廻る命の輪の中で   作:まるっぷ

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息抜きに書き始めたら意外といったので載せました。



廻る命の輪の中で
プロローグ


娼婦の女の股から生まれた。

 

愛はなかった。

 

娼館で生まれ育った。

 

学は身に付かなかった。

 

14で初めて客をとった。

 

男の扱い方は身に付いた。

 

17で性病を(わずら)った。

 

すぐに娼館を追われた。

 

路上で寒さと空腹に喘いだ。

 

助けてくれる者は誰もいなかった。

 

こんな場所では死にたくない。

 

その一心でひたすらに歩き、街はずれの墓場にやってきた。

 

18になったその日の深夜に、女は死んだ。

 

 

 

 

 

……そして、不死人(わたし)が生まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不死人は一切の例外なく『北の不死院』へと送られ、そこで世界の終わりまで牢に繋がれる。女も当然のようにそれを辿り、数百年間もの間、牢に捕らわれていた。

 

ぼろ布だけを纏った、乾いた死体のような姿に成り果てても死ぬことは出来なかった。せめてもの慰めは、牢の隅に転がっていた奇妙な文字が彫られた指輪を眺める事くらいだった。

 

あの騎士が来るまでは。

 

 

 

ロードラン。不死者の巡礼地。巨大なカラスに運ばれた先はそんな場所だった。

 

曰く、『巡礼を果たした暁には世界から呪いは消え失せ、変わり果てた人々も元に戻る事が出来る』らしい。しかし女はあの騎士の使命を継いでここまで来た訳ではない。

 

ただ単純にあそこで、あの牢屋の中で終わりたくはないと思っただけだ。

 

 

 

旅路は過酷の一言に尽きた。絶えず襲い来る亡者、過去の騎士、醜悪なデーモン。一体奴らに何度斬られ、刺され、潰され、焼かれ、殺されたのかは分からない。

 

それでも女が歩みを止めなかったのは、何故なのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あんた、終わってんな。亡者とかそういう以前によ』

 

『貴公はもう少し自分を労われ。それではいつか壊れてしまうぞ』

 

『なぁ、あんた……。いや、なんでもない。俺の呪術を役立ててくれよな』

 

うるさい、うるさい、うるさい。

 

うるさい……黙れ。

 

 

 

ガクリと蜘蛛の膝を折り、異形のデーモンが斃れる。

 

『あぁ……すまない………■■■■』

 

デーモンは何者かの名前を口にした。

 

 

 

蜘蛛のデーモンを殺した先には篝火があった。

 

中には気味の悪い卵背負いの老人と、異形の白く、儚い少女がいた。

 

 

 

『姫様は、こんな儂らのために泣いてくれた……そしてクラーグ様の言う事も聞かずに、病の膿を飲み込んだんだ……』

 

姫様と呼ばれた白い異形の少女を見る。

 

病の膿を侵されてなお祈り続ける彼女の姿を、何故かとても尊く感じた。

 

名も知らない者たちの為に涙を流し、祈り、身も心も彼らに捧げた少女。

 

生まれた時から誰かの所有物で、他者を理解しようともしなかった私が、ひどく小さく思えてくる。

 

凍えた心が溶け、その内に小さな火が灯るのを感じた。

 

 

 

『ありがとう、姉さん……とても楽になったわ』

 

目の見えぬ白い異形の少女は捧げられた人間性を一身に受け、柔らかく微笑む。私は古びた指輪を外して、彼女から目を背けた。

 

毎度の事ながら自問を繰り返す。何故お前は、そこまで優しげに微笑むことが出来るのか。

 

私はお前の姉ではないと言うのに。

 

お前の姉を殺したのは………私だと言うのに。

 

 

 

『皆殺しのカーク』。言わずと知れた、悪名高い闇霊(ダークレイス)

 

今まで散々私を付け狙ってきた男。ソウルと人間性を得るためならば手段を選ばない執念深さを見せてきた男が、私の目の前で力なく座り込んでいる。

 

『はッ……なるほど。………お前も、俺と同じ………従者、だったのか……』

 

