悲しそうに目を伏せるシャーロットを見て変な気分になる。
普段強気な女が見せる弱い部分というのは、どうにも落ち着かせないものがある。
ふたりきりで話すこともあったけれど、ここまで静かな中で話すのは落ち着くものではなかった。
弱々しく笑うそいつになんと言葉をかけてよいのかわからずに「シャーロットも魔法は上手いよ」と言う。
シャーロットのいうスニベルスの才能は恐ろしいものでもあった。魔法に引きずり込まれていくようなそんな。
「あなた達何をやっているの?」
今年新しくきた先生がヒステリックに叫ぶ。
こりゃ罰則か、と頭を掻いたがシャーロットはすみません、と素直に謝る。その姿は月明かりに照らされて恐ろしいほど綺麗であった。
全く、と小言をいい始めるかと思ったが流石に新任だからか強気にはでられないようでラッキーだと思う。
__罰則内容は、明日のこの時間に魔法を使わずに部屋を掃除すること。
珍しく簡単な罰だったがシャーロットは苦い顔をしていた。
簡単なのはこいつがいるからか、と感謝する。
それなりに先生からの信頼もあついし(今の先生は新任だが)俺らのようにいたずらするわけでもないからもててはいるのだろう。
四年生になったらやりたいことがあった。ダンスパーティーはクリスマスに行われるから、誘おうとは思っていた。
だけど言えるタイミングもないし、きっと断られてしまうといいだせなかった。
「シリウス、おやすみなさい」
「おう、おやすみ」
ゆれる三つ編みは、一年のときより長くなっていた。
ジェームズに話したらうるさいから言わないけれど、やっぱりシャーロットのことは好きなんだと思う。
その場から足早に去るシャーロットの後ろ姿を久しぶりに見た。
__ブラック家なら。
__レギュラスなら。
休暇中にいわれたそれはどうしようもなく俺を傷つけていく。マグル生まれなんか、純血。とびかうその言葉に苦しめられているのはマグル生まれのシャーロットも同じで。
スリザリンの、スニベルスもそうだ。純血ではないにしろスリザリンとグリフィンドールの中はよくはないのだから、エバンスには惚れているようでそのせいでジェームズにからかわれたりして気の毒だと思うこともあるけれど俺には関係ないと思っていた。
エバンスは怒るけれどシャーロットが怒っているところは見たことがなかった。そこまで深い関係でもないのか、それともエバンスとスニベルスが親密すぎるのか。
俺もはやく寝てしまおう。余計なことを考えてしまう夜は嫌いだった。昼間の騒がしいホグワーツは好きだけれど夜になると少し不気味になる。
「相棒、いい雰囲気じゃないか。妬けるなぁ」
「ジェームズ」
ニヤニヤと俺を上目遣いでみるジェームズに見られていたのか、と恥ずかしくなる。
からかうように追いかけてくるジェームズに「どこから見てた」と言う。
「先生に見つかったところからさ」
「そうかよ」
俺がそう言うと、ジェームズは立ち止まる。どうした、と後ろを振り向くと「誘うのかい」と。
最初は意味がわからなかったがジェームズの照れたような仕草にダンスパーティーのことだと悟る。きっとジェームズもさそうつもりなのだろう、スニベルスとエバンスなんてのもあり得るが。
「お前は」
「もちろん、誘うよ」
OKかはわからないけれど、と言葉を濁してはいたが今回のシャーロットにもよるのだろう。
エバンスと仲がいいからなのか、それなりに話してはいた。そんなジェームズに妬いている俺も、どうしたものなのか。
「僕は応援するよ。シャーロットちゃんとシリウスくんなんて美男美女じゃあないか、ホグワーツ中のみんなが君たちをすげぇってキラキラした目で見るんだよ。
君の弟のレギュラスくんだって、なんていうかはしらないけれどシャーロットちゃんはいい子だからね」
いい子。どういう意味なのかはわからないが魔法の話だろうか、それとも性格の問題なのか、きっちり着こなされたグリフィンドールの色だろうか、きれいにしばられた三つ編みだろうか。
思えば、シャーロットはたしかにいい子だ。模範的で先生たちからも愛されてそれでいて男子生徒からは憧れられているし、現に俺もそのひとりだ。
俺とは正反対だ。
「俺も応援するさ、ジェームズくんとリリーちゃんだって優等生どうしだ。皆から愛されるジェームズくんも、先生からも皆からも正義感が強くて慕われるリリーちゃんもお似合いだ。今はすましてるけれど惚れたらベタボレだよ」
「__虚しいねぇ」
「そんなもんだろ」