阿朱羅丸が手を出さず、天使二柱の戦いが続いている世界線です
プロローグ/出来るだけ強そうに
その時点の名古屋空港には、多数の死者と、事態を起こしたものと、巻き込まれた者と、唯々力を振るうだけの者が存在していた。
存在していたのはそれだけだったが、空港の外からその事態を見ている者達は居た。
全員が良質なスーツ一式に身を包んでおり──内一人はその上にマントを重ねて、手には二つに折られた紙を持っている──
「私が出る。お前は護衛対象を彼から彼等へ。恐らくは合流して逃走するだろう。」
「了解。」
「お前は私に代わり吸血鬼を纏めろ。あの小僧は好かん。手綱を握らせるな。」
「了承しました。貴方は?」
「…先に帰る。後でクロウを合流させる。」
「わかりました。」
「では、行ってくる」
「「行ってらっしゃいませ」」
白髪で、マントを着込んだ一人が空港に向かって跳躍していった。
残された二人は、下げていた頭を上げ、互いを見る。
「…お疲れ様です、アーサー様」
「ああ、お前も励め。…外だとやはり堅苦しい会話しかできんのが面倒だな」
「仕方ないですよ、アーサー様は王の部下で俺はそのもっと下の部下。俺らがちゃんとしとけば、王の威厳も保たれるってもんです」
「…そうだな、王の側近が威厳のない者では締まらない。…私も行って来るとしよう」
「はい、行ってらっしゃいませ」
金髪の少女がビルから飛び降りていく。
残された一人はため息をつき、空港の出口を見張るために目を細めていた。
空港内では、二柱の天使がその力を振るっていた。それぞれの兄弟も、家族と呼ぶことを決めた者達も、手を出すことが出来ずに居た。
立ち入れば間違いなく死ぬ。そう思わされる程、圧倒的な光景だった。
(どうして、こんな…仲間を犠牲にして、君月さんの妹も、優さんも…これが、帝鬼軍の、やり方…?)
柊シノア、帝鬼軍の中心たる柊家の娘は困惑していた。
これが自分と血の繋がった人間が仕組んだことなのか、と。
人一倍聡い彼女は、この光景を見上げながらも、思考を止めない、止めることが出来ない。
自分が今、誰を家族と呼ぶのか。彼等を守る為には、如何するべきなのか。
止めることの出来ない思考は、一つの結論を出すも、其処へ至る術も、其処から先へ進む道も見つけ出せずにいる。
(優さんと妹さんを止めて、帝鬼軍に離反して、二人を連れて、帝鬼軍にも吸血鬼にも見付からないところまで逃げる…難関が多すぎます…!)
力が足りない。二柱を止めて、追っ手を振り切るような。彼女が、彼女の家族を守れるような。
(このまま暴走が止まれば、きっと二人は帝鬼軍に回収される。そして、実験体か、兵器として扱われてしまうっ…何か、帝鬼軍も、吸血鬼も予想していないような、何かが、起これば…!)
そうして上空をを見上げ続けていると、暴走し、ぶつかり合っていた二柱の天使の動きが突如止まる。だが力尽きたわけではない。何故なら間に何者かが
「初めまして、日本帝鬼軍」
(なんの冗談だ、あれは)
帝鬼軍の柊暮人は思う。
「私が第一位始祖」
(暴走した君月未来と百夜優一郎が…完全に押さえ込まれている…?)
「ロイドだ」
規格外という言葉そのものを具現化したような存在が現れた。
(実験する側もされる側もガキだらけか、仕方ねーとはいえ世も末だわな)
受験生なのでゆっくりのったり書いていきます。よろしくお願いします。