IS-最強の不良少女-   作:炎狼

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デート ラウラ・ボーデヴィッヒの場合

 キャノンボール・ファストの開幕をいよいよ一週間後に控えた日曜日。IS学園と市内を繋ぐモノレールの中に響の姿があった。先週とは違い、髪をサイドアップに纏めており、彼女にしては珍しい髪型だ。

 

 服装はあいも変わらずホットパンツかと思いきや、今回は黒の右足が膝まで、左足が脛あたりまであるアシンメトリーのダメージジーンズとショートブーツを履いている。トップスはへそが見えてしまうショートキャミソールの上に半袖の黒シャツを羽織っている。

 

 ボックス席に座っている彼女の前には、満足げな表情のラウラがいる。彼女の服装はシャルロットに選んでもらったらしく、トップスは首下にフリルのついたノースリーブの黒と赤のチェック柄のブラウス。スカートは黒よりの赤色のティアードスカート。靴は黒のウェッジソールだ。

 

 ……似合ってるちゃあ似合ってるが……なんつーか身長の影響もあるんだろうがガキっぽいんだよなぁ。まぁあとはあれか……。

 

 ラウラを見ながら響は苦笑する。子供っぽく見えてしまうのは、服装以外にももう一つ要因があった。それは彼女の髪型である。

 

 今日のラウラはいつものように髪をストレートに流しているのではなく、二つ縛りにしている。所謂ツインテールの状態なのだ。

 

 このような髪型と服装を含め、彼女はどこか子供っぽく見える。恐らくシャルロットが狙ってやったのかもしれないが。

 

「む? なんだ、私の顔になにかついているのか?」

 

 じっくりと見すぎたためか、ラウラは首をかしげながら問うた。

 

「いや、別になんでもねぇさ。そういえば、今日どこ行くかとか聞いてなかったけど、決まってんのか?」

 

「うむ、それなのだが……」

 

 ラウラは腕を組んでからしばらく溜めた後、口を開いた。

 

「決まっていないのだ」

 

「なんで溜めた! なんで無意味に溜めたんだお前!」

 

「?」

 

「いや、そんな何を言っている? みたいな顔されてもこっちか困るんだが……。しかしまぁ未定か。どっか行きたいところとかはないのか?」

 

「ふむ……」

 

 考え込むように口元に指を当てるラウラ。彼女はモノレールの中にあるモニターに表示されているコマーシャル映像やら画像やらを見やった。

 

 すると、ラウラの目が一瞬輝くところがあった。響もそれを見逃さず、彼女の視線の先を見る。

 

 そこには先日リニューアルオープンしたばかりの大型テーマパークのコマーシャルが流れているモニターがあった。

 

「あそこ行くか」

 

「い、いいのか!?」

 

「良いも何もセシリアの時もシャルロットの時もアイツ等が行きたいところに行ったんだ。お前のときだったそうするのがあたりまえじゃね?」

 

「そう……だな。うむ、そうだ。では、あそこに行くとしよう」

 

「おう。駅前からシャトルバスが出てるみてーだからそれに乗っていくか」

 

 未定であった予定を決めた後、モノレールは駅に到着し、二人は駅前から出ているシャトルバスに乗り込んだ。

 

 

 市内から海沿いを走るバス揺られること十数分、バスは窓からテーマパークの外観が見えてきた。

 

「お、アレだな」

 

「どこだ?」

 

「あそこだあそこ。見えるか?」

 

 ラウラが体を乗り出すようにして窓の外を見ると、彼女も確認できたようで「おー」と嬉しそうな声を上げた。

 

「あの曲がりくねったレールの上を走るものをジェットコースターをいうのだったな。軍にいたときクラリッサ達が話していたのを覚えている」

 

「あー、そうか。ラウラ、お前って遊園地とか行った経験ないのか」

 

「うむ。ずっと軍に所属していたからな。ああいったものには縁がなかった」

 

 やや肩を落としたラウラの表情はどこか物悲しげだ。だが、それも無理はないだろう。幼い頃から遊ぶことではなく、ISの操縦技術や戦闘ばかりを鍛え上げられてきた彼女にとって、テーマパークで遊ぶことなど夢にも思っていなかったことだろう。

