東方 幻想録   作:秦霊

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第63話 水面下で動く計画

〜旧橘邸〜

(またあの御方はふらっとどこかへ行ってしまった…)

はぁ…と縁側を見ながら茶を飲むのはあの御方こと、秋人の一番弟子のアルトだ。

 

カコンッ

 

…気の安らぐような音を立て鹿威しの音色が辺りに響く。

 

するとふと自分よりも上位で見知った古い神力を感じた。

 

ガラガラっ

 

「なんじゃお主1人か、珍しいのぉ」

部屋へと入ってきた神力の持ち主は秋人の一番式白蛇だった。

「お久しぶりです白蛇様」

「そう言えば長らくお主を我は見ておらぬかったのぉ」

そう言いながら白蛇はアルトとは反対の座布団へと胡座をかき座る。

 

「えぇ、貴女様が基本夜行性でお昼はあまり起きていらっしゃらないからですね」

「じゃろうな、我は主の夜の相手を務めておるからな」

ニシシっとニヤケながら口元を手で隠し笑う白蛇を他所にアルトはまた溜息を吐く。

 

「アルトよ、溜息ばかりついておると幸せが逃げて行くぞ?」

「そうですね…善処しますよ」

 

そんな時だった。

 

ふとアルトは玄関にあまり見慣れない魔力を感じた。

 

「むぅ?誰じゃ?」

どうやら白蛇も感じたようだ。

 

その気配にあの御方のメイドも気付いたのか玄関へと向かう足音が聞こえてくる。

 

それから数分して気配の主が姿を見せる。

 

「アルト様、お客様を連れて参りました。入室してもよろしいでしょうか?」

「ん、あぁ入ってくれ」

 

スゥーと縁側の戸が開く音がしたと思ったら戸が空いていく隙間から澄んだ青髪が見えた。

 

「…お久しぶりですアルト様」

どうやら玄関先の気配の主は アリシア だった様だ。通りであまり覚えのない気配だとは思ったがアリシアだったとは…

 

「久しいねアリシア、君が師匠に用事とは珍しい」

そうアルトが言うとアリシアは少し顔を渋った。

 

「…実は今回はアルト様、貴方様宛の伝言を預かっており、それを報告に上がった次第です」

「…僕に報告?また珍しいね、それで?誰からだい?その伝言は」

 

()()()()からです」

「は?」

…これは珍しいでは済まなくなってきた。

…というかあの御方が僕に何の用だ?あの御方との関係は無かったはずだが…

 

……ますます分からなくなってきた。

 

「…それで?伝言の内容は?」

「…極魔王様が攻撃を受け、只今永遠亭にて治療を受けているということです」

…は?あの師匠が攻撃を受けて治療を受けている?…あの最狂の名を持つあの人が?

 

「…は?あの最狂の名を持つあの人が?」

「なんじゃと!?主が攻撃を受けた!?」

さっきまでアリシアの隣大人しく座って話を聞いていた白蛇が驚き声を上げる。

 

「…すまぬ取り乱した。攻撃を受けた、ということは何かしら怪我をしておるのではないのか?」

「えぇ…左足を切断だそうです」

「なっ!」

「っ!」

(嘘だろ?あの師匠だぞ?最狂とまで呼ばれ神にも恐れられているあの人に攻撃を当てれてその上左足まで持っていく者なんて見たことも聞いたこともないぞ!)

 

アルトと白蛇の顔はかなり険しくなる。

…それに追い打ちをかけるかのようにアリシアはポツリポツリと話を進める。

 

「…実は事はそれだけではないのです。…事は一刻を争います」

「…なに?どういうことだい?アリシア」

 

隣の白蛇は顔を歪めていた…これ以上のことがあるのかと

 

「…クザファンが破壊神様に託された伝言では()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とそう仰ったらしいです」

 

アルト、白蛇両方は突然後頭部を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。

…あのリスクが生きている?忌み子20人の一人が、リオンが殺したはずのリスクが生きている?…どういうことだ?有り得るはずはない仮にも忌み子6人のサイキョウが一人がそう言ったのだ。有り得るはずはない…

 

そう思ったアルトだったが現実はなんと非常であるのだろう…

 

「…ですがその証拠があったそうです。あの極魔王の左足は攻撃を受けた直後段々と変色していき腐食していったと」

「…任さか…こんなことが…有り得るはずは…」

白蛇は嘘だと信じたいのだろう。仮にもリスクが生きている可能があるということを…

 

