この素晴らしい世界に両津勘吉を!   作:ダイアジン粒剤5

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第3話

 最強のアークウィザードである私ことめぐみんは現在、3人のパーティーメンバーと共にアクセルの街の屋敷で暮らしている。

  しかし、最近その中の一人であるカズマの姿を見ていない。

 最後に見たのは私がゆんゆんを探して家を出た時だから、本当にもう随分長いことカズマの姿を見ていない。

 一週間くらいフラッと何処かに泊まってくることはよくあるので最初の頃は気にしていなかったが、これはいくらなんでも異常だ。

 結局ゆんゆんも見つからなかったし、何かの事件に巻き込まれたのではないかと心配になる。

 私たちは魔王軍の幹部を何人も撃破してきた一流パーティ、魔王軍から刺客を送り込まれてもおかしくないのだ。

 

 「ちょーヒマなんですけど。何もやることが無いんですけど。カズマさんも行方不明だし、あのヒキニート、ヒキニートのくせに家に帰らず何してるのかしら」

 

 「いた、いたたたた。ちょっ、やめてくれアクア!私の髪を引っ張らないでくれ、カズマが居なくて退屈だからって、私の髪を弄るのはやめてくれ!」

 

 ダグネスがアクアに髪をデストロイヤーのような形に整えられて涙目になっている。ここ数日、よく見られる光景だ。

 普段はカズマと喧嘩ばかりしているアクアだが、カズマがいないとやはり調子が狂うらしく、ここ最近は常時不機嫌そうだ。

 ダグネスの方はアクアに虐められて若干楽しそうだが、それでもやはり普段と比べて調子が落ちている。

 私たち4人はこの一年以上常に一緒にいるせいか、一人でも欠けると何かバランスを崩してしまうらしい。

 

 「・・・・ダグネス、ダグネスの伝手でカズマを探すことは出来ないのですか?仮にも貴族なんですから、そういう人探しに長けた人脈とかないんですか?」

 

 国王の懐刀とも言われるダスティネス家なら、そういう伝手くらいあるのではないだろうか。

 そう思って聞いてみたのだが、ダグネスは髪を元に戻しながら、すまなさそうに言った。

 

 「すまない、私はそういうことにはさっぱりなんだ。父ならば何かそういう伝手があるかもしれないが、何やら王都の方で大規模な政変があったらしく、そのことの対処で忙しそうでとても話が出来る雰囲気じゃないんだ。本当にすまない」

 

 「そうですか、王都で政変が。それは、ちょっと心配ですね」

 

 カズマの事も心配だが、王都でそんな大きな政変があったというならもう一人心配な人物がいる。

 私たちにとっても知らない中ではない大切な友人、王女アイリスだ。

 王女ともなれば、そんな大きな政変に対して無関係というわけにはいかないだろう。

 アイリスは一撃でドラゴンを瞬殺できる程に強いので危険なことはそうそうないとは思うが、心配なものは心配である。

 ・・・・・・王女なら、人探しに長けた王国の諜報機関に命じて行方不明のカズマの行方について調べることが出来るかもしれない。

 カズマの事についてアイリスに手を借りるのは自分の立ち位置的に色々と危機感があるのだが、カズマの身に何らかの危険が起きているかもしれない現状ではそんなことも言ってられない。

 アイリスはカズマの事を慕っていることだし、頼めば無下にはしないだろう。

 ここはアイリスの見舞いも兼ねて、王都に出向くべきかもしれなかった。

 

 「ダグネス、アクア、ちょと提案があるのですが―ーーーーー」 

 

 

 

 「ごめん皆!いろいろと詳細は追って説明するから、私と一緒に王都に来てくれないかな!?」

 

 

 

 私がアクアとダグネスに王都に行ってみないかと提案しようとした瞬間、玄関の扉が勢いよく開かれ、焦った顔をしたクリスが飛び込んできて、私が言おうとしたことを大声で叫んだのだった。

 

 「ど、どうしたんだクリス、いきなり一緒に王都に来てくれだなんて。いや、たしかに王都の状況については気にかけていた。断片的な話しか聞いていないが、それでも相当マズイことになっているということは私も聞き及んでいる。だが、いまはカズマが行方不明になっていて、そちらを何とかしてからでないと・・・・・・」