兜の隙間からゴポリと血を吐きながら、カークは自嘲するように語る。

 

『俺は、もう終わる(・・・)……残されたソウルなんざ、これっぽっちもありゃしねぇ………』

 

彼の目の前に膝をついた私の襟首を掴み、カークは自身に引き寄せる。

 

『……お前………あいつを、頼んだ』

 

落ちてゆくカークの手。

 

他者を拒絶するかのように棘だらけの手甲。その鋭い棘が手の甲を貫くのも気に留めず、私は彼の手を強く握り締めた。

 

 

 

『おぬし……その恰好は………』

 

エンジーが僅かに目を見開く。

 

私は彼の死体から鎧を剥ぎ取り、武器を奪った。

 

そして……私は『カーク』になった。

 

 

 

『カーク』を引き継いだ後、私は一層人間性狩りに精を出した。

 

全てはあの白い異形の少女のために。

 

私の中での彼女の存在は、とっくの昔に大きなものとなっていたのだ。

 

そして誓った。

 

必ずや私の手で世界に蔓延する呪いを食い止め、彼女を人間に戻すのだと。

 

 

 

巡礼はその後も続いた。

 

最初の死者とウロコの無い白竜を斃した私は、病み村で一人の魔女に出会った。

 

『お前も、私の呪術が目当てなのか?』

 

彼女は『クラーナ』と言った。

 

 

 

クラーナに呪術を教わるうちに、いつしか彼女は自身の身の上話を始めた。

 

曰く、地下深くに広がる廃都イザリスの最奥には、彼女の母親と姉妹たちの成れの果てである『混沌の苗床』がいるという。彼女は母親たちを置き去りにして一人逃れてきた事を悔いているようだった。

 

『カーク、お前にこんな事を言うのは筋違いだとは分かっている……だが、お願いだ。どうか、どうか私の母と、姉妹たちを……』

 

私は震える彼女の手を取り、篝火へと向かった。

 

 

 

『あぁ……そんな………こんな事が……!!』

 

白い異形の少女と対面を果たしたクラーナはその場に泣き崩れた。エンジーは困惑した様子でクラーナと私を見比べる。

 

『カーク、この方はまさか……!?』

 

私は無言で、座り込むクラーナに指輪を渡した。そして部屋を出て、イザリスへと向かった。

 

 

 

混沌の苗床を斃した後、私はその足で小ロンド遺跡へと向かった。

 

道中に現れるゴーストや闇霊(ダークレイス)を棘の直剣で斬り払い、深淵へと身を躍らせた。

 

次々現れる公王は非常に手強く、何度も殺されたが、遂には勝利した。

 

そして篝火を灯そうとした私の目の前に現れたのは、深淵の蛇だった。

 

 

 

蛇は語った。

 

世界の仕組みを。

 

大王グウィンの策謀を。

 

 

 

不死人は絶望した。残酷極まるこの世界に。

 

不死人は呪った。太陽の光の王を名乗る蛆虫を。

 

そして不死人は………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

火継ぎの旅路は終わりを告げた。

 

無意味な旅路を続ける理由もなくなり、深淵を去った私はいよいよ人間性狩りに専念した。全てはあの白い異形の少女のために。

 

最下層のネズミ共では足りない。そもそも人間性を持っている確証の無い雑魚を狩り続けても割りに合わない。

 

ならばどうするか。簡単だ。

 

確実に持っている者を狩ればいい。

 

 

 

『てめぇ!とうとう狂いやがったか!』

 

心折れた戦士が振るう剣を薙ぎ払い、心臓を突き刺す。

 

人間性を奪う。

 

 

 

『このような形で、貴公と再会したくはなかった……』

 

太陽の戦士が放つ雷の槍が身体を貫いたが、構わず突進する。

 

鎧と兜の隙間を狙い、喉笛を抉る。

 

人間性を奪う。

 

 

 

