俺が普通に暮らす為の村作り   作:燈祁

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五話(出来るだけ冷酷に)の終わりに載せていたアーサー・ペンドラゴンの外見を修正しました。

感想にて、原作の第一位始祖についてご指摘を頂きました。
それに併せて、此処までの話数で「第一始祖」と誤表記してしまっていた所を、「第一位始祖」に修正しました。

あらすじに書いたとおり、この作品は「アニメ終わりのセラフ1期2期と漫画版終わりのセラフ1巻の描写を元にした、似て異なる世界」です。
今後も終わりのセラフの設定を外れた描写は多いと思われます。ご了承下さい。
また、感想を送って下さった方には大変申し訳ないのですが、「これは終セラ原作の重大なネタバレなのでは?」と思い、感想には注意書きを付けることが出来ないので、削除させて頂きました。
この場を借りてお詫び申し上げます。
また、最新話まで読んで下さり、感想を書き込んで下さったこと、大変嬉しかったです。ありがとうございました。



出来るだけ優しく

少女が目を覚ますと、焦げ茶色の木で出来た天井が目に入った。

暫くぼーっとしながら天井を眺めると、兄と暮らしたマンションとも、軍の実験室とも違うことに気付く。

 

不安になって、首だけを動かして辺りを見回すと、椅子に座って本を読んでいる黒髪の人間が見える。

服装はラフなものに替わっているものの、まとめられた黒髪と、本に向けられた金色の瞳が、自分を此処に連れてきた人物であると示していた。

 

「あ、目が覚めたんだね。おはよう」

「…おはよう…ございます…?」

 

視線に気付いたのか、本から顔を上げて挨拶をして来たので戸惑いつつも挨拶を返す。

その人物は本を置いてベッドの横にしゃがみ込むと、未来を運んだときと同じ、穏やかな声で話し掛けた。

 

「敬語なんて使わなくてもいいよ?気持ち悪いとか、体が痛いとかはない?」

「…うん」

 

手を借りて体を起こす。

今までより息がしやすいし、体も軽い。若しかしたら走り回れるのでは、と思うくらいには体調がよかった。

 

「…色々聞きたいと思うけど、先に君の体をチェックしよう。お医者さんを呼んでくるから、そのまま待っててね。…それとも先にトイレ行く?」

「大丈夫」

「わかった。すぐ戻ってくるからね。」

 

未来の頭を一撫ですると、部屋のドアに向かって歩いていく。

そのまま出て行くと思われたが、ドアノブに手を掛けたとこで振り返る。

 

「林檎食べれる?」

「え…うん」

「よかった、お水と一緒に持ってくるね」

 

そう言って破顔して、今度こそ部屋を出て行った。

 

一人残された未来は、部屋の中を見回す。

客室か何かなのか、置いてある物の少ない部屋だった。

寝ていたベッドはふかふかで、体を痛めることはそうそう無いだろう。

ベッド脇の小机にあった置き時計は朝の五時十三分を示していた。

外を見ようとドアとはベッドを挟んで反対側にある大きな窓を見ると、未だ日が出ていないのか外は薄暗く、窓は室内の光景を反射している。

 

未来は窓に映る物に目を見張る。

自分の顔にあったはずの奇妙な文様がなかったのだ。

ペタペタと頬を触ってみるが、変化があったのかはわからない。

 

此処は何処なのか、あの人女の人だったのか、名前はなんて言うんだろう、本当に病気は治ったのか、とあれこれ考えていると、再びドアが開く。

 

「ただいま、お医者さん連れてきたよ」

 

そう言って、一口サイズに切られて、フォークの添えられた林檎の載った皿と、硝子のコップと水差しを、両手にそれぞれ持って先程の人物が入ってくる。

改めてみると、服で分かりにくいが、やはり女性らしい体格をしていると思う。

両手が塞がったままドアを開けられるのかな?と思ったが、お医者さんとやらが居ることを思い出す。

 

ドアを閉め、鮮やかな緑色のカーディガンを羽織って歩いてくる、フワフワとした明るい色の髪と、若草色の垂れ目の青年は、未来が今まで見てきた「お医者さん」とは違って、気味悪そうにすることも、値踏みするような目で見てくることもなかった。

 

「初めまして、ボクはロマニ・アーキマン。暫く君を担当することになったお医者さんだよ、よろしくね」

 

少し屈んで、未来と目を合わせてそう言うと、微笑んで右手を差し出してくる。

医者に握手を求められたのは初めてで、未来は恐る恐るその手を握り、「…よろしくお願いします…」と小さな声で返す。

ロマニは嬉しそうな表情で手を握り返すと、持っていた物を小机に置いた女性がベッドの傍に移動させていた椅子に座り、女性に「ありがと」と言ってから、左手に持っていたボードとペンを構え、体調についての質問を始める。

 

「幾つか体調について質問するね。先ず、痛い所はあるかい?」

「…無いです」

「気持ち悪かったりはしない?」

「しないです」

「腕や足に感覚が無い部分はあるかな?」

「大丈夫です」

「物の見え方や音の聞こえ方に違和感はある?」

「無いです」

 

質問が続く。

時折ロマニがボードに目を落とし、ペンを走らせる。

 

「最後に、一寸後ろを向いて貰っていいかな?」

「?はい」

 

窓の方に体を向けると、背中に手が当てられる。

何をしているのか分からないが、手が温かくて心地良い。

 

手が離れ、「もうこっち向いていいよ」、と言われたので、ドア側に体を向け直す。

 

「結果だけど、概ね良好かな。病気は治せたと思うけど、今はおなかの中が空っぽで、いきなり沢山食べるとおなかが吃驚しちゃうから、とりあえず林檎を食べて、三時間くらい様子見しよう。十時頃になったら、一寸遅めだけど朝ご飯を食べて、リハビリがてらこの家の中を探険しようか。」

 

言われた言葉に衝撃が走る。

兄が頑張ってどうにかしようとしてくれていた病気が治ったと、そう言われたのだ。

すぐに信じることが出来ず、疑念が口から零れる。

 

「ほんとに…病気、治ったの…?」

 

思わず敬語を忘れるが、ロマニは

 

「体の中に、ウイルス…病気の原因がずっとあったから、苦しかったんだよ。それはもうボク達が全部取り出したから、病気が治ったんだ」

 

と言う。

 

そっか、私はもうお兄ちゃんを苦しめなくて済むんだ。

 

そう思うと、何故だか涙が出て来た。

突如静かに涙を流し始めた未来を見た二人がおろおろし出すが、涙は止まらない。

二人は服の袖で涙を拭ったり、「り、林檎食べる!?お水飲む!?」と慌てている。

 

数分経って、ようやく涙が止まる。

慌てていた二人も落ち着いたが、最初の穏やかな感じと、慌てているときのギャップが可笑しくなったのだろう。

 

「…ふふっ」

 

君月未来は、数ヶ月ぶりに、その顔に笑みを浮かべたのだった。

 




この先の話数ではクロスオーバー先のネタバレが出ると思います。タグ同様に、ネタバレが出た時点であらすじとその回の前書きに表記していきます。

~ロマニ・アーキマン~
淡い橙色の髪に、若草色で少し垂れ目気味の瞳の男性。
外見はFate/Grand Orderのロマニ・アーキマン。
今回の服装はワイシャツにカーディガン、シンプルなズボン、と私服っぽい物を何となくイメージしていただければ。
医者なのに白衣じゃないのは君月未来が実験をされていたと聞いて、怖がらせないようにと配慮した為。着ることもある。
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