 

 「それについては大丈夫!カズマ君も王都にいることが分かってるから!」

 

 クリスの言葉に真っ先に食いついたのは、アクアだった。

 

 「は?なに、カズマさん王都にいるの?てことは、またアイリスのところにいるわけ?アイリスのところに行ったわけ?本っ当にどうしようもないロリニートね、カズマさんは!いいわ、ただでさえ駄目なのに、アイリスのところに居たら本当に完全に駄目なダメ人間になってしまうわ!今すぐ王都に行って、カズマさんを引きずって帰るわよ!!」

 

 「えーと、そういうわけじゃないんだけど・・・・・・。まあいいや!詳しい説明は向かいながらするし!というわけで、めぐみんも一緒に!!」

 

 アクアのあまりの剣幕に若干引いた様子のクリスだったが、すぐに気持ちを切り替えたらしく私に向かって手を差し出してきた。

 もちろん、その手を拒むつもりはない。

 もともと王都には行こうと思っていたし、それに加えてカズマが王都にいるというなら、行かない理由はどこにも無かった。

 

 「分かりました。行きましょう、王都へ!」

 

 私たちはクリスに先導され、アクセルの街にある王都行きのテレポート屋へと向かったのであった。

 

 

 

 

 

 

 王都に辿り着いた私たちはを出迎えたのは、衝撃的なまでに変わり果てた姿となった王都の姿であった。

 

 「なんだ、これは・・・・・。これが、王都なのか?いったい、何があったというんだ?」

 

 ダグネスが呆然とした口調でそう呟いたが、それも無理からぬことだった。

 王都は、私たちが最後に見た時の姿とは全く違っていた。

 レンガ造りの街並みは消え、紅魔の里にあった古代遺跡のような長方形の柱が周囲を圧するように立ち並び、その柱のあちこちに灯や看板が取り付けられている。

 こんな町は見たことが無いし、本で読んだことも無かった。

 

 「なにこれ、日本なんですけど。日本の歌舞伎町とか銀座とかそんな感じなんですけど。え、うそ、私いつ日本に来たの?知らないうちに天界に帰ってて日本に来たの?----って、クサッ!なにこれ、そこいらじゅうから悪魔の悪臭がするんですけど?!なに、王都は悪魔に乗っ取られっちゃっわけ!?」

 

 アクアが気になることを言っている。

 これが、カズマが産まれたというニホンという国の風景なのだろうか?

 それに、悪魔に征服されている?

 

 「アクア、悪魔なんて見当たりませんよ?周りには人間しかいないじゃないですか」

 

 「いや、悪魔はいるよ、そこいらじゅうに。完全に人間に擬態しているから分かりにくいけど、普通の人に交じって歩いてる。あとダグネス、気持ちは痛いほど分かるんだけどアクアさんを止めて。ここで退魔魔法なんて使ったら、一発で警察に捕まっちゃうから」

 

 クリスに促されたダグネスは、今まさに特大の退魔魔法を撃とうとしていたアクアを羽交い絞めにして止めた。

 アクアはかなり暴れてダグネスの髪を引っ張ておりダグネスは涙目になっているが、腕力の差で止めることは出来るだろう。

 攻撃が当たらないだけで、前衛職であるダグネスの筋力はパーティでも随一なのだ。

 

 「しかし、なんでこんなことになっているんです?いくらなんでも変わり過ぎというか、そもそも悪魔が普通に街を歩いているのもおかしいですし、本当に征服でもされてしまったのですか?」

 

 もしそうだとしたら一大事だ。

 このベルゼルグ王国は対魔王軍の最前戦地にして防波堤。そして世界屈指の戦力を持つ軍事大国だ。

 ここが悪魔たちの手に落ちたとなれば、それは人類存亡の危機に直結するといっても過言ではないのだ。

 

 「それが征服されたってわけじゃないんだよ、その分たちが悪いんだけどね。―ーーーすべてはあの、()()のせいだよ」

 

