トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話 作:ZUNEZUNE
IS学園学園祭襲撃事件から二か月の時が流れた。一夏は学園側に長期休暇を貰い、食義を習得すべくコンビのリンカと食林寺に籠っていた。
それも完了し、二人は新たなステージへと立った。
「ありがとうございました。シュウさん!お陰で食義を習得できました!」
「二人とも才能があります。これからも食への感謝を忘れぬように」
「「はい!!」」
二人は食林寺から去り、ロストフォレストの中に入った。その姿を見てシュウは改めて感心していた。
(食義を二か月で完璧に習得するなんて…流石はトリコさんたちの意思を受け継ぐ子だ…)
数十年前のことだがつい昨日の出来事のように思い出す。あの二人も最初こそ上手くいっていなかったが、あっという間に上達していった。
最後には自分を超え、美食會の灰汁獣を瞬殺したあの光景は今でも忘れられない。
(新世代の若者か…僕も老けたな)
一方褒められている一夏たちは、絶賛遭難中だった。
人間界一の広さを持つ樹海「ロストフォレスト」。なんの対策もなしに入るなんて自殺行為に等しい。
「どうしよっかなぁ…」
「一夏、私に任せて。方角分かる?」
「ここじゃあ方位磁石は使えないけど…森から出たら良いか。多分あっちが北」
「OK!」
そう言ってリンカはコテを出し、自分と一夏を上に乗せる。
そしてそのまま勢いよく彼方へと飛ばした。
「はああああああ!!!」
二人はロケットのようにすっ飛び、3000万平方メートルの森をあっという間に脱出した。落ちるときは綺麗に着地する。大陸のように広い森を一瞬で出た。この時点でリンカの成長ぶりが良くわかる。
当然一夏も成長している。その調理スピードは格段に進化していた。
「よっと、何とか出れたわね」
「ああ、にしても驚いたぜ。まさかこの別宇宙移動装置が使えないなんて」
前回食林寺からIS世界に移動しようとした時、ロストフォレストの特殊な磁場の影響でなんと装置が使えなかったのだ。なので一回ロストフォレストから出て装置を使ったのである。
「とりあえず春十兄たちに顔を見せるか」
「そうね」
一方IS学園では…
「私、一夏さんを見習って料理の腕を更に上げましたの!」
「「「…へぇ~」」」
何故か暗い雰囲気になっていた。
理由は単純明快、セシリアが皆に料理を振る舞うと言ってきたのだ。こう言うのは何だがセシリアは料理が下手くそだ。かつて春十に「メシマズ国生まれ」と言われて怒っていたが彼女にそれを弁解する資格は無いと思う。
(どうすんのよ!?セシリアはやる気満々じゃない!)
(ここは傷つけないように丁寧に断った方が良いんじゃないかなぁ…)
(くぅう…一夏ならセシリアの腕を上達させることができるかもしれないのに…)
彼女以外の専用機持ちが何とかしようと話し合った結果、一夏がいてくれればよいという願望になってしまう。
「かぁあ…!頼む一夏!早く帰ってきてくれ!!」
「おう来たよ」
誰が呼んだか皆が来てくれと願った男、一夏が廊下から現れた。
「「「一夏(さん)!!」」」
「よっ!」
「やっと帰ってきたか!どうだ食義ってのは?」
「ああ、バッチリ習得できたぜ!」
もう帰ってこないかと思ってしまうほど姿を見せなかったが、ようやく帰ってきた。
「あれ、春十兄その人は?」
「生徒会長の妹の簪さん」
「あの…よろしくお願いします」
「ああ、よろしく!」
生徒会長楯無の妹である簪は、春十のことを恨んでいた。春十の白式が優先され自分の専用機が用意されていなかったからだ。
しかし春十との話し合いの結果、良い友となり、また彼に恋する乙女にもなった。姉に対しコンプレックスを抱いていたがそれも春十のおかげで仲直りすることができた。
「ところでお前ら、グルメ世界に行ってみたくないか?」
「「「…えっ?」」」
「手伝ってほしい仕事があるんだ」
一夏によると、三か月後のフェスの準備として世界中の美食屋にIGOから依頼が出されたらしい。コンビのリンカもその一人だ。
依頼内容はフェスに使う食材の調達。それを手伝ってほしいらしい。
「今のお前らならグルメ世界にも馴染めるはずだ。俺とリンカが先導するから安心してくれ」
「…一夏がいた世界か…行ってみたいな確かに!」
「あんなに美味しい食材が沢山ある世界なんて想像できませんわ!」
「だけど…教官が許してくれるか分からんぞ」
一回ダメ元で交渉しに行った。最初こそ千冬は難色を示していたが、一夏の必死な説得により何とか許可を貰う。
「まぁ私たちもグルメ世界に沢山助けられた。異世界にも交流が必要だ。良いだろう許可する」
「「「やった!!」」」
「だが一夏、本当に安全なんだろうな?」
「任してくれ!俺たちがキチンと見てるさ」
「なら大丈夫か…気を付けてくれ」
こうして専用機持ち達のグルメ世界行き旅行が決定する。一夏とリンカを除いたら初めての両世界の交流となるであろう。
白く優しい光を抜けたその先は、まだ見ぬ異世界。見たことも聞いたことも味わったこともない美食の世界。
何故こんなに違いができたのか、それは一つの細胞のせいだった。
大昔に墜落した隕石。その中にあるグルメ細胞が地球を大きく変動させたのだ。
食すことを快感に感じる者たちにとってそこは楽園、天国に等しかった。
簪を含めたグルメ世界旅行ご一行、グルメ世界へ訪れる。
誰かが言った――
かつて貴族が食べていたといわれるトウモロコシの王様があると―
極寒の地で百年に一度溶け出すといわれる幻のスープがあると―
絶滅した魚介類の味もするといわれる貝があると―
食べた者の美食人生を終わらせるほど美味しいマンモスがいたと―
かつて美食神がメインディッシュにしたといわれる食材の王様があると―
妖たちが住み着く大陸に実る食宝があると―
七色に輝く美しい果実があると―
数十億人の腹を満たしたといわれる卵があると―
世はグルメ時代—— 未開の味を探求する時代——
「すごーい!ここがグルメ世界かぁ~!」
一面広がる草原に出たご一行。その爽やかさに圧倒する。
「気のせいか空気も美味しく感じますわ!」
「一夏、早速案内してくれよ!」
「ああ、その前に…」
「おーーい!一夏ーー!」
遠いところから一夏が呼ばれる。リンカだ。こっちに走ってきた。
「待ってたわよ、皆も久しぶり」
「改めて紹介するぜ、俺のコンビのリンカだ。俺の師匠のコンビの娘だ」
「「「よろしくお願いします!」」」
「よろしくね!ところで一夏、まずどこ行くの?」
「まずは…俺の店、『織斑食堂』に行こう!」
というわけでグルメ世界編スタートです。ここからはIS原作とかけ離れるのでご注意を。これからもよろしくお願いします!