6月4日(土)
梨花は、死に戻りした。
梨花は、何もかも諦めていた。
梨花は、自分の運命が綿流しの祭りの後に殺されるという事を知っていた。
そして、殺される度に梨花の付き人、羽入の力で時間を巻き戻し幾百年と同じ体験を繰り返していた。
羽入は、雛見沢の守り神である。
梨花を生まれた時から見守り、雛見沢の全てを見守っている存在。
羽入は、梨花の運命を受け入れられず、梨花の為に梨花の死と同時に時間を巻き戻している。
彼女達は、死の運命から逃れる為に思い付くあらゆる手段を試したが、全てダメだった。
『夜白御影』
彼は、今までの世界には居なかった存在だった。
梨花は、彼が自分達をこの永遠とも言える迷宮から救ってくれる人物だと少し期待した。
しかし、事態は梨花の期待とは完全に逆方向に転じていた。
御影の介入で、本来起こるべきではなかった惨劇が発生したり、本来起こるべき惨劇が今まで以上に早く発生したり、本来解決出来る惨劇が悲惨な最期になったりと。
梨花にとっては、完全に『マイナス』な存在でしかなかった。
梨花は、御影の行動を幾度となく止めようと画策したが、その度に惨劇が加速化してしまい、手の打ち様がなかった。
羽入にも夜白御影の正体を探る様に頼んだが、彼の正体は何も掴めずだった。
そして、この世界でも三日前に夜白御影は転校して居た。
梨花は、すでにこの世界に見切りを付けていた。
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6月5日(日)
今日は、近所の玩具屋でゲーム大会がある日だ。
転校して来た夜白御影は、初日からクラスメイトと先生を嘘で手玉にとるという珍事をやらかした人物だ。
部活メンバーは、そんな御影に対して部活の参加を誘ったが、頑なに拒否している。
魅音は、一筋縄でいかないと思い、近所の玩具屋でゲーム大会を開き、御影を誘った。
御影は、優勝賞金に目が眩んでか参加する意思表明を見せていた。
部活メンバーは、御影の参加動機に唖然としていたが、参加してくれるなら転校初日の借りを返せると思い、意気揚々としていた。
梨花は知っている。
御影は参加すると言いながら、寝坊と称して戦わないという事を。
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案の定だった。
御影は寝坊したと言って、ゲーム大会終了後にやって来た。
梨花は何も変わらないと思った。
御影「優勝者は圭一君かな?圭一君が優勝出来るんだったら、僕ならダントツで優勝したのに惜しい事をしたなぁ」
魅音「残念、今回の勝負はお預け。圭ちゃんのソレは、ただの参加賞だよ」
御影「そっか。じゃあ、中身見せてよ。別に減る物じゃないでしょ?」
御影は、圭一の持っている紙袋に興味を示して言った。
圭一が袋を開けると、中から可愛い女の子の人形が出て来た。
圭一「え~、なんだよこれ~」
魅音「圭ちゃんには、見合わない物が出たね~」
圭一は、バツの悪そうな顔をしながら誰かに人形を渡そうと思った。
御影「圭一君!誰かに人形を上げようとしてるんでしょ!?レナちゃんに上げる事を推薦するよ!レナちゃんだって欲しがりそうな顔をしているし、何より可愛い物が一番見合う女の子だからね!」
梨花は、御影の口を塞がなかった。
塞いでも塞がなくても、圭一は人形をレナに渡す。
梨花は、そう思って何もしなかった。
圭一「魅音、ほらやるよ」
魅音「ふぇ!?」
圭一は、魅音に人形を渡した。
それに対して、魅音はすっとんきょうな声を出した。
御影「あれ!?なんで、魅音ちゃんに上げるの!?魅音ちゃんには、こんな可愛い物なんて見合わないよ!目が節穴になったの!?」
しかし、圭一は動揺せずに言い返す。
圭一「ばーか、節穴なのはお前だろ。最近の魅音をちゃんと見てるのか?いくら鈍感な俺だって判るぞ」
最近の魅音は、少しずつ『女の子』を出している。
服やアクセサリーなどの身に着けている物。
それは、注視しないと判らないかもしれない。
圭一は、それに気づいて、魅音に人形を上げた。
圭一「魅音、それ大事にしろよ。御影の口車に乗ってレナに渡したりしたら怒るからな」
魅音「絶対、御影の口車なんかに乗らないよ!…ありがとう、圭ちゃん」
そう言って、魅音は人形を大事に持って自転車に乗り、この場を後にした。
レナ「圭一君、百点満点かな。かな」
レナは、笑顔で圭一に言った。
御影「あれ?そうなの?僕は納得が行かないなぁ」
沙都子「御影さんは、もう少しお勉強なさった方が宜しいですわ。私も圭一さんの行動が正しいと思いましてよ」
御影「皆がそう言うなら、僕の『負け』なんだね。うん、凄いよ!魅音ちゃんは『女の子』になれたんだね!」
御影は、ヘラヘラ笑いながら言った。
梨花は、内心驚いていた。
圭一が魅音に人形を渡した事もそうだが、最近の魅音が『女の子』になっている事に。
魅音の心に何か変化があったのか?
梨花は、不思議に思った。