IS-最強の不良少女-   作:炎狼

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調子が良かったので
一気に書き上げましたw

ではどうぞー


決着

 六月の最終週となり、いよいよ学年別トーナメントが始まった。

 

 学園の生徒達は会場の整理、案内、来賓たちの誘導を行うなどてんてこ舞いだ。だがそれが終われば更衣室に走り、皆一様にISスーツへと衣装を変える。おかげで更衣室は大混雑だ。

 

 しかし、そんな中でも一つ混雑していない更衣室が存在した。男子更衣室である。

 

 何せ男が一夏だけのため、だだっ広い更衣室を一夏は独り占めしていた。

 

 が、

 

「いやー、やっぱりこっちの方に来た方がよかったなー。サンキューな一夏」

 

 なぜか更衣室には響、そしてシャルロットがいた。

 

「わかったからさっさとISスーツきてくれよ!!」

 

 響の感謝に一夏は背中を向けたまま抗議した。

 

 実際響は下着一枚であるため一夏からすれば気が気でないだろう。シャルロットも時折あたふたとしている。

 

 では一体何故こんなことになったかというと、一度響たちは女子の更衣室に向かったらしいのだがあまりに混雑していたため、他の更衣室を探していると響が思い至ったように一夏の使っている男子更衣室を使うと言い出したのでこういうことになったのだ。

 

 さすがにシャルロットが止めたのだが、響は聞く耳をもたず理由も大して説明しないままさっさと着替え始めてしまったので一夏も追い出せずにいるのだ。

 

「まったく……響はもう少し羞恥心をもったほうがいいよ?」

 

「別に見られて減るもんじゃねぇだろ……っと。こっち見ても大丈夫だぜ一夏」

 

 一夏が恐る恐る後ろを向くとISスーツに身を包んだ響が立っていた。

 

「はぁ……心臓に悪いって……」

 

「心臓に悪いって言ってるけどよ、ちょっと前はシャルロットとか篠ノ之とかと同じ部屋だったんだから気にすることもねぇだろ」

 

「う……」

 

 響の当たり前の意見に一夏は少し焦った表情を浮かべる。シャルロットも若干苦笑いだ。

 

「まぁそんなこたぁ置いといてだ……。スッゲー人だなおい」

 

 近くの椅子に腰を下ろしつつ、流し目でモニタを確認した響が呟いた。

 

 モニタの中には観客席の様子が表示されており、そこには各国の政府関係者やISの研究員、各企業のエージェントなどが来賓席に並んでいた。

 

「三年生にはスカウトがあるし、二年生にも一年間の成果を出すための場でもあるからね。一年生にはあまり関係ないけど大会上位者にはそれなりにチェックが入ると思うよ」

 

「ほー……。そんなもんなのか」

 

 シャルロットの説明に響が感心しているものの、一夏は拳を握り締めていた。

 

「熱くなるのもわかるけどよあんまり感情的になるなよ一夏」

 

「わかってる……けどさ……」

 

「いいか一夏。頭はクールに心はホットに、だ。頭まで熱くしちまったらいつもどおりの力が出せねぇぜ?」

 

 立ち上がり、一夏の胸を軽く叩きながら響が告げる。

 

「でも本当に気をつけてね? おそらくボーデヴィッヒさんは一年生の中で最強だと思うから」

 

 シャルロットが難しい表情をしながら言うが響は拳を打ち鳴らせながら、

 

「最強上等! ぶっ潰しがいがあるってもんだ」

 

 ギラリと歯を見せながら言う響は心底楽しそうだった。

 

「お、対戦の組み合わせが決まったみたいだぜ」

 

 一夏がモニタの下で告げると、シャルロットと響もそちらを見る。だがそこに表示されていた名前に疑問の声が上げられた。

 

「「え?」」

 

 疑問の声はシャルロットと一夏の声だ。

 

 一方響はというと、

 

「へぇ……コイツぁおもしれぇ組み合わせだ」

 

 口元を不適に歪ませていた。

 

 一回戦の相手は箒とラウラだったのだ。

 

 

 

 

 

