詩音は、この切り札を出したくなかった。
最後に魅音を殺し、全ての罪を『魅音』に背負わせるつもりだったから下手に会わせたくなかった。
しかし、御影の興味を詩音に向けさせる為には仕方がない事だった。
御影「え?本当!?詩音ちゃん生きてるの!?じゃあ、刺青なんかどうでも良いや!すぐ案内してよ!」
案の定だった。
しかし、圭一と二人きりになりたいと言った建前上、詩音は圭一の同行も許可しなければならなかった。
詩音は、レナに「待っていて欲しい」と言って、上手く『三人』を『二人』にした。
詩音は、圭一と腕を組む形で歩き、御影はその後ろを着いて来る形になった。
詩音は、ここで圭一を無力化させても、御影は逃げてしまうだろうと思い、焦る気持ちを抑えて地下牢まで案内した。
圭一「詩音、大丈夫か!?」
圭一は『詩音』に駆け寄った。
御影は『詩音』に駆け寄らなかった。
詩音は、二人同時にスタンガンで気絶させようと思ったが、御影に対してスタンガンを持っている事を悟られたくなかったので、近くにあった石で圭一の後頭部を殴りつけて気絶させた。
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魅音(詩音)「意外ですね。せっかく、詩音に会えたのに無反応だなんて。本当に詩音の事が好きだったのですか?また、いつもの嘘なんですか?」
詩音は、御影に悪態を付いた。
さんざん「詩音」「詩音」と言って今になってこれ。
もしかしたら、奇襲される事に気が付いたかもしれない。
しかし、悪く言えば自分の身を案じただけの臆病者。
こいつの気持ちは、圭一にも悟史にも劣る。
詩音はそう思った。
御影「誤解しないでよ!僕が好きなのは、詩音ちゃんだよ!魅音ちゃんじゃないんだ!『詩音』ちゃん!」
詩音は、顔をしかめた。
今、何と言った?
私の事を『詩音』と言ったのか?
魅音(詩音)「はっ!私の首に傷跡はないんだよ!それに見ろ、牢屋にいるこいつの首には傷跡がある!!だから、こいつが詩音で、私は魅音なんだよ!!」
御影「止めてよ、詩音ちゃん!僕だって苦しいんだ!詩音ちゃんにハートを伝えたと思ったら、それが実は魅音ちゃんだったんだよ!少しは僕の気持ちも考えてよ!」
御影は、揺さぶりではなく確信を持って、詩音を『詩音』、魅音を『魅音』と呼んでいる。
詩音「なんで…判る…!?私が詩音だと…答えろ!!」
御影「そんなに怒らないでよ。詩音ちゃんのお願いなら何でも聞いて上げるから。最初に気付いたのは、君とエンジェルモートで出会った日だよ。あの時、詩音ちゃんはファンデーションとか言ってたけど、そんな物付けてなかったでしょ?」
詩音は、ハッとした。
あの日、『魅音』として動いてた詩音は、雛見沢の学校から直接エンジェルモートに向かった。
その為、ファンデーションは必要なかった。
それに、エンジェルモートに圭一と御影が来る事など完全に予想外だった。
御影「あの日の僕のショックが分かる!?連日、自棄食いもしたくなるってもんだよ!」
詩音「じゃあ、なぜここに居る私が『詩音』だと判った…?」
御影「それは、さっき確認したんだ。掴みかかった時に首に触ったんだよ」
詩音「へぇ…。じゃあ、なんでここに来たの?あんた、知ってたんでしょ?私が圭ちゃんを殺そうって思ってる事」
そこが最大の疑問点である。
御影の行動は、数々が奇行だが全てに意味があった。
すると、御影が答えた。
御影「詩音ちゃんと一緒に、圭一君と魅音ちゃんを殺したいからさ!」
詩音「は…はぁ!?」
御影「圭一君は、僕に内緒で詩音ちゃんと祭具殿でデートしたんだし。魅音ちゃんは、僕と詩音ちゃんを傷つけたんだよ!!拷問に掛ける位しなきゃ僕達の気が晴れないと思わない?」
すると、牢の中の魅音が御影に聞いた。
魅音「え…?何…?私が、詩音を傷つけた…?」
御影「そうだよ!詩音ちゃんに『魅音ちゃん』の振りまでさせて!自分は圭ちゃん、圭ちゃんって…。何それって感じだよ!魅音ちゃんは、圭一君にお弁当持って来たのが恥ずかしいからって、『詩音ちゃん』の振りまでしてさ!詩音ちゃんが、どんな気持ちか分かってんの!?自分だけ、圭一君とイチャイチャイチャイチャ…」
魅音は、その言葉に震え出した。
詩音は、悟史の事でずっと傷付いていた。
それを知ってか知らずか、魅音は詩音に自分の振りまでさせて圭一と恋愛しようとしていた。
それがどれほどの罪かを。
魅音「ああぁぁ…!ごめん、詩音…ごめん…」