「……」

ふと、無言で立ち上がった白蛇は庭へと歩みを進め始めた。

「?白蛇様、どちらへ?」

アルトがそう話しかけると、白蛇は振り向かず少し怒ったような声で答えた。

 

「決まっておるであろう…主の所じゃ」

そう言って白蛇は庭へ出ると胸元から転移勾玉を右手で取り出しそれを空へと掲げた。

 

「転移:我が主の元へ」

 

ふわっと白蛇を青白い光が取り囲んだかと思えばその姿は忽然と消え、辺りには青白い光が霧散していくだけであった。

 

「…転移勾玉か…ふぅ…」

そう一息アルトはつく、なんせぶっ飛んだ話を豪華二本立てで聞いたのだ。溜息の一つもつきたくなるであろう。

 

「あ、あの、アルト様?大丈夫でございますでしょうか?」

心配したアリシアが声をかける。

「ん?あぁ大丈夫だよ…さて、アリシア」

「は、はい」

緊張した様にアリシアは畏まる。

 

「この件をへカーティア様と神綺様に報告を頼む、その後は元の仕事に戻っていいよ」

「は、かしこまりました」

 

そう言ってアリシアは部屋をあとにした。

 

…アリシアが部屋を出て、後に残ったのは鹿威し音とあたりを包み込む静けさだけだった。

 

「……こんな日が来るとは…まさかあの御方がねぇ…」

「ふぅっ…」

…状況を整理するためにアルトは少し茶を飲むと少しリラックスする。

 

(今後…世界が滅ぶかもしれない程の忌み子同士の争いが必ず起こるだろう……そうなった時世界は死への階段を駆け上がることになる…)

 

「…そうならない為にも先手を撃つ必要があるな…」

 

カコンッ

 

鹿威しが心地よい音を立てると同時にそう呟くアルトであった。

 

 

 

〜永遠亭〜

永琳からの治療も一段落たった頃診察室から一つの溜息が聞こえてくる。

 

「…はぁ…」

「どうしたの?秋人」

「……」

優曇華が質問するが診察台に座っている秋人には聞こえていないのか、秋人は黙って頭を抱えている。

「秋人〜?」

今度は優曇華がゆさゆさと肩を揺さぶる。

 

「んぁ?」

ここでやっと気付く秋人だった。

 

「んもぉ…さっきから声掛けてるのに返事しないから揺さぶったの」

「…あぁわりぃ…少し考え事をしていた」

 

「…そう、それで?何考えてたの?」

「……そうだな、お前達に伝えるとしたら…安全域まで逃がす…としか言えねぇな」

「…へ?安全域…?それってどういう…」

 

「…そのまんまの意味じゃないの?優曇華」

「お、お師匠様!?いつからそこに」

突然声が聞こえ振り向くとそこには障子横の壁に背を預ける永琳がいた。

「…さっきから居たわよ…気づかなかったの?」

 

「…え?…さっきから居た?」

永琳の言葉に優曇華がかなり動揺する…気づかなかったのだろう。

 

「…貴女ねぇ…はぁ…まぁいいわ、それで?いつ頃から戦争でも始めるのかしら?」

「っ!?!?」

 

永琳の言葉に優曇華はやっと気が付いたようだ。秋人の言っていた"安全域"という意味を…

 

「せ、戦争って…」

「……いざとなったらお前達を安全域に送り届ける」

「…送り届けるってなどは貴方は来ないのかしら?」

秋人の言葉に永琳が続く。

 

「…俺はお前らを護らないと行けないからな」

「そ、そんな…」

話を聞いていた優曇華の顔はだんだんと暗くなってゆく、それも構わず永琳が話を続けてゆく。

 

「…そう言うと言う事は、貴方は死ぬまで殺し合いを続ける気がある…ということよね」

「ッ!?」

「……」

 

優曇華が永琳の言葉を聞くと驚き永琳の方をバッと見たあと秋人の方に視線を合わせる。

そして口を閉じていた秋人が喋り出した。

 

「…その通りだ、よく分かってんじゃねぇか」

「なっ!?だ、ダメよ!分かってるでしょ!?敵は秋人達よりも数が多いのよ!?あ、秋人が強いってことは知ってるけど、物量で押されたらどうしようもないのよ!」

 

しばらくの沈黙の後秋人は優曇華の言葉に答えを返した。

 

「…わぁってる、でもな、それでもやらなきゃいけねぇ時ってのがあんだよ。…もう二度と失わない為の戦いってのがよ」

…しばらく続いた沈黙のに秋人が返した答えだった。

だが、そう言った秋人の顔はかなり疲労している様に見えたが、優曇華は一瞬秋人のライトブルーの瞳を捉えた。

 

