詩音は、御影の言葉に返した。
詩音「へぇ…。御影は、知ってるんですか?悟史君の事」
御影「当たり前さ!だって、詩音ちゃん好きな僕が悟史君の事を知らない訳ないでしょ!?僕から見たら恋敵みたいな存在だしね!」
圭一「恋敵?」
詩音「質の悪い冗談は、止めてくれませんか?その程度で悟史君を知った気に…」
御影「四年目」
その言葉を聞いた時、詩音の口は止まった。
圭一は、真顔の御影と汗を垂らす詩音を確認した。
詩音「そうですか…。そこまで知っているなら何も言いませんが、あまり言い触らさないで貰えますか。聞いている方も気分が良くないので…」
御影「大丈夫だよ!この前、レナちゃんに話したら、シャレにならない事になったから!その辺は学習済みさ!」
詩音は、事情が分からず混乱している圭一とヘラヘラ笑っている御影を残して去って行った。
圭一「御影。悟史の事、何か知ってるのか?」
御影「知りたいの?でも、この話聞いたら気分悪くなるって詩音ちゃん言ってたし、レナちゃんの時は大変な事になったし、話しても良いけど文句言わないでよ?」
圭一「あぁ…」
御影「圭一君って、オヤシロさまの祟りって知ってる?」
圭一「毎年一人が殺されて一人が失踪する事件だろ?毎年起こってるって聞いたけど、それとどう関係あるんだよ?」
御影「ダム工事の時代になるけど、悟史君と沙都子ちゃんの両親はダム推奨派のリーダーだったんだ。勿論、悟史君と沙都子ちゃんは関係ないよ、北条一家ではなく両親が推奨派だったんだよ」
始めて聞いた話だ。
圭一は、ダム工事の話は聞いた事があっても詳細は知らなかった。
御影「勿論、この村はダムに沈まなかったんだから、ダム反対派も居たんだよ。当時は、ダムを推奨した北条家はダム反対派からもの凄い嫌がらせを受けたんだってさ」
御影は『両親』ではなく『一家』という表現をした。
つまり、嫌がらせを受けたのは両親だけではなく子供にまで及んでいたと。
御影「オヤシロさまの祟りの二年目の被害者がその北条一家の両親なんだ。事故とか言われてるけど、きっと雛見沢をダムに沈めようとしたバチが当たったんだね!」
圭一は、沙都子が両親を亡くしたと聞いていたが、そんな事件があったとは知らなかった。
御影「この後の事なんだけど、残された悟史君と沙都子ちゃんの面倒を見てくれるって言う叔父夫婦が来たんだけど…それが、とんでもない人達でさ。亡くなった両親の保険金目的でやってきて、悟史君と沙都子ちゃんに対して暴行・虐待ってのが日常茶飯事だったんだ」
圭一「えっ!?」
御影「これが酷いのなんの。悟史君と沙都子ちゃんは…僕は見た事ないけど、二人とも生気がないボロ雑巾みたいになってたんだよ。そこまで酷い事になったら誰かが助けに来ると思うでしょう?でも『北条』って姓の所為で、誰も助けなかったんだよ。酷い話だよね!」
圭一は、沙都子が村人に冷遇されているのを何度か見た事があったが、そんな背景があったとは知らなかった。
御影「そんな生活が一年以上続いてて、四年目のオヤシロさまの祟りで叔母さんが撲殺死体で発見、叔父さんは怖くなって雛見沢から逃げ出した。その後すぐに叔母を殺した頭のおかしい犯人は捕まって獄中で突然死。悟史君と沙都子ちゃんは幸せになって、めでたし、めでたし…」
圭一は安堵した。
今の沙都子達を傷つける奴は身近に居ないという事に。
しかし、御影の台詞にそんな安堵は吹き飛んだ。
御影「…って事にはならずに、今度は悟史君が失踪。沙都子ちゃんは一人ぼっちになってしまったのさ。おしまい」
圭一は絶句した。
沙都子にそんな事があった事。
悟史は転校ではなく失踪していた事。
詩音が怒り出すのも無理はないと思った。
御影「僕も雛見沢に名の残る事をやってみたいと思うけど、悟史君や沙都子ちゃんみたいな目には遭いたくないかな。この話は、レナちゃんの前ではしないでね!僕の話を聞いた途端に豹変して、下手したら五年目の犠牲者は僕になってたよ!」
圭一「そうか…沙都子もそんな辛い人生歩んでいたんだな…。でも、今は梨花ちゃんと暮らしてるし元気で良かったよ…」
御影「うん!沙都子ちゃんも永い苦労が報われたってもんだよ!」
御影は、笑顔でそう返した。