この素晴らしい世界に両津勘吉を!   作:ダイアジン粒剤5

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第6話

 「私たちが何を言っても動こうとしなかったカズマが、クリスに説得されるとすぐ動こうとするというのは、やはり納得がいきませんね。クリス、一体どうやってこの自堕落人間を動かしたのですか?」

 

 「そうだな。この男は一度ああなると何か尻に火が付くような事態にならなければ動かない筈なのだが・・・・。クリス、お前何か私たちに隠し事をしていないか?」

 

 「いやいや、別に何も隠してないって!信じてよダグネス!それにめぐみんも、杖で頬をグリグリするのはやめてって!別に助手君とは普通に仕事上の相棒なだけだからさ!」

 

 エリス様に説得された俺は現在、アクアやアイリスたちと一緒に両さんを倒すのに必要なものを手に入れるため城の厨房へと向かっていた。

 ちなみにめぐみん達には天界と両さんとの間で最終戦争が勃発しそうなことについては黙っている。

 無用な混乱を引き起こすだけだし、なによりクリスの正体がエリス様だとを明かすことになる。

 エリス様が身バレを嫌がっている以上、正体を隠しておくのは最低限のマナーだろう。

 なによりエリス様と二人だけの秘密を持っている今の状態を手放すのは惜しいし。

 

 「あのー、カズマさん?本当にリョーさんを倒すんですか?めぐみん達をここに連れてきておいてなんですけど、私としてはリョーさんと戦うのは気が進まないのですが・・・・・」

 

 ゆんゆんがおずおずと声を掛けてくる。

 この城には様々なセキュリティーがあり侵入することは一流の盗賊でもほぼ不可能なのだが、両さんと最も長い付き合いであるゆんゆんは完全顔パスで入れるため、めぐみんによって仲間に引き込まれたらしい。

 

 「まだそんなことを言ってるのですか、この娘は!いいですか、あなたが元のゆんゆんに戻るにはまずあの総統から離れなければなりません!それによってようやくあなたの更生は始まるのです!もし、出来ないというのならば・・・・・!」

 

 「わ、わかってるわよ!ちゃんとやる、ちゃんとやるから・・・・!」

 

 両さんとの交流によりゆんゆんはかなりの社交性を獲得していた。

 正直元に戻す必要性が分からないのだが、自分以外に友達が出来たことが許せないのだろうか?

 意外と独占欲の強いやつである。

 

 「心配しなくても両さんと戦う気はねーよ。そもそも戦って勝てる気がしないし」

 

 「なに言ってるのよカズマさん。いつも通り小狡い手や小細工で倒せばいいじゃない。カズマさんってばそれだけが取り柄なんだから」

 

 「それだけって何だよ?!それにお前はいつまでワン〇ース読んでんだ!歩きながらマンガ読んでんじゃねーよ!」

 

 アクアの読んでるワンピー〇を取り上げようとするが、意外と素早い身のこなしで回避される。

 クソッ、そういやコイツのステータスは意外と高いんだった!舌出してる顔がムカつく!

 

 「ま、まあそれはいいとして!助手君ってば時間もないのに、なんで厨房になんて向かってるのさ。リョーツカンキチがいるのはこのビルの上に立っている屋敷の中じゃないの?」 

 

 クリスの言う通り、両さんがいるのはこのビルのペントハウスの中だ。

 本来なら厨房になど行く必要はないのだが・・・・・。

 

 「両さんを倒すには必要な絶対に必要なものがあるんだよ。いいから俺を信じてついて来てくれ」

 

 

 

 

 ビルの最上階。両さんのいるペントハウスは、この世界には不釣り合いな和風建築になっていた。

 

 「これは・・・・・」

 

 「見たことのない建築様式だが、それにしてもこれは・・・・・」

 

 「なんていうか、成金趣味丸出しというか・・・・」

 

 「目に痛いです・・・・・」

 

 「うわー・・・・・」

 

 「ねえカズマ!これってあれよね、日本の京都にあるあれ!そう、金閣寺!」

 

 建物は、瓦も壁も柱もすべてがキンキラキン。

 障子にまで金箔が張られており、日本的な侘び寂の欠片もない代物だった。ところどころに置かれている両さんの顔をした招き猫については冗談だと思いたかった。

 

 「これがカズマのいた国の文化なのか?その、豊かなのだとは思うが、正直・・・・・」

 

 やばい、両さんのせいで何か日本について良くない誤解が生まれている気がする!

