トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話 作:ZUNEZUNE
一夏とゴーレ餅が対峙する。ISを纏った人間と比較してもその巨大感は失われない。角餅の兜の隙間から赤い目で一夏を睨んだ。
ゴーレ餅、その知能は猿と同格であり、普段は群れで生息している。角餅の鎧は周期的に自然発生するもので、ゴーレ餅はその餅の状態を自由に操れる。
10〜15頭の群れの中で一番固い餅を作れる者が群れのリーダーとなる。捕獲レベル67の猛獣が10頭以上に固まって動いているので出くわしたら命が無いと言われている。
その隣にいたウニUFOは一夏の周りをずっと周回していた。しかしその眼の先は決して動かない。
ウニUFOは元々宇宙で生息する生物であり、こいつも基本群れで生息している。しかしその数はゴーレ餅とは比較にならないもので、100匹以上の群体である。
群れの中で弱い奴は爪はじきにされ、群れから追い出される。地球上で確認されるウニUFOはそんな個体が大昔に飛来して繁殖したものだと言われている。
捕獲レベル52、しかし群れから追い出されなかった個体の捕獲レベルはその数十倍だという噂も。
どちらも人間界の猛獣としては中々の強敵である。しかしその分味は美味であるのは確か。
一夏は剣を…いや包丁を握りしめた。
右手には黒い包丁『
ちなみにこの包丁は元々一夏が使っていた物をIS用として再現した物であった。
「さっ…クッキングタイムだ!」
そう言って一夏はゴーレ餅に向かって走り出す。それに対してゴーレ餅は白い豪腕で殴ってきた。しかし一夏がそれを飛んで避けた為その拳は地面に突き刺さった。
ある程度地面から離れるとウニUFOが後ろに回った。体中の黒い棘をミサイルのように一夏へと飛ばした。
「はっ!」
それを2本の包丁で弾く一夏。ウニUFOが発射した分の棘はまた生えてきた。
今度は縦に回転して一夏に突進してきた。まるで電動丸鋸のように斬りかかってきたのでそれをシールドで防ぐ。しかしその勢いは止められず、地面に叩き落とされてしまった。
地面に着地すると、再びゴーレ餅が襲いかかってくる。大きな手で捕まえようとしてきた。
それに対し黒星を当てたが、火花が散っただけでその甲殻に傷は付いていない。
(ちっ…刃は通らないか!)
一夏はゴーレ餅から離れる。するとゴーレ餅は自分の肩の角餅を剥ぎ取り、それを投げつけてきた。
「なっ——!?」
大砲の弾のように向かってくる角餅を2本の包丁を重ねて受け止める。しかしその威力に負け、体勢を崩し地面に転がってしまう。
ウニUFOは一夏を休ませないためか、仰向けになった彼に対し棘を発射する。
「うおっ!?」
次々に放たれる棘をギリギリ避け続け、何とか立ち上がる。
そして一夏はウニUFOへと斬りかかった。
「お前の弱点は…目だ!」
そして包丁2本をウニUFOの目に突き刺す。ウニUFOは悲鳴をあげるが、一夏はお構いなし。
黒星を上へ、白海を下へと斬り、ウニUFOを見事斬り倒した。
絶命したウニUFOは地面へと墜落する。
「中身が傷ついてなきゃ良いんだが…」
「凄い!黒いのを倒したぞ!」
春十と鈴は遠目から一夏の強さに驚いていた。歯が立たなかった1匹をあの男は一人で倒したのだから。
「何よあの強さ…化け物じゃない!」
「残るは…あの白い奴だけか!」
ゴーレ餅は一夏に向けて投石…というより投餅をしている。こちらには目もくれてない。
ここで春十は思いつく。
「鈴!今のうちに龍砲をあいつに撃てば…!」
「!!、そうね!」
すると鈴は言われた通り龍砲を撃つ。一寸の狂いも無くゴーレ餅へと向かったが…
「!!」
鈴の龍砲に気付いたゴーレ餅は突然体を震わせる。すると体表を覆っていた角餅が膨らんだ。
「「なっ!?」」
膨らんだ角餅は龍砲を受け止め、鈴と春十へとはね返す。
「しまっ——!」
二人が龍砲に当たりそうになると、一夏が前に出て白海で龍砲を掻き消した。
「あんた…!」
二人は一夏が助けてくれた事に驚く。元々敵か味方が分からないので警戒をしていたが、敵意は無いのだろうか?ちなみに一夏は別のことを考えていた。
(あれがゴーレ餅の膨張!シバリングで熱を起こし、餅の鎧を膨らませて弾をはね返す!)
シバリングとは身震いによる体温調節を行う生理現象。寒いときに口がガタガタ震えることや、小便をすると体が震えるのもシバリングである。体温の低下を防ぐための行い。ゴーレ餅はそれを意図的に発動して餅の鎧を膨らませて鈴の龍砲をはね返したのだ。
しかし、それが弱点でもある。
餅を膨らませることによってその強度は薄くなり、攻撃のチャンスが増えるのだ。
(次で…一気に決める!その為には…!)
すると一夏は二人を見る。二人はそれに対しビクッとなった。
「二人とも…あいつを倒すために力を貸してくれないか?」
「「…えっ?」」
鈴は、ゴーレ餅を周回しながら龍砲を撃ちまくった。ゴーレ餅はそれを膨張した餅で一つ残らずはね返す。
そして一夏と春十は、剣と包丁を構えていた。
(作戦は…ゴーレ餅が甲殻を膨らませてる時に…春十兄と一緒に一刀両断する!)