 そう言うとクリスは、町の一角に立っている黄金に輝く銅像を指さした。

 眉毛がの形に繋がった角刈りの中年の銅像であり、左手を腰にあて、右手をパーにして掲げて満面の笑顔を浮かべて周囲を見下ろしていた。

 更によくよく見ると、その銅像と同じ中年男をモデルにしたと思しき金像がポーズや服装を変えて町のそこかしこに置かれており、また長方形の建物に掛かっている看板にも全て、その男の眉毛と同じMのマークが描かれていた。

 

 「・・・・・何かしら、私、あの像とマークに言いしれない恐怖を感じるんですけど。ねえめぐみん、ダグネス、もう家に帰らない?私、正直もうここに居たくないんですけど、すっごく帰りたいんですけど」

 

 さっきまで悪魔達を浄化しようと暴れていたアクアであったが、いまは何かに怯えてひたすら帰りたがっていた。

 暴れ出さないのは良いことだが、まだ帰るわけにはいかないのだ。

 

 「何を言っているんですかアクア。ここにはカズマがいるんですよ?あの男を見つけなければ帰れませんよ。それに、アイリスの事も心配です。悪魔だらけの場所にあの娘をおいていくわけにはいきませんからね」

 

 友達を危険な場所に放置して逃げるなど、紅魔族の名折れである。

 

 「それでクリス、ここにカズマがいるという事でしたが、場所は分かっているのですか?」

 

 「うん、カズマ君がどこにいるかは分かっているよ。ほら、あの一番高いビル・・・・建物が見えるかい?今はあそこが王城なんだけど、あの中にいるよ」

 

 ダグネスが「あれが王城!?もとの城はどうなったのだ?!」と叫んでいるが、そんなことはどうでもいい。

 あれが王城だというのなら、アイリスもあそこにいるだろう。

 2人を助け、この事態を招いた悪の総統も倒す。

 実に紅魔族好みの展開であった。

 

 「でもあの城に入り込むのは私でもちょっと手間でね。そこで、めぐみんにお願いがあるんだけど・・・・・・」

 

 クリスが頼みにくそうな顔で私を見てくる。

 だが、そんな顔をする必要はないのだ。

 クリスは私が尊敬する銀髪盗賊団のお頭でもある。盗賊団の傘下組織の首領である私としては、その助けになる事ならどんなことでもするつもりだった。

 

 「そんな顔をしなくても大丈夫ですよ、クリス。私にできる事なら、どんなことでもしますから!」

 

 私は紅魔族に相応しい堂々たる態度で、そう宣言したのだった。

 

 

 

 

 「いやああああああああ!!放してめぐみん!あそこが私の居場所なの!あそこでなら皆が私に話しかけてくれるの!話を聞いてくれるの!私はもっと、あそこで飲むのおおおオオオオオオ!!」

 

 「いいから来なさい、このぼっちが!最近見ないと思ったら、なんてところで何をしてるんですか!早く行きますよ!こんなところにいたら、人として駄目になってしまいます!!」

 

 「いやああああ!いやああああ!放してえええええええ!」

 

 王都の一角、華やかな灯で照らされ軽快な音楽が鳴り響く店の前で、私は嫌がるゆんゆんを無理やり店から引きずり出していた。

 

 「それに聞きましたよ!最近は毎日一日中、この辺の店で飲んでるって!お金はどうしてるんですか、お金は!まさか家の金を盗んだり、借金したりしてるんじゃないでしょうね?!」

 

 「それについては安心して、めぐみん!リョーさんが宝物庫にある金を好きに使っていいって言ってくれたから、全部国の金で飲んでて、私の懐はまったく痛んでないの!!」

 

 「完全に悪徳貴族のやり口じゃないですか!?紅魔族の誇りは何処に行ったのです!というか、あなたは本当にゆんゆんですか?!お願いですから、元のゆんゆんに戻ってください!今のあなたは人として終わる寸前のところにいますよ!?」

 

 ゆんゆんは、最近王都にできたイケメンの男性と一緒に酒を飲み遊ぶホストクラブという場所に通い詰めていた。

 もともと深刻なぼっち気質で悪い男に騙されないか心配ではあったのだが、根本的には聡明で、割と芯も強いのでここまで酷いことになるとは想像もしていなかった。

 邪険にせず、もっと隣で支えてやれば良かったと後悔する。

 