 

 「いや、ちげーから!これは両さんの趣味であって、日本の家が全部こんななわけじゃないから!アクアも余計なこと言ってんじゃねえ!」

 

 「な、なによ!私は金閣寺みたいだなー、って言っただけじゃないの!こんなことで怒らないでよ!」

 

 自分への扱いに文句を言うアクアを無視し、俺達は厨房から持ってきた荷物を担いで両さんのいる屋敷の奥へと入っていった。

 全体的に目に痛い金色をしていることを除けば屋敷自体は単純な構造をしているため、両さんの部屋にはすぐ辿り着いた。

 両さんが誰かに話しかける声がするので、中には両さん以外に誰かがいるのかもしれなかった。

 

 「まずいな・・・・バニルとかが居たら計画が狂うぞ」

 

 俺が考えた作戦は、両さんのそばに他の誰かがいると失敗する可能性があるのだ。

 アクアとクリスがいればバニルの能力で見通されることもないだろうが、もしいた場合はアクアを適当にたきつけて屋敷から追い出す必要があるだろう。

 そう思いながら部屋の取っ手に手を掛けた時、クリスが俺の服の袖を引っ張って来た。

 

 「クリス?」

 

 「・・・・・ねえ、助手君。今更、本当に今更なんだけどさ。本当に、大丈夫なのかな?だって、この先にいるのは、あの、リョーツカンキチなんだよ?私たちなんかで、本当にどうにか出来る相手なのかな?・・・・今なら、逃げ出せるよ?私の力で、どうにか皆だけは、絶対に助けてみせるよ?」

 

 クリスが、どこか青白い顔で震えながらそう尋ねてきた。

 両さんの実物を知らず、その伝説だけを知っているせいなのか、クリスは両さんに対する恐怖がここにいる誰よりも強いようだった。

 そうでなければ、あのクリスがこんなことを言い出すなんて有り得ないだろう。

 

 「・・・・大丈夫だよ、クリス。お前が思ってるほど、両さんは怖い人じゃないからさ。それに、ここには俺たちがいるんだぜ?怖がる必要なんてないさ」

 

 クリスを安心させるよう、俺が優しい口調でそう言うと、ダグネス達もクリスを慰め始めた。

 

 「そうだぞクリス、泣き言を言うなんてお前らしくもない。ここまでのことが出来るのだ、確かにリョーツという男は並みの人間ではないのだろう。だが、ここには私たちがいるのだ。たとえ相手がどんな存在だろうと、恐れることなど何もないさ」

 

 「そ、そうですよクリスさん!その、やっぱり両さんと戦うのは気が進みませんけど。それでも、もし両さんがクリスさんに酷いことをしようとしたら、私が助けますから!と、友達として!」

 

 「・・・・クックックッ、たとえリョーツ総統が魔王に匹敵するほどの存在だとしても、我が最強の爆裂魔法で、必ずやクリスを守って見せましょう!」

 

 「リョーさんがクリスさんに何かしようとしたら、私が叱ってあげます!」

 

 「みんな・・・・・」

 

 ダグネス達の温かい言葉に感極まってしまったのか、クリスは溢れ出てきた涙を指で拭うと、女神のような笑みを浮かべながら言った。

 

 「うん、ありがとう!みんなで、必ずこの世界を救おうね!」

 

 世界を救うだなんて大袈裟な、とツッコミを入れるダグネス達に笑みを返すクリス。

 俺の想像するこの後の展開を思うと場違いなことこの上ないのだが、まるでラスボスに挑む直前の勇者パーティーの会話みたいで、これはこれで悪くない気がしていた。

 

 「んー・・・・・」

 

 だが、そんな場の空気を読まずに腕を組んで唸り声をあげる駄女神が一人。

 

 「おいアクア。お前、さっきから何をうーうー唸ってるんだよ。今日の晩飯のことなら後で考えろよ」

 

