この素晴らしい世界に両津勘吉を!   作:ダイアジン粒剤5

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今回ちょっとオリジナル設定があります。


第5話

 「いてててて、ちょ、放せよクリス!お前、俺よりステータス高いんだからちょっとは加減しろって!」

 

 焦った様子のクリスに無理やり隣の部屋に連れてこられた俺がそう抗議すると、クリスはようやく手を放してくれた。

 

 「ったく、ダグネスにめぐみんにお前も、ちょっと両さんのことを誤解してるんじゃないか?言っとくけどこの素晴らしい暮らしをくれたことを別にしても、俺は両さんのことを尊敬してるんだ。何を言われようと、あの人と敵対するつもりはないぞ」

 

 そう、俺は両さんを尊敬しているのだ。

 様々な分野で発揮する圧倒的手腕に俺より上のゲームの腕。

 そして何よりあの人生を楽しみ抜こうとする生き方。

 楽に怠惰に生きることが信条の俺だが、それを曲げてもあの人の様に生きたいと思わせるものが両さんにはあった。

 

 「まあ悪魔が平然と町を闊歩しているのはクリス的には許せないことかもしれないけどさ、それについては俺から両さんに言っとくから。クリスも一度両さんにあってみたら・・・・・」

 

 

 「お願いします、サトウカズマさん!あのリョーツカンキチを倒す手助けをしてください!この世界の、危機なのです!!」

 

 

 この世界で最も信仰されている幸運の女神エリス様が、俺の前で跪き、手を組み頭を下げて懇願していた。

 

 「え、ちょっと、クリス?じゃなくてエリス様?!ちょ、頭をあげてくださいよ!」

 

 「お願いします!お願いします!もう、時間がないのです!!」

 

 銀髪盗賊団の首領であり俺たちの友人であるクリスは、幸運の女神エリス様がこの世界に降りてきた時の姿なのだ。

 この秘密は俺しか知らないのだが、知っている俺の前でもここまでエリス様としてふるまうことは稀で、ここまで取り乱しているのも初めてだった。

 

 「ちょっとエリス様、落ち着いてくださいよ!あんまり大声出すとダグネス達にも聞こえちゃいますよ!?」

 

 「時間がないのです!お願いです、私にできる事なら何でも、何でもしますから!」

 

 「・・・・・ん?いま、何でもって言いました?」

 

 ここでこんな台詞が出てくるあたり、俺は最低かもしれない。

 

 「ええ、何でもです!早くしないと、この世界で最終戦争(••••)が始まってしまうのです!」

 

 「ええ~、どうしよっかな~、なにしてもらおっかな~・・・って、ちょっと待って、なに、最終戦争?」

 

 「はい、天界の最高戦力がリョーツカンキチを討つべくこの世界に向かっているのです!」

 

 

 「はァーーーーーー!!??」

 

 

 「・・・・・あのリョーツカンキチという方は以前、そのあまりの悪行により天界の者の手で地獄に堕とされたことがあるのです」

 

 「は?地獄に?」

 

 最終戦争が始まるかもしれないという衝撃的な事実からはとりあえず目をそらし、俺は落ち着きを取り戻したエリス様から、かつて両さんがしでかしたことについて話を聞いていた。

 

 「はい、とはいえ悪魔たちが支配する領域ではなく私たち天界勢力の地獄における拠点、エンマ大王が治める閻魔殿にですが。そこでは悪魔に飽きるまで弄ばれるなどということはなく、罪に応じた刑期に応じて罰が与えられ贖罪が与えられます」

 

 「まあ、俺も日本人何でそこらへんは割とわかりますが」

 

 悪いことしたら死んで地獄に行き罰を受ける。

 日本人としては普通の感覚ではあるのだが、それはそれとしてあの両さんが生きたままそんなところに落とされてジッとしているとは思えない。脱獄でもしたのだろうか?

 

 「それどころではありません。地獄に捕らえられていた極悪人たちの怨霊を扇動して革命を起こしエンマ大王を倒して独裁者となり、その後地獄の軍団を率いて天界に攻め入り、一時的に占領してしまいました」

 

 「なにそれ怖い?!」

 

 ただで済ますはずないとは思ったけど、そこまでやってたとは予想外だったよ!

 

 「そーいえばサキュバスのお姉さんたちが両さんは悪魔にとって伝説の英雄だって言ってたっけ。たしかに敵対してる天界にそんなことをすれば英雄扱いにもなるのか・・・・」

 

 ちょっと納得したかもしれない。

 

 「カズマさん?サキュバスのお姉さんとはなんのことです?」

 

 おっといけない。エリス様が絶対零度の視線でこっちを睨んでいらっしゃる。

 アクア以上に悪魔に厳しいエリス様の事。サキュバスサービスのことを知られたら問答無用でお姉さんたちが虐殺されてしまうかもしれない。

 

 「この町に住んでるサキュバスさんたちのことですよ。そんなことより、天界を一時征服されたから今度も同じことが起きるかもと不安で、その天界の最高戦力が攻めてくるってことでいいんですか?」

 

