現代日本のオタサーの姫が、古代ブリテンのお姫様になったら   作:蕎麦饂飩

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今こそ――――熱狂的再征服の始まりなんだから。


さあ、わたしの勇者たち! 進撃よ! 声高らかに、わたしを褒め称えなさい!

フランスも、ゲルマンもローマも終わってしまえばどうという事は無かった。

情報伝達を僻地へ送るのにも多大な時間を要するこの時代、

一つの国が一枚岩であるなんてことは非常にまれだった。

 

意思の疎通や監視が容易でないこの時代において、国1つが団結してわたし(一つの意志)の下に行動できるメリットは大きかった。

基本的に物語ならお姫様の役割と言うのは大きくは次の6つに絞られる。

1つは不和。お姫様を巡って男達が争う物語。

1つは調和。お姫様の為に男達が助け合う物語。

1つは融和。女性的な平時の統治の象徴の物語。

1つは親和。お姫様が英雄に力を授ける物語。

1つは平和。対照となる暴君から取り戻される権力と安寧の象徴としての物語。

1つは永和。お姫様との結婚による物語の終焉。

 

『お姫様』である『わたし』はこれらの事象を、特に前半部分の事象に特化して上手く支配する才覚がある。

バラバラにしてぶつけ合って勢いを失った所を掻き集めて治めてしまえばいい。

適切な角度でぶつけ合った川は勢いを失う。そこにダムを造れば水を治める事が出来るのと同じことだ。

 

理屈としては難しい事では無い。

だけど、難しいのは適切な川の分割割合に、再開させる際の衝突角度と、勢いは失ったものの依然としてそこに存在する水量の保存処置。

これが難しい。

自分以外の人間を衝突させる角度と両河の勢い調整、そして勢いを失ったそれらを治め込む場。

何より、其処に誘導する誘発剤が必要だったの。

 

幸い馬を走らせるためにぶら下げる人参は手元にある。そう、わたしだ。

そして友であったものを裏切る価値のあるトロフィーは手元にある。そう、わたしだ。

そして共同してでも手元に置きたい宝物も手元にある。そう、言うまでも無く――わたしだ。

 

私がわたしである。この一点だけで全ての困難が解決される。

わたしの魅力で気持ちを逸らせて仲違いをさせて、その上でその両者をわたしを繋いで和解させる。

そんな事が何度も成功する訳が無い?

いえ、とっても簡単だったわ。そう、アムル(わたし)ならね。

 

手始めに、感情的なフランス人をバラバラにして纏めて誑し込んで、

わたしをフランスのアイドルかブリテンのアイドルかと、ファンたちを誘導した後、両国のメインヒロインにまで押し上げさせた。

 

わたしの強引なやり方に夫や恋人を諌める女性達も居た様だけど、『お姫様』で無い、あるいは無くなった女性に価値なんてない。

彼女達の勝ちなんてある筈も無かった。

 

男達の心変わりを非難する男女平等に基づく法律の執行機関なんて存在しない以上、

弱肉強食の恋愛戦争の勝者と敗者がいるのみであった。

 

わたしは様々な有力者を虜にした。一度国交を開いてしまえば後は間接侵略の難易度なんてグッと下がる。

 

前世で自称ハッカーのキモオタがティーシーピーアイピーがとかテルネットがとかルーティングがとか、ポートが、ネットワークがとか私に興味も無い話をしていた。

話の内容自体も知識自慢の独りよがりの域を超えてないし、何より私が話者に興味がわかないから、

「ふ~ん、へぇ、そうなんだ? すごいね」で適当に持ち上げながらスルーしていた。

未だに興味も無いし、この時代には完全に不要の類だけど、

結論としては相手に許可される交通手段を確立してしまえば、相手の監視や干渉が可能になるという結論で良いのかしら?

そうだとしてら、デジタルな世界もアナログな現実もそう変わりは無い物なのね。基本は同じ。

 

そしてフランスと言う港を制覇してしまえば、ヨーロッパの大陸として地続きになっている各国を籠絡していくのは非常に簡単だった。

最大の権力を誇るローマを侵略の第2弾とした。

此処で勝てればそこからの各国への影響が大きくなるし、此処で負ける様ならそれまでだし、

第一わたしはお姫様だから負ける筈が無いし。

 

ローマの始祖と同じ名前らしい西ローマの皇帝を、

東ローマの皇帝ゼノンとわたしを通じて仲良くさせた所くらいから私の勝ちは確定だった。

 

わたしの恋愛世界征服の為に、ブリテンから往復するのも面倒になって来たのでブリテンからローマに拠点を移す事にした。

是には両ローマ皇帝が賛同したし、実家(ブリテン)からは不満は上がったけど、

主要な騎士たちがローマに派遣される事で一応の納得は得た。

 

これって、前世で独り暮らしで親元から離れて、親の金で借りたアパートに男を連れ込んでいた時と少し似た気分だった。

この時、以前とは幾分かは態度が変わって来たマーリンが何かを言いたそうにしていたけど、別に私はそこまで気に留めなかった。

ブリテンのキャメロットにいた時はマーリンが上位グループに組み込まれる好みの男だったけれど、

似たようなタイプの性格や肩書や顔の男なんて、世界規模で探せばそれなりにいるものだから。

 

マーリンが何か言いかけた時もわたしの周りには、天才型の宮廷仕えの知識人を周囲に侍らしていたから尚の事だった。

だから、私にはマーリンが何を言おうとしたのかが届く事は無かった。

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