 「ちっがうわよ!この状況でそんなこと考えてるわけないじゃない!いやそれも考えてたけど、そうじゃなくて・・・・」

 

 ラスボス部屋の直前で今日の晩飯のことを考えていた女神様は、屋敷の一角に置かれている両さん顔の招き猫を指さすと、顔を青くしながら言った。

 

 「わたし、あの顔、特にあのM字の眉毛を見てると体の奥から言いしれない恐怖が湧いてくるのよ。それにリョーツ、リョーツカンキチ。わたし、この名前に聞き覚えがある気がするのよ。こう、その名前を聞いたらすぐに逃げなきゃいけないって感じの・・・・・」

 

 おっといけない。

 そういえばコイツも神様の端くれ、両さんのことを知っていてもおかしくない。

 そして今の態度から考えるに、仮にこいつが両さんが何者なのか気が付けば、確実に逃げようとするだろう。

 俺の計画にはこいつの存在が重要なのだ。逃げ出したこいつを捕まえる時間も勿体ない。

 こいつが気付く前に、両さんの部屋に突撃しなければ。

 

 「よし!じゃあ突入するぞ!!」

 

 「あ、もうちょっと待ってカズマさん!わたし、もうちょっとで何かを思い出せそうで・・・・」

 

 俺を止めようとするアクアを振り払い、俺は俺は両さんの部屋の扉を大きく横に開いた!

 

 

 

 

 「いいからエルロードのカジノを買い取るんだよ!なに、国の象徴であるカジノを売ることに王族が難色を示しているだと?札束・・・じゃない、金貨袋で頬をブッ叩くんだよ!国政を仕切ってた大臣がいなくなって、今あの国の財政は火の車なんだ。金で頬を2,3発叩けば、皆わしの言いなりだ!」

 

 

 

 

 どれほどの金額になるのか想像も出来ないほどの札束の玉座の上で、両さんは手にした携帯に向かって吠えていた。

 お札に描かれている肖像画は全て両さんで、単位はエリスではなく亀。

 以前両さんから聞いた話では、いずれこの世界の金を全て両さんの手元に集め、代わりにこの紙幣を流通させるつもりらしい。

 そして集めたこの世界の金は日本に持っていき、日本円に両替するつもりだと。

 どこまでも貪欲に金を求める両さんの強欲は、まさに底なしだった。

 

 「・・・・ん?おお、カズマじゃないか!部屋から出てくるとは珍しいな」

 

 両さんはスマホの電源を切ると、札束の玉座から降りてこちらに向かってきた。

 周りに人影はないし、どうやら部屋の外で聞こえた話し声は携帯に向かってのものだったらしい。

 これなら、俺の作戦も上手くいきそうだった。

 

 「ゆんゆんにアイリスも来たのか。で、そっちの4人は・・・・・・」

 

 「前に話した俺の冒険仲間だよ、両さん。俺に会いにここまで来てくれたんだ」

 

 「おお、こいつ等がそうなのか。カズマから聞いとるかもしれんが、わしが両津、両津勘吉だ。気軽に、両さんと呼んでくれ」

 

 そう言って気さくに笑う両さんの姿に、クリスたちは面食らっているようだった。

 まあそれもそうだろう。

 クリスにとって両さんは悪魔たちを従える恐怖の魔神で、ダグネスとめぐみんにとっては王国を好き勝手に支配する暴君だ。

 そんな相手にここまで友好的に話しかけられるたりしたら、どうしたらいいか分からなくもなるだろう。 

 アクアだけは、「やっぱり、私この人の事知ってる気がするんですけど・・・・」と顔を青くしているが。

 

 「それで、こいつらが来てくれた祝いに宴会でもしようかと思って厨房からシュワシュワとつまみを持って来たんだ。みんなに紹介もしたいし、なんなら両さんも一緒に飲まないか?」

 

 「おお!それはいいな!よし、今日は朝までパァーっと飲むぞ!」

 

 俺の、両さん打倒のための計画がここに始動したのだった。




終わらせられませんでした。次話で何とか終わらせられるよう頑張ります。
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