 だとすれば分からないことも無いかもしれない。

 それだけの前科化がある人間が悪魔たちを従えている状況は恐怖以外の何物でもないだろう。

 

 「いえ、彼が行ったことはこれだけではありません」

 

 「まだあるんですか?」

 

 ただモノではないと思っていたが、やはり両さんは俺の想像を超える存在だったようだ。

 

 「ええ、まずその占領自体は彼の自滅により短期間で解放されたのですが、短期間とはいえ天界を制圧された怒りから上位神が罰として彼を獣に変えたのです」

 

 「あのすみません、その上位神ってのは何なんですか?」

 

 「・・・・そうですね、説明は難しいのですが、私やアクア先輩よりも上位の神と思っていただければ問題ありません。話を戻しますが、罰を受けた彼は激しく怒り閻魔殿に捕らえられていた大悪魔たちを解き放ち、それらを率いて上位神の住まう楽園に襲撃をかけたのです」

 

 「ほとんどテロリストですね」

 

 元の世界では警察官をやってたって言ってたハズなんだけどなー、両さん。

 

 「結局上位神様は無事だったのですが何か弱みを握られてしまったらしく、それ以降あのリョーツカンキチという男を何よりも恐れているらしいです」

 

 「神様脅迫してるんですか、両さん」

 

 俺もアクアを脅したことは一度や二度じゃないが、明らかにそれとはスケールの違う話だった。

 

 「その後上位神様は隙を見つけて彼から悪の心の元を取り出し激しい一騎打ちの末に宇宙の彼方に追放したらしいのですが、彼の悪の心は簡単に復活し、追放された邪心も他の星で魔王となって君臨するという事態になり、彼は天界にとって最大のアンタッチャブルになったのです」

 

 「あのすみません、両さん本当に人間なんですか?経歴が完全に裏ボスとかそういった類の邪神とか魔神のそれなんですけど」

 

 一応はラスボスであるはずの魔王より完全に格上の存在である。

 

 「ええ、信じがたいことですが人間で間違いありません。なので天界側も下手に触れたくないという理由で静観していたのですが、なんの手違いかこの世界に転生してしまい、それだけでなく悪魔たちと結託してしまったのです」

 

 「結託っていうと・・・・・バニルとかですか?」

 

 そういや初めて見た時からバニルは両さんに傅いていた。

 公爵級の悪魔だとか言ってたし、今の話を聞く限り確かに両さんと組まれると厄介かもしれなかった。

 

 「・・・・地獄を支配する七公爵筆頭のバニルですか。ええ、そうですね。奴を中心に普段は群れることのない七公爵全員がリョーツカンキチの元に集っているそうです。悪魔たちは彼を旗印にこの世界の神話時代に行われた始原戦争の報復をするつもりだと天界は判断しており、最悪の事態を避けるため、最終戦争を行う決意を固めたのです」

 

 「スケールがデカすぎる?!」

 

 魔王軍との戦いとかそれに比べたら完全にただの小競り合いだよ!

 

 「・・・・・あの、仮にその最終戦争が起きたらこの世界はどうなるんですかね?」

 

 絶対碌なことにはならないという確信はある。

 

 「・・・・最低でもこの世界に生きる全生命体の八割以上が死滅し、最悪の場合はこの世界そのものが完全崩壊します。天界側はその最悪の事態を想定し、場合によっては世界そのものを新しく創り出す準備をしています」

 

 「・・・・・・・・」

 

 絶句である。

 話のスケールが違うとは思っていたが、これはもう完全に俺の理解を超えていた。

 神々と悪魔の最終戦争?

 世界の崩壊?

 新世界の創造?

 異世界ファンタジーどころか完全に神話とかそういった類の話になってきてしまっている。

 

 「お願いします、カズマさん!私はこの世界が、この世界に生きる人々が、大好きなんです!消滅なんてしてほしくない!ずっとずっと、続いていって欲しいんです!だからどうか、私に力を貸してください・・・・・!」

 

 膝まづき、目に涙を溜めて世界を救って欲しいと懇願するエリス様。

 その姿はあまりにも神々しく、まるで一枚の宗教画でも見ているようだった。

 だが懇願される当の俺は、そんな世界を救えるような英雄ではないのだ。

 俺は元の世界でははただの引きこもりのニートで、この世界では既に成長の限界が見えてきている最弱職の冒険者だ。

 あらゆる物を切り裂く魔剣を持っているわけでもなければ、数多の上級魔法を操れるわけでもない。

 死者すら生き返らせられる神聖魔法や全てを破壊する攻撃魔法など唱えられるわけもないし、決して怯まぬ強靭な肉体すら持っていない。

 そんな俺に世界を救ってくれと頼むなど、無茶ぶりもいいところである。

 正直今すぐ屋敷に帰って引きこもりたいぐらいだ。

 だが。

 何もしなければ世界が滅ぶというのならば。

 俺も含め、皆が死んでしまうというのならば。

 それはもう、仕方がないのだ。

 

 「しょーがねーなー!!」

 

 女神の願いに応えて、世界を救わなければならないのだ。

 

 

 

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