トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話 作:ZUNEZUNE
灰色の空がただならぬ空気を出している。
しばらくすると、前方に巨大な生物を確認した。
その緑色の鱗がビッシリと敷き詰められた身体は、龍のように長く、そして太い。
顔はワニで、鋭い牙が何本も生えている。
ISが人の大きさに見えてしまうほどの巨体は、羽も無いのに空を飛ぶ。
すると奴の目も、一夏を捉えた。
タツノテンセイワニ 〈爬虫獣類〉 捕獲レベル95
ワニが龍に転生した姿、その伝説から命名されたそのワニは、口を大きく開け、咆哮を響かせる。
その衝撃で海は波立ち、大気は揺れる。存在感で分かった。こいつは紛れもなく食物連鎖の王だと!
しかし王は——1匹だけではない。
「良いだろう…お前に敬意を込め…俺も本気を出してやる…!」
王に向き合うこの男に宿る
『血まみれを確認した!近いぞ!』
千冬の通信が耳に入る。春十と箒は空を飛び、対象がいる空域へと向かっていた。
春十は「白式」を、箒は手に入ったばかりの専用機「紅椿」を展開して。
『恐らく既に怪物と交戦中だろう、まずは様子見だ。戦いに混じるなよ』
「…はい!」
『それと…春十』
「…?」
千冬が名前で呼んできた。これは教師としてではなく、姉としての話なのだろう。
『篠ノ之にも言えることだが…一夏を確認しても暴走するなよ?』
「…分かっています」
『…』
その「分かっています」は絶対ではないだろう。ずっと弟の事を考えていた春十にとって、一夏との接触は夢にまで見たこと。それ故に、暴走する可能性がある。
しかし千冬は、それを否定できない。もし自分がその立場なら…同じ事をするかも知れないからだ。
春十と箒は前戦として進撃、その他のメンバーは後方で援護。それが今回の作戦だ。
(…一夏)
春十が一夏の事を考えていると、激しい音が聞こえ始めた。
「!、血まみれと怪物を目視で確認!」
視線の先には、仮面で素顔を隠している一夏とタツノテンセイワニが戦っていた!
「
一夏は大量の斬撃を放つが、硬い鱗がそれを防ぐ。
するとタツノテンセイワニが長い腕を伸ばし、こちらを攻撃してきた。
指と指の間を潜り抜け、何とか回避した一夏は、引き続き包丁で斬りかかる。
しかしその鱗はどんな攻撃をも無駄にする程の鉄壁、傷一つ付けられない。
(ちっ…硬いな…)
するとタツノテンセイワニが口を開け、光線を吐き出した。
その光線は一直線に一夏へと向かう。
(まな板シールド!!!)
ここで一夏はまな板型の盾を展開、タツノテンセイワニの光線を防いだ。
まな板シールドは元々食欲をまな板の形に具現化させる技、しかし一夏のそれはISの武装の一部となっている。
しかし強力な一撃だったため、盾で防いでもシールドエネルギーが大幅に減った。
(あれは…!)
ここで一夏は春十と箒を確認、そしてワニを誘導してその場から離れようとする。
「一夏の奴…まさか俺達から怪物を離すために?」
春十と箒はその行動を理解する。恐らく自分達の身を案じてくれたのだろう。
やっぱり一夏は一夏だ。例え怪物を倒せる力を持ってもその心は変わりない。
それを思った箒は心の中で安堵する。やはり自分の信じていた一夏は死んでいなかった。
「春十…私達も戦おう」
「何言ってんだ!?一夏が俺達を守ろうとして離れたんだぞ!?その気持ちを無駄にする気か!?」
「だが…一夏は押されている」
「えっ…?」
箒の言う通り、確かに一夏は押されていた。
一夏の攻撃は鱗で防がれ、効果が無い。
対するタツノテンセイワニの攻撃は重く、一夏をじりじりと攻めていた。
「それ程の強敵なのだ…あの怪物は…!」
「で、でも…」
しかし春十は姉から暴走するなと言われている。しかも自分達はこの怪物を食い止める為にいる。もし二人が戦いに行ったら最前線で防衛する者がいなくなってしまうのだ。
「私達に任せて!春十!」
「鈴!?皆!?」
ここで後方にいるはずの鈴達と合流する。
「あんたは一夏を守って!」
「春十、僕達に構わず行って!」
「嫁!自分が正しいと思った行動をしろ!」
「皆…」
専用機持ち達に思いを託される春十と箒、決心はついた。
「…行くぞ箒!」
「ああ!」
「うおおおおおおおおお!!!」
春十と箒が怪物に向かって飛ぶ。しかしその時…
「何!?」
黒い穴が沢山現れ、自分達を包囲した。
その穴から怪鳥、龍、様々な種類の猛獣が出てくる。
「これは…!」
気付けば怪物の集団に囲まれている。
そのサイズは自分達とあまり変わらない。あまり強そうでは無かった。
つまり…数で勝負してきたのだ。
鷹葱 〈鳥獣類〉 捕獲レベル5
天のイカ 〈軟体動物〉 捕獲レベル4
八咫鴨 〈鳥獣類〉 捕獲レベル6
他にも様々な猛獣がいる。途轍もない数だ。
「特訓の成果見せてやろう!箒!」
「ああ!春十!」
「おりゃあああああああああ!!!!」
一夏が包丁を振り落とす、しかし火花を散らすだけで鱗には効かない。
「はぁ…はぁ…!」
一夏自身の体力も減ってきた。当然だ、これだけ硬い鱗を何度も攻撃しているのだから。
身体も思うように動かない。その隙にと、タツノテンセイワニの腕が一夏を吹っ飛ばした。
「ぐあああああああああああああああああああ!!!!」
ハエでも追い払うかのような手払い、それでも一夏のダメージは大きい。
空中で何とか姿勢を直す。一方的にこちらが攻められていた。
「頼むぜ…俺の食欲!」
「うりゃ!!」
春十の雪片弐型が怪物達を斬り裂く。
今まで味わったことの無い、武器で肉を切る感覚。
気持ちの良い物では無いが、次々と倒していった。
それは箒も同じ、専用機を使いこなし、なぎ払っていく。
(行ける…これなら行ける!)
そう思ったその時…
「ぐああっ!?」
箒が何者かに殴られる。
「箒!」
海に落ちそうになった箒の腕を掴む春十。
箒と二人で、攻撃が来た方向を見る。
「何だあいつ…」
そこにいたのは、他の雑魚とは違う、明らかに強いオーラを出す猛獣。
悪魔のような羽で跳び、鬼のような腕を持つ。頭部は魚。
体長は約3m、こいつだけは油断できなかった。
「ボスのお出ましか…?」
カツオーガ 〈魚獣類〉 捕獲レベル15
しかし、春十と箒は臆さない。
(一夏は…こいつの何倍も強い奴を倒したんだよな…)
アリーナで見た怪物とは比べものにならないが、自分達にとって丁度良い。
春十は刀を構え、カツオーガに斬りかかった。
(待ってろ一夏!俺達がお前を救う!)
後半になるにつれ名前が適当になっていく…(何だよカツオーガって)