6月17日(金)
沙都子が、学校を休んだ。
クラス一同は、それが当たり前かの様に特に変わった事はしなかった。
御影「おはよう、皆!」
クラス一同は、御影の姿にギョっとした。
しかし、その挨拶に返す者はいなかった。
御影「沙都子ちゃんは休みか。なーんだ、僕も休めば良かったかな?」
魅音は、御影に迫って言った。
魅音「まさか…昨日も児童相談所に通報したんじゃないでしょうね…?」
魅音の目には、怒りと殺意しかなかった。
御影「いやいや、昨日の事で懲りたよ!二度と児童相談所には電話しないよ!もし約束を破ったら、僕を綿流しにして構わないよ」
魅音は、その言葉を聞くと席に戻った。
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放課後。
この時期になると祭りの準備で動いてる者が多々居る。
御影は、怪我の具合から準備に参加する事は出来ない。
圭一は、御影の看病を理由に祭りの準備に参加しなかった。
圭一「御影…。昨日は児童相談所に通報しなかったのか…?」
圭一は尋ねた。
御影の性格なら、帰宅後に速攻で通報してもおかしくないと思ったからだ。
御影「勿論、通報したよ!でも、魅音ちゃんにそれを言うと、喉元を潰されるか、監禁されるかのどっちかされて、オヤシロさまの祟りになっちゃうでしょ!?確かに、オヤシロさまの祟りに遭いたいって常日頃から言ってるけど、沙都子ちゃんを放って死ねる訳ないじゃないか!」
圭一は、少し安堵した。
御影はいつもの御影だった。
御影がどんな方法であれ、沙都子を救おうと懸命に闘っている。
圭一「俺も児童相談所に通報した方が良いのかな…」
圭一が、ポツリと言った。
圭一は、沙都子を救いたいと思っているが、その方法を見つける事が出来ないでいた。
御影「圭一君は止めといた方が良いよ!もし魅音ちゃんにバレたら、僕と圭一君とでオヤシロさまの祟りにされちゃうよ!僕は消されても別に良いけど、友達である圭一君まで巻き添えに出来ないよ!」
圭一は思い出した。
『オヤシロさまの祟り』
以前、御影の話にも出た案であり、行動を躊躇していた方法だ。
最初は、自分が犠牲になる事で沙都子を救う事が正しいか悩んでいた。
しかし、御影は自分を犠牲にしながら闘い続けている。
だが、沙都子の心は壊れてしまった。
もはや、圭一は手段を問わず一刻も早く沙都子を救いたいと考えていた。
圭一は、御影の発想力と行動力を評価している。
もし御影ならどうやって沙都子の叔父を殺すのかを圭一は尋ねた。
圭一「…もし仮にだけど、沙都子の叔父を殺すならどんな風に殺す?」
御影「そうだなぁ…。僕は体格的にも現状的にも、真正面から勝てる手段がないから毒殺かな」
圭一「ど、毒殺!?」
御影「沙都子ちゃんの作ったご飯に毒を入れて殺すんだよ。それなら簡単に殺せるし、沙都子ちゃんが捕まっても正当防衛が主張出来ると思うんだ。毒は入江診療所に行けば、それっぽいのがあるでしょ」
御影の言う通りだった。
相手は暴力に長けているガタイの良い大人。
毒殺であれば、相手を一瞬に死に至らせればそれで終わりだ。
そして、特定犯を掴めない点では完全犯罪に近い物がある。
しかし、この方法は問題がある。
まず、沙都子が容疑者として捕まる点だ。
この完全犯罪は『犯人が不明』ではなく『犯人を別人に仕立て上げる』という点にある。
次に、沙都子の料理に毒を混入する点だ。
沙都子の料理に毒を入れる事は、沙都子への冒涜にすぎない。
そして、沙都子の料理を見る度にその事を思い出してしまうのはどうしても嫌だった。
圭一「言い方が悪かった!『ある程度、運動が出来る奴』がやった場合、どんな方法が良いと思う?勿論、誰にも迷惑を掛けない完全犯罪とかが理想なんだけど…」
御影は、少し悩んでから答えを出した。
御影「人目の付かない時間に外に呼び出して、呼び出した先で殺してから雑木林の地面奥深くに埋めるかな。鬼ヶ淵沼は如何にもって感じで危ないからね。でも、死体を埋める穴は相当深く掘らないと野良犬が掘り起こしちゃうから注意しないとね!」
圭一「それが完全犯罪なのか…?」
御影「事件ってのはね、死体が発見されて初めて事件になるんだよ。それに行方不明になっても誰かが届け出ないと捜索しないし、沙都子ちゃんの育児ほったらかして逃げる様なオッサンに気を掛ける様な人が誰か居ると思う?」
圭一は、その説明に納得した。
この方法なら、沙都子に迷惑を掛けずに叔父を殺す事が出来る。
御影が沙都子の叔父が消えたと知っても、圭一が殺したという証拠がない。
そもそも、沙都子を救う為にこんな状態になっている御影が、圭一を警察に売るとは思わなかった。
圭一「すげえよ…御影…。お前、よくそんな事を思い付けるな…!」
圭一は自らの手で沙都子の叔父を殺す事を決心した。