災厄が降りかかる。そう予言をした先人はその災厄を箱に閉じ込めた。そしてその箱さえ開けなければ災厄は降りかからない。
平和を謳歌する為には好奇心を殺せば良い。箱は開けずに捨て置けば良い。気にせずに歩んでゆけば良い。それが平和を繋げる為の守らなければいけないルール。
過去は忘れ去られる。
あの人の復活、魔法戦争、流れた血…未来を預言した者により災厄は箱に閉じ込められた。
その箱さえ開けなければ、平和のまま暮らしていける。
平和の時に生まれ落ちた者は知らない。箱を開ければどんな災厄が降りかかるのかを。知りえない過去は現在を生きる者にとっては現実味がない。だからそぎ落とさねばならないのだ、好奇心とその無垢な心を。
「みんな“希望の少年”にお熱じゃない。何だか面白くないわね」
死の呪いを受けても生き残った少年、ハリー・ポッターがホグワーツに入学した事は瞬く間に広まった。
“レイブンクロー”と書かれた談話室には大きな丸眼鏡に話す度に覗く歯の矯正器、頬にそばかすを散らした少女がつまらなさそうに言う。
ニイナ=ヘルヅェナ。レイブンクローの三年生である。
「希望だなんて凄いじゃない」
ニイナのご機嫌を窺いながら曖昧に笑うのはユニシア=ドレナード。
彼女もニイナと同じくレイブンクローの三年生だ。
「凄いもんですか。グリフィンドールで良かった、って馬鹿みたいに言っているみたいよ。グリフィンドールの何がそんなに良いのかしら、馬鹿ばっかりじゃない」
ため息をついて備え付けのソファーに背を預ける。ニイナは杖を小さく動いて自分の口元にスナック菓子を寄せた。
「ニイナは優秀だものね」
グリフィンドールの悪口には障らず、ユニシアはただそう言ってふわふわと空に漂うスナック菓子を見つめていた。
ニイナは我が強く、プライドも高い。それに対してユニシアは絵に描いた様な気弱でまるで空気とからかわれる事もあった。しかしながら同じ寮で同じ部屋、そして最大の共通点はお互いに友達と呼ばれるそれがいなかったのである。こうして二人はほとんどの時間を共に過ごしてきた。きっかけはそうだとしても、お互い短くない時間を過ごしてきているのは事実だった。
「入学式であれだけ英雄扱いよ?さぞかしいい気分よねえ」
スナック菓子がニイナの口内に消えていく。
ユニシアはソファー近くにあるテーブルに手を伸ばして炭酸の抜けたまるで砂糖水の様なジュースを一口飲んだ。
「…そうかもね。でも、楽しそうで良いじゃない」
「鼻っぱしの強そうなのばっかりで嫌になるわ。新入生なら新入生らしく大人しくしていればいいのよ」
「ニイナ、私たちはレイブンクローよ。グリフィンドール生とはあまり関わらないわよ、きっと」
「何寮でも関係ないわ、うるさい奴はみんな嫌い」
ふん、と鼻を鳴らしてニイナが立ち上がるとユニシアも後を追う様にして談話室を後にした。
レイブンクロー主、三年生です。
話が進むごとに現れる困難だったり危機は過去に生きた人が箱に閉じ込めてくれていて今は平和です、というトンデモ設定の上に進んでいきます。
見切り発車ですがよろしくお願いします。