その日の営業も終わり明日は休みの日という事でゆっくりするかぁと考えていたフラウだったが、酒や調味料が足りてないのに気づいた。
『明日は買い出しだな。』
「いえ店長。俺が買って来ますので明日はゆっくりなさって下さい。」
勿論それをウェイターが許すはずも無い。敬愛するフラウに休日に買い出しなどさせるわけにはいかないのだ。
『いや、いいぞ。この前もさせちまったしなー。それに、いつも遅くまで手伝わせて悪いな。助かってるが。』
本来ならば、ウェイターはもう少し早く切り上げることになっているのだが、他ならない自らの希望でフラウの手伝いをしているのだ。
「当然のことですよ。店長がお礼を言うようなことではないです。
店長はただでさえお忙しいのですから、ゆっくりして頂かないと。」
頑なに反論するウェイターにフラウは微笑み、どうしたことかと頬をかいた。
『あー、じゃあ俺と行くか。悪いが明日買い出し手伝ってくれるか?』
ウェイターに手伝わせるのは心苦しいが手伝ってもらうかとフラウは考えて言ったのだが、その言葉にウェイターは目を見開き呆然としている。微動だにしないし、固まっているように何かを考えているようだ。
ボソボソと何かを呟いている。
「……俺がて、店長…と。…ふたりで……。いえ、俺如きが店長と…
……々だが、断るなどそれこそ……行けるなら…行った方が……明日天国に召されるのか?…」
『やっぱり嫌だよな。俺が1人でいっt』
「いえ!!!是非!是非とも!!!一緒に買い出しに!」
ウェイターのここまで大きな声を聞くのは初めてかもしれないな…と心の底で思いながら困惑した表情でフラウは頷いた。
フラウは店の近くの集合住宅の1室に住んでおり、ウェイターはその隣に住居を構えている。
帰り道でも、顔を赤く染めたり、天を見つめたり、ブツブツと独り言を言うウェイターをフラウは本気で今度から休みを増やしてあげようと決意したのであった。
言うまでもないが、この後ウェイターが「店長のお側を歩くならば、恥じない服を来ていかなくては……。」
としばらく眠れなかったのは当然のことである。
翌日
用意を終えたフラウが家のドアを開けるとその横にはウェイターが立っていた。
『来たならインターホン鳴らしていいんだぜ?』
「いえ、大丈夫です。」
フラウの時間を1秒たりとも邪魔してはいけない。と考えるウェイターにとって、家の前で出るまで待つという行動は何もおかしくない事だった。
近所の人はストーカーと勘違いしそうな風景ではあったが。
この島でも一番賑わう商店街で買い物する際にも多くの人間がフラウに声をかける。
「おぉ。フラウじゃないか。丁度活きのいい魚がある!さぁ、持って行きな。」
「あらぁ、フラウちゃん。うちの店によって行きなよ。」
「元気にしとったかい。たまには顔をみせておくれ。」
その声を聞く度にフラウはきちんと返事をして、そんなフラウをウェイターは誇らしげに見つめるのであった。
買い物も殆どが割引され、ありえなく安くなっている。
一通り買って、重いものは配達を頼んだところで昼食をとることになった。
勿論ひどい混み具合で、フラウが行列に並ぼうとしたがウェイターに必死の説得をされベンチに座っていた。
その時、フラウの視界の端でフラフラと揺れてのっそりと歩く背の高い男が見えた。
酔っ払っているのかと思い『大丈夫か、どこか具合でも悪いのか?』と声をかける。
特徴のある髪型だ、元からくせっ毛なのかは分からないが少しパーマをかけているような髪型の男はアイマスクを付けていた。
アイマスクを上げると覗くのは眠たそうな目であった。
「お?あらら…悪ぃな兄ちゃん。寝てたみたいだ。」
歩きながら!?と少し驚いたフラウであったが、余程疲れているんだろうなと納得した。
「所で…この島って、何処だ?」
『そこからか!?船とかに乗ってきたんじゃないのか?』
「いやぁ、チャリで。」
『チャリで!?』
漫才のようなものが始まったが、この男のペースにフラウも乗せられてしまっていた。
『よくわからないが、まぁ大丈夫ならいい。俺はフラウ。この島で居酒屋を開いているから暇がある時に来いよ。』
そろそろウェイターが来るだろうと話を終わらせたフラウに男も答えた。
「おれはクザンだ。まぁ、会えた時には適当によろしく。」
適当ってどういう感じだよ。とツッコミを入れようとしたフラウに声が掛かった。
「店長。お待たせしてすみません。そちらの方は?」
クザンの目には黒髪の何処と無く特徴がないような、男が立っているように見えた。
『ちょっとな…並ばせてしまって悪いな。 連れが来たから失礼する。じゃあな、クザン。』
「ほいほい、ありがとね。じゃあね。」
クザンに手を軽く振って歩き出すフラウの後を追うように黒髪は歩き出したが一瞬コチラを振り返った目をクザンは忘れることは無い。
殺意を込めた、 ゴミを見るかのような目を忘れることは無い。
一瞬殺意を警戒して体を戦闘態勢に変えたほどの殺気だった。
振り返った黒髪の口は言葉には出さなかったが、その言葉はしっかりとクザンに伝わっていた。
【せ い ふ の い ぬ が き や す く ち か よ る な こ ろ す ぞ 】
フラウの方に顔を戻し去っていく黒髪とフラウの後ろ姿を見つめながらため息をついて、クザン。すなわち海軍大将は頭をかいた。
黒髪は自分の正体に気づいていたらしい。フラウがどうかは分からないけども。
あの殺気、何者かは知らないが…厄介なことにならないといいが。
特徴がないなんて思っていた自分を笑いながら気持ちを落ち着かせ、
またひとつ、ため息をついた大将青キジは自転車で帰ろうと海に足を進めた。
今日会ったのは、酷く有名な海軍大将
フラウは彼に気づいたのか、気づいてないのかは誰も分かりませんね
さぁ次は誰かな
きっと次は誰かがフラウの居酒屋に訪れるでしょう