トリコ 一夏がトリコの世界に行って料理人になって帰ってきたお話   作:ZUNEZUNE

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8月に入る直前、7月がこんなに暑いと8月は地獄になるかと思われるので、熱中症だけにはお気を付けください。


グルメ39 さらば野菜仙人!

「ジンギのやつ、大丈夫かタマ…?」

 

野菜仙境では、タマギや他の野菜仙人たちが一夏たちの安否を気にして待っていた。その横には治療が施されたカカシチョウと、シャルとセシリア。

 

「春十たち…勝てるかな?」

 

「一夏さんやリンカさんもいますの、大丈夫ですわ」

 

すると濃くなった霧の中から何か大きな影が見え始めた。それを見た瞬間、野菜仙人たちは動揺しだす。

 

「ま、まさかグルメ界の猛獣が…!!」

 

しかしそれは猛獣ではなく、倒された2匹のドラゴーヤを引きずって戻ってきた一夏たちであった。

 

「一夏殿!!それにジンギまで!」

 

「春十!無事だったんだね!」

 

「ああ、心配かけたな!」

 

「いや~疲れたな」

 

一夏たちはボロボロの状態で帰ってきた。それほど戦いが厳しかったのだろう。それでも一夏は休もうとしない。1人でドラゴーヤを引きずって何処かへ行こうとする。

 

「とりあえず俺はこいつらを調理してくる!ジンギ、手伝ってくれ!」

 

「仕方ねぇな!」

 

ジンギもそれに付いていき、二人は厨房へと向かった。一夏の言うことに従っているジンギの姿に野菜仙人たちは戸惑いを見せた。

一方シャルとセシリアは、春十とリンカ、そしてララのもとへ駆けつける。

 

「大丈夫ですの皆さん!?」

 

「ララさんと協力して何とか倒したぜ!助かったよ!」

 

「…いや、こちらこそありがとう」

 

「じゃあとりあえず今は、一夏たちを待ちましょう!」

 

そう言って5人は一夏の料理を待つべく、大広場へと向かった。ここで傷の手当をするより、旨い飯を食べてグルメ細胞の能力で再生した方が楽だからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…う~む」

 

一方一夏は、ドラゴーヤの食材の前で唸っていた。ドラゴーヤは鱗がとても美味なゴーヤでできている。一夏はメスのドラゴーヤの鱗を見ていた。

 

「どうした?そんなに悩んだような素振りをして」

 

「いや、ちょっと食ってみろよこれ」

 

そう言って一夏は一切れのゴーヤを近くにいたジンギに渡し、食べさせた。するとジンギが口に入れた瞬間、その表情はどんどん今の一夏に似てきた。

 

「…苦すぎないか?」

 

「ああ、オスの方のゴーヤは程よい苦みで美味しかったんだが…何かメスだけ苦すぎるんだよ。これじゃあ他の食材と混ぜても苦みが強すぎて駄目だ」

 

「ほかの食材は使ったのか?例えばこの『桃トマト』とか――」

 

「それも含めて『ハニートラップツリーのハチミツ』と『シュークリームカボチャ』も試してみたけど…全部苦みの方が勝っちゃうんだよな…」

 

ここにきて意外な難問、ドラゴーヤ♀の鱗のゴーヤが苦すぎて調理できないのだ。あまりにも苦みが強すぎて他の食材の味を打ち消してしまう。

 

「何かないかなぁ…って」

 

必死になって一夏が適合する食材を探していると、あるもの(・・・・)が目に入った。

 

「そうか…これならいけるかもしれない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後、調理を完成させた一夏とジンギが、大広場にどんどん料理を運んでくる。

 

「待ってたわよ一夏、早く食べさせて!」

 

「どうどう!慌てるなって!」

 

出された料理はどれも美味しそうなゴーヤ料理、特に一番山盛りにされているゴーヤチャンプルが美味しそうだった。

勿論ゴーヤ料理だけではなく、野菜仙境の美味な野菜料理もある。

 

「じゃあ…この世の全ての食材に感謝を込めて――」

 

「「「「「「「いただきますっ!!」」」」」」」

 

こうして第二の食事会が開かれる。その瞬間、春十とリンカは獣のような変わりようをし、料理をどんどん口の中に入れていく。

 

(このゴーヤチャンプル!ゴーヤの凄い苦みとこのお肉の自己主張が激しいけど、それでいてお互いを尊重し合っているかのようなピッタリ感!)

 

(しかも肉だけじゃねぇ!上にかかっているこの粒々したもの(・・・・・・)が、僅かな甘みでゴーヤの苦みを抑えているんだ!)

