トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話   作:ZUNEZUNE

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今回はちょっと長めです。そして今までの感想で「弱いからでしゃばんな」的なことを言われ続けた春十君が、強くなって活躍します!


グルメ11 進化!

「うおりゃあ!!」

 

春十はカツオーガの拳を避けながらその懐へと忍び込み、雪片弐型で斬りつける。

しかしその猛獣は翼を羽ばたかせ一瞬でそれを回避した。

 

「伏せろ春十!」

 

すると距離を取っていた箒が空裂(からわれ)によるエネルギー刃を撃つ。

春十の横を通り過ぎたそれは、真っ直ぐカツオーガへと向かう。

対する悪魔は、長い爪で虚空を斬り裂き、斬撃を放った。

 

「何っ!?」

 

斬撃はエネルギー刃を打ち消し、箒に当たる。

 

「箒!」

 

箒は何とか耐えて体勢を立て直す。するとカツオーガは箒のことを心配して余所見をしていた春十に襲いかかる。

 

「しまっ——!」

 

鬼の拳が春十を叩き落とす。カツオーガは自慢の羽で春十の落下より速く飛び、海へと潜る。

そして海上から飛びだし、落下中だった春十を下から蹴った。

 

「ぐあぁっ!?」

 

そして春十は上へと吹っ飛ぶ。それを箒が受け止めた。

 

「大丈夫か春十!?」

 

「あ、ああ…!」

 

そう答えるも今の攻撃はとても重かった。ISのエネルギーを一気に減らしている。

カツオーガは人型故に素早い身のこなしで襲いかかってくる。

 

「速い上にパワーも凄ぇ…どうすりゃいいんだ」

 

「…私があいつの動きを制限する、その隙にあの翼を斬り落とすんだ!」

 

「分かった!頼むぞ!」

 

翼さえ無くせばあの化け物も飛べやしない、そう思った二人はその作戦に移る。

赤と白が、魚の悪魔の周りを飛び回る。

カツオーガは口から光弾をマシンガンのように吐き出し、二人を撃ち落とそうとする。しかし動き回っているので当たらない。

 

「はぁあっ!!」

 

箒がカツオーガに斬りかかる。カツオーガはそれを爪で受け止める。

 

「今だ春十!」

 

「おう!」

 

奴が箒の剣を止めている隙に、春十が背中から攻撃しようとする。

しかし…

 

「ぐわぁあ!?」

 

横から割り込んできた「何か」に遮られてしまう。

 

「春十!?ぐあっ!?」

 

それを見て驚いている箒も、カツオーガに薙ぎ払われてしまう。

春十も箒も、海上スレスレで何とか滞空する。そして自分達より高い位置にいるカツオーガと「何か」を見上げた。

 

プテラノ丼 〈翼竜獣類〉 捕獲レベル9

フライングリズリー 〈哺乳獣類〉 捕獲レベル10

 

他にも数多くの猛獣たちが集結してくる。

 

(しまった…相手は1匹だけじゃなかった…!)

 

カツオーガばかりに注目していたが、他にも敵がいることを忘れていた。

まるで虫の大群のように統率が取れている。見た目はバラバラのくせして。

 

「どうする春十…?」

 

「どうするも何も、こいつらを一夏の所に行かせるな!あいつはあいつで精一杯らしいしな…!」

 

そう言う春十の目線の先には、激しい攻防戦が行われている。

一夏とワニの化け物だ。あの戦いは俺達とは次元の違う者同士の戦いとなっていた。

 

「俺達は俺達のできることであいつを助けるんだ!」

 

「…ああ!!」

 

そう言って二人は、怪物達の大群へと突撃した。

 

そうだ、確かに自分達じゃああいつの足手まといになるだけかもしれない。だけど俺達にもできることはある!

弟の手助けをするのが、兄の役目だ!

 

次々と雑魚猛獣を倒していく春十と箒、カツオーガより弱い猛獣は難なく倒せる。

 

(…そう言えばあの魚野郎はどこだ!?)