 

 そんな彼女に同情したわけではないが、響はラウラの頭に手を乗せて軽く叩いた。

 

 急に頭に手を置かれて不思議に思ったのか、顔を上げるラウラ。そんな彼女に対し、響は口元を僅かに上げる。

 

「これから思いっきり遊ぶんだから暗い顔すんなって。遊ぶ時は遊ぶことだけ考えりゃいい」

 

「……ああ。そうだな。では存分に楽しませてもらう」

 

「その意気だ。私も遊園地は久々だからなぁ。いっちょ盛大に遊ぼうや」

 

 二人が笑い合うと、ちょうどバスのアナウンスが聞こえた。そろそろ到着するようだ。

 

 

 

 

 

 ゲートでチケットを買ってから入場した二人が足早に向かったのは、ラウラが最初から乗りたそうにしていたジェットコースターだ。

 

 最初は二時間以上待つことも覚悟はしていたが、朝早く出てきたこともあってか、一時間で乗れるようだった。リニューアルオープンしてから最初の日曜日でこの程度の待ち時間ですんだことは幸運と言っていいだろう。

 

「存外待つものなのだな」

 

「こういうところはどこもこんなもんさ。もっと待つようだったら優先チケットを買うつもりでもいたけど、一時間ならすぐだ」

 

「もっと待つものもあるのか?」

 

「ああ。私が妹と言ったときは、最高で五時間待ったからなぁ。それに比べたら一時間なんて軽い軽い」

 

 肩を竦める響に対し、ラウラは不思議そうな表情だ。もとよりこういった習慣がなかった彼女にとってはここでの出来事はないもかも初体験なのだろう。

 

「まっ、一時間程度なんてすぐさ。っと、そうだ。ラウラ、こんな時に聞くのも無粋かもしれねぇけど、キャノンボールなんたらに向けたISの調節は大丈夫なのか?」

 

「問題はない。大きな作業は先週の日曜日に済ませてしまったし、細かな調節も放課後などを利用して行っている。それに、当日もすぐというわけではないのでな。出場前に微調整をすることになる」

 

「そっか。ならいいんだ」

 

「だが、響も大丈夫なのか? 生徒会長から会場周辺の警備をするように命じられたと言っていたが、もしやつ等が再び襲撃してきたら手ごわいぞ」

 

「その辺はまぁ大丈夫だとは思うけどな。夏休みの時みてーに夜天月が故障しないように、山田先生に調節してもらってるし。次にあの蜘蛛女とチビスケが出てきても対処できる。楯無もいるしな」

 

「ならよいのだが。あまり無理をしないようにな」

 

「おうさ」

 

 来週行われるキャノンボール・ファスト、そして亡国企業のことを話しながらも、二人はすぐに話題を変えながら自分達の番がやってくるのを待った。

 

 

 他愛のない会話をしながら待っていると、二人の番は思いのほかすぐにやってきた。実際はすぐにやってきたように感じた程度だろうが。

 

 コースターは二人が同時に乗り込むタイプのもので、響とラウラが揃って座る。しかもなんの因果か最前列だ。

 

 アナウンスが入ってコースターが動き始め、ゆっくりとバンクをあがっていく。

 

「おー、こりゃあいい。ラウラの初遊園地の初アトラクションが最前列か。うん、よかったよかった」

 

「そうなのか?」

 

「ああ。覚悟しとけよラウラー。チビってもしらねーぞ」

 

 響はどこか面白げに言うが、ラウラはというといたって冷静だ。

 

「フン、軍で育ってきた私にとってこの程度どうということはない」

 

「言うじゃねーの。けど、いつまで余裕かましてられるかねぇ」

 

 ククっと笑う響に対し、ラウラ小首をかしげただけだ。

 

 やがてバンクの頂上までやってくると、ゆっくりとコースターが傾き始める。

 

「お、きたきた。ラウラ、落ちるときに手を上げた方がもっと楽しめるぞー!」

 

「手を? そんなことで変わるものなのかああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 彼女が言い終える前に、コースターがバンクをほぼ直角に急降下を始めた。同時に、二人の後ろの座席からは歓声や、悲鳴が聞こえた。