 

「一夏!このイクラみたいの何?」

 

「ああ、ドラゴーヤの卵(・・・・・・・)だ、腹の中にあった」

 

「卵!?」

 

まさか本当に卵だったとは思っておらず、食べていた春十たちは一斉に驚く。

 

「何でか知らないけど、メスのゴーヤの方だけやたらと苦かったんだよね、そのせいで他の食材の味を打ち消して大変だったよ」

 

「…多分僕のせい、毒のストレスでドラゴーヤが苦みの元になる栄養分を多く出してたから…」

 

「あ、そうなのか。多分栄養素って言っても苦みのあるものを卵に与えていなかったから甘くなったんだろう。でもそれでドラゴーヤの卵が鱗のゴーヤの苦みを抑える適合食材って分かったから、ララのおかげだよ!」

 

「…ありがとう」

 

ここでララは照れて顔を赤らめる。

 

「料理の名前を付けるなら、『ドラゴーヤの親子丼兼ゴーヤチャンプル』だな!」

 

こうしてどんどん宴会は盛り上がっていき、いつしか夜になっていた。

 

「ふぅ…大分落ち着いたな」

 

宴会が終わってから数時間、皆が寝ている最中、一夏とタマギだけが濃霧樹海を一望できる場所に座っていた。

 

「それで一夏殿、()とは…?」

 

「ドラゴーヤたちを抑えこんでいた朱雀(・・)の話が聞きたいんだ。ちょっと思い当たる節がある」

 

「そうですかタマ…四獣侵攻時に人間界へやってきた四神獣(・・・)、朱雀様も含めた彼らは、人間界の東西南北に散らばりました。朱雀様は南のこの野菜仙境」

 

「…昔、グルメ界から紛れ込んできたクリーム白虎(・・・・・・)の子供をリンカと一緒に狩ったことがある。まだ子供だったから弱い方だったか…それでも強敵だった。今では俺のフルコースのスープだが」

 

「…儂は何故朱雀様がいなくなったのかを知りたい…もしかしたら他の方角の四神獣の身にも何か起きているかもしれません。一夏殿、旅の途中で結構ですので、どうか儂の代わりに調査の方をお願いできませんか?」

 

「…分かった。その場所を教えてくれ」

 

こうして一夏は、食材集めの他に新たな大義ができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ!お世話になりましたー!」

 

「またお越しをー!」

「お元気でー!」

 

翌日、一夏たちは仙人たちに見送られながら野菜仙境を後にする。その中にジンギもいて、目線こそずれていたが手を振っていた。

道中ハニートラップツリーのハチミツも大量に採取し、一夏の案内の元ご一行は無事濃霧樹海を脱出できた。一夏とリンカは野菜がたくさん詰まった袋を背負っている。

 

「じゃあ一夏…僕はここで」

 

「ああ!本当に助かったぜララ!」

 

「…」

 

「…ララ?」

 

別れの挨拶もしたのに、ララはこの場を去ろうとしないので一夏は疑問を感じ、何かあったのかと顔を近づけると――

 

「…んむ」

 

「…なっ!?」///

 

ララは急に顔を近づけ、一夏の唇と口づけをする。

その瞬間春十は目を丸くし、セシリアとシャルは顔を真っ赤にして黄色い悲鳴を上げ、肝心のリンカは一瞬で表情が黒く染まる。

一夏はすぐに振り解こうと抵抗しようとしたが、何故か体が痺れて動かない。

 

(…毒!)

 

長いのか短いのか分からないがキスの時間は進み、ようやくララは唇を離す。そして普段真顔のその顔は、女の子らしい笑顔に変わる。

 

「僕のキス、どんな味がした?」

 

「え?あ、ええっと…」///

 

「じゃ!じゃあバイバイ一夏!」

 

するとララは急に何かに怯える表情になり、逃げるようにその場から走って去っていく。それもそのはず、青い鬼を出したリンカがそこにはいたのだから。

 

「ごぉらぁあああ!!待ちなさいアンタァ!!!」

 

「落ち着いてリンカさん!女性が出していい声じゃありませんわ!」

 

「コテしまって!」

 

リンカは怒りの表情で両手でコテを持ち、逃げるララを追い始める。

一方男子陣は、何もできずに突っ立っていた。

 

「…モテモテだな一夏」

 

「…春十兄だけには言われたくないやい」

 

こうして濃霧樹海を後にした一夏たちであった。




野菜仙境編ようやく終わりましたー!次回はトリコ原作と同じように1話完結のお話を挟んでから次の編に入っていこうと思っています。
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