 アリーナの中心に響、一夏、ラウラ、箒の四人がそれぞれISを展開した状態でにらみ合っていた。

 

「一戦目であたるとは手間が省けた」

 

「ああ、こっちも同じだ」

 

 どちらかというとにらみ合っているのは一夏とラウラだったが。

 

「ふあ~……」

 

 ……いつもなら寝てる時間だから眠いな。

 

 響はというと大あくびを浮かべていた。

 

 そしてカウントが0になり、開始を告げるアラームが鳴り響く。

 

 その瞬間、一夏が瞬時加速を行う。だがラウラ目掛けてではなく、箒目掛けて行ったのだ。

 

「なっ!? 一夏!?」

 

「悪いな箒! ちょっとばかし付き合ってもらうぜ!!」

 

 箒と一夏はその場所から離れていった。

 

「ちっ――!!」

 

「待てよ、お前の相手はこの私だぜボーデヴィッヒ」

 

 憎憎しげにしたうちをするラウラに対し、響は挑発するように右の人差し指でさそう。

 

「――いいだろう。ヤツの前にまず貴様から叩き潰してやる!!」

 

「そうこなくっちゃなぁ!!!!」

 

 ラウラが右手を突き出すと同時に、響は横に飛び退くがいつものように速さがない。

 

 AICが発動したのだ。

 

 AIC、アクティブ・イナーシャル・キャンセラーとは対象物の周辺空間に慣性を停止させる領域を展開することにより相手の動きを封じることのできるものだ。

 

 ラウラの『シュヴァルツェア・レーゲン』の右手にはそれが仕込まれており、それにより鈴音やセシリアは苦戦を強いられたのだ。

 

「ちっ!! 展開がはえーなおい……」

 

「ハ! いきがったはいいが、やはり貴様もその程度だな!」

 

 毒づく響を見ながらラウラは嘲笑うと同時にリボルバーカノンの銃口を響に向ける。

 

「これで貴様を葬った後はヤツの番だな」

 

 ラウラはあごで箒と戦う一夏をさす。

 

「どうだかな、もしかしたらこっから私の大逆転が始まるかも知れないぜ?」

 

 笑みを浮かべながら言う響にラウラは笑い始めた。

 

「ハハハ! この状況でまだそんな戯言がほざけるとはな、そこだけは認めてやってもいい……だが!!」

 

 リボルバーカノンに弾丸が装填されそれが打ち出され響に直撃する。

 

「が……!」

 

「貴様はここで終わりだ」

 

 ラウラはさらにリボルバーの弾丸を打ち続ける。

 

 ISのシールドがあるとは言えど至近距離での衝撃は生身にも相当なダメージを生む。

 

『響!!』

 

 ISのオープンチャネルで一夏が声を上げるが、響は無言のまま首を横に振る。そして声には出さず口だけ動かし一夏に伝えた。

 

『くるな』

 

 と。

 

 だがその間にも弾丸が撃ちだされる。

 

 しかしそれでも響の笑みは変わらない。

 

 その様子に気付いたラウラが不信に思ったのか攻撃の手を休め響に問うた。

 

「どうした? おかしくなったのか?」

 

「……いや。久しぶりだと思ってよこの感覚がさ――」

 

「久しぶりだと?」

 

 疑問を浮かべるラウラに響は顔を上げながら言い放つ。

 

「――こんな風に自分にダメージが来るようなこの感覚がなぁ!!!!」

 

 瞬間、ラウラの全身に戦慄が走る。

 

 ……な、なんなのだコイツは! この絶望的な状況で何故笑っていられる? 何故あきらめない?