魔術師を、聖職者を、聖女を、商人を、鍛冶師を、教戒師を、珍品売りを、封印の番人を、カタリナの親子を、カリムの騎士を、賢者を、狩猟の団長を、極東の殺し屋を、ハイエナを、他の火守女たちを、他世界の不死人たちを。

 

殺した(斬った)

 

殺した(刺した)

 

殺した(抉った)

 

殺した(焼いた)

 

殺した(燃やした)

 

人間性を奪った。

 

奪い続けた。

 

 

 

『最後は俺、か……』

 

目の前の呪術師は諦めた風に笑う。

 

そして、やがて覚悟を決めたかのように、顔を上げた。

 

『なぁ、あんた。せめて終わらせるなら、あんたのとっておきの呪術でやってくれないか?持ってるんだろう、俺なんかが見たこともない、すげぇ呪術を』

 

一瞬の間の後、私は左手の盾をソウルに溶かして呪術の火を灯す。他でもない、彼自身の手から貰ったものだ。

 

クラーナによって最大強化されたそれはもはや最初の時よりも遥かに強力で、彼の命を燃やし尽くすには十分過ぎる代物だった。

 

ごう、と手に宿すのは、混沌に満ちた巨大な火の玉。

 

彼はそれを眩しそうに眺め、そして口を開いた。

 

『ああ……なんて、綺麗なんだ……』

 

 

 

殺した。

 

人間性を、奪った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も私は他世界の不死人を殺し続けた。

 

そして奪い続けた、人間性を。

 

全てはあの白い異形の少女のために。

 

人間性を得るために完全に見境をなくした私に、クラーナとエンジーは何も言わなかった。私も何も言わず、聞かず、そこから百年の歳月が流れた。

 

世界に救いがないと分かった以上、ならばせめてこの瞬間を生き続けようと、私は白い異形の少女に人間性を捧げ続けた。

 

彼女の苦しみを、ほんのひと時でも和らげたくて。

 

しかし……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の症状は日増しに悪くなっていった。

 

いつも苦し気に自らの両肩を抱きしめ、上半身を丸めて震えていた。以前は一日に一つの人間性で足りていたのが二つ、三つと増えてゆき、遂には日に十個でも足りなくなった。もしかすると、それ以上に必要なのかも知れない。

 

だが、私自身にも限界の兆候が見られてきた。以前のように戦えなくなってきたのだ。

 

思えば不死人となってから数百年以上の時が経っている。

 

死という安寧を奪われ、死んだように生き、生きているかのように死に続けた不死人の末路が亡者だ。自我を失い、ただソウルを求めるだけの存在に成り下がる。そしてそれに、一切の例外はない。

 

私自身もその例に漏れず、遂に“終わり”が近付いてきている、という事なのだろう。

 

『カーク』

 

篝火の前で胡坐をかく私に、クラーナが語り掛けてくる。

 

『もう、終わりにしないか……?』

 

彼女の顔はフードによって見えない。しかし傍らのエンジーの悲痛に満ちた顔が、彼女の心境を代弁していた。

 

つまりは、そういう事だ。

 

『これ以上はもう見たくないんだ。妹が苦しむ姿も、お前が擦り切れてゆく姿も。……頼む。どうかもう、休んでくれ………』

 

懇願するように、祈るように。篝火の明かりに照らされたクラーナが、声を震わせて私に語り掛ける。

 

 

 

彼女の言葉に、私は剣を取った。

 

 

 

床に広がった赤い血を篝火の明かりが反射させ、部屋中が赤い光に満ちた。

 

血の海で横たわるのは一人の魔女と、一人の卵背負い。びちびちと跳ねる蛆虫を踏み潰し、私は人間性をすくい上げる。そしてそれを、白い異形の少女に捧げた。

 

『あり、がとう。姉さん……楽に、なったわ』

 

彼女は無理をして浮かべた微笑みを私に向ける。その直後に、私の脳裏に先ほどの光景が蘇る。

 

『ぁぁ、カーク………すまない』

 

エンジーの悲鳴が反響し、胸に剣を突き立てられたクラーナ。彼女から剣を引き抜いた私は、続けざまにエンジーの頭を突き刺した。

 

