この素晴らしい世界に両津勘吉を!   作:ダイアジン粒剤5

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第8話

 「うわぁ・・・」

 

 二日酔いで痛む頭を振りながら目覚めた時、目の前に広がっていた光景は、控えめに言って地獄絵図だった。

 華麗な装飾が施されていたはずの神輿は全て原型がなくなる程壊れており見る影もなく、担ぎ手たちは全員がだらしない格好で酒瓶を抱えながら爆睡していた。

 ルナさんを始めとする女性陣もあられもない姿で眠っているので本来なら眼福ものなのだが、痛む頭と余りにもだらしない寝姿にイマイチそういう気分になれない。

 

 「いや、そうじゃない。何かあった様な・・・・。そうだ、両さん!両さんはどうなったんだ?!」

 

 両さんを元の世界に送り返さないと最終戦争が起きて、この世界が滅ぶんだった!

 事態の深刻さを思い出した俺は周囲を見回すが、両さんの姿は見えない。

 見えるのは互いに争っていたはずのアクシズ教徒とエリス教徒が仲良く抱き合って眠っている姿だけ。こいつ等普段は多少いがみ合ってるが、本質的には仲が良いのかもしれない。

 

 「・・・そんなことはどうでもいいか。それより両さんを探さないと。それに、クリスも。クリスがいないと両さんを元の世界に戻せないからな」

 

 俺は両さんを探して、酔っ払い共が眠っている中を歩き回った。

 その途中で全裸のダストが同じく全裸の男と抱き合って眠っている姿を見かけたが速攻で記憶から消し、天使のような顔で眠っているアイリスにいたずらしようとしたところで力尽きたらしいクレアには、強めのバインドをかけておいた。

 そこから更に進むと多数の重りが括り付けられた神輿に押しつぶされたダグネスが満足そうな表情で眠っているのを見かけ、さらに杖を折られためぐみんがゆんゆんに組み敷かれた状態で眠っているのを見かけたが、両さんは見つからない。

 だが更にその先、数十もの空の酒樽が積み上げられた中心に、両さんがアクアと共に眠ってた。

 

 「これは・・・・」

 

 豪快にいびきをかきながら眠っている両さんと、口から水を吐いて失神しているアクア。

 酒樽と共に金貨の入った袋が並んでいるところを見ると、恐らく両さんとアクアは金を賭けて飲み比べをしていたのだろう。

 だが、普通にやってアクアが両さん相手に飲み比べで戦えるわけがない。

 恐らくアクアは水の女神としての能力を使って酒を水に変えて飲むというインチキをしていたのだろうが、両さん相手に金を賭けた勝負をしてしまったのが運の尽き。

 両さんは底なし沼のごとく酒を飲み続け、それに対抗して水を飲み続けたアクアはついに耐え切れなくなり水を吐いて失神。

 勝負に勝った両さんは、大満足で轟沈したのだろう。

 水の女神が水を吐きだすまで酒を飲むとは、両さんの酒量はいったいどうなっているのだろうか?

 正直同じ人類なのか疑問である。

 

 「まあ何にせよ、これで後はクリスを見つければ万事解決だな」

 

 ここまでくる中で見かけなかった以上、この近くにいるとは思うのだが。

 

 「うう・・・・」

 

 そう思って周囲を見渡していると、近くからクリスのうめき声が聞こえてきた。

 

 

 「おっ、そこにいたのかクリス・・・・ってエリス様!?」

 

 うめき声の元を探ってみると、そこには着衣を乱れさせたエリス様が倒れていた。

 

 「ちょっ、エリス様?!大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」

 

 「ううっ・・・・みなさん、戦いを、戦いをやめてください・・・・。危機が迫っているのです・・・・私たちが戦っている場合ではないのです・・・・・。お願いです、お願いですから、戦いを・・・・やめて・・・・うっ」

 

 「エリス様ーーー!!??」

 

 エリス様は完全に意識を失ってしまった。

 さっきのうわ言とこの姿から察するに、おそらくエリス様はアクシズ教徒とエリス教徒の戦いを止めるべく真の姿で降臨したのだろう。

 だが祭りの熱に浮かされた両教徒たちの暴走はエリス様が降臨された程度では収まらず、逆に巻き込まれて揉みくちゃにされてこの始末になってしまったに違いなかった。

 

 「・・・・ってゆーか、マズイぞこれ!?せっかく両さんが泥酔したってのに、肝心のエリス様がこれじゃあ、両さんを送り返すことが出来ないぞ?!エリス様起きて!起きてくださーい!!」