 

調子に乗っていたせいか、カツオーガを見失ってしまった。

どうやら箒もそれに気付いたらしく、辺りを見渡している。

 

「箒後ろだ!」

 

「っ!!」

 

そうこうしている内に雑魚達が襲いかかってくる。箒は背中を取られながらも刀で受け止めようとしたその時…

 

「何!?」

 

突如としてその雑魚の腹を、青い腕が貫く。

貫いた腕はそのまま蛇のように箒の身体に巻き付いた。

カツオーガだ。奴は右腕を紐のように長く伸ばしている。その長さは、カツオーガの体長より数倍になっていた。

先程貫かれた奴以外にも、カツオーガに串刺しにされた猛獣も何匹もいた。攻撃を悟られないように味方ごと攻撃したのだ。

 

「ぐあああああっ!!!」

 

カツオーガは長くなった腕で箒を締め付け、苦しませていく。

 

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

その光景に耐えられなくなった春十は、箒を助けに向かうも…

 

「ぐわぁ!?」

 

カツオーガが左腕を伸ばし、同じように拘束する。

そしてどんどん締め付けが強くなっていき、痛みがじわじわと感じた。

 

「うぐぐっ…!」

 

あっという間にカツオーガによって身動きが取れなくなってしまった二人。

苦痛を噛みしめながらも自分達の弱さに怒り始める。

 

(何が一夏を助けるだっ…このザマじゃないか…!)

 

そして思い出した。一夏がいなくなった日のことを…

誘拐されて、そして姿を消してしまった。

あの時、自分が強ければ、弟を守れていれば…

ただひたすらに自分を責める。責め続ける。

そうして…

 

 

 

 

 

 

「——えっ?」

 

気付けば自分は、青空の下にいた。

足で踏んでいる地は、水面のように空色を映している。

そして目の前には、白いワンピースを着て白い帽子を被った少女がいた。

 

「君は…?」

 

「…救いたい?」

 

「えっ?」

 

「君は誰を救いたい?」

 

名前も顔も知らない少女、彼女からの質問に、迷い無くこう答えた。

 

「俺は…箒や鈴、セシリアにシャルとラウラ…そして千冬姉!」

 

春十が脳内で思った名前が、そのまま口から漏れる。

 

「山田先生…のほほんさんや鷹月さん…相川さん!」

 

数多くの名前が出る。最後には…

 

「そして…一夏」

 

大切な弟の名が出た。

 

「俺は…救えなかった人や…大切な人…今もこれからも…全部守りたい!」

 

「…そっか」

 

その少女はその答えに満足したのか、微笑みを見せる。

 

「私が君に力をあげる…皆を守れる力を…」

 

そう言って両手を前に出す。すると先程まで無かった金色の球体が少女の手の上に置かれた。

光り輝く光沢を持つ球体。その表面には、いくつも口が付いている。

全ての口が、涎を垂らし、何も無いのに咀嚼をしている。

 

まるで、腹を空かせているみたいだった。

 

「だけど…もう普通の人間に戻れなくなるかも…」

 

「…構わない、俺一人の犠牲で皆が助かれば良い!」

 

「…悲しいこと言わないで」ボソッ

 

少女が何かを呟く。しかし春十はそれに気付かない。

 

「いいよ、この力で、皆を守って…!」

 

「…ああ!」

 

そして春十は、その球体にゆっくりと触れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは、暗闇だった。

何も無い。あるのは扉だけ。

そして、白い肌を持つ悪魔がいた。

ゆっくりと、その扉が開く。

開けたのは、春十と話していた白い少女。覚悟した顔で、その悪魔と対峙する。

 

「ずっと貴方を拒んでいたけど…春十自身が望んでいるなら仕方ない…」

 

「くくくくくっ…」

 

その言葉を耳に入れた悪魔は、小さく笑い始めた。まるでこうなると分かっていたように。

 

「最初からそうしてれば良かったんだ…何故俺を拒む」

 