 「そんなことないわよ!この前だって親友のふにふらさんとどどんこさんを誘って一緒に飲んだんだけど、二人とも顔を真っ赤にして私を褒めてくれたもの!」

 

 「そんなことまでしてたんですかあなたは!?それは喜んでたんじゃありません!あなたが遠いところに行ってしまったと怖くなってとりあえず持ち上げただけです!ああ、もう!」

 

 そんなことは無いと泣きながら叫ぶゆんゆんの姿に頭が痛くなる。

 後ろを見るとアクアとダグネスが泣き叫ぶゆんゆんの姿にドン引きしており、クリスに至ってはこちらに目を合わせようともしない。

 恐らくクリスはゆんゆんがこんな状況に陥っていることを知っていたのだろうが、知っていたならもっと早く手を打つなり私に知らせるなりして欲しかった。

 そんなことも出来ないほど、盗賊の仕事が忙しかったのだろうか?

 どちらにせよ、こんな状態のゆんゆんを放っておくことは出来ない。

 私の親友にしてライバルがこんな調子では、私の名誉にだって傷がつくのだ。

 

 「ゆんゆん、よく聞いてください」

 

 「な、なによ。いつになく、真剣な顔で・・・・・・・」

 

 ゆんゆんの肩を掴み、その目をじっと見つめながら宣言する。

 

 「今のあなたは、とてもひどい状態です。今すぐ私と一緒に来て、その行状を改めてください。さもなければ・・・・・・・あなたとは、絶交です」

 

 絶交、という言葉を聞いた瞬間、ゆんゆんは泣くことを辞め、血の気の引いた真っ青な顔になり、縋るような声で聞いてきた。

 

 「ぜ、絶交って・・・・・・。う、うそ、嘘よね、めぐみん。私を説得するために、嘘を言ってるのよね、めぐみん・・・・・・・・?」

 

 思わず憐れみを催すような態度と声であったが、それに対し、きっぱりと答える。

 

 「いいえ、絶交です。これで行状を改めないようなら、もうあなたの事を知人とも思いません。私に二度とその顔を見せないでください」

 

 突き放すような私の言葉を聞いたゆんゆんは暫し絶句し、その後、子供の様に泣き叫びながら私の足に縋りついてきた。

 

 「わああああああああ!私が悪かった!私が悪かったから、お願いだから捨てないでめぐみぃいいいいいん!!」

 

 「ちょ、やめなさい!ここは町中ですよ!?」

 

 待ちゆく人々が歩を止め私たちの方を見つめ始めた。

 

 「お願いよおおおおおおお!捨てないでえええええええ!何でもする、何でもするからあああああ!靴だって舐めるし、稼いだお金も全部上げるし、何だったら紅魔族の族長の座だってあげるからああああああああ!」

 

 「やめなさい、放しなさい!町の人達が見てるでしょう?!」

 

 ついには周囲の店からも人が出てきて私たちを指さしながら何事かを話し始めた。

 痴話喧嘩とか、散々貢がせて捨てようとしてるとかいった会話が聞こえてくるあたり、何かとんでもない誤解を周囲に与えている気がする。

 

 「何でもするから、私を捨てないでえええええええ!」

 

 「分かりました、分かりましたから!実はあなたに手伝ってもらいたいことがあるのです!それを手伝ってくれたら、先ほどの話は取り消しますから!」

 

 そう言って、なおも泣き叫ぶゆんゆんを引きずってアクアたちの元に向かう。

 そして向かいながら私は、正直あのリョーツカンキチとかいう総統の事を侮っていたかもしれないと思い知った。

 そしてそれと同時に、今はリョーツ総統の友人として王城に住んでいるとクリスから聞いたカズマの事を思い、気が重くなった。

 あの真面目なゆんゆんすらここまでのダメ人間に堕としてしまったのだ。

 もとから割とダメ人間であったカズマが、そのリョーツ総統と友人となったことでどんな状態になってしまっているのか。

 創造するだに恐ろしかった。

 




 今回クリスが悪魔を見るなり殺しに行かなかったのはそれどころでない事情があるからです。原作12巻でも素材はぎ取ってから倒さないといけないと優先順位はしっかりしてる感じでしたので。
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