

 

「おっと!急に驚くじゃんかー?」

 

「えへへ…でもコリンねーねなら必ず受け止めてくれるから!」

 

「まぁそうさねー、んで…と。」

 

コリンは一旦密着していたコヨミから離れた、すると置いてけぼりだったエクルとモコがやって来た。

 

「んー…?」

 

「えーっと…何でさっきからこっちをじっと見てるもんかな?割りと恥ずかしいんだけど…。」

 

「あっ、ごめんね。モコ目が悪いからこうしないと良く見えないんだ…それで誰かな?」

 

「そっかー、そんじゃあたしゃコリンさね。コヨミが世話になってる感じかなー?」

 

にへっと笑いながらコリンはモコに近付き帽子を取るとその頭を撫でたのだった。

 

「ううん、むしろコヨミちゃんにお世話になってるよー。」

 

「なのなのー。」

 

「アゥーン…。」

 

「あー…そっか、コヨミも中々やるじゃんかー。」

 

「えへへー、にーにの真似っこだけどコヨミ頑張ったよ!」

 

「そんなコヨミにはご褒美だー。」

 

そうしてコヨミのバケツにぽとぽととお菓子を入れたのだった。

 

「わっーい!ありがとうコリンねーね!」

 

「あー!エクルにもちょうだいちょうだいー!」

 

「モコにもー!」

 

「はいはいっと…おっとただ渡すのは面白くないしー…私らをあっと驚かせれたらあげようかねー。」

 

「驚かすのー?うーん…。」

 

「それならモコに任せてー取っておいた<とっておき>の出番だね!」

 

するとモコは小さな懐中時計を取り出して上にへと高々に挙げたのだった。

 

「時計の針よ、グルリンパッパでナイスバディー!」

 

「ふぉっ!?」

 

「わっ?!」

 

「わー?」

 

「じじゃーん。」

 

すると紫でぺったんなモコの髪色や背丈や胸やらが変わりとてもナイスバディーな姿にへと変身したのだった。

 

「こりゃびっくりな変身だー…驚いたねぇ…。」

 

「驚いた?それじゃ…!」

 

「あげるけど…ちょっと場所を変えよっか?」

 

「え?何で?」

 

「まぁ…回りがねー…ともかく抜け道知ってるからついてきなー。」

 

そうしてコリンは神社の裏の森の獣道を通った、途中悲鳴等が小さく聞こえたりもしたものの少し広めな草原に着いたのだった。

 

「ここならいいかなー?無事に撒けたしね。」

 

「撒く?」

 

「それよりもご褒美まだー?」

 

「はいはいっと、ぽとぽとっとね。」

 

「よいしょっと!ありがとーコリンおねーさん!」

 

するとモコは懐中時計を閉じて変身を解い手を握ったのだった。

 

「モコちゃんコリンねーねはあっちだよ?」

 

「…あっ!ごめんねー。えーっと…コリンおねーさんだよね?」

 

「そうだよー。…にしてもこんなんだとRASNが見捨てちゃおけなさそうだねぇ?」

 

そう言いコリンはモコの頭をさらさらと撫でたのだった。

 

「RASNおにーさん?おにーさんなら、一緒にお昼寝したり追いかけっこしたり…あとモミモミも一杯してあげたよ!」

 

「モミモミ…?まぁRASNらしいかなー?」

 

「…?」

 

「…モミモミ…コヨミだって…!」

 

「アゥン?」

 

「じっー?」

 

苦笑いするコリンにモコは首を傾げ、コヨミはその二人を見てそう小さく呟いた。

 

そしてエクルはモコの持ってるコンパクトをじっーっと見ていたのだった。

 

「んぁ?どうしたのエクルちゃん?」

 

「モコちゃんこれを使って大きくなれたんだよね、エクルも出来たり出来ないかな?」

 

そして撫でられ終わったモコが視線に気付くと、エクルはコンパクトをコツコツと突々いていた。

 

「どうだろー?」

 

「んー物は試しだしやってみよっかー?」

 

「そうだね!はい!」

 

モコはエクルにへとコンパクトを渡してパカリと開いたのだった。

 

「えーっと…時計の針よ、グルリンパパッとでナイスボディー!だっけ?」

 

「うーん…確かこうだったような気がするけどねぇー。」

 

「時計の針よ、グルリンパッパでナイスバディー!んでもってコーンっと!」

 