そして、ゴーレ餅が隙を見せた瞬間…
「「行くぞっ!!」」
二人は一斉に飛び掛かった。
春十は白式の雪片弐型を、そして一夏は黒星と白海を構えて、
「
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「二星微塵切り!!」
「はっ!!!」
「…!?」
春十の剣は餅を斬り、一夏の包丁は、全ての餅を微塵切りにした。
微塵切りにされた餅は、一般的な角餅のサイズに切り落とされている。
ゴーレ餅は素っ裸になり、それが屈辱となったのか、大激怒である。
「こいつ…まだ生きているのか!」
そう言って再び剣を構える春十だが、一夏がそれを止める。
「!?」
「殺す必要は無い、俺に任せてくれ」
すると一夏はISを解除し、ゴーレ餅に近づく。
「お、おい!?」
ゴーレ餅は怒りの中、一夏を目で捉える。
こいつが、こいつがこんな事を!
鎧で隠されていた大きな口に、鋭い牙。それらを剥き出しにして一夏に襲いかかるが…
「食い殺すぞ…餅製造機が…!!」
その後ろに映ったのは、赤色の悪魔、涎を垂らし、牙を見せ、尖った爪をこちらに差し向ける。
その瞬間、ゴーレ餅は、自分が無残に食い殺されるビジョンを見た。
爪で体中に穴を開けられ、牙で食い破られ、その長い舌で眼球を転がされてる姿を——
一夏はゴーレ餅の後ろに向こう側の世界へと繋ぐ光を作りだし、威嚇で強制的に元の世界へと帰らせた。
全てが何も無かったかのように静かになる。
「…すげぇ」
春十と鈴は、ただ震えていた。
2匹の怪物にではなく、一夏の後ろに見えた「それ」に対して。
『…織斑、凰』
ここで千冬から通信が入る。
その声は、驚きの色が混じっている。
『その男を…確保しろ』
静かにそう言ったが、鈴は首を振る。
「無理ですよ…あんな怪物…殺されますよ!」
『…そうか』
千冬は無理強いはしなかった。自分でもあの相手は無理だと分かっていたからだ。
一夏は切り落とされた角餅を全て袋に入れて回収する。
次にウニUFOの亡骸へと近づき、中から大量に採れた山吹色の身を、大型グルメケースに入れた。
そしてアリーナにいた人達に一礼をして、その場を去った。
「お疲れ様いっくん!」
「はぁ…疲れました」
束のラボに到着すると、溜息を吐く。
そして直ぐにエプロンをつけた。
「待っていて下さい!今すぐ美味しいご飯を作ります!」
「大丈夫?少し休んだ方が良いんじゃない?」
「全然大丈夫です!」
そうして、厨房に立った。
「お待たせしました!食べてみて下さい!」
大量の料理が机に並べられた。どれも全て美味しそうだ。
「じゃあ!いただきまーす!!」
束は嬉しそうに、まずはウニの軍艦巻きを頬張った。
(ん…!このウニ、プリンのように柔らかくそして甘い!)
目を閉じ、その味を堪能する。
(それにこの海苔がとてもパリパリしていて、ウニの食感を面白く変えている…たまらない!)
「『ウニUFOの身』、そして『羽衣海苔』を使いました」
「一夏様、私も食べてよろしいでしょうか?」
クロエはもう待ちきれないという表情をしていた。それに対し笑みで答える。
「どうぞ遠慮無く!」
そしてきな粉餅を口に入れた。
(この餅の感触…必要以上の粘りけが無い…そのまま飲み込んでも喉に詰まらないでしょう…!そしてきな粉の香ばしい香りと甘みが餅の中に入っている…!)
「『ゴーレ餅の餅』に『金箔きな粉』を掛けました」
「美味しい…とても美味しいです!」
「うんうん!やっぱりいっくんは天才だね!」
「へへ…そう言われると恥ずかしいです」
一夏は照れくさそうに鼻下を擦る。
「あ、そうだ束さん、1回向こうの世界に戻りますね。すぐに帰ってきますから」
「すぐに帰ってくるならいいよ〜!」
「何!?我々と同じ技術が!?」
グルメ時代の世界で、一夏はマンサムとリンにIS世界で起きた事件を報告していた。
「はい、本来向こうの世界にいない筈のゴーレ餅とウニUFOが黒い光によってやって来ました」
「むむ…何故そんな猛獣が…」
「俺は向こうの世界でまだ調査を続けてみます」
「分かった…頼むぞ一夏!」
「はいっ!」
「一夏君!帰る前にリンカと会って行くし!あの子最近アンタと会えなくて捻くれてるから…」
「分かってますって」
「あらあら…あの2匹がやられちゃうなんて…」
IS側の世界にて、その女性がそう呟く。彼女の後ろには、グルメ世界へと帰って行った筈のゴーレ餅が気絶してそこにいた。
「まぁいいわ…次の猛獣を送りましょう」
彼女はパチンと指を鳴らすと、大きな足音が鳴り響く。それで起きたゴーレ餅はここはどこだとキョロキョロしていたが…
自分を食おうとしている大きな嘴が、最後の光景だった。
グルメ3終わりです。鈴とリンがややこしい。