 

 必死で呼び掛け揺すってみるが、エリス様が起きる気配はない。

 

 「ヤバイヤバイヤバイ!こうしてる間にも両さんが起きるかバニルが来るかでもすれば、全てが終わりだ?!クソッ、エリス様すいません!緊急事態なんです!」

 

 そう言うと俺は、エリス様の豊かな胸を思いっきり揉みしだいた。

 

 「・・・・・やっぱ固いな」

 

 アクアが言っていた通り、やはりエリス様はパッドを着けているらしかった。

 この世界での姿であるクリスの胸がああである以上、当然のことではあるのだが。

 兎にも角にも、俺はエリス様を起こすべく、巨大なパッドの下にある双丘にも振動が伝わるよう全力でエリス様の胸を揉むが、それでもエリス様は起きない。

 

 「・・・・エリス様~、早く、起きてくださ~い。早く起きてくれないと、パッド、取っちゃいますよ~?」

 

 反応が無かったので、俺は仕方なくエリス様の胸元に手を突っ込み、まずは一つ、エリス様のパッドを引きずり出した。

 

 「おお、これがエリス様の着けていたパッド・・・・!思ってたよりも大きいけど、なんか高級品って感じがするな」

 

 パッドなんて他に見たことないので詳しくは分からないが、それでも高級品だということは分かった。

 そもそもエリス様が身に着けていたものというだけで、既に同質量の黄金よりも遥かに価値あるものだった。

 

 「・・・・・片方だけ取って、もう片方はそのままってのはバランスが悪いよな。そもそもエリス様、まだ起きないしな。これは世界を救うために必要なことなんだ、きっと、エリス様も許してくれるに違いない!」

 

 俺は、再びエリス様の胸元に手を突っ込み、エリス様の胸に残ったもう片方のパッドも取り出した。

 

 「んんっ・・・・!」

 

 衣擦れか何かが刺激となったのか、エリス様がびくっと体を動かせて声を挙げる。

 その声に思わず俺も心臓が止まりそうになるが、幸いなことにエリス様はまだ目を覚ましていないようだった。

 

 「ふぅ、驚かせやがって・・・・!よし、エリス様はまだ寝てるな」

 

 エリス様がまだ眠っていることを確認した俺は、安心して手にしたパッドを観察することにした。

 やはりというかまだ温かいし、それに加えて、仄かだがエリス様の匂いがする気がした。

 暫しの間目を瞑り、その温かさと匂いを堪能した俺だったが、残念ながらエリス様はまだ目覚めていなかった。

 

 「ま、まだ目覚めないか~。しょうがないな~、これはもう、もっと強い刺激を与えるしかないか~」

 

 俺はエリス様を目覚めさせ世界を救うべく、断腸の思いでエリス様に手を伸ばそうとしてーーーーーーー。

 

 

 

 

 「そこまでにしておけ。それ以上するというのなら、さすがに罰を与えるぞ」

 

 「ふぎゃあああああああああああ???!!!」

 

 背後から唐突に声を掛けられ、猫が尻尾を踏みつけられたような叫び声をあげたのだった。

 

 

 

 

 「ななななな、何だ!?。だ、誰・・・・・?ってギャアアアアアアア??!!」

 

 振り返るとそこには、黄金の奈良の大仏みたいなオッサンが立っていた。

 

 「人の顔を見ていきなり悲鳴をあげるとは無礼な。今回の功績が無ければ、先のエリスちゃんへのセクハラも含めて神罰を当てとるとこだぞ」

 

 オッサンは腕を組みながら、苦虫を嚙み潰したような顔で俺を見下ろしてきている。

 一見硬質な金属のような外見だが、ちゃんと表情は動くらしかった。

 

 「し、神罰?あんた、いったい何者なんだ・・・・・?」

 

 「エリスちゃんから話は聞いておるだろう?わしが、かつてそこで寝とる男に酷い目にあわされた神様じゃ」

 

 「か、神様?」

 

 確かに神様と言われれば信じざるを得ない、仏様のような姿をしているが。

 

 「天界の者たちが早まったことをしないように止めながらこの世界の様子を覗っていたのだが、良い感じであの男が気を失ったのを確認したので降りて来たのだ。エリスちゃんは気を失ってしまって、門を開けそうにないからの」

 

 「あんた、天界が両さんを倒そうとするのを止めてくれてたのか?昔、酷い目にあわされたってのに?」

 

 見た目は傲慢なオッサンっぽいのに、そうだとしたら意外と良い神様なのかもしれないな。

 

 「ウム、この世界を崩壊させる程度でこの男を倒せるとは思えんからな。絶対によりたちが悪くなって復讐に来るにきまっとる。下手に手を出さんのが一番だ」

 

 両さんを恐れてただけだったよ!

