魅音は、御影に掴み掛かった。
魅音「何、勝手な事してんの…!!」
クラス一同は、魅音の豹変に驚いた。
御影「痛いよ!止めて!魅音ちゃん!」
圭一「どうしたんだよ、魅音!?落ち着けって!!」
圭一は、御影に掴んでいる腕を必死に解こうとした。
その腕はかなり固く、御影の服にもしわが残る程だった。
魅音「御影!あんた、何処まで沙都子の家の事を知ってるの…!」
御影「両親が死んで、叔父夫婦に虐待されて、村は裏切り者って理由で放置してたんでしょ?僕は、沙都子ちゃんとは仲が良くないかもしれないけど、そんな事で見捨てたりはしないよ!だから児童相談所にすぐ連絡したんだ、何かおかしい事でもあるのかい?」
魅音は、ゆっくりと御影を離した。
少なくても悪意があって行った行動ではないと分かったからだ。
魅音「…御影。あんたのやった事は間違いじゃないよ…。でも、それは正解じゃないんだ…」
圭一「どういう事だよ、魅音…?」
魅音は、悟史と沙都子が虐待されていた時に、村が児童相談所に通報した事があるのを話した。
しかし、以前に『沙都子が、沙都子の母親が再婚した後、その父親を追い出す為に嘘の通報を繰り返していた』事があり、相談所は事を慎重に見て『様子見』と判断を下したのだ。
それで終わるはずもなく、叔父夫婦は監視のない所で悟史と沙都子に対して、それまで以上の暴行・虐待を行ったと。
魅音「分かった!?相談所が、今動いても良い結果にはならない!それどころか、沙都子を追い詰めてしまうんだよ!!明確な証拠がない限りね…」
圭一「そんな…。じゃあ…どうすれば良いんだよ…」
魅音「…奇跡を待つしかないんだよ」
クラスは、魅音の言葉にしんと静まり返った。
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放課後。
圭一は、御影と帰宅していた。
圭一は、どうしても沙都子を救いたかった。
しかし、魅音・レナ・梨花は完全に諦めていた。
「奇跡を待つしかない」「私達は無力だ」としか言わなかった。
唯一、御影だけは違った。
「奇跡みたいなオカルトある訳ないじゃん」と鼻で笑っていたが、誰もそれに反応しなかった。
圭一は、御影しか相談する相手が居なかった。
圭一「御影…。沙都子の事、諦めてないよな…?」
御影「当たり前でしょ!僕は、皆みたいに奇跡なんてオカルト信じないよ!」
圭一「じゃあ…どうすれば良いと思う?」
御影は、発想と行動が早い。
昨日の御影の行動もそうだけど、彼の行動があったからこそ沙都子の叔父という存在にいち早く気づけた。
そして、詳しい事情を知らなかったとはいえ、その日に児童相談所に通報するという行動も起こしていた。
御影「案はあるけど、話すと気を悪くするかもしれないけど良いかい?」
圭一「何でも良い、沙都子を救えるなら教えてくれ…」
圭一は、藁にも掴む思いで聞いた。
御影「沙都子ちゃんの叔父とかいうオッサンを、五年目のオヤシロさまの祟りで消しちゃうんだよ」
圭一は驚いた。
つまり、今年の犠牲者として沙都子の叔父を殺すという事だ。
御影「綿流しって、毎年一人は死んで一人は消える風習があるじゃない?それに便乗して消しちゃえば納得してくれるよ!あんなオッサン、死んだって、消えたって、誰も警察に捜査協力してくれる訳ないでしょ?」
圭一「それをやれば…沙都子は助かるのか…?」
御影「やって見なきゃ判らないさ!でも放置してると、村の人同様に沙都子ちゃんを『裏切り者』として扱ってるのと同じだよ!」
圭一は悩んでいた。
沙都子の叔父を殺して自分が捕まった時に、本当に元の日常に戻るのかという事に。
御影「大丈夫だって。捕まるのが嫌だったら、園崎家の力を借りれば良いんだよ」
圭一「なんで、魅音の家の話が出るんだよ…」
御影「オヤシロさまの祟りって園崎家の仕業なんでしょ?そうじゃなきゃ、こんな連続怪死事件が起こるはずもないし」
御影の言葉には不思議と説得力があった。
圭一は、御影の案に乗るべきか乗らざるべきかを考えていた。
御影「僕は、こっちだからお別れだね。今日も沙都子ちゃんを救う為に色々やるよ!やらない善よりやる偽善ってね!」
御影は、そう言って早足で帰って行った。