トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話 作:ZUNEZUNE
普段生徒しか入れない学園内に、沢山の一般人がなだれ込んでくる。
華やかに飾られた校門を潜れば、そこは祭りの場所だった。
本日は、IS学園学園祭の日。
「いらっしゃいませ、こちらへどうぞ、お嬢様」
春十は未経験だが「かっこいい執事」を演じて客をもてなす。その先には女子生徒による長蛇の列が伸びていた。
「織斑君の接客が受けられるの〜!?」
「しかも執事のコスプレ!」
「写真もOKらしいよ!」
春十目的の客しか来ないので男性客が来ない。折角のメイド喫茶なのにこれいかに。
「お、繁盛してんな」
「一夏」
ここで警備中の一夏がやってくる。
その手にはたこ焼きやらジュースやら食べ物で溢れかえっていた。
「まぁいいや、俺も入って良い?」
「勿論…あっいや、それではご主人様こちらへどうぞ」
「…何か春十兄にご主人様とか呼ばれるの気持ち悪い」
「…俺もだよ」
一夏は春十にテーブルへと案内され、メニューを渡される。
「ご注文は何にされますか?」
「んとね…」
ここで一夏は普段のメニューで見ないものを目にした。
「この『執事のご褒美セット』って何?」
「ご主人様、そちらより当店おすすめのケーキセットはいかがですか?」
「…おい執事、何誤魔化そうとしてる」
「…そんなことは」
春十の目が宙へと向く。
それを見た一夏は悪い笑みをした。
「じゃあこのご褒美セットを貰おうかね!」
そして悪ふざけでそれを頼んだ。
するとグラスに立てられた数本のポッキーが運ばれてくる。
それと同時に執事が横に座る。数秒沈黙した。
「…何で隣に座るの?」
「…このセットは、客が執事に食べさせるサービスなんだ」
「ほへっ?」
その言葉を聞いた瞬間頭が真っ白になる。
客が食うのではなく執事が食うのか。その突っ込みを喉で止めた。
「…やりたくなきゃいいんだぞ」
「じゃ、じゃあ…」
強制ではないらしいので普通にポッキーを食べようとするが…
「「!!??」」
周りの女子生徒が一斉にこっちを睨むように見ていた。その真剣さは先程までのんびりしたものではない。
強制じゃないけど、強制になった。
「あ、あーん」
仕方がないので春十にポッキーを食わせる一夏。その瞬間周りから歓声があがった。
「兄弟カップリングよ!」
「夏×春!今年はこれで決まり!」
「いや、あえての春十君が攻めもいいわよ!」
何が悲しくてこんな恥さらしを受けなければならんのだ。数分前の調子に乗っていた自分を殴りたくなってきた。春十の顔もうんざりとしたものだった。
「…帰るね、御馳走様でした」
「…おう」
気まずい雰囲気になったので店を出ようとする。その際茶色の長髪女性とすれ違う。
「…ん?」
その女性に少しだけ違和感を感じたが、気のせいだろと自己解決して後にした。
「それでですね、織斑さんの白式に是非我が社の装備を使って頂けないかなぁと思いまして」
「はぁ…」
春十は巻紙 礼子と名乗る女性から話を聞いていた。IS装備開発企業の渉外担当らしく、春十に交渉を持ちかけてきた。
その勢いは有り余るもので、熱心に自分の所の武器を勧めていた。
「申し訳ございませんお客様、次のお嬢様が…」
「…」
だが鷹月による接待で何とか追い払った。
「サンキュー鷹月さん、最近白式にうちの装備を!っていう話がやたら多くて…」
「いいのいいの気にしないで、織斑君も大変だね。休憩時間で他の店まわったら?」
「そうか?じゃあお言葉に甘えて…」
「駄目よ!」
後ろから聞き覚えのある声がする。振り返るとそこにはメイド姿の楯無がいた。
「更識会長!?」
「春十君には生徒会の観客参加型演技に参加して貰うんだから!」
「…ほへっ?」
さっきの弟と同じ驚き方をしてしまう春十。断る前に楯無に連行されてしまった。
言われるがままに王子の服と王冠を渡され、シンデレラの王子としてステージに上がった。
いや、シンデレラという名のバトルステージだ。
「のわぁあ!!」
春十との同居権利(本人無許可)を狙って箒、セシリア、シャル、ラウラが狙って攻撃してくる。
訳が分からないまま逃げ惑う春十。
そしてフリーエントリー組という大集団まで参加してきたので会場は大騒ぎとなる。
「一体何なんだぁー!!」
すると床から伸びる手によってどこかに連れ去られる春十。
春十を助けたのは先程商談してきた巻紙だっだ。
「あ、ありがとうございます巻紙さん…でもなんで?」
「はい、この機会に白式を頂きたいと思いまして…」
「…は?」
「いいからとっとと寄越せよぉ!!」
顔付きと言葉遣いが急に変わった彼女の重い蹴りが春十を強く飛ばす。
その力はとても人間の物だとは思えない。そう思うほど強かった。
「貴方は…一体…」
「私かぁ?企業の人間に成りすました…」
すると彼女の背中が大きく膨れあがる。スーツを破いて現れたのは蜘蛛のような複数の足。
IS装備ではない。
「謎の美女だよ!嬉しいか?」
その瞬間、彼女の綺麗な頬にひびが入る。
人間の姿では無くなった彼女は、今度はISを展開して全身を隠す。
本物の足に加え、機械の足も生える。機械部分は謎の粘着液で覆われ、不気味な見た目にされている。
まるで、ISと怪物が合体したような感じだ。
「何なんだアンタは…?」
「分からねぇのか?悪の秘密結社のオータム様だ!冥土の土産に覚えておきな!」
オータムはISの足で光弾を撃ちまくり、春十を襲った。
直ぐさま白式を展開して弾丸を避ける。
「おっと…お楽しみは全員でだ!!」
そう言って、彼女は指を鳴らす。それが開戦の合図となった。
学園上空に、グルメ世界への入り口が多数開く。その数は空を覆うほど多かった。
そしてそこから猛獣が溢れるように地上へと降下する。
「キャッーーー!!」
客は恐怖し、一斉に逃げ始める。
見たことも無い異形の怪物がわらわらと現れた。
「来たな…」
そしてその百鬼夜行に立ち向かうのは一人の男子、織斑一夏だ。
赤いISを展開して、猛獣たちに包丁を向ける。
「食い殺されたい奴からかかってきやがれぇ!!」
その背後には赤色の悪魔ディアボロスが現れる。
凄まじい威嚇だが、猛獣たちは一匹も引かない。寧ろより好戦的になった。
「うおおおおおおおおぉ…!!」
一方春十も自分の悪魔を出す。白い悪魔サタンだ。
オータムはそれを見て少し驚く。
「ちっ!細胞持ちだと聞いたがまさか悪魔もいたとはな!」
どうやら予想外だったらしい。
しかし彼女は自分が劣勢にいるとは思っていない。
「こっちもグルメ細胞はあるんだ!てめぇの白式奪い取って体はボロボロに食い尽くしてやる!」
こうして学園祭は、本当の戦場となった。
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