6月16日(木)
梨花と沙都子は、連日で休んでいる。
それは、計画通りだった。
ただ、御影も休んでいる。
それも今週全てだ。
圭一達は、事情を聞こうと御影の家にお見舞いに行ったが、応答がなかった。
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鷹野は、少し苛立っていた。
理由は、富竹と連日会えなかったからだ。
富竹は番犬部隊を呼んでいるが、鷹野はそれを知らない。
鷹野は思い出す。
鷹野が、富竹から初めてプレゼントを貰った日。
あの日、少し浮かれていたと思う。
富竹に釣られるまま雛見沢を巡り、その楽しさからか、二人は持っていた手荷物をどこかに置き忘れてしまった。
後日、それを探しに行ったが見つからず、富竹に八つ当たりしてしまった事を。
もしかしたら、その所為で距離を置かれたかもしれないと思った。
鷹野は、入江に話し掛けた。
鷹野「沙都子ちゃんと梨花ちゃんは、連日お休みらしいですわね」
入江「そうですね。沙都子ちゃんはしょうがないとして、梨花ちゃんもこの時期に夏風邪を引いてしまうとは…。本当に運がない事です」
入江は、慎重になりながら返答した。
下手な事を一つ言えば吹き飛ぶ嘘。
この嘘がバレた瞬間に状況は悪くなるかもしれないと。
鷹野「あの御影君も休みらしいですわよ。入江先生知っていました?」
入江「…いえ。それは、初耳です…」
沙都子と梨花の事情は知っているが、御影が休んでいるという事は知らなかった。
そんな話は聞いてないし、診療所にも来ている形跡はない。
鷹野「そうですか。三人とも綿流しの祭りまでに治ると良いですわね」
そう言って会話は終わった。
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6月17日(金)
入江は、梨花と沙都子の家に来た。
いつもの検診であるが、勿論中は無人である。
入江は合鍵で中に入り、二人の容態を見てから帰る振りをしていた。
いつもの様に入ろうとすると、後ろから小此木と山犬二人が現れた。
入江「な、なんですか!あなた達は!?」
小此木「ウチのお姫様が用心深くて、様子を見て来いと言うんですわ」
入江は、冷や汗を流した。
この嘘がバレる。
その瞬間、奴らは強硬手段に出るであろうと。
入江は、可能な限り時間を稼いだ。
入江「沙都子ちゃーん、梨花ちゃーん。検診のお時間ですよー…」
入江は、玄関に入ると大きな声で言った。
勿論返事はない。
入江「どうやら、寝ている様ですね…。一旦お帰りになった方が良いみたいです…」
小此木は、入江の言葉を無視した。
小此木「調べてこい」
山犬二人が早足で寝室に向かった。
そこには膨らんでいる布団が二つ。
それを思いっきりひっぺがした。
「きゃー!入江のえっちーなのですー!」
入江は、梨花の声が聞こえて驚き、室中を見に行った。
そこには、何故か御影が居た。
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御影は山犬に囚われ、入江と共に連れて行かれた。
小此木「えぇ…。Rはいませんでした。…はい。…はい」
小此木は、何処かに連絡していた。
御影は、その様子を縛られた状態でヘラヘラ笑いながら見ていた。
入江は、事情が呑み込めず「分からない…」と喋るだけだったので別室に移されていた。
小此木「おい。お前は、あんな所で何をやってたんだ?」
小此木は、御影にそう問いた。
御影「ちょっとさー、聞いてよ!これは僕がやりたくてやった事じゃないんだ!いわば、僕も被害者ってやつだよ!」
御影は、小此木の質問に対してベラベラ喋り出した。
梨花が、誰かに命を狙われている事。
それに対して、自分が時間を稼ぐ様に身代わりとしてあの場に居させられた事。
入江に対しては、ふすま越しに声だけで対応して誰にもバレない様に工作していた事。
勿論嘘である。
この行動は御影が独断で行った物だった。
その時、剣幕な顔をした鷹野がやって来た。
鷹野「やってくれたわね…。古手梨花は何処に居るの!!」
御影「梨花ちゃんなら、魅音ちゃんの家だよ」
御影は、あっさりと鷹野に梨花の居所を話した。