 

「ひゃっほーう!」

 

 響はと言うと非常に楽しんでいる様子であり、万歳するように手をあげて歓声を上げている。

 

 そして、先ほどまで非常に冷静だったラウラはというと……。

 

「あああああああ!? まままま、待て待て待て! この感覚は少しなれないというか、わぁぁぁぁあああああああ!? や、やめやめやめ落ちる落ちる!!」

 

 普段のポーカーフェイスがどこに行ったのか、目尻に涙を溜めて叫んでいた。無論、手は完全に引っ込んでしまっており、手を離すなどできない様子だった。

 

 ISを乗りこなせても、なれないものは馴れないのだろう。それに、ラウラにとってはこれが人生初のジェットコースター。泣き叫ぶのも無理はない。

 

 後からわかったことらしいが、このジェットコースターは日本最長で、さらに日本最速のジェットコースターらしかった。

 

 

 

「いやー、楽しかったなー」

 

 長かったジェットコースターから降りた響はどこかホクホク顔で、非常に満足した様子だった。

 

 そんな彼女の背後に視線を向けると、そこには生まれたての小鹿のように震えてしまっているラウラがいる。目尻にはまだ涙が光っていた。

 

「大丈夫か。ラウラ?」

 

「ももも、問題ない……っ! すすすす、少し馴れない感覚だったのでな、驚いてしまった。……い、言っておくが! ここ、怖かったわけじゃないぞ! 本当だぞ!!」

 

「えぇ~本当かぁ~?」

 

「な、なんだその顔は! 馬鹿にしているだろう!!」

 

 ゲスっぽい笑みを浮かべた響に対し、ラウラは顔を真っ赤に染めながら反論している。が、やはり軍人であるためか、舐められたくないのだろう。彼女はビシッとジェットコースターとは別の方向のアトラクションを指差した。

 

「いいだろう。では次はあのアトラクションだ!! 行くぞ響!!」

 

 ズンズンと進むラウラであるが、彼女は自分が指差したアトラクションをしっかりと理解できていないようだ。

 

「おい、ラウラいいのかよ! そっちは……」

 

「うるさい! 早く行くぞ!」

 

 響の制止を聞かずに興奮気味で歩いていくラウラ。だが、彼女の向かっているアトラクションというのは……。

 

「リニューアルの目玉って言われてるジェットコースターと並ぶって言われてるお化け屋敷なんだが……」

 

 結局ラウラは最後まで響の制止を聞かずに、お化け屋敷の列へと並んでしまった。

 

 並んでいる最中に響が彼女に説明をしたところ、ラウラは一瞬顔を引き攣らせて顔面蒼白になったが、冷や汗のような汗をたらしながらも「そ、それがどうした?」と声を裏返らせながら強がっていた。

 

 やがて順番がやってくると、ラウラはカチコチに固まった状態で響と共にお化け屋敷へと入って行った。完全に強がっていること丸出しだが、響も面白くなってきたようで、なにも言わなかった。

 

 

 その結果……。

 

「ひううううううううううッ!!?」

 

 最初こそなんとか乗り切っていたラウラであったが、中盤に差し掛かってくるともはや悲鳴を我慢できないでいた。

 

 このお化け屋敷の特徴は非常に長いことの他に、間髪いれずにお化けやらゾンビ、そして仕掛けが作動することだ。そのため、息つく暇がないのだ。

 

「く、来るな来るな来るなああああ!」

 

「アーハッハッハッハ! なるほどなるほど、これは怖えーな。私が入ってきた中でもダントツだ!!」

 

 拒絶反応を示すラウラとは違い、響は高笑いしながらお化け屋敷を淡々と進んでいく。

 

 そして再びやってくるゾンビ達。

 

「うわあああああ!? 待て待て待てぇ!!」

 

「アハハハハハハハハ!! いやいや本当に怖いなぁ! これは渉が遊びにきたらつれてきてやるべきだな!」

 

「なぜそんなに笑っていられるんだお姉様ー!!」

 

「アーッハッハッハッハッハッハ!! うぐ、げほごえ! む、咽た……!」

 

 お化け屋敷の中は響の高笑いとラウラの絶叫が木霊していた。

 