 つーか世界を滅ぼしても倒せないと神様に断言されるとか、両さんは本当に何者なのだろうか?

 

 「・・・・あの、つかぬ事を伺いますけど、本当に両さんを元の世界に帰すだけで大丈夫なんですかね?正直すぐに戻ってこれそうなんですけど。どこかに幽閉とかした方がいいんじゃ?」

 

 「この男は地獄の独房からすら脱獄して革命を起こしたのだぞ?閉じ込めておくなど絶対に不可能じゃ。それに心配せんでも、そなたが元いたあの世界には、この男の天敵ともいえる存在が何人かおる。あの方達にさえ任せておけば問題ないし、あの方達以外にこの男を制御できるものはおらん」

 

 あの世界にそんな凄い人いるのかよ。

 この世界と比べればあっちの世界なんて常識的だと思ってたが、俺が知らなかっただけで、存外あっちの世界も規格外なのかもしれなかった。

 

 「まあそういうわけで、この男は連れて行かせてもらうぞ、ついでにエリスちゃんもな。こんな姿のこの娘を、あまり衆目に晒したくはないからの」

 

 そういうと神様は両さんを無造作に摘み、エリス様を丁寧に抱きかかえた。

 そして水を吐いたまま失神しているアクアに目を向けながら俺に言った。

 

 「・・・・アクアちゃんが天界(こっち)に帰ってくるのはまだ先じゃな。頼むぞ転生者の若者よ、神々(わしら)は基本的に現世(こっち)に直接手出しできん。今回のようなことは、本来有り得んのだ。魔王を倒し、この世界に住まう人々を救い、契約を果たしてアクアちゃんを天界に戻してくれ。頼んだぞ」

 

 そう言うと神様は、昇って来た朝日の中に入っていくように、光の中へと消えていった。

 そして後には俺と酔い潰れて眠ったままの皆だけが残され、祭りの後のような、どこか寂し気な空気だけが残された。

 

 「・・・・・この世界を救ってくれって、最弱職の冒険者の俺に出来るわけがねーだろ。俺は勇者様なんかじゃないんだぞ」

 

 俺は危ないことは出来るだけ避けて、世の中を安楽に生きたいだけの男だ。世界を救うなんて柄じゃない。

 そもそも今回のことで相当疲れたし、召喚した漫画やゲームを持って屋敷に戻り、しばらくの間は部屋に引き籠るつもりだ。

 世界を救うなんてことは、チート能力やらチート装備を貰った他の連中に任せておけばいいのだ。

 

 「しかし、これでもう両さんはこの世界にいないんだな」

 

 部屋を出て、眼下に広がる街を眺めてみる。

 石と煉瓦でできた元の街並みとは全く違う、巨大なビルが立ち並ぶ日本のような光景。

 エリス教徒にアクシズ教徒、冒険者にギルド職員たちといった、両さんに誘われてこの宴会に集まった人たち。

 この世界に来てからの時間は俺よりも遥かに短いだろうに、両さんは随分と大きな足跡をこの世界に刻んだものだった。

 

 「・・・・色々とヤバい人だってのはエリス様や神様から聞いて分かったけど、それでもあの人のことは嫌いになれないなー」

 

 一緒にいると楽しくて、どんなことが起きても最悪の事態だけは避けられそうな人だった。

 もしあの人とパーティーを組んで冒険したら、きっとハチャメチャで滅茶苦茶で、どん底と頂点を繰り返すような苦しい、しかし刺激的で楽しい冒険が出来たに違いないだろう。

 

 「まあ、もう二度と会うことは無いだろうけどな。両さんはもうこっちの世界には来れないだろうし、俺もあっちの世界には帰れないだろうし」

 

 だから、最後にこれだけは祈っておこうと思う。

 これからもハチャメチャに、破天荒に生きるだろう両さんと、両さんが滅茶苦茶に、そして楽し気に暴れるだろうあっちの世界に、祝福を!!

 

 

 




 次回、エピローグ的な物を書いて終わりにしたいと思います。
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