コリンはそう叫び一回転して煙に紛れた。

 

そして晴れるとそこはコヨミ達と同じぐらいの身丈と張りのコリンが立って、何故かマフラーが体に巻き付き全身もっふもふでもっこもこでモフモコな姿なのであった。 

 

「わーコリンねーねモコモコだー!」

 

「可愛いねぇー。」

 

「存分にモフりなー。」

 

「よーし!時計の針よ、グルリンパッパでナイスバディー!」

 

「んっ…そういやエクルは確か……やばっ…!」

 

そしてエクルは高々に叫んだ、その後サウィン島の上空からいくつものマフラーが落ちてきたとか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなでマフラーが落ちてくる前の頃、街中ではヒナらがスタート地点のギルドの方向にへと歩いていた。

 

「回りも少しずつ人が少なくなってきたね?」

 

「そうですね、もう時間も遅いですから…ヒナちゃん大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だよ…ピィ…。」

 

そう言うヒナはこくりこくりと頭を漕いでおりポンは心配そうに側にいた。

 

「…ヒナちゃんの為にも早く戻らないとね、お菓子いっぱいだし少し休ませて貰えるかもね。」

 

チヨは三人のバケツを持たせた六つの折り紙の鶴とヒナを見て歩の勢いを強めた。

 

「はい!それじゃ行こっ?」

 

「うん…、………ピヨ…?」

 

二人もチヨに追い付こうと歩を強めた、しかしヒナはピタリと辺りを見渡してから歩を止めたのだった。

 

「…?どうしたのヒナちゃん?」

 

「ピィ……この感じ…あっち?」

 

来なかったヒナを心配してチヨらは戻ってきた、だがヒナは遠くを見詰めると走り出した。

 

「あぁっ?!待ってください!?」

 

そして二人も少し遅れてだがヒナを追いかけるように駆け出した、しかし人混みなどに紛れてしまい見失ってしまった。

 

「意外に機敏、そしてはぐれちゃったか…。」

 

「どうしましょう…。」

 

「まぁでも安心して、この子達に頑張ってもらうからね。」

 

そうするとチヨは折り紙を次々と折って鶴やコウモリやタコを折ると空へと飛ばしたのだった。

 

「見つかると良いですね…。」

 

 

 

 

そんな中でヒナはまだ駆けていたそして息を切らしながら周囲を見ていた。

 

「はぁ…はぁ…あっ!」

 

そしてハッとある方向を見るとそちらにへとことこと駆け出していった。

 

「ママっ!」

 

「…ちょっ!?えっ?!ヒナちゃん!?」

 

そこにいたのはカスミであり桜が散りばめられた巫女装束に身を包み頭飾りには冠を飾られていた。

 

「あら…この声はヒナちゃんでしょうか?」

 

そしてカスミの側にはフローリアがおりその格好は黒くゴスロリ風なドレスであるがどこか囚われている感が滲み出ていた。

 

「ピィ…?フローリアねーね黒いね?」

 

「こういうのもたまには良いかと、何故かカスミには少し反対されたけど…。」

 

「そうなの…?」

 

「まぁ、その姿を見るとあの時をね…。」

 

「あの時ですかー…あの時にはカスミとRASNさんの愛の力に救われて…そして…。」

 

「…そんなことはしてない。」

 

「ピヨヨ…?」

 

フローリアが淡々と語る中、カスミは訝しげな顔でヒナの両耳を塞いでいた。

 

「でも背中合わせでしたのは本当ですよね?」

 

「まぁ…それはそうで約束した事で…。」

 

「そしてその間にはヒナちゃんが…」

 

「……………はぁ…。」

 

そうして暫くフローリアの話は続いた、するとヒナの近くに折り鶴が飛び交うとチヨ達がやって来た。

 

「ヒナちゃん!ここにいましたか!」

 

「あら?ポンちゃんに…この鶴はチヨちゃんでしょうか?」

 

「そうだよ。それとようやく見つけたよ、ヒナちゃん?」

 

「ピィ………ごめんさない…。」

 

「お揃いの格好…もしかしてそんな感じかしら?」

 

「そんな感じです!それに結果は割りと沢山ですよ!」

 

ヒナが隠れてるカスミがそう問いかけるとチヨは無言でバケツを持たせた鶴を降ろし、中のお菓子を見せたのだった。

 