 

 

 お化け屋敷を抜けた後、ラウラはしばらく茫然自失としていたが、なんとか立ち直ったあとは再び響と共に遊園地を回っていった。

 

 昼食を済ませた後も積極的に様々なアトラクションには乗ったものの、絶叫系のアトラクションになるたびにラウラはその表情を凍らせ、ガチガチになってしまっていた。

 

 が、残念ながらテーマパーク自体が巨大なこと、そして待ち時間も膨大だったこと。なおかつ二人にはIS学園の門限があるため、アトラクション全制覇はできなかった。

 

「うがー。あそこまで行ったならパレードとかも見たかったよなぁ」

 

「仕方あるまい。門限を過ぎたら教官に怒られてしまう」

 

 帰りのバスの中で悔しそうにする響に対し、ラウラはやや裏返ってしまった声で答えた。なぜこんな声なのかと言うと、絶叫系で叫びすぎたのが原因だ。

 

「まぁ、ジェットコースターやらお化け屋敷やらから始まったわけだが……どうだ? 楽しめたか?」

 

「そうだな……どちらともちっとも怖くなかったが、うん、楽しかったぞ」

 

 どうあっても『怖かった』とは認めたくないラウラは、最後まで強がっている。響は「やれやれ」と肩を竦めるものの、表情は柔らかだ。

 

「けれど、あんな感覚は初めてだった。大きな声を上げて、走り回って……全てが初めての体験だった」

 

「ならよかった。今回はお前が楽しむのも兼ねたしな。今度は他の連中もさそって着てみるか?」

 

「そうだな。ああいう場所は、大勢で行った方がより楽しいのだろう。シャルロットとセシリアを誘って来よう」

 

「だな。よーし、じゃあさっさと帰りますかー。けど、これでお前等と約束したデートも終了ってわけだ。あー、疲れた」

 

 ゴキゴキと肩やら腕やら首を回しながら言う響に対し、ラウラは微笑を浮かべる。

 

「ふふ、お疲れ様だな」

 

「ああ。もっと労ってくれて構わないぜー」

 

 疲れたといいながらも満足げな響と、今日一日いつもとは違う非日常を味わったラウラはそろって学園へと戻っていくのであった。

 

 

 

 

 

 学園に戻り、寮の自室へと戻ってきたラウラをシャルロットが出迎えた。

 

「おかえりー。響とのデート、楽しかった?」

 

「ああ。楽しかったぞ」

 

「どうしたのその声!?」

 

「ちょっとな」

 

 案の定シャルロットはラウラの裏返った声に驚いた。しかし、ラウラは軽くあしらう程度の反応だった。

 

「なんかすごい声を張り上げたみたいだけど……カラオケでも行ってきたの?」

 

「いや、違うぞ」

 

 ラウラはどこか得意げな笑みを浮かべながら振り返ると、シャルロットに向かって言い放った。

 

「今日は色々と初体験を済ませてきたのだ!」

 

 間違ったことは行っていない。今日は初の遊園地であったし、初のジェットコースター、初のお化け屋敷だった。以前夏休みに行ったのはプールだったので今回とは違う。

 

 が、その言葉が悪かった。

 

「……………ハツタイケン?」

 

「うむ。そうだ」

 

 カタコトのシャルロットに対し、ラウラは胸を張って答える。

 

 次の瞬間、シャルロットは部屋を飛び出して行ってしまった。ラウラは小首を傾げるが、何か用事を思い出したのだと適当に解釈して気にしないことにした。

 

 

 

 

 後々、響の部屋から。

 

 「ラウラの初体験ってどういうこと響!!」「はぁ!?」「聞き捨てなりませんわ響さん!!」「ちょ、待てお前等ッ!!」

 

 と言った三人が言い争う声が聞こえ、千冬の怒号が聞こえたのは言うまでもない。

 

 

 

 デート ラウラ・ボーデヴィッヒの場合。  完。




お疲れ様です。
パパっと終わりに致しましたw

次回はキャノンボールファストまでかけるかな……?

ラウラは多分こんなんだと思います。お化けとか怖がりそう。

あー、やっと戦闘が書ける……

では、またよろしくお願い致します。
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