梨花は決意した。
この世界が最後でも良い、全力で闘おうと。
この世界は夜白御影がいるが、誰も惨劇を起こしていない。
それどころか、沙都子があの鉄平と真正面にぶつかり、村人が命懸けで沙都子を守る為に闘った。
こんな幸運に恵まれた世界は、二度と現れる訳がない。
しかし、梨花はこの問題を何処まで誰に話して良いか判らない。
御影が敵である可能性が高い以上、話す範囲を最小限にするしかないと思った。
話す範囲を最小限にする以上、最大の戦力を得なくてはいけない。
梨花は、まず魅音と相談した。
自分が綿流しの祭りの後に殺されるという事を。
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魅音は、自宅で悩んでいた。
梨花の聞いた話。
自分が殺されるという事。
助けて欲しいと懇願している事。
敵が誰か判らない事。
もしかしたら、御影が敵の可能性がある事。
魅音は、レナの一件から梨花の話を真面目に受け止めていた。
梨花もレナと同じ様に、自分を信じて助けを求めている。
それを部長として、一人の人間として助けたいと思った。
部屋で悩んでいると、お魎が入って来た。
お魎「魅音、悩み事か?」
魅音「うん、婆っちゃ。ちょっとクラスメイトの事でね…」
お魎「…もしかして、沙都子ちゃんの事か?」
魅音「え…?どうして?」
お魎「沙都子ちゃん、大ケガしたと聞いたんじゃ。…もしかして、容態が悪いんか?」
魅音は驚いた。
どうして、お魎が沙都子を心配しているのかと。
魅音「婆っちゃ。こんな事、聞くのは悪いと思ってる。…どうして、沙都子の心配を?」
お魎は、一つの箱を見せて来た。
中身は何もない。
お魎は話し始めた。
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それは、6月6日の月曜日の夕暮れ時。
園崎本家のチャイムが鳴った。
魅音は、買い物で不在だった為、お魎が対応した。
そこには、一人の少年が笑いながら立っていた。
お魎「誰じゃ、お前は?」
御影「この前、引っ越して来た夜白御影です。挨拶に来ました。これ、食べて貰っても良いですか?」
御影は持って来た箱を開けると、中にはおはぎが数個あった。
お魎「なんじゃこれは?」
御影「手作りおはぎです。魅音ちゃんから貰ったのでお返しにと。食べて評価が欲しいんですけど」
お魎は、その一つを食べて言った。
お魎「甘すぎる。それに小さいわ。いくら数が多いからって、こんなに小さいんじゃ食べた気にならん」
御影「そうですか?わかりました。じゃあ、そう言っときますね」
御影の返事が妙な物だと思い、お魎は尋ね返した。
お魎「なんじゃそりゃ?このおはぎは、お前が作ったんじゃないのか?」
御影「いいえ。全部、北条沙都子ちゃんが作ったおはぎなんですよ」
お魎は、その言葉に顔を一気に険しくした。
御影は、お魎に対して沙都子の作ったおはぎを食べさせていた。
御影「沙都子ちゃんって料理が上手いから、どんなおはぎ作るんだろうと思ってね。そうそう、口に合わないならこのお茶で口直しにどうぞ。じゃあね~」
お魎「待たんか!こら…!!」
ヘラヘラ笑いながら逃げる御影に対して、お魎は玄関に取り残された。
沙都子の作ったおはぎと御影の買って来たお茶葉を残して。
お魎がそのおはぎをよく見ると、小さいながらも一生懸命に作られていた事が判った。
食べる人が満足してくれるようにと想いを乗せて。
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お魎「儂は死ぬ前に沙都子ちゃんとおはぎを作りたいんじゃ。だから、沙都子ちゃんに死なれるとそれが出来ん。もし、沙都子ちゃんに何かあるなら相談して欲しいんじゃ」
魅音「婆っちゃ…」
魅音は、お魎が北条を本当の意味で許していると思った。
だからこそ、こうして身を案じて魅音に沙都子の様子を聞いて来た。
お魎「じゃがな、御影だけは別じゃ!儂はあいつにやられた借りを返すまで死なん!そう言っとけ!!」
魅音は、それに笑い返した。