「へぇー…中々にやるじゃないの。」

 

「それでは私達の方でも少しだけあげますね。」

 

「まぁ…そうね、ハロウィンだしね。」

 

そうしてフローリアは花を象ったクリームサンドで、カスミは花を象ったクッキーを詰め込んだ袋を三つずつ入れたのだった。

 

「ありがとう!ママ…!」

 

「はいはい、それよりそろそろ時間じゃないかしら?」

 

「そうですね、今さっき戻っていたところで…まぁ途中でヒナちゃんがね…。」

 

「ピィ…。」

 

「…だったら私達が着いていこうかしら?もう暗いしね。」

 

「それがいいですね!一緒に行きましょう!」

 

そうして三人の一行にカスミとフローリアが加わってギルドの方にまた向かいだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-サーウィン島 冒険家ギルド-

 

外ではゴォンと鐘が大いに響く中、サーウィン島の冒険家ギルドには数時間前に出発したメンバーが一同に会しお茶会みたくなのをしていた。

 

「コリンさんも同行されてたんですね?」

 

「あたしは途中で偶然会っちまってねー、カスミはヒナちゃんにずっと随伴で…?」

 

「違うわ、というかちゃんと数えてる?」

 

「数えてるってー…。」

 

一方ではミゼリコルデと共に各々のチームのバケツのお菓子の数を数えていた。そして数え終わると各々のチームのバケツを返し、ミゼリコルデは皆の前に立った。

 

「みんな今日はお疲れ様、ハロウィン楽しめたみたいね?それじゃご褒美の結果発表に行こうかしら。」

 

「…わわっ…!?…真っ暗!」

 

「…停電でしょうか…!?」

 

皆のいるギルドの一室が静かに暗くなると大半の小さい冒険家らは慌てていた。

 

「…今日いっぱいにお菓子を集めてくれたのはあなた達よ、おめでとう。」

 

そしてふわっと蝋燭の火が灯るとそこにはニコりと微笑むミゼリコルデが剣のような蝋燭を持ってヒナ達のテーブルの近くにいた。

 

「ふふっ、やったね。」

 

「ピチチッ…!」

 

「やりましたよー!それにとても美味しそうです!」

 

そしてミゼリコルデの隣のジャック・オ・ランタンの被り物をした人がホールケーキをヒナ達のテーブルにへと置いたのだった。

 

「本当に美味しそうですね…じゅるり…。」

 

「いいなー…。」

 

「エシリアも食べたいー!」

 

「そんなに慌てないで?ケーキじゃないけどこんなのを用意してあるわ。」

 

するとコリンらが扉を開いてやって来た。

彼女らの手の上には香ばしく香るパイがあり、各々の空いているテーブルにへと置いたのだった。

 

「わっーい!ラッキーだね!」

 

「美味しそうなのー!」

 

「ケーキでは無いのが少し悔やまれますが…こちらはこちらで美味しそうですね!」

 

「よかったわ、それじゃ美味しく頂いてね?」

 

「はーいっ!」

 

「頂きまーす!」

 

「頂きます!」

 

そうしてヒナ達以外のテーブルではパイを切り分け食べ始めた。

 

 

 

 

そしてカスミらはミゼリコルデの所にへと集められた。

 

「急に来てお菓子の数えだけじゃなくてパイの配りまで手伝ってくれて…本当に助かったわ。」

 

「何てことないってー。」

 

「そうですよ、それにお二人だと大変でそうでしたし…。」

 

「…そういえばそうと、貴方誰かしら?」

 

「……。」

 

ニコりと微笑む三人に対してカスミだけはカボチャマスクをじっーと見ていて、カボチャマスクは黙りだった。

 

「そうですね…誰でしょうか…?」

 

「んー、こうも沈黙してるのはそのマスクのせいか…もしくは元々とか?」

 

「………。」

 

「黙ってないでそれを外して挨拶ぐらいは…ヒナちゃん?」

 

「じっー……。」

 

するとヒナは席を立っていてカボチャマスクをじっくりと見上げていた。

 

「どうされましたかヒナちゃん?」

 

「何か見えたりしたのかい?」

 

「………。(ニコッ)」

 

そしてにっこりと笑うとヒナは目を閉じてもたれるようにカボチャマスクの脚に抱きついた。

 

「パパ………!」

 

「ふぉっ?!」

 