エンジーから人間性は得られなかったが、クラーナからは得る事が出来た。やはり、より人間に近い容姿をしている者の方が持っている(・・・・・)のだろう。

 

すでにソウルへと還った二人がいた場所を見下ろし、私は他世界の不死人を狩るべく、再び外へと歩き出す。

 

全てはあの白い異形の少女のために。

 

そのために私は彼女にとって、もはや唯一となった姉妹にまで手をかけたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血が止まらない。

 

思考が白濁している。

 

身体がひどく重い。

 

血痕を点々と残しつつ、私は彼女のいる部屋へと戻った。今日の成果は人間性が二つだけ。そう、たった二つだけだった。残してあったものと合わせても、僅かに五つのみ。これでは彼女の苦しみは一瞬だけしか良くならない。

 

顔を上げれば、そこには痛みに震える彼女の姿があった。その姿に、かつてのクラーナの言葉が頭を過ぎって……………。

 

……………?

 

クラーナはあの時、なんと言ったか?頭をひねって思い出そうとするも、どうしても思い出せない。そもそも“クラーナ”とは、一体誰だ?

 

私は右手を握り締める。が、思うように力が入らない。

 

私は呪術の火を取り出す。が、呪術の使い方が思い出せない。

 

私の名前は?そんなもの、とうに忘れている。

 

私はなぜここにいる?不死人になったからだ。

 

私の目的は?……目的とは?

 

私が集めていたものは……?

 

私は………なんだ?

 

脳の中を白い蟲が這いずり回り、急速に食い荒らしてゆく。穴だらけになった脳の奥底から腐敗した脳漿が溢れ出て、私を押し流してゆく。ああ、これが亡者になるという事なのだと、私は雲のような思考で理解した。

 

もういい、終わろう。

 

どしゃりと前のめりに倒れ込んだ私はある種の心地よさを覚えた。そうだ、世界の理不尽を呪い続けるよりも、こうして亡者になってしまった方が遥かに楽なのだ。

 

私は心地よいまどろみに誘われ、瞳を閉じようとして………。

 

 

 

 

 

彼女の姿が、視界に映った。

 

 

 

 

 

彼女の名前は?知らないが、白い異形の少女と呼んでいた。

 

彼女の従者は?卵背負いのエンジーだ。

 

彼女の姉は?クラーグだ、私が殺した。

 

彼女の姉妹は?魔女クラーナ、私の呪術の師でもあった。

 

彼女に必要なものは?人間性だ。

 

どうやって手に入れた?他世界の不死人を殺してだ。

 

殺した。殺した。殺した。

 

全員殺した。

 

私が殺した。

 

彼女の従者も、彼女の唯一の姉妹さえも殺した。

 

何故?

 

………そんな事、決まっている。

 

 

 

全てはあの、白い異形の少女のために。

 

 

 

剣を地面に突き立てて、私は立ち上がる。

 

鉛のように重い足取りで一歩、また一歩と、彼女のもとまで歩み寄る。

 

そして残された全ての人間性を、彼女に捧げた。

 

『あぁ……』

 

苦悶に歪んでいた彼女の顔が、僅かに和らいだ。

 

私は指輪をはめ、彼女に語り掛ける。

 

 

 

苦しくはないか?

 

『ええ、姉さん。楽に、なったわ』

 

そうか、それは良かった。

 

『……ねえ、姉さん』

 

何だ。

 

『………苦しくない?』

 

何故。

 

『姉さんの声、すごく苦しそうだったから。もし私のせいで姉さんが苦しんでいるのなら………』

 

………。

 

『………姉さん』

 

………何だ。

 

『……私、怖くないよ?』

 

………私は、怖い。

 

『大丈夫。姉さんは、強いもの』

 

強くなどない。私はただの、臆病者だ……。

 

『……姉さん、知ってる?ソウルは、あらゆるものに宿っているの。草にも、木にも、石にも、火にも、私たちにも。そしてそれらは全て、循環している……』

 

………。

 

