時間は少々巻き戻る。
「第一位始祖、ロイドだ」
名乗る相手を誰もが見る。見るが、それだけだ。
何も出来ない。
動けば此方を見られてしまうのではないか、自分が狙われてしまうのではないか、そんな恐怖が、其処にはあった。
故に誰も反応できなかった。
第一位始祖を名乗った者が、帝鬼軍の制服を着た天使の首に手を伸ばして胸倉を掴み、それを下に向かって投げたのだ。
思わずそちらに目が行く。
「私から目を逸らすか、帝鬼軍」
その言葉を聞いた瞬間、第一位始祖の方に目線が戻る。戻さねば死ぬのだと、そう本能が判断したかのように。
第一位始祖は左右に跳ねた前髪に、癖の無い長い後ろ髪を一つに纏め、首回りにファーの付いたフード無しの黒いマントを鎖で止めている。
マントの中には上質なスーツを着ており、ネクタイピンと、マントを止める鎖に、同じ意匠が象られた飾りが付いている。
国籍も性別も判断の付かない顔立ちに、真っ白な髪と肌、白目と黒目の色が入れ替わった瞳がその謎めいた雰囲気を深めていた。
「…第一位始祖か、凄いのが出て来たな」
そう零す一ノ瀬グレン。
だが、余裕ぶって刀を肩にかける手はきつく握りしめられていた。
「…帝鬼軍は人間を守ろうとする組織だと聞いていたが、まさか滅ぼそうとしているとはな。」
「そんなわけ無いだろう。我々は、人間を脅かす吸血鬼を全滅させるために貴様らと戦っている」
第一位始祖の言葉に暮人が反論する。
「このような幼い同族と、数多くの部下を犠牲にしてもか?」
「大義には犠牲はつきものだ」
「…くだらん、天使が何かも理解せず、同族を捧げるとはな」
そう言った第一位始祖は、君月未来の胸に右手を当てると、何かを掴んで引き抜いた。
同時に気絶した君月未来を左手で抱えながら、引き抜いた何かを右手で握り潰す。
「このラッパを使って呼び出される天使は、ありとあらゆる命を消そうとする。目的の無い、悪魔と呼ばれるものの方がまだマシだろうな」
握り潰された金色のラッパが手放され、地上に届く前に燃えて灰になる。
「…何を、した」
燃え落ちるラッパを見た暮人が呆然と尋ねる。
「この娘にはもう天使の力は無い」
「なっ…」
絶句。無理も無い。貴重な兵器が、その数を減らしたのだから。
「…同族の、少女の命が助かったことに対する反応がそれか。…腐っているな」
そう言うと、第一位始祖は君月未来を両手で抱え直し、
「人も吸血鬼も対して変わらんな」
と言い放つ。
「そんなわけが無いだろうっ!」
そう返す暮人には、もう興味が無いとばかりに
「力が無いとなれば、命が助かったと言われて喜ばれないこの少女はお前達には不必要なのだろう。貰っていくぞ」
それだけ言って、君月未来を抱えたまま、現れたときと同じように、唐突に第一位始祖は去った。
「待っ…!」
制止の声は遅く、上方にはただ広い空が広がるばかりだった。
「…撤退、生存者と実験の残留物を回収し、撤退する!」
この場の将たる暮人は、撤退命令を出す。
第一位始祖の“人間と吸血鬼が同じ”と言う言葉への動揺が抑えきれないまま。
(あの子ら空港は出たみたいだし俺もトンズラしよう、この子の病気もなんとかせねば)
ほらあれだよ、抽象的な力に形を与えて破壊可能にするとかそんなだよ(震え声)
原作世界線だと出来ないとか知らないったら知らない
始祖と真祖打ち間違えそう…ローマが偉大すぎる…
第一位始祖の外見
【挿絵表示】
書いたけど目と髪だけ覚えてて貰えれば良いから要らないのでは?