 

 ラウラの中で響に対しある感情が芽生えた。それは恐怖だ。得体の知れない敵を前にし、ラウラは恐怖に駆られていた。

 

 しかしその雑念が入ったせいでAICに綻びが生まれたのを響は見逃さなかった。

 

「オラァ!!!!」

 

「ぐぅ!?」

 

 動くようになった右腕で響はラウラを殴りつけた。

 

 まったく予想ができなかった攻撃にラウラは反応することができず、彼女は後退させられた。

 

「あー……やっと動いた。だけどいい収獲もあったぜ」

 

 首をゴキゴキとならしながら響はラウラを見やる。

 

「なに……?」

 

「どうやらお前のそのAICってヤツはかなりの集中力を使うみてぇだな。その証拠に今はまったく作動していない。それはお前が集中できるような心理状態じゃねぇってわけだ」

 

「……」

 

「怖くなったか? この私が」

 

「!」

 

 その問いにラウラは体をこわばらせる。なにせ本当のことを言われてしまったのだ、体がビクついてしまうのもしょうがないだろう。

 

「図星だな。その反応はもう何度も見てきたぜ」

 

「だから……何だと言うのだ。AICがなくとも貴様など――!」

 

 ラウラは叫びながらリボルバーカノンを響に向けるが、既に響の姿はそこにはなかった。

 

「――貴様などなんだって?」

 

「!?」

 

 声のした後方を振り向くが既に遅かった。

 

 振り向いた直後ラウラにまたも拳が叩き込まれた。しかも今度は先ほどの比ではなく相手を倒すための拳だった。

 

 あまりの強さにラウラは今度は後ろに大きく吹き飛ばされ、ISごと中に放り出された。

 

「そらそらぁ!! まだまだいく……ぞ!!」

 

「がはっ!!」

 

 ブースターをふかし、光速でラウラに詰め寄る響はさらに彼女の横腹に蹴りを放つ。

 

 そこからは圧倒的な蹂躙が始まった。

 

 吹き飛ばされたラウラを光速で追尾した響が追撃を叩き込む。まるで先日やられたセシリアと立場が逆になっているようだった。

 

 だがやがて『シュヴァルツェア・レーゲン』に強制解除の兆候である紫電が走り始めると、響は攻撃を止めた。

 

「なぁボーデヴィッヒよぉ。いい加減あきらめたらどうだ? もうお前もわかってるだろ? 私には勝てないって」

 

 だがその瞬間、ラウラと彼女の機体に異変が起こった。

 

 

 

 

(私は……負けるのか? こんなところで標的であるあの男と戦わぬままこんな誰かもわからぬ女に)

 

 ラウラは掠れる意識の中で問うていた。

 

(私に敗北など許されない! 力が欲しい。ヤツラを叩き伏せるだけの絶対の力が!!)

 

 すると何かが彼女の中で胎動した。

 

 そして中から黒くドロドロとしたナニカがあふれ出すと、頭の中で声が響く。

 

『――願うか……? 汝自らの変革を望むか……? より強い力を欲するか……?』

 

(私は望む、絶対普遍なその力を。 唯一無二の力を私によこせ!!!!)

 

 声に導かれるようにラウラが答えると、彼女の心は黒いナニカに染められた。

 

 

 

 

「あああああああっ!!!!!!」

 

 悲痛とも呼べるラウラの絶叫が響き、『シュヴァルツェア・レーゲン』からも電流が迸った。

 

 途端、ラウラの『シュヴァルツェア・レーゲン』姿を変えようとしていた。装甲をかたどっていた線がぐにゃりと曲がったかと思うと、ドロドロとしたものがラウラの体を飲み込んでいく。

 

「なーんかやばそうだな……」

 

 響は呟くと一旦ラウラから距離を置いた。

 

 すると別の場所で戦っていたはずの一夏と箒が彼女の元にやってきた。 

 

「響! どうなってんだあれ!!」

 

「私が知るか。突然ああなったんだよ、でもいやな予感がすることは変わりねぇ。一夏、お前は篠ノ之つれてピットにもどれ」

 

「なに言ってんだ! 俺も一緒に戦う!」

 

「私もだ! 足手まといにはならん!!」

 

 反論する二人に対し響はあきれ声で、

 

「見たところテメーら相当ダメージ行ってるだろ。結構マジでやりあってたもんな」

 

「そ、それは……でも響だって!」

 

「私は心配いらねーよ。まだエネルギーは半分以上残ってるしな」

 

「……わかった。一夏。ここは戻ろう」

 

「……ああ。だけど響! 苦しくなったら言えよ!!」

 