『たとえ壊れても、ソウルは巡り続ける。何千年経っても、何千年かかっても、必ず私たちはまた会える……』

 

…………。

 

『だから、姉さん。これで終わりじゃないわ。私たちは、新しい命になるだけ』

 

…………っ。

 

 

 

私は彼女の胸に剣の切っ先を突き立てた。

 

白い肌に一筋の赤い線が流れる。

 

しかしそれ以上、前へと進まない。

 

私は刀身を握り締めるも、それでも前に進まない。

 

視界が歪む。

 

呻き声が漏れる。

 

足が震える。

 

赤赤とした血を流す私の手を、彼女がそっと掴む。

 

 

 

『ああ、やっぱり……』

 

ッ!!

 

『姉さんが危ないことをしてるのは、知ってたの。そしてそれが、良くないことだってことも………』

 

ぁ………あぁあ……!

 

『ごめんなさい、名前も知らない人。……そして、ありがとう。姉さんの意志を継いでくれて……』

 

 

 

私の手は引き込まれるように、彼女の胸へと剣を突き立てていた。

 

彼女は苦悶など少しも感じさせない顔のまま逝った。少なくとも、そう見えた。

 

火の消えた篝火の前で、私は崩れ落ちるようにして座り込む。そしてソウルから一振りの曲剣を取り出した。

 

クラーグの魔剣。結局一度も使わなかったそれを、彼女のソウルの隣に寄り添うようにして地面に置く。その反対側には、クラーナによって強化された呪術の火を。

 

私が殺した三人がせめてまた巡り合えるように。そんな見当違いにも程がある願いを残して、私は立ち上がる。

 

目的地はない。強いて言うならば、彼女たちから少しでも離れた場所か。

 

私は振り返らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もはや身体は動かない。

 

終わるのも時間の問題だ。

 

私は祭祀場まで来ていた。その消えた篝火の前でいつものように胡坐をかき、最期の時を迎えようとしている。

 

思考は途切れ途切れになり、目はもう光を映してはいない。流す血もとっくになくなり、腐りかけた肉が鎧の下に広がっている。もはや立派な亡者も同然だ。

 

思わず自嘲が漏れる私に、いよいよ終わりがやってきた。感じるのだ、自分が自分でなくなるのが。

 

やがて自我の無い亡者となった私は、どこかの不死人に殺され続けるのであろう。『皆殺しのカーク』と恐れられていた男には申し訳ないが、私には似合いの結末だ。彼の意志を引き継いだにも関わらず、結局は彼女たちを殺してしまったのだから。

 

無くなってゆく意識の中、私は彼女の最期の言葉を思い出した。彼女らしい、実に優しい言葉を。

 

『あなたともいつか、どこかで巡り会えますように』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪いが、私にはそんな権利はない。

 

お前たちを殺した私には、地獄の責め苦ですら生温い。

 

ああ、神どもよ。

 

貴様らが真に万能だと宣うのなら私を、どうか私を()いてくれ。

 

肉も、骨も、ソウルも。

 

何一つ残さず、巡ることなく灼いてくれ。

 

彼女たちを殺した私を……どうか罰してくれ。

 

………その思考を最後に、私の意識は消え失せたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地中の底の、さらに底。

 

壁に亀裂が生まれる。モンスターの生まれる前兆だ。

 

まず出てきたのは手だった。不思議な事にこのモンスターは最初から武装しており、冒険者が身に着けている防具を身に着けていた。

 

次いで上半身、下半身と出てきて、ついに全身が地面へと晒された。防具は全身くまなく棘が生えており、近付く者を拒絶するかのような見た目をしている。

 

モンスターはぴくりと指先を動かし、やがて両手を地面について上体を起こした。首を左右に動かし、周囲を確認するように見回した後に、兜に覆われた口を開く。

 

「ここは……」

 

それは低く、しかし美しい女の声だった。

 

 




見切り発車なので何とも言えませんが、とりあえず書いてみました。今書いてるのがある程度区切りがついたら、こっちも話を考えてみたいです。

モチベアップの為に感想を頂けたら嬉しいです。
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