その名を汚すな。   作:水口

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6話【シリウス・ブラック】

「なぁ、これでよかったのかよ」

 

俺は確かにシャーロットと話したいとも言ったし、ジェームズだってエバンスと話したい。

「…何がだい?」

 

不思議そうに、でも気づいているような笑顔を浮かべていうジェームズに腹が立った。

しかし、こんなことだから俺もガキだのいわれるのだ。

 

「多分、シリウスは直接リリーと話さないことをいっているんだよ」

 

ああ、というとジェームズは自嘲気味に笑った。

まぁずっと無視を続けられていたらそうもなる。

俺だってもう笑ってしまいたい。

 

「話してもらえないだろう?

それに、彼女なら大丈夫さ。きっとリリーと僕を結びつけてくれる!」

 

呑気に寝ているシャーロットを見ると、相変わらず笑顔もない顔だったが、久しぶりにみたシャーロットの顔をみてほっとする。

俺はシャーロットのことが好きだという噂がある。

それが真実かは俺にさえわからない。

 

マグル生まれの魔女なんて、兄様本気ですか?

 

何処からその噂を聞きつけたのか弟_レギュラスにそう言われたことがある。

俺は俺なりに考えているのだが純血生まれのお坊っちゃまは俺のことが気に入らないらしい。

 

「エバンス、大丈夫かな…。本当は薬でもあげたいけれど…」

 

「まぁ、しょうがない!風邪を彼女がひいてくれたおかげで今こうしてここにシャーロットがいるのだから!」

 

いつも以上にテンションが高いジェームズを鬱陶しく思いながら俺の目の前で寝る女を、早く起きねぇかな、なんて思いながら見つめる。

 

おれはきっと、こいつのことをまだ知らない。

純血が嫌いなこと。これは俺もだけど、俺も純血だ。

意外と成績優秀なこと。

マグル生まれだということ。

俺たちのことを嫌いなこと。

 

「うるさいなぁ…」

 

不機嫌そうにおきたシャーロットにごめんっ、とすぐさま謝るピーターに、リーマスが続いた。

 

「お腹空いたんだけど、なんか売りに来た?」

 

もうすぐ来るさ!とテンションが高いジェームズを鬱陶しそうにみながらそう、と静かに言っていた。

 

「蛙チョコレートはいかが?」

 

ほらきた、といわんばかりの顔をしたジェームズにうざいと一言いうシャーロット。

3つください、と気だるげにいうとそれにリーマスが続き、何個も買うその姿にシャーロットは驚いていた。

そして蛙チョコレートを買えてか、機嫌が戻ったシャーロットに話しかけた。

 

「なぁ、蛙チョコレート好きなのか?」

 

俺の方を一瞥してから、蛙チョコレートに目を移し「お菓子は美味しいからすき。」と答えた。

リーマスと同じだな、と言おうと思ったがリーマスは以上なほどのチョコ好きだ。

 

「貴方は?」

その言葉に思わずえっ?と間抜けな声をだしてしまった。

シャーロットが俺と話を続けようとしてくるだなんて、感動でしかない。

ねぇ、聞いてるの?と言われてやっと正気にもどる。

 

また不機嫌になられても困るので、というか話したいので、「あんま甘いのは好きじゃないけど、あんま甘くねぇのは好きだ!!」

 

「そうなの、というか声で言わないでよ。うるさいわ」

 

あ、ごめんと即座に謝る。

その姿にあははっ、と笑うジェームズ。

 

「シリウス、君はシャーロットの犬みたいだ!あははっ!!」

 

あまりに笑っていうものだから、言い返そうと思ったが誰の笑い声か、ふふっと小さい笑い声がきこえてきた。

ピーターかと思ったが、どうも違うらしい。

シャーロットだ。

 

「確かにそうね!シリウスって犬みたいだわ!あはは!」

 

その言葉に、思わず固まる。

犬みたい、なんてよく言われるが、それ以前にこいつ俺のことブラックとよんでいたような気がする。

それに気づいてか、ジェームズがニヤニヤとこっちを向いてきた。

腹が立ったが、自然とその気持ちも和らいだ。

 

「?ブラック、どうしたの?」

 

次の瞬間には戻っていた。完全に無意識のようだった。

ブラックと呼ばれるのは嫌いなんだけどな…。

ブラックと呼ばれるたびに、駅で他の奴らがジロジロ見てくるのがわかった。もちろん、マグルは別だが。

 

「シリウス!」

 

突然俺が自分の名前を言ったので、不思議そうな顔をしているシャーロットに、「俺の名前いってみろ」と言ってみる。

 

「シリウス・ブラックでしょう?急に何?」

 

「ブラックは、ホグワーツには二人いるんだ。だから、シリウスって呼んでくれよ!」

 

ニッ、と笑ってみせると考えとく、とシャーロットは笑った。

綺麗な顔で笑うな、と見つめていると、目を逸らされた。そして楽しそうにリーマスと話し始めたが、リーマスは俺を気にしているようだった。

 

その顔が、俺といるときより居心地良さそうにしてて余計イラついた。

 

「相棒、かっこよかったじゃあないか!」

 

ジェームズのその言葉に、うんうんと激しくピーターが頷く。

いつも何かとからかってくるジェームズも、リーマスも。その横で賛同するピーターも。

今日だけは何故か、いいやつに見えた。

もちろん、いい奴らだというのは分かっている。

「お前には負けるぜ、相棒」

 

そうかい?と照れたように頭をかくジェームズに頷いた。


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