「貴方は春十のことを道具としか思っていない…感情なんか持ってないから怪物だからよ」

 

少女は冷たい視線を悪魔に向けている。どうやら良く思っていないらしい。

悪魔がゆっくりと立ち上がった。その白い身体には、棘が幾つも生えている。

そして、その厳つい顔を少女に見せた。

 

「分からないぜぇ…『魂の世界』で噂程度に聴いたんだが…どうやら感情を持っちまった悪魔(バカ)がいるらしい…俺もそうなるかもなぁ?」

 

そして少女に顔を近づけ、ニヤリと笑みを見せる。

 

「安心しろよ、俺も復活するまでこのガキには手を出さねぇ…寧ろ守ってやるよ」

 

「安心するのはそっちよ。絶対に復活なんかさせないから」

 

「そうかい…ぐははははははは!!!!」

 

そう高笑いしながら、白い悪魔は扉から外へと出た。

青空の空間に入った悪魔。その先には、倒れている春十。

その目は色を失っており、まるで死んでいるかのようだ。

 

「ISとしての俺が記念すべく最初に食すもんは…」

 

そして悪魔は春十の身体を持ち上げ…

 

「てめぇだ。春十」

 

その身体を、貪り始めた。

春十の肉をステーキのように裂き、血を酒のように飲む。

少女はその光景を見て、悲しい表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

「は、春十!?」

 

急に春十が叫び始めたので、箒が驚く。

すると春十の身体が白いオーラを纏っているではないか。

 

「うあああああああああああああ!!!!うがあああああああああああああ!!!!」

 

春十の雄叫びを聞いた猛獣たちが、一斉に怯え始める。

カツオーガや箒も例外では無かった。

唯一恐れず、驚いているのは一夏とタツノテンセイワニ。

 

第二形態(セカンド・シフト)!?それだけじゃない…あれは…!」

 

そして一夏は、その雄叫びの正体に気付いた。

一夏の悪魔が話しかけてくる。いつも冷静なこいつにしては、少し声色が変わっている。

 

『一夏!ありゃ俺と同じ…』

 

「ああ…『グルメ細胞の悪魔』が宿ったISだ!」

 

 

 

 

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

 

次第に春十を覆っていた白いオーラの中から、人の形が見え始める。

白い身体を持ったそいつは…悪魔だった。

 

「はあああああああああっ!!!!」

 

すると春十は自分を捕らえていたカツオーガの腕を無理矢理解いて抜け出した。

自由になった春十を見たカツオーガ、猛獣たちは恐怖のあまり逃げ出してしまう。

 

「逃がすかっ!!」

 

春十が雪片弐型を振る。それに連動して白い悪魔も腕を振り下ろす。

次の瞬間には…カツオーガ達は全てバラバラに殺されていた。

 

「なっ!?」

 

それを間近で見ていた箒は驚かずにはいられなかった。

先程まで自分と同じくやられていた春十が、急激に強くなった。

 

(しかもこの力は…一夏と同じ…!)

 

そして目前にいた筈の春十は、ワニの化け物へと向かって飛んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦司令室にて、真耶と千冬が白式の変身を確認した。

 

「白式の第二形態…雪魔(スノー・サタン)!?」

 

「一体…何が起きているんだ」

 

 

 

 

 

 

「うりゃあああ!!!」

 

春十がタツノテンセイワニに斬りかかる。皮膚こそ切れなかったもののその勢いでワニを少しだけのけ反らせる。

タツノテンセイワニが体勢を崩している内に、対面する一夏と春十。

 

「…一夏」

 

「…春十兄…だよな?」

 

兄の変容ぶりに驚いている一夏、無理も無い。春十は本当に変わったのだ。

 

「…行くぞ一夏!」

 

「…ああ!」

 

だが、実の兄であることに変わりない。

こうして兄弟の共闘が始まった!

 

 




こうして春十はグルメ細胞を持ったとさ。ちなみに結構無理のある設定だと自覚しています。
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