「…あっ」

「…」

…優曇華と永琳は気付いたのだろう、その秋人の覚悟を決めた目を…。

 

…だからなのか永琳は悲しそうな表情で、力のない声で一言言った。

 

「…秋人、戦うのは見逃してあげる。…でも死ぬなんてことは絶対に許さないから、どんな状況でも生きることを諦めはしないで、どんな状態でもいい、例え腕を切り落とされても、足を落とされても帰ってきて、お願いだから。いくらでも貴方のことを治療して癒してあげるから…。だから絶対に帰ってきて…約束よ」

 

ふと、秋人はその言葉を聞き永琳を見上げる。

 

そこには瞳に零れそうなほど大きな涙を浮かべる永琳が居た。

 

「……」

 

…そんな永琳を見た秋人は永琳の手を掴み、グイッと永琳を引き寄せる。

 

「キャッ」

 

そしてギュッと抱き締め、ゆっくりと頭を撫でる。

 

「…()()()()()、お前の言う事は聞くからよ」

 

「えっ?」

永琳は驚いた様に声を上げる。それと同時に目を擦る。

 

「…あ、れ?」

永琳は自分が泣いていたことに気がついていなかったのだろう。

目を擦った手は濡れていた。

 

「ほら、もう泣くな、な?」

そんな永琳に秋人はゆっくりとそして優しい口調で話しかける。

 

「…お、お師匠様」

 

「っ!」

優曇華の存在を忘れていたのか、声を聞いた途端ビクンっと身体を震わせスっと秋人から離れようとした。

…少し恥ずかしかったのだろう。

 

…だが、そんなことは秋人が許さなかった。

 

「あっ」

そんな声を上げた永琳は、1度秋人から離れようとしたが再度秋人に腕を引っ張られ秋人の腕の中へと戻される。

 

「どこに行こうってんだ?逃がさねぇぞ」

「ちょっ、ちょっと、は、離しなさいよ…」

永琳は少し抵抗するが…

 

「嫌だね、俺がこうして居たいんだ。だから離さねぇ」

「…」

…そんな秋人の気持ちというか気遣いに永琳は乗っかることにした様だ。再度永琳はゆっくり秋人の背中へと手を回す。

 

「…し、仕方ない人ね、、少しだけよ」

そう言ってくっ付いて来る永琳を左手で抱き締めながら頭に手を置き撫で、もう片方の右手で優曇華にまるで"こっちに来い"と言わんばかりに手招きする。

 

「…っ!」

それに気づいた優曇華はスっと右側に入って来る。

「…」

…秋人は何も言わずに永琳と同じように優曇華も右手で抱きしめながら頭に手を置き撫で始める。

「…っ///」

 

それが良かったのか優曇華はグリグリと秋人の右の懐辺りをまるで自分の物だと言わんばかりにグリグリと頭を擦り付けながらマーキングしている。

 

可愛い嫁を両手に抱きながら秋人は思う。

(…例え何があろうと嫁だけは守んねぇとな…。もう二度と俺の大切なもんを奪わせはしねぇ。その為にも準備を進めねぇとな…)

 

静かな竹林の奥深く、古い屋敷で神さえも恐れる"サイキョウ"の名を持つ男はそう思うのであった。

 

 

〜旧橘邸〜

結界の数多く張られた森の奥深く。

 

一人のメイドが主人の部屋を掃除している時にあるものに気が付いた。

 

「…ん?あら?何かしらこれ…」

そこにあったのは"華蓮へ"と屋敷のメイド長へと当てられた四つ折りの手紙がベッド近くのテーブルの上に置いてあった。

 

「…私宛?」

メイドはゆっくり手を伸ばし手紙を手に取る。

「…これ…私宛出し開いてもい、いいのよね?」

 

少し戸惑いつつも四つ折りにされた手紙を開いた。

 

「っ!!」

…手紙を開き読んだメイドは驚く。何せそこにあったのは…

 

 

"()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()"




おはこんばんにちは作者です。
えっ?2ヶ月もの間今の今までどこで何をしてたかって?

…仕事してました。はい…仕事が忙しかったんです。
許してくださいm(_ _)m

えぇっととはいえ何とか少ないですが取り敢えずかけました。
皆様にはご迷惑ご心配お掛けしました。m(_ _)m

今後出来るだけ投稿して行くので長ーい目で見て頂けたら幸いでございます。

では!次回もお願い致します!!
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