「ということは…!」

 

「…、…!」

 

カボチャマスクは頭に手をかけてスポンとマスクを取った、するとそこには見慣れた赤髪な主人公君のRASNが顔を出したのだった。

 

「まさかRASNだとは…こりゃ一杯食わされたねぇ…。」

 

「RASNにはここの飾り付けにパイやケーキ作りに色々と手伝ってくれたわ、ありがとね?」

 

「…!」

 

「むっ…カスみぐっ!」

 

「……別になにもねー…もぐもぐ…。」

 

フローリアが口を出す前にカスミはマシュマロをその口に突っ込み、カスミの方はマカロンを食べていたのだった。

 

「パパ…いたんだね?」

 

「…!」

 

「ピチチッ…撫で撫で…。一緒に食べる?」

 

「…!!」

 

「それじゃ…ママも…!」

 

「えっ?!ちょっと…!?」

 

するとヒナはカスミの手をテーブルまで引っ張り、自身はRASNの膝上に座り隣にカスミを置いたのだった。

 

「お帰り、ちゃんと切り分けておいたよ?」

 

「RASNさんにカスミさんの分も分けておきましたよー!」

 

対面のチヨとポンは三人にへと切り分けたケーキをニコニコと渡したのだった。

 

「美味しそうだね?」

 

「そうね…」

 

「…!」

 

「…んしょっと…ママ…あーん?」

 

「…っ!あっ…あーん……。」

 

ヒナは自身のケーキを少し掬いカスミにへと突き付けた、カスミは戸惑ったが顔を赤らめて口を開いた。

 

「ほほうほう…。(パシャパシャ)」

 

「いいですねー…。(カシャカシャ)」

 

そして遠巻きでは二つのシャッター音が鳴っていた。

 

「美味しい?」

 

「…うん、美味しいわよ。」

 

「良かった…それじゃ…パパ?あーん…。」

 

「…!」

 

カスミに食べ終えさせると今度は上を向いて口を開いた、そしてRASNは自身のケーキを少し掬いヒナの口にへと運んだ。

 

「んむんむ…美味しいね?」

 

「…!」

 

「そう、良かったわね?」

 

「あとはママとパパ…」

 

「ええっ…!」

 

「駄目…?」

 

「うぅ…、…くっ…。」

 

カスミは苦悶した。

少し少しと悩んでからカスミは目の前のケーキを少し掬って、震えながらもRASNに近付けた。

 

「……ちょっと行儀は悪いけど…ふんっ!」

 

そしてケーキがヒナの頭の上付近になった時、スプーンを放り投げて見事に照明のスイッチを落としたのだった。

 

「わあ!?何ですかー!?」

 

「また暗いやー!」

 

「えいっー!」

 

「…!?」

 

急に暗くなりどたばたと大騒ぎだが程なくしてミゼリコルデが照明を付け直した。

 

「みんな大丈夫?」

 

「大丈夫ですが…急はやっぱり驚きますよ…。」

 

「パイ落としてないよねー?」

 

わちゃわちゃとする中でカスミとRASNの頬にはケーキのクリームが付いていた。

 

「ママ?」

 

「ケーキはもう食べちゃったからもうできないわよ…それにそこも諦めなさいよ?」

 

カスミは細い目でクリームを拭き取りながら残念そうな顔をしてるコリンにフローリアを見てそう言った。

 

「んー…残念だねぇ?」

 

「全くですね…音ではちゃんと食べさせていたのは分かったんですが…。」

 

「本当ね…。」

 

二人の傍にミゼリコルデも来て同じく残念そうにしていた。

 

 

 

 

そしてカスミ達に聞こえないような声でこそこそと話し始めた。

 

「いやー…流石はフローリア、タイミングばっちりだぜ?」

 

「何よりです、ちゃんと撮れてますか?」

 

「おうよ、ナイトビジョン仕様は伊達じゃないぜ?」

 

「オバケ達にも頼んで近くのも撮ってあるわよ?」

 

「やるねぇー、にしても何でかねぇ?」

 

「ふふっ、ちょっとした悪戯よ?」

 

ミゼリコルデは口に指を当ててそう意地悪そうに微笑んだ。

 

 




次回予告

今現在こちらではまだなシリーズ物となります、それともしかしてかもですがもうひとつ書いてもしかしたらR-18物になる可能性も…?


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