 二人は渋々といった様子で頷くと、そのままピットに戻っていった。

 

 二人が戻ったのを確認すると響はラウラを飲み込んだ黒いモノに向き合う。黒いモノ人型をかたどってはいるものの、完全にラウラを飲み込んでおり彼女の姿はまったく見えない。

 

「さてどうしたもんか……実際発動したのはボーデヴィッヒだからアイツをアレから引きずりだしゃあなんとかんるんだろうが」

 

 一人悩んでいると黒いモノは一気に距離を詰め、手に持っている剣で響のいるところを一閃した。

 

「あっぶね……割といい動きしてやがる」

 

 一太刀を後ろに下がり避けた響は苦笑いを浮かべる。

 

 しかし黒いモノは響を追尾し、斬撃を重ねてくる。その動きたるやまるで歴戦の勇士のようだった。

 

「でも妙に機械的なんだよなぁ……この前のあれと比べると良く動く方だけど」

 

 斬撃の嵐を避けつつ響は一人ごちる。すると突然ISのオープンチャネルが開く、しかし画面にはUNKNOWNの文字が並んでいる。

 

 ……アンノウン? 誰だ?

 

 響は疑問に思いつつも回線をひらく、すると威勢の良い声が聞こえてきた。

 

『やっほー!! びっきー久しぶりー束さんだよーん♪』

 

 聞こえてきたのは響に妙なあだ名と、夜天月を与えた篠ノ之束の声だった。同時にUNKNOWNの表記が変わり、束が映し出される。すると響はいたって冷静な声音で告げた。

 

「人違いだ」

 

『ああんもう待ってってばー!! びっきーのいけずー! 苦戦してるみたいだから助けてあげようと思ったのにー!』

 

「苦戦はしてねぇ、悩んでるだけだ」

 

『ふーん。私の助けを借りればあの子助けられるよ?』

 

「助ける? どういうことだ?」

 

 束の言葉に響は疑問の声を上げた。

 

『アレあのままにするとあの子死ぬよー? まぁ私はどうでもいいけど』

 

「っ……。詳しく教えろ」

 

 響は軽く舌打ちしながらも、束に聞いた。すると束はにこやかになり解説していった。

 

『あの子が使ったのはVTシステムって言ってね。正式名はヴァルキリー・トレース・システムって言うんだけどね。びっきーはヴァルキリーって何か知ってる?』

 

「確かモンド・グロッソの部門受賞者のことだったか?」

 

『ピンポピンポーン! どわいせいかーい! まぁそのヴァルキリーの動きをトレース、ようはコピーする機能でね? 今は条約でどの国や組織、企業も研究、開発、使用が禁止されてるんだけどねー。どうやらどっかのバカが仕組んだみたいだねー。まぁ束さんからすればあんなブッサイクなシロモノ使うやつの気が知れないけどねー』

 

 アハハー、と笑いながら束が言うと響は怒号を飛ばす。

 

「んなもんの説明はどうだっていい! 今はアレをどうするかだ!!」

 

『おっとゴメンゴメン。それでねー結局あのシステムもISのエネルギーを使ってるわけなんだよ。だからいっくんの零落白夜とかがあれば普通に割れるけど、残念ながらいっくんの白式のエネルギー残量じゃ無理だからねぇ』

 

 そこまで言ったところで束が一際大きい声を上げた。

 

『そこで!! なんとびっきーの夜天月にも新しい武装を勝手にインストールしちゃいましたー!』

 

「新しい武装?」

 

『うん。右手の手のひらから出るんだよーん。因みに武装の名前は「神炎ノ御手」(しんえんのみて)っていうのさー』

 

「……ずいぶんと仰々しい名前だな」

 

 響は鼻で笑う。だが束はそんなことは聞いておらずどんどんと説明を続けていく。

 

『神炎ノ御手の能力はねISのエネルギーの全てを一定時間無効にできるんだよ。勿論シールドもエネルギー兵器もね。ただし連続使用は十秒が限界でそれ以降はおよそ五分の冷却が必要だからね。たぶんVTシステムの頭辺りを右手で掴めばそこから崩壊していくから何とかなるよ。じゃあがんばってねー』

 

 まるでマシンガンのように言葉を言い終えた束は一方的に連絡を断った。それに苦笑いを浮かべながら響は大きく後退した。

 

「神炎ノ御手ね……つーかなんで炎なんだ? 無効にするだけならいらねぇだろうに」

 

 響は右手を見ながら呟くが、それを黒いモノは逃すことはなく、またしても距離を詰め今度は上段から剣を振り下ろす。

 

 だが、それは響の左腕によって止められた。

 

「さて……さっさと中のヤツ返してもらおうか! 死なれると寝覚めが悪いんでなぁ!!!!」

 

 足のブースターの出力を最大にした響はとこに飛び退いた後、黒いモノの後方に回り込むと頭に当たるであろう部分に蹴りを見舞いする。

 

 その一撃で体勢を崩したのか、黒いモノは片膝をつく。

 

「夜天月!! 武装、神炎ノ御手起動!!!!」

 

 言うと同時に空間モニタに神炎ノ御手起動の文字が浮かび、右の手のひらの中心が開く。

 

「解放してやるよボーデヴィッヒ!!」

 

 叫びと同時に響は瞬時加速を行う。その速さたるや一夏やラウラの比ではない。

 

 まさに刹那の一瞬で黒いモノに接近した響は、

 

「テメェは消えろおおおおおお!!!!」

 

 黒いモノの頭を右手で引っ掴む。

 

 瞬間黒いモノの頭が爆散したかと思うと、黒いモノだけが燃え上がった。エネルギーだけを燃焼させているのだ。

 

「なるほど、これで神炎か……」

 

 着地しながら響が呟くと炎の切れ目から気絶した状態のラウラが倒れこんできた。

 

「よっと……ったく手間かけさせやがってよ」

 

 すると右腕の肘から下の装甲が一部開放され、中から冷却のためだろうか、蒸気のようなものがあふれ出した。

 

「さて、さっさと戻りますかね」

 

 ラウラをお姫様抱っこしたまま響はピットに戻っていった。

 

 

 

 

「う、ん……」

 

 ぼんやりとした光に照らされ、ラウラは目を覚ました。

 

「気がついたようだな」

 

 ラウラはその声にはたとした。声のするほうを見るとラウラが敬愛する教官、織斑千冬の姿があった。

 

「私……は……?」

 

「身体に過度の疲労が見られた。そのため筋肉疲労と多少の打撲が見られたからな、しばらくは動かないことだ」

 

「打撲……ですか? 痛っ」

 

 千冬に言われ上体を起こそうとしたラウラが首筋を押さえた。それを見た千冬は軽く吹き出し、隣に引いてあったカーテンを開けた。

 

「その打撲はコイツのせいだろうな」

 

 そこにいたのは大口を開けたまま眠る響の姿だった。彼女は口元から少しよだれを流しながら眠っていた。

 

 眠る響の姿がおかしかったのか千冬はくつくつと笑いを漏らしていた。

 

「こんなヤツに負けて悔しいか?」

 

「……いえ、不思議と悔しくはありません。むしろ清々しい気分です」

 

 苦笑しながらラウラが答える。その顔は今までの冷徹な顔とは打って変り、とても温かみのある笑みだった。

 

「お前がそんな顔をするとはな」

 

「え……!?」

 

 ラウラの笑みに千冬がにやりと笑う。ラウラ自身かなり恥ずかしくなったのか真っ赤になってしまった。

 

 すると千冬が力強くラウラの名を呼んだ。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!」

 

「は、はい!」

 

 条件反射で思わず返事をしたラウラは千冬の方に向き直る。

 

「お前は何者だ?」

 

「私は、私……は……」

 

 ラウラはそこで言葉を詰まらせてしまっていた。だが千冬から出てきたのは意外な言葉だった。

 

「答えられないのであれば、お前はこれからラウラ・ボーデヴィッヒになればいいさ。なにせ時間は山のようにある。しかも三年はここにいなければならんからな。じっくり悩めよ小娘」

 

 それだけ告げると千冬は踵を返し、ドアに手をかけた。しかしそこで振り向かずにラウラに告げた。

 

「それと、ソイツは異様に同性からもてるようでな。お前も気をつけろよ」

 

 手遅れかもしれんがな、と最後に付け加え千冬は保健室を後にした。

 

 千冬が出て行ったドアを見つめていると、隣で眠っていた響が目を覚ました。

 

「くぁ~……あーよく寝た。ん? おー起きたのかボーデヴィッヒ」

 

 大あくびをしながらラウラのほうを見た響は目を擦っていた。

 

「あ、ああ。貴様のほうこそ随分とよく眠っていたな。……やはり私の攻撃のせいか」

 

「ん? お前の攻撃じゃねぇよ、ただちょいと疲れただけだ。気にすんな」

 

 響はケタケタと笑っていた。まるでラウラがしたことを気にもかけていないかのように。

 

「しかし……私が貴様や貴様の仲間を傷つけたのは事実だ。それはすまなかった」

 

「私は別に気にしちゃいないが……そうだな。謝るんなら直接ソイツのところに言った方が好感度はアップするぜ?」

 

「そういうものなのだろうか?」

 

「そういうもんさ、っとそろそろ帰るか。お前はどうする? 寮に戻るか?」

 

「あ、ああ。私も戻る……ひゃっ!?」

 

 ラウラがベッドから降りようとした瞬間、彼女はバランスを崩し転びそうになった。

 

 しかし、

 

「おっと、大丈夫かよ?」

 

 転びそうになったラウラを響は優しく受け止める。

 

「あ、ああすまない。すぐに……ん?」

 

 すぐに自力で立ち上がろうとしたラウラだがまたふらついてしまう。それを見た響はラウラに問うた。

 

「もしかして立てないのか?」

 

「……」

 

 響の問いに無言で頷くラウラに対し彼女は大きく吹き出すと笑い始めた。

 

「な、何が可笑しい!!」

 

 顔を真っ赤にしながら抗議するラウラに響は一生懸命笑いをこらえつつ、

 

「ひーひー……、いやーこれがさっきまで戦ってたやつだと思うともうおっかしくっておっかしくって……」

 

「ぐぬ……」

 

 大爆笑する響にラウラは睨みを飛ばした。すると、

 

「あー……んん!! わるいわるい。ほれ」

 

 軽く咳払いした響はラウラに背を向ける。

 

「?」

 

「なにやってんだおぶってやるから乗れよ」

 

「な、何を言っている! そんな恥ずかしいことが!」

 

「あーはいはい。わかったわかった」

 

 言うと響は半ば強制的にラウラをおぶった。

 

「お、おい!! 降ろせ!!」

 

「うるせぇ。けが人なんだからおぶられてりゃいいんだよ。つーかそろそろ学校閉まるし早く帰るぞー」

 

 ラウラの意見は聞かず、響はそのままドアに手をかけ保健室を後にした。

 

 

 

 

 保健室から出た響とラウラはそのまま寮への道を歩いていた。

 

 ラウラはというと現在は借りてきた猫のようにおとなしくなり、響の背中に静かに身を任せている。

 

 校内は今日のにぎやかさが嘘のように静まり返っていた。すでに生徒も全員寮に戻ったのだろう。

 

 ふとラウラが響に声をかけた。

 

「その、鳴雨……。貴様に聞きたいことがあるのだがいいだろうか?」

 

「なんだ?」

 

「私はこれからどうすればいいのだろうな……」

 

「んなこと私が知るか。テメェで悩んで見つけろそんぐらい」

 

「……! そう、だな」

 

 響の突き放したような返答にラウラはある人物を照らし合わせていた。

 

 ……ああ、やはり鳴雨。貴様はあの人に良く似ている。

 

 思い浮かんだのは自らが敬愛する教官、織斑千冬。

 

「悩んで悩んでそれで自分がどうすればいいかを決めろ。いつまでも人に頼ってたら変われるもんも変われねーよ」

 

「ああ、助言感謝する」

 

「おう」

 

 ラウラはまた黙り、響の背中に身を任せる。しかしその顔には嬉しそうな笑みが生まれていた。同時にラウラの中では完全に響と千冬が一緒の扱いになった瞬間でもあった。

 

 響たちはそのまま寮へと戻っていった。

 

 因みに寮に戻りラウラをおぶったままの響を見たセシリアとシャルロットが響に詰め寄ったのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 そして翌日。

 

 いつものようにセシリアたちと登校した響はHRまで軽く仮眠をとることにした。

 

 ……昨日やりすぎたなー。超疲れた。

 

 机に突っ伏しつつ響が思っているとふと誰かが肩を叩いた。

 

「なんか用か……ってボーデヴィッヒじゃねぇか」

 

「そ、そのかなりいいづらいことなのだが。響!」

 

 ……響? あれ昨日まで名字か貴様だったのにいきなり名前? あれなんかデジャヴ?

 

 響の中でいやな予感が駆け巡っていた。

 

 しかし、ラウラから出てきた言葉はそれをさらに斜め上に行くものだった。

 

「わ、私を! お、お前の……! い……い……」

 

「い?」

 

 ……い? ってなんだおい新しいパターンか?

 

「い、妹にしてくれ!!!!」

 

 その瞬間教室の空気が固まった。あるものは目を見開き、またあるものはなぜかペンとメモ帳を取り出し、またあるものは黒いオーラを放出し、またまたあるものは笑顔ではあるが異様な威圧感を放っていた。

 

 そして沈黙のあと襲ったのは教室中の女子からの驚きの絶叫だった。

 

「どうしてそうなった!!??」

 

「い、いや。悩んだ結果私が一番なりたいのは妹なのだと……」

 

「だからどうやったらそんな考えに至ったんだよ!?」

 

 女子達の絶叫を無視し、響がラウラに問うがラウラは顔を赤らめながら上目使いに響を見つめる。

 

 そのラウラの行動に撃沈した女生徒もいたようだが、今の響はそんなことどうでもよかった。

 

 ……コイツは、考え方が一直線すぎて柔軟に考えることができねぇのか。

 

 前髪をかきあげながら響は大きく溜息をついた。だがそこへ、

 

「騒ぐのであればそう少し静かに騒げ馬鹿者共が」

 

 前の扉から千冬が出席簿を片手にやってきた。それに反応した皆が自分の席に着くが、ラウラだけは未だに響の前にいた。

 

「おい、ボーデヴィッヒ。自分の席にもどれ」

 

「わかりました教官! あと教官に言っておきたいことが!」

 

「学校で教官はやめろと……まぁいい。それで言っておきたいこととは?」

 

 ……おいまてまさか今の言わないよな?

 

 響の心配は杞憂になることはなく、現実になってしまった。

 

「私はこれからこの響の妹になることにしました!!」

 

 ……やっぱり言ったああああああ!!

 

 響は頭を抱え大きく悶絶した。するとそれを聞いた千冬は一瞬はとが豆鉄砲を喰らったような顔をすると、

 

「……そうか、まぁがんばってみろ」

 

 口元に手を当てながら千冬は小刻みに震えていた。

 

 ……ぜってー笑ってるし! めっちゃ私のほう見てるし!!

 

「というわけでだ……鳴雨。妹の面倒をよく見てやれよ」

 

 未だに口元を押さえたまま、千冬は響に促した。だが響は顔を引きつらせながら、

 

「ふ、ふざけんなああああああああ!!!!!」

 

 珍しい響の絶叫が響き渡った。響だけに。




以上ですー

今回も長くてスイマセン。
神炎ノ御手は人体には無害です。ただしISのエネルギーに対してはかなり強いです。
ただ実体弾には効力はありません。簡単に言えばAICのちょい強くなった版です。
炎が出るのはエネルギーを強制的に燃焼させているためです。

ラウラは友人じゃなくて妹に方向転換w
もしかしたら次の話で響が嫌がって「友達にしろ」というかもしれませんがwww
次回は臨海学校のための買い物ですw
戦闘はなくぽわわんとした